はじめに
この記事では、2025年10月31日にShibuya Sakura Stageで行われた、SOCIAL INNOVETION WEEK2025「『部活動地域移行』『学校教育』におけるアーバンスポーツの可能性」の様子をお届けします。
今年(2025年)に改正のされたスポーツ基本法では、新しいスポーツの定義として「する」「見る」「支える」という3要素に、新たに「集まる」「つながる」が加わりました。スポーツによる人と人との繋がりがより一層重要になってきています。
本イベントが行われた渋谷区では、渋谷区スポーツ協会と連携し、2025年4月に地域クラブ活動の新たな形として「ストリートスポーツクラブ」を始動しました。イベントでは、アーバンスポーツを軸に、各自治体の部活動地域移行の現状やこれからの展望について対話が行われました。
SOCIAL INNOVETION WEEKとは
「毎日に、好奇心を。未来にアイデアを。」をコンセプトに、一般社団法人渋谷未来デザインの主催で毎年東京都渋谷区で行われているイベントです。
イベントHPはこちら
スピーカー紹介
田中豊 一般財団法人渋谷区スポーツ協会副理事長
松浦政行 横須賀市役所文化スポーツ観光部アーバンスポーツ推進担当課長
大下義邦 北九州市都市ブランド創造局スポーツ振興課アーバンスポーツ担当課長
水谷洋夫 京都市役所文化市民局市民スポーツ振興室スポーツ企画課長
AYANE BGIRL/株式会社IAM
FISHBOY CyberAgent Legitディレクター
ファシリテーター:渡邊マーロック 渋谷未来デザイン/スポーツプロデューサー
(敬称略)
シブヤ「部活動改革」プロジェクト
部活動の課題に早期に着目し、2021年に「シブヤ『部活動改革』プロジェクト」をスタートさせた渋谷区。その推進役である一般社団法人シブヤユナイテッドの取り組みは、全国のモデルケースとなっています。
田中: 5年前ごろから部活動地域移行が話題になり始め、渋谷区は特に部活動の運営に対する課題意識が高かったです。そこで、令和3年にこの「シブヤ『部活動改革』プロジェクト」はスタートし、プロジェクトの推進を担う一般社団法人シブヤユナイテッドを設置しました。「渋谷だからできる、新しいクラブ」をコンセプトに、9つのユナイテッドクラブから始まりました。
――シブヤユナイテッドはどのようなクラブなのでしょうか?
FISHBOY: シブヤユナイテッドには、ダンスに関するクラブとして「ダンスクラブ」と「ストリートスポーツクラブ」の2つが存在し、ストリートスポーツクラブではブレイキンを行っています。
男女比はほとんどが女子ですが、これには可能性を感じています。中学生の運動部参画率はおよそ男子が75%で女子が56%ですから女子の方が約20%も低いのです。これが高校生になるとさらに減少します。女性の健康が課題になっている中で、ダンスは女子に人気があるスポーツだと思っています。
初めての子も集まる理由と教育的価値
――クラブにはダンス経験のある生徒が多いのでしょうか?
FISHBOY: ダンス経験のない生徒も少なくありません。なぜなら、中学校でダンスを経験している生徒は、すでにダンススクールに通っているからです。シブヤユナイテッドは、ダンススクールの相場は1回あたり3,000円程度の中で、年会費が2万円と非常に安価に設定されています。そのため、部活動や習い事で運動をしていなかった生徒が「ここなら参加できるかもしれない」と考え、習い始めるという状況が見受けられます。
しかし、学校が異なればカルチャーも異なり、最初は学校ごとに分かれている様子も見受けられました。でも、そこでダンスを介することでコミュニケーションが生まれていきました。「集まる」「繋がる」というスポーツ基本法の新しい項目を意識し、「自分が好きなものを口に出して話そう」といった姿勢を大切にしています。
各自治体の取り組みと課題
地域移行の現状
大下:北九州市は現在まさに部活動地域移行の検討を進めています。来年度からはまず週末のみ地域展開を実施し、平日は引き続き部活動を実施します。スケートボードやダンスに関しても、受け皿となる地域の民間クラブが現在準備を進めている状況です。
水谷:京都市では、令和10年度に地域展開を実施するという方針を掲げています。その前段階として、子どもたちのニーズを把握したいという目的もあり、今年度下半期から実証事業を実施します。現在、生徒の募集を行っているところです。ダブルダッチなどについても、今回実証事業として取り組む予定です。
松浦: 横須賀市もまだ地域移行が実現できていない状況です。誰が指導していくのか、という点が最大の課題であると考えています。
各地のストリートスポーツ施設
松浦:横須賀市のうみかぜ公園は、1996年に設置された、比較的歴史の長いアーバンスポーツができる公園です。土日は活動する場所がなくなるほどの大盛況ぶりです。行政の運営なので、無料で開放しています。

大下: 北九州市スケートパークは、2019年に地元のスケーターたちが自ら協会を立ち上げて嘆願書を提出し、行政が整備しました。協会が現在も運営を担っています。

水谷: 京都市には、西京極総合運動公園、宝が池アーバンスポーツパークという2つの施設があります。宝が池アーバンスポーツパークは、若年層のアーバンスポーツ振興という目的もあるため、小中学生が無料で利用できるよう整備しています。

田中:渋谷区のYoyogi Park BE STAGEは、今年(2025年)3月に設置された施設で、民間企業が運営しています。4自治体の中では唯一、部活動地域移行の拠点になっています。

終わりに
水谷:これまで学校の部活動で行っていた競技以外にチャレンジできる、ポジティブに道を切り開いていくきっかけを作ることができればと思っています。
大下:アーバンスポーツは公共空間で始まったものです。今、全国でパークが作られることで、こういったカルチャーがなくなりつつあるのかなと思っています。北九州市としては、これをまた街中に戻していき、アーバンスポーツで街がにぎわっていく、アーバンスポーツと共存するような街を目指していきたいと思っています。
松浦:横須賀市で一緒に働いているメンバーと共有している言葉があります。それは、「横須賀市で誰もが輝ける、かっこいい街」です。これをアーバンスポーツで体現していきたいと思います。
田中:やはり「繋がる」がキーワードだと思っています。コーチが金髪だったりピアスを開けていたりという、学校では見ない大人と接することで、心が繋がっていきます。発表会などの機会があるとさらに視野が広がると思います。
AYANE:きっかけはどこに落ちているか分かりません。そのきっかけを与えてくれるこのような取り組みがもっと全国に広がってほしいと思います。
FISHBOY:皆さんの話に付け加えると、「違いと繋がる」ということが大切だと考えます。違いと繋がってこなかった人たちが大人になると「違いと争う」ことになってしまいます。違いを受け入れることができるかどうかが今世界で起こっているさまざまな問題に影響していると考えます。子どもの頃からいろいろな違いと出会っておく経験は大切です。子どもたちが安心して繋がれるようなコンテンツを提供していきたいと思っています。
編集後記
部活動地域移行にはまだまだ課題も多いですが、スピーカーの皆さんはスポーツを街に開き、繋がりを生むチャンスだと考えているように感じられました。部活動地域移行が、課外活動活性化のきっかけになればと思います。
(編集・文責:EDUPEDIA編集部 丸山和音)


コメント