「ちいちゃんのかげおくり」国語・物語文 授業案~人物の思いを想像し、考えを交流し、自分の読みをつくる~

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国語・物語文「ちいちゃんのかげおくり」(あまんきみこ作)の授業案です。
 本教材は、それぞれの場面で、ちいちゃんの家族への思いを読み取り、それらを1つに繋げることで作品全体を味わうことができます。
 本授業案では、特に空(色)とかげおくりの2点に注目して作品を読み通します。
 いろいろな角度からちいちゃんの思いを考え、交流し、自分の読みをつくりあげる授業展開になればと思います。

目次

1、単元の構成

目標
単元の流れ
単元構成の意図

2、学習活動

活動内容と板書例

目次

1 単元の構成

目標

◯場面の移り変わりに注意しながら読み,人物の行動,情景,会話などの表現に着目し、場面の様子を想像しながら読む。【比較】【象徴】
◯色が表すイメージを捉える。【関連づけ】
◯戦争についてか考える。【主題】
◯本文を引用したりまとめたりして,文章の叙述に基づき,感想を書く。【学び方】
◯学習をまとめたり、振り返ったりして、次の読書活動へつなげる。

単元の流れ

・感想を書く
・感想の交流、課題設定
・本文全体からちいちゃんの家族への思いを考える
・2つのかげおくりを比べて、ちいちゃんの家族への思いを考える【比較】【象徴】
・物語に出てくる色について考え、表現の効果やちいちゃんの思いを考える【関連づけ】
・ちいちゃん日記を書く【分類】【学び方】
・戦争がちいちゃんから奪ったもの、奪えなかったものから、作品の主題を考える【主題】
・自分の作品の読みを書く【物語の読み方・意味づけ】
・学習のまとめ、読書活動へつなげる【学び方】

単元構成の意図

・感想の交流、課題設定

初読の感想に「ちいちゃんの悲しさ」や「家族への思い」が多数あることが予想される。そこから単元の学習課題を設定する。
「ちいちゃんは幸せだったのか?」という疑問も取り上げられる。

課題:「ちいちゃんの家族への思いが伝わってくる文章をさがそう」

まずは、本文全体のちいちゃんの言動から思いを想像する。
場面を限定しないことで、場面をつなげて読む練習になる。
全体から考えることが難しい場合は、「この場面から考えてみよう」と場面を限定する。
交流を通して、1人では考えられなかった箇所について考えたり、同じ箇所でも考えが違うことがあることに気付いたりすることで、読みが広がる。

・2つのかげおくりを比べて、ちいちゃんの家族への思いを考える

ちいちゃんの言動に注目した後、家族への思いの鍵となる「かげおくり」に注目する。
物語の前半・後半に2つのかげおくりが描かれていて、その違いを考えることで、戦争という悲惨な状況の中でも、家族への思いを頼りに生き続けようとするちいちゃんの強さや愛情を捉える。

・物語に出てくる色について考え、表現の効果やちいちゃんの思いを考える

2つのかげおくりを比較した後、戦争によってかげおくりができなくなったという事から、かげおくりの舞台である空に注目する。注目する視点として、物語の表現の特徴である色を取り上げる。
色の表現は、「スイミー」が面白いものを見つける場面で扱っている。また、「ごんぎつね」が撃たれる場面での青い煙の読みにもつながる。

・ちいちゃん日記を書く

読み学習のまとめとして、「言動」「2つのかげおくり」「色(空)」から読み取ったことを意識して、ちいちゃん日記を書く。
「戦争の前」「一人ぼっちのちいちゃん」「戦争の後」など、大まかな見出しを付けて書くことで、場面の移り変わりを意識させる。

・戦争がちいちゃんからうばったもの、うばえなかったものから、作品の主題を考える

物語を読む学習の後は、戦争について考える時間をとる。「戦争はいけない」という「解答」を書かせるのではなく、物語全体の自分の読みを通して戦争や平和について考えるきっかけとしたい。
「家族」や「自分が好きなこと」に触れることで、戦争と自分を少しでも関連づけさせたい。【関連づけ】
日頃のニュースや他教科でも繰り返し取り上げることで考えを深める。

(考えられる主題例)

  • 平和への思い・家族の愛情・身近な幸せを大切にする
  • 平和は身近な幸せを大切にする気持ちを持ち続けることで叶う。
  • 空の色は平和の色。人それぞれが大切にしたいことへの思いが平和に繋がる。
  • 心の支えが生きる希望になる。
  • ちいちゃんの平和は、家族と自分を繋ぐ空にある。
  • 空がなくならない限り、ちいちゃんと家族は繋がっていられる。

・自分の作品の読みを書く(作品に自分なりの意味づけを行う)

単元では、ちいちゃんの様子や空の色、かげおくりの意味について考えながら物語を読み通していく。そこで、読み取り学習の後に、自分で視点を決めて、物語をどう意味づけたのかを書く活動を設定する。
今回は「色」「かげおくり」と視点をこちらから提示するが、学年が進むにつれ、自分で視点を設定できるようにしたい。

例えば、初読で物語のイメージを一言で表す(「ごんぎつね)だったら〈すれ違い〉」、「海の命」なら〈海で生きるとは?〉など)。
そして、それぞれが自分のキーワードをもとに物語の読み、考えを交流しながら読みを深めていく。
単元の最後に、自分のキーワードをもとに、作品の説明を書く活動を取り入れる(作品に自分なりの意味づけを行う)。また、自分の初めの読みと単元末の読みを比べて、読みがどのように変わっていったのかを書くことも考えられる。

(課題例)
空の様子(色)とちいちゃんの様子を関係づけながら、物語を説明してみよう。
・それぞれの場面を、かげおくりとちいちゃんの思いを関係づけながら説明してみよう。

・読書活動へつなげる

本単元では、「人物の気持ちをまとめる(ちいちゃん日記)」「色の表現に注目して読む」「戦争について考える」という学習活動を行う。
学習後に、自分の関心を持った活動を広げる読書活動につなげたい。
◯他の物語を読んで、人物日記を書く。
◯他の物語を読んで、色の表現についてまとめる。
◯戦争に関する他の作品を読み、考えをまとめる。(ちいちゃんと比較も)

2 学習活動

感想を書く

ちいちゃんの家族への思いを読み取る

はじめと最後のかげおくりを比べる

(板書例)

物語に出てくる色について考える

(板書例)

ちいちゃん日記を書く

作品の主題を考える

(板書例)

終末の展開

・学習のまとめ

学習のまとめとして、物語を読んで考えたことを、内容にあった方法で表現する
◯感想文
◯紹介文
◯新聞
◯ポップ
◯劇

・学習の振り返り

ちいちゃんの思いを考えることができたか、自分の考えを持てたか
振り返る視点
◯どの方法が考えやすかったか
◯どんな力がついたか
◯自分や友だちの良さ
◯次にしたいこと(読書活動へつながると良い)

・自分の作品の読みを書く(作品に自分なりの意味づけを行う)

単元では、ちいちゃんの様子や空の色、かげおくりの意味について考えながら物語を読み通していく。そこで、読み取り学習の後に、自分で視点を決めて、物語をどう意味づけたのかを書く活動を設定する。
空の様子(色)とちいちゃんの様子を関係づけながら、物語を説明してみよう。
○それぞれの場面を、かげおくりとちいちゃんの思いを関係づけながら説明してみよう。

*関連記事:教材研究編に文章の例があります。

・読書活動へつなげる

本単元では、「人物の気持ちをまとめる(ちいちゃん日記)」「色の表現に注目して読む」「主題(戦争)について考える」という活動を行う。
学習後に、自分の関心を持った活動を広げる読書活動につなげたい。
◯他の物語を読んで、人物日記を書く。
◯他の物語を読んで、色の表現についてまとめる。
◯戦争に関する作品を読み、考えをまとめる。(ちいちゃんと比較も)

3 関連記事

「ちいちゃんのかげおくり」 教材研究 ~空(色)とかげおくりから、作品を読む~

教材研究編では、各場面の注目箇所と色、単元末の活動である「作品の読み(意味づけ)」の文章例を紹介しています。
他にも、空色の絵や作品に合った合唱曲も紹介しています。

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