順序に沿って作文を書く ~「馬のおもちゃの作り方」(光村図書国語2年)

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2年生の作文指導


学習指導要領によると、小学校低学年の「国語」に関する内容「B 書くこと」に、

ア 経験したことや想像したことなどから書くことを見付け,必要な事柄を集めたり確かめたりして,伝えたいことを明確にすること。

イ 自分の思いや考えが明確になるように,事柄の順序に沿って簡単な構成を考えること。

ウ 語と語や文と文との続き方に注意しながら,内容のまとまりが分かるように書き表し方を工夫すること。

と、示されています。1年生の文章を書く能力は、それほど長い文章を書くほどまでには育っていないため、教科書では2年生で「はじめ」「中」「おわり」を意識して書くことと、文章を順序立てて書けるように単元が構成されています。例えば光村の教科書ではたくさんの教材の中で「はじめ」「中」「おわり」が扱われています。ただし、「段落」を「段落」という用語を用いてはっきり意識させるように指導するのは3年生以降となります。

読み取るより、先に作らせる


光村図書では、2年生の作文単元でも、「まず、・・・・・。」「つぎに、・・・・。」「さいごに、・・・・。」と、段落のはじめに順序を表す接続詞を掲げて書かれた文章を例文として示しています。2020年の教科書から登場した「馬のおもちゃのつくり方」では、作り方の部分で「まず」「つぎに」「それから」「さいごに」と順序良く述べ、「これで」から始まる2行の文を<付け足し>ています。正直、ちっとも面白くない分ですし、できた馬のおもちゃもクオリティーが低くなりがちで面白味がありません。そこで、YOUTUBE動画に上がっている馬のおもちゃの作り方のビデオを見せてから工作をさせます(2020年現在、すごくわかりやすい動画がアップされています)。そうすると、ほとんどの子供が成功しました。作ってから文章を読んでみると、けっこう理解ができたようで、ペーパーテストでも好成績をおさめることができていました。

順序良く書かせることの困難


この単元はさらに「おもちゃ推し」で進められ、「けん玉の作り方」というもう一つの文章も掲載されています。けん玉の作り方なんて、文章で説明しなくても分かるから、面白くもないだろうに。これを元にして、自分が作ったことのあるおもちゃの作り方の説明文を書かせます。

この教科書を真に受けて、

「何か、自分が作ったことのあるものを作文にしてごらん。【まず】や【つぎに】や【さいごに】を段落のはじめにつけて順序良く書くんだよ。」

などと、安易に子供たちに作文を書かせても、①それまでにきちんと文章を書く訓練をしてきたか、②教師側に上手に書かせる腕があるか、そのどちらか、いや、①②どちらもがないと子供たちが迷走し、修正がきかなくなり、ひどくクオリティーが低い作文が出来上がってしまいます。

それまでの1・2年生の作文指導が上手くできていたとして、子供たちは「はじめ」「中」「おわり」をやっと意識しはじめた程度です。そんな子供たちが段落を意識することは大変難しいため、【まず】【つぎに】【さいごに】などを使ってすんなりとまとまりを意識して順序良く文章を書くことは無理だと考えるのが妥当でしょう。

また、一人一人の子供が違う題材を取り上げて書くとなるとさらに指導のハードルが上がります。例えば、「鉛筆の削り方」を題材に選んだ子供と、「ビーフカレーの作り方」を選んだ子供では手順の複雑さがまるで違います。前者はすぐに書けてしまって退屈するし、後者はなかなか終わらずに破綻するかもしれません。平成の30年間は子供たちに選択させることが最も大切であるかのような学びが賞賛されてきましたし、令和の指導要領もそれを推しているようですが、それは時と場合によります。凄腕教師が研鑽を積んでできるようになった「学びの理想像」を標準レベルの教師が真似ようとしてもなかなかうまくいくものではありません。子供たちの文章構成力はしっかりと計画的に積み上げてゆかなければならないのに、付け焼刃で突然

「何でもいいから好きなテーマで、教科書の例文みたいに順序立てて「おもちゃの作り方」を説明してみましょう」

と要請しても、子供たちは困惑するばかりです。「おもちゃ」でなくても、2年生の子供が自分で何らかの題材を書くことを決めて、それを順序に沿って詳しく書くとうのは、私の経験からすると、かなりハードルの高い作業であるように思えます。

場合によっては、ビーフカレーの作り方の方も、「まず、具を切って、次に水で煮て、最後にルーを入れたら出来上がりです。」と、とんでもなくシンプルな作文にしてしまう子供もいるかもしれません。これはこれで、超要約ができていて凄いですが(笑)、教師側の意図とは大きくズレてしまいます。

テーマを絞る(統一する)


「順序に沿って書く」という構成を考えることに指導のポイントを絞るのであれば、作文のテーマも絞る必要が生じてきます。30~40人が経験したバラバラのテーマで順序に沿って上手に書かせるなど、凄腕教師の作文指導です。自分が標準レベルの教師であると思うなら、ここはテーマを絞りましょう。

私はどの子供も経験がある学校での活動を描写するのがよいだろうと考えました。面白くはないですが、「はき掃除のやり方」「朝、教室に来てからすること」の2つを書かせてみました。あまり面白くはないのですが、「2年生として1年生に教えてあげるつもりで書いてね。」「2年5組のルールになってしまってもいいからね。」と、少しハードルを下げて書きやすい気持ちにしてから始めました。1年生に教えてあげるのだという優越感が、子供たちのモチベーションを少しだけ押し上げたように思います。

何を書いたらいいのか分からない子供に


カレーの作り方でも簡単に書けば上述したように、1文で書けてしまいます。簡単すぎる文章にならないようにするためには、作文の苦手な子供にある程度のサポートをしなければなりません。どんなテーマにしてみても「何を書いたらいいのか分からない」という子供が少なからずいます。

テーマを決めて、いきなり「ハイ書いてみよう」と書きはじめるのではなく、みんなで「はき掃除のやり方」「朝、教室に来てからすること」を思い出し、板書して書き留めてあげることで、少しは詳細な文章を書いてくれると思います。

例えば、大雑把に言うと「はき掃除のやり方」は、「はいて、ごみを集めて、ごみを捨てる」です。これでは物足りないので、「箒をとる、しまう」をその前後につけます。まずこのへんの大雑把な部分を段落と見なして板書します。

詳細の記述を求めつつも、あまり詳細にこだわらず


「掃き掃除はどのように進めますか」「1年生にアドバイスもしてあげてね」

などと発問すると、上記のように「箒をとり、はいて、ごみを集めて、ごみを捨てて、しまう」といった手順の他に、「そして、ロッカーの方に行って、そして、『お先にどうぞ』の気持ちを持って順番を守って押ずに、そして、箒を一本取って、そして、周りに気を付けて人に当たらないようにはく方を下にして、そして、右手を上、左手を下にします。両手の間隔は30㎝ぐらい、決してチャンバラごっこはしません・・・・」と、延々と詳述すぐことが可能です。クラスの中にこだわりの強い子供が何人かいると、面白がって枝葉末節の手順やアドバイスを次々に発言します。しかし小学生が使える接続詞は

「はじめに」「まず」「最初に」→「続いて」「つぎに」「さらに」「そして」「こんどは」→「最後に」

程度のもので、この詳細部分をずっと取り上げていると、「そしてそして作文」になりかねません。そうならないために、板書時には時系列に分けながら、大きなまとまり「箒をとり、はいて、ごみを集めて、ごみを捨てて、しまう」にまとめてしまいましょう。それぞれの手順をカードに書きながら黒板に貼ってから、順番とまとまりを整理する作業を入れてもいいでしょう。「『お先にどうぞ』の気持ちを持って順番を守って押さずに」といったアドバイスに関しては、「すごい、いいアドバイスだねえ」と大袈裟にほめて板書からは外してもいいでしょう。

この板書をヒントにしながら、4~6個程度の大きなまとまりのはじまりに接続語をつけさせて、作文を書かせました。

実践結果は、「まあまあ、書けたかな、順序に沿うことが分かったかな」という程度です。これで、どの子も、いつでも接続詞を用いて順序に沿ってまとまりのある文章が書けるようになるかと言うと、道は険しく遠いです。高学年になっても段落意識は難しく、時間が戻ったり飛んだり、大事な手順が抜け落ちていたり、手順の身であったりです。文章力は積み上げが大事で、とそう簡単には身につくものではないです。表現したい(書きたい)ことがあるように育てる必要があり、それは難しいことです。そして、表現したいことを相手に伝える(書く)テクニックを身につけることも大切で、それも難しいことです。文章を書くというのは大人にさえ難しい営みです。私自身、この作文指導の記事を書きながら、自分の筆力のなさに赤面しています

子供たちが書いた作文の中から良い文を抽出し、再編成して作った文章を印刷して全員に配りました。下の2作品です。作者名は「にねんごくみっくす」です。

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2年生は「はじめ」「中」「おわり」を考えて作文をかけるようにべんきょうしています。さらに、じゅんばんを考えて「まず」「つぎに」などをさいしょにつけて、「中」を3つに分けて書くれんしゅうをしています。まとまりごとに、ひとつマスをあけて書きはじめるよ。

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はきそうじのやり方
にねんごくみっくす
そうじが上手にできるになりましたか。ルールをまもって、早く、ピカピカにできるやり方を教えてあげるね。
まず、ほうきをとります。ロッカーをざつにあけずに、ゆっくりあけよう。けんかやぶつかり合いをやめてね。おさないで、「お先にどうぞ」です。人がいないところでほうきのむきをかえます。右手が上で、左手が下です。ミニほうきは、リーダーにわたします。
つぎに、ゆかをはきます。つくえを下げてからはきます。はいぜん台も下げてね。黒ばんの方から、ロッカーの方へ、南北南北・・・と、じゅんばんにはきます。ミニほうきは、大きいほうきがはけないところをはくんだよ。すみっこだよ。まん中らへんは、ふつうのほうきではけるよ。もくもくせいそうのときは、あそばずに、しゃべらずにはいてね。後まではいたら、まん中あたりに、ゴミをあつめます。きれいにとってね。
さいごに、はく方を上にして、ほうきをきれいにならべて、ロッカーにしまいます。
みんなできょう力をして、そうじをしましょう。一時四十五分までにおわろうね。教室をきれいにすると、しゅう中してべんきょうができるので、頭がよくなるよ。

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たのしい一日のはじまり
にねんごくみっくす
「さあ、今日の一日のはじまりです。」
みんなの中には、はりきっている子、はやくあそびたい子、おとなしい子、いろいろいるね。かしこくなるために、きほんを言うよ。一年生はできるかな。ちゃんときいてね。
はじめに、友だちに朝の「おはよう」です。いろんな子に言おう。元気に言ってね。大きすぎる声は、あんまりやめといてね。ふつうの声で言おうね。これで一日がはじまるよ。
つぎに、教科書をつくえの中に入れます。つくえの上をふでばこだけにします。また、れんらくちょうとしゅくだいをはいぜん台の上に出します。「先生見てね」のむきに出してね。
それから、ランドセルをロッカーに入れます。ぬいだふくや、きゅうしょくぶくろもロッカーに入れようね。
こんどは、こくばんを見て書いていることをします。先生がだいじなことを書いているかもしれないよ。たとえば、「さか上がり八時十分かられんしゅう」と、書いています。
そして、晴れている日は外に出てあそびます。雨の日は教室でしずかにすごしてね。教室でさわいじゃいやだよ。
さいごに、チャイムがなったらいそいでイスにすわって、しずかに先生が来るのを待っています。
どうでしたか。二年生のお手本を見てね。これをぜんぶできたら、ほめてあげるよ。がんばってね。たのしい学校にしようね。

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