教師の働き方改革〜何に時間をかけるべきなのかを考える〜(江澤隆輔先生)

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作成者:小林 彩乃 (Edupedia編集部)さん

1 はじめに

本記事は、2019年3月8日に行った、江澤隆介先生(坂井市春江東小学校教諭)へのインタビューを編集・記事化したものです。教師の働き方に目を向けた本『教師の働き方を変える時短 5つの原則+40のアイディア(東洋館出版社)』を出版された江澤先生に、働き方について様々なお話をお伺いしました。

2 インタビュー

①新刊について

自己紹介をお願いします。

初任から3年間は福井市内の中学校、7年間はあわら市内の中学校に勤めていて、今は小学校に勤めています(2019年3月8日時点のものです)。2校目では英語科全体で新しい実践に取り組み、子どもたちに高い英語力をつけさせてあげたことが評価され、ベネッセ教育総合研究所に取材してもらう機会がありました。

それが出版社の目に留まり、2冊ほど英語教育に関する本を出させていただきました。1冊目は英作文、2冊目は『中学英語ラクイチ授業プラン』という1時間の授業プランを載せた本です。その本ではアクティブラーニング学会金賞を頂きました。現在はフォニックスに関する本など、3冊ほど同時並行で執筆中です。

新刊では、「明日から使える」アイディアを

  • 授業づくり
  • 学級経営
  • 仕事術
  • 職員室

の4つのカテゴリーに分けて、合わせて40個紹介しています。授業準備や教材研究におけるタブレットの使い方に加え、印刷作業をどう効率化するかといった話も書いています。また、時短のマインドについても「5つの原則」として書かせてもらいました。

「時短」に注目した他の本と江澤先生の本との違いを教えて下さい。

3つありますね。1つ目は明日から使えるということです。ハウツー本はたくさんあるのですが、マインド的な部分が大半を占めています。仕事といっても幅が広く、一般的なことしか書けないというのは分かるのですが、この本では教師の仕事で共通している部分に目を当てて明日から使えるものを40個書きました。

2つ目は、現役の教師が書いたということです。現役の教師が書くというのはあまりなく、調べた限り数冊しかないので、そこに1冊割り込んでいけたらいいなと思いました。

3つ目は、福井県は結構特殊で、1人の教師が中学校にも小学校にもどちらにも異動するので、どちらも経験した教師が書いたということです。小学校に来て思ったのですが、中学校とは全然仕事が違うんですよね。10年間中学校でやってきたことが通用しない場面も多々あります。小学校はいろんな教科を広く浅く、中学校は狭く深くという感じで、全然仕事が違いますから。その両方を経験している先生という意味で違いがありますね。

②小学校と中学校のちがい

今まで中学校で英語しか教えていなかったのに、小学校で全教科を教えないといけないやりづらさはありますか?

去年まで年間500時間くらい英語を教えていたのに、いきなり『ごんぎつね』を教えることになるわけなので、当然やりづらさはあります。また、中学校は1コマ1コマで切れてしまうので、その1時間で勝負して子どもたちの学びを積み上げていきます。それに対して小学校では1つのクラスを6時間ずっと受け持つことになりますが、中学校で教えていたときには生徒が出来ていたことも当然できなくなるわけです。今まで教えていた子どもたちと大きく発達段階が違う子どもたちに合わせた授業を行っていかなければならないという点で大変ですね。

中学校時代の教え方に引っ張られることはありますか?

ありますね。使っている脳みそが全然違うので難しいです。英語と一口にいってもとても広いのですが、英語の中でも私の専門は文字指導と発音指導で、その2つに関しては教師になってからもすごく勉強してきました。ですから、小学校では発達段階的にまだしっかりとした文字指導はしないのですが、教えたくなってしまいます。

専門教科以外の教材研究はいつやっていますか?

基本的には放課後にやっています。授業中に児童たちと一緒に教科書を読み込むこともあります。それでも、どうしても終わらない道徳や図工といった科目の準備は、放課後に校務分掌と並行してやります。職員室では、学年の先生方と打ち合わせをしたり、ひたすら事務作業をしたりしています。

授業準備が間に合わないことはありますか?

道徳は授業時間内には間に合わないですね。ここをやるというのは決めて、黒板に貼る図やイラストなどは用意します。それでも、最悪の場合は直前の休み時間になってしまうこともあります。

専門の中学校英語は、10年もやっていれば子どもの顔を見ればだいたい子どもの理解度が分かるようになるので、敢えて内容を決めずに授業に臨むこともありました。私は50分を15分のアクティビティ×3に分けて考えて、最初の15分にやるものだけ大まかに決めていました。15分くらいで集中が切れてしまうので、その15分のアクティビティをどうするかが大切になります。最初のアクティビティをしたけれど、子どもたちが全然できていないのにそのまま次に進むというのは、子どもたちを置き去りにしてしまうことになるので、あまり細かく決めずに臨機応変にやっていました。英語は積み上げの教科ですから、簡単なものができないまま難しいところに進むことはできません。1つ目のアクティビティでつまずきを感じたら、レベルは変えずに違うアプローチからアクティビティを行います。

生徒の様子をよくみることが大事なのですね。

そうですね。この本にも書いたのですが、スキマ時間でいろいろ考えていくことも大切です。今はネットでいろいろな教師の授業を見れるので、いろいろなことを自分の頭の中に入れておいて、子どもたちをみながら適切なものを引き出せるようになれるといいですね。

ただ、やりたいことは遠慮せず、様々なことに取り組んでみてほしいと思います。やってみたい授業をやっていってほしいです。自分が「これだ!」と思う授業を続けていると、子どもたちがついてきます。

私の場合は、それが文字指導と発音指導でした。中学校1年生の4~5月で、その2つに集中的に取り組みました。発音がいいと、子どもたちから「この先生、英語喋れるんや」という印象を持ってもらえます。子どもたちにとって分かりやすい分野と自分の専門が被っていたのもよかったのかもしれません。もちろん、そこに関しては誰にも負けない、くらいの勉強は必要ですが。

③働き方改革と時短

初任者がいきなり時短に目を向けても大丈夫なのでしょうか?

初任者は、時短を考える余裕がないくらい忙しいと思います……。

1年目とか2年目は明日の授業のことすら分からないので、教材の準備、部活動の仕事、校務分掌といった仕事をこなすので精一杯でした。ところが、部活動から職員室に帰ってきて仲の良い教師たちと子どもたちについて話し始めると止まらないんですね。

教師って子どもたちの様子を話すのがとても好きで、そういうことを話し始めるとすぐに19時とか20時になって、ご飯を食べに行って21時ごろからまた仕事をしていたので、帰るのが23時とかでしたね。それが最初の3年でした。だから仕事の効率とかは全然考えずに全部100%でやっていました。

以前は時短について考えたり、そういう意識はあったりしたのでしょうか?

全くなかったですね。今はSNSやインターネットが発達しているので、調べれば様々なことが分かりますし、発信すれば全国の先生に届きますから、いい時代になりましたよね。

最初に勤めていた中学校では、全然そういう情報が入ってきませんでしたし、子どもたちが落ち着かない様子であったこともあり長時間労働になりがちで、いじめの指導が19時から入ることもありました。そういう時代だったんですよね、10年くらい前は。

その頃は、多忙化は全く問題視されていなかったのでしょうか?

全然言われていませんでした。これが普通だと疑わないんですよ。教師はこういうもんだよ、休憩時間はあまりないよ、それが教師だよという感じで働いていました。恥ずかしながら、勤務時間が何時までか知りませんでしたね。そういうこともちゃんと勉強すれば分かることですが、忙しすぎてなかなかできないです。

結婚して子どもができると、やっぱり自分の子どもは可愛いもので、もっと多くの時間を家族と過ごしたいと思いはじめました。そこで、時短をするならまずは部活動かなと。

部活動に関わる時間は、自分が教えている英語の授業よりも長いんですよ。平日に毎日2時間やって、土曜日に4時間やれば、それだけで合わせて14時間です。私は週に1クラス4時間しか英語を教えてないのに。絶対おかしいなと思って、時間を見直すようになり、それと同時に授業の研究をもっとやりたくなりました。

時間を見直すということは、言い換えれば、教師の本業は何かを考えるのと一緒なんです。時間は有限ですからね。部活動にたくさん使ってもいいですが、教師の本業は、やはり子どもの学力をきちんと伸ばすことなんですよね。

それを考え始めたらとても楽しくなって、5人の若い先生たちと一緒に授業改革をしたら、子どもたちの力もどんどん伸びていくのが分かりました。福井の中学校では県下一斉のテストがあるので、自分の中学校の順位が伸びていったのをみて、これもやろうあれもやってみようと楽しくなり、それが結構当たってさらに伸びてくれたのもきっかけですね。つまり、多忙な現状を見直すきっかけになったのは、子どもが生まれたのと、授業の研究にはまったことですね。

教師の多忙化の原因の1つとされる部活動についてどう考えますか?

私は、部活動は中学校の中では唯一とも言える縦割りの活動で、また、スポーツから学びを得る良い機会と考えているので、部活動の教育的意義自体を否定したいわけではありません。

私が言いたいのは、教師の労働問題としての部活動です。教師が部活動の顧問として労働した分の報酬が規定量支払われたり、振替休日があったり、土日の顧問としての業務に対して正当な手当が支払われたりするのであれば問題ないのです。しかし現時点では、任意での活動であるにも関わらず、強制力があり手当もほぼ出ません。その点が問題だと考えます。

定時退勤はやはり難しいのでしょうか?

特に中学校は勤務時間が長いというデータがありますね。

何故かというと、例えば30人の教師がいたとして、25人くらいは部活動の担当をしているんですよ。16時半に勤務終了で、16時半に部活動が始まると、勤務終了と同時に部活動が始まるというおかしなことになりますが、大半の教師が部活動の指導をしている中で帰るというのはなかなかできないですね。

中学校の働き方改革は、部活動改革と同じです。根っこは部活動改革なのです。私も部活動は大好きなので、やりたい人はやればいいと思います。しかし、介護をしなければならない、子どもが小さいといった、家に帰らなければならない人にまで、部活動をほぼ強制的にやらせてしまう、顧問・副顧問をさせてしまうのはいけないと思います。職員室の文化・空気とか、地域や保護者の文化・空気といったものでそうなっていると思いますが、絶対におかしいしダメなことですよね。

最後に、先生方へメッセージをお願いします。

すべての仕事を時短することはできません。だからこそ教師にしかできない仕事にしっかり時間を使ってほしいと思います。そのための時短です。教師にしかできない仕事というのは、学級経営、生徒指導、教材研究などですね。

また、仕事以外にも時間を使ってほしいと思います。教師というのは本当に忙しい仕事なので、『ずっと家と学校の行き来』、ということにもなりがちです。それで世間から揶揄されて、「学校の常識は世間の非常識」と言われてしまったりもするわけです。教師だから私生活を犠牲にするのではなく、プライベート、家族、趣味にもきちんと時間を使うため、時短で時間を生み出していただきたいですね。

3 著書紹介

4 編集後記

世間で働き方改革が注目されている中、教師の仕事の負担を減らすためには、どのようなことをしていけば良いのかということを具体的にお話ししていただきました。教師の現状がよく分かり、教師全員が意識を変えていかなければならないところもありますが、江澤先生が本の中で紹介されている40個のアイディアのような、すぐに実行に移せることに取り組んでいくことが大切だということが分かりました。

(取材・編集:EDUPEDIA編集部 金田愛里、小林彩乃、中澤歩)

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