低学年を担任する先生方の悩みの一つに掃除指導があります。
掃除指導は学校教育の重要な部分を担ってきました。
近年では技術の進歩によってお掃除ロボが活躍している家庭が増えたり、業者に学校の掃除を任せればよいという意見もあったりし、掃除指導の意味合いが変わりつつあります。
改めて先生方には掃除指導の意味を考え、低学年の子どもたちに指導できるようになってほしいと思います。
掃除指導(清掃活動)のねらい
掃除指導(清掃活動)の教育的な位置づけは、特別活動にあります。
学級活動(3) 一人一人のキャリア形成と自己実現の「イ 社会参画意識の醸成や働くことの意義の理解」の中に、「清掃などの当番活動や係活動等の自己の役割を自覚して協働することの意義を理解し、社会の一員として役割を果たすために必要となることについて主体的に考えて行動すること」とあります。
(小学校学習指導要領「特別活動編」P47)
掃除指導(子どもから見ると清掃活動)の教育的効果には以下のようなものがあります。
- 基本的生活習慣の形成
日常生活の実践に結びつく習慣を身につけることができます。 - 集団の一員としての自覚
役割分担と実践を通して、責任感を育成し、集団の中での自分の役割を理解します。 - 人格形成
清掃活動は子どもたちの人格形成に大きな影響を与えます。
清掃活動を通して気づく力を養ったり、心を磨いたり、謙虚さを学んだりできます。 - 協調性の向上
友達との清掃活動を通じて協力し合う大切さを学びます。 - 公共心と勤労意欲の醸成
清掃活動を通じて、公共の場所を大切にする心や働くことの意義を感じ取らせることができます。
掃除指導は、掃除をする実践的な力だけでなく、子どもたちの人間性を高めるねらいもあります。
各学校では、掃除指導の計画・目標が設定されています。年度初めに必ず確認して指導できるようにしましょう。
また、その学校独自の掃除ルールがあると思います。
例えば、「〇〇ぼうきは〜に使う」「ぞうきんはワイパー拭きで」などです。
ルールにはない掃除方法で指導をすると子どもたちは混乱し、充実した清掃活動ができなくなります。
掃除方法やルールも指導前に必ず確認しましょう。
低学年の掃除指導で大切なこと
掃除をする意味を伝える(考えさせる)
掃除の意味を低学年の子どもたちが考えるのは難しいかもしれません。
しかし、意味や目的がわからない活動は子どもたちのモチベーションを低下させます。
ほぼ毎日ある清掃活動なら、なおさら意味や目的が大切ではないでしょうか。
T「どうして学校を掃除するのだろう?」
C「掃除をしないと困るから」
C「掃除をしないと汚くなってしまうから」
C「学校をきれいにするため」
C「自分たちが活動する場所だから」
T「掃除をするといいことって何だろう?」
C「教室がきれいになって気持ちがいい」
C「勉強に集中できる」
C「お仕事をやった感じがする」
低学年なりに掃除の意味がわかっていればOKです。
「きれいにするぞ!」「自分の役割を果たすぞ!」という意欲の向上に繋げていきましょう。
掃除のやり方を確実に教える
「わからないから掃除をやらない」という状況を作らないようにします。
クラスの子どもたち全員が掃除をできるように指導を工夫していきましょう。
私は高学年を担任することが多かったのですが、低学年で習った掃除のやり方をしている子を多くみかけました。それだけ、低学年での掃除指導は子どもたちに影響が大きいです。低学年の先生への感謝の念が湧き上がるとともに、掃除指導を含めた低学年の指導の大切さを感じました。
低学年の掃除指導の工夫 7選

ここからは低学年の掃除指導の工夫を紹介していきます。
①「なんで掃除をするの?」に教師も子どもも答えられる
先に書いた「掃除をする意味」と重なる部分がありますが、低学年の子どもたちは「なぜなぜ期」にあり、何でも理由を知りたがる傾向にあります。
「なんで掃除をするの?」と子どもに聞かれたら、ぜひクラスでその疑問を共有し、掃除をする意味を考えてみましょう。
最初は「学校をきれいにするため」でもOKです。掃除をするよさに少しずつ気付かせていきましょう。
②6年生にサポートしてもらう
入学当初の1年生の清掃活動を6年生がサポートする学校は多いです。
ただサポートしてもらうだけではなく、掃除の方法やどんな気持ちで掃除をしているのかも6年生から学べるとよいです。
1年生から見た6年生はかっこいいお兄さん・お姉さんという憧れの存在なだけに、6年生の言動は1年生のやる気をアップさせてくれます。
③一斉指導と個別指導を使い分ける
掃除指導に限らず、指導は一斉指導と個別指導を上手に使い分けることが重要です。
掃除指導の場合、クラスの子どもたちがそれぞれの掃除場所に分散するため、一斉指導も個別指導も難しさがあります。
クラス全員で共有したい内容は一斉指導ですが、特に年度初めの時期には、全員で掃除場所に行き、掃除の方法を一斉指導するとよいでしょう。
最初の指導から個別指導にすると指導内容がバラバラになってしまいます。個別指導は掃除のやり方に課題が見られる子に対して行っていきましょう。
④役割・掃除場所をだれが見てもわかるようにする
「誰が、どこで、何をするか」をクラス全員がわかるようにしましょう。
当番表を掲示し、一目で見て役割や掃除場所がわかるようにするとよいです。
低学年は特別教室や体育館などを担当することはあまりありません。だからこそ、子どもたち一人ひとりが確実に役割を理解し、掃除をする力を高めていくことが大切です。
⑤掃除方法を「見て」わかるようにする
一斉指導や個別指導だけでは、子どもたちに正しい掃除のやり方を定着させるのには限界があります。
そこで、掃除のやり方を「見て」わかるようにします。
言葉だけではなく写真、実演や動画で掃除のやり方を示していきましょう。
掃除を始める前に写真を見てやり方を確認したり、動画を流しながら掃除をしたりすると効果的です。
学校によっては美化委員会が掃除のやり方を実演している例もあります。
「画面に映っているお手本の真似をしてみよう!」
と言えば、真似好きな低学年の子どもたちは喜んで真似をします。
掃除が上手にできている子をお掃除名人と称し、お手本になってもらうなど、子どもたちがワクワクする掃除活動を促していきましょう。
⑥オノマトペを使って掃除のポイントを教える
掃除方法を「見て」理解することと同時に、掃除のポイントをオノマトペで教えていきましょう。
オノマトペとは、音や声、動作を音声化して表現する方法です。
掃除指導で有効なオノマトペは、例えば「サッサッとほうきではく」「ぞうきんでゴシゴシ拭く」「キュッキュッと音がするまで拭く」「ピカピカになるようにしよう」などです。
オノマトペは体育学習の指導に効果的ですが、掃除指導にも効果があります。
⑦評価点を明確にする
「どこまでできたら100点(合格)か」「何ができたらお掃除名人か」という評価の基準を明確にしましょう。
- 全員が掃除をした
- 黙々と掃除をした
- 時間内にそうじをした
- いつもより汚れ(ゴミ)がとれた
- 協力して掃除をした
- サボる人がいなかった
など、多くの視点で掃除は評価できます。
評価の基準を明確にすることは、教師が「〇〇さん(△班)は黙々と掃除をしていたので100点(合格)です」という価値づけをする際にも役立ち、子どもたちが「今日は協力して掃除できた!」と振り返るのにも有効です。
最後に
教師がいなくても掃除ができるクラスは自立したクラスです。
高学年では自立したクラスを目指しますが、低学年のうちから清掃活動で子どもたちの自立を促していきます。
本記事で紹介した指導の工夫を参考に、「させられる掃除」から「する掃除」への転換を図っていき、子どもたちが自ら進んで取り組む姿勢を育てていきましょう。
執筆者プロフィール
マー
小学校教員を15年務めた後、フリーのWEBライターに転身。教員時代は安全主任、体育主任、生徒指導主任、学年主任を担当。現在は「物事のよさをより多くの人に」をモットーに教育系記事、金融系記事を主に執筆。趣味は野球観戦とランニングで、野球やマラソン・駅伝を応援するブログを運営している。
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