組体操のポイント

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<<安全に、効果的に>>

できましたらまず、下の記事をお読みください。
組体操を「廃止」に導く ~事故リスクの回避
組体操は廃止すべきだと思います。
この記事をお読みになられた上で、それでも、もし、「存続」という道を取られるのであれば、以下の記事をご参考に安全な運営に努めていただきたいと思います。
それぞれのポイントを全て書きあげていると、膨大な量の文書になってしまうので、かいつまんでポイントを羅列してみます。教師のスキルが不足していて、技が完成しないと焦りが生じ、そのせいで怒鳴ってしまう結果になったり、安全への配慮が十分にできなかったりという状況は避けなければなりません。できるだけ安全に、効果的に進められるよう、教師側にもスキルが求められます。
組体操は中学3年生、小学校なら5・6年生で体育会や運動会の大きな見せ場として発表されることが多いです。最高学年に至るまでのしっかりした体育指導ができていなければ、最高学年のスタッフへの負担はたいへん大きいものになります。体育主任は、「練習中でもタワー等の大技に取り掛かる際には、職員室で手の空いている者に声をかける」「場合によっては授業中でも全校放送で支援を呼び掛ける」ぐらいの指針を出してもよいと思います。学校全体が安全を確保し、最高学年を支えていく姿勢・体制を作って行きましょう。
ちなみに私は個人的には組体操の実施に「反対」です。しかし、学校の事情等でどうしてもやらねばならない立場に立った方のために、この記事を書いています。

1.主旨説明をする・事故を減らす

エデュペディアには他の記事があるので、よろしければご参考にしてください。
 組体操~主旨説明・基本ルール 
 組体操での安全~事故を減らすには

2.補助倒立

下記のURLをご参照ください。
 逆立ち(補助倒立)を成功させるために

3.肩車

近年、身体能力が低下している子供たちに肩車をさせるときには、相当な安全面での配慮が必要です。一昔前なら説明もなしに「はい、やれー!」で済んでいたいた程度の技ですが、そんなことをするとプロレス技のバクドロップのように頭から落とすような状況になりかねません。組体操の技の中でも、非常に危険を伴い、大けがにつながる類の技だと考えた方がいいと思います。

  • 一度に全員でさせない
  • 壁を背にして後に倒れない状況でさせる
  • マット(できれば分厚いセーフティーマット)を敷いて前だおれしても怪我をしない環境を作る。
  • 子供に補助をさせるなら、2人を前後に補助につけるようにしましょう。横につけると、倒れそうになっても「見ているだけ」の時があります。

等々、安全面の配慮をするべきです。

また、最初はクラスで一番体重の軽い子供が持ち上げられ役になって、順番に重い子供を持ち上げるようにスモールステップで練習をさせてあげれば、上手に持ち上げる方法が身につきます。

前かがみの状態で腰で持ち上げるようなイメージで立ちあがるのではなく、一旦体をまっすぐに起してなるべく垂直方向に重力をかけるようにして、足で持ち上げるイメージで立ちあがるようにさせてください。

子供の上達が遅く、運動会に間に合わせるのが無理なようであれり、交替して両方の子供が上に乗るのでなければ、ペアのうちの片方が軽いようにペアを組むことも考えるとよいでしょう。

身長順に2列に並ばせて、

右前 1 3 5 7 9  11 13 15 17 19
左前 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20

片方の列を

右前 13 15 17 19  1  3  5  7  9 11 
左前 2  4 6  8 10 12 14 16 18 20

と並べ替えると楽に持ちあげられるペアができます。3人組等も含めて、他の技でも有効な組み合わせ方かもしれません。

4.サボテン

肩車同様、最初はクラスで一番体重の軽い子供が持ち上げられ役になって練習をすることです。何事もスモールステップが大事です。

  1. 上の子供の足が下の子供の膝に足をセットする。
  2. 上の子供が膝を伸ばす。
  3. 下の子供が頭を抜く。
  4. 下の子供が後ろに少し倒れる。
  5. 上の子供が前掲する。

の順で動くとよいでしょう。この順番が守られていないと、バランスを崩しやすいです。

土台の子供は、上に乗っている子供の膝のあたりを持つようにするといいでしょう。
上の子供がバランスを崩しているのに下の子供がいつまでも手を離さないと危険です。今の子供たちはコミュニケーションをとることが苦手なので、こういったことも教えておいてあげないといけません。

5.飛行機

まず上に乗る子供の脇の部分が鈍角にならないようにします。鈍角になるとそのまま脇が180°まで開いてしまいます。この構えがきちんとできるように指導しましょう。

倒立の時と同じで、上に乗る子供の体重が十分に腕側にかかっていることが大切です。そうすると後で土台の後ろ側の子供が上に乗る子供の足を持ち上げるとき、支点(掌の部分)と作用点(体の重心)が近づき、力点(地面をける足)に必要な力が減ります。

この動作は土台が立ちあがる前の姿勢で、何度も練習させるといいと思います。立ちあがると上に乗る子供の構えが崩れがちです。
それでも構えがなかなかできない子供は、土台からおろし、地面の上で腕立ての構えさせて、その状態で腕側に体重をかけるようにさせ、足側を持ち上げる練習をするといいです。

6.3人タワー

タワーやピラミッドに関しては危険度が高く、時間もかかります。最近は様々な新しい形が考え出されており、「見た目が良く」「安全で」「難易度が低い」形が産み出されています。ここでは紹介しませんが、たくさんの情報を集めて、どの形で組むのかをしっかり調べて、吟味していきましょう。

  • 首を中に入れて土台を組む。
  • 上に乗る子供は土台が組んでいる手を持たせる。
  • 上に乗る子供は土台が立ってから立たせる。

7.ピラミッド

ピラミッドも崩れると、危険度が高い技です。

  • 肩をくっつける・・・・・安定します。
  • 構えを作る・・・・・土台の子供の体のそれぞれの折れ目が、90°になるように調節します。二段目三段目は下の子供の背中に乗っているので、90°に構えるのはやや難しいですが、できる限り90°を目指します。
  • 衝撃を加えないで登る・・・・・登る時には、背中ではなく、お尻を踏むようにさせます。お尻の下には足があり、つっかえ棒なので衝撃が加わりにくいです。踏まれても強い土台を選んで置き、誰を踏むのかを決めておくのもいいでしょう。手を使うと横方向の力が加わって引っ張ることになり、ピラミッドが揺れる原因になるので、なるべく手を使わないで足だけで踏んで上がることを覚えさせましょう。

8.三段タワー

まず、土台の子供でもタワーはそれほど体重を支えていないことを教えてあげましょう。高いというイメージを持っているので、それが「重い」のイメージになってしまいます。しかし、実際は6人3人1人の三段タワーであれば、6人の子供の上に4人の子供がのっているわけですから、4÷6で約計算になりますから1人あたり約0.67人が乗っているだけです。

バランスがが悪いと偏った場所に力が働き、単純に0.67人分の重さがかかっているわけではありませんが、それにしてもそんなに重いわけではないことをイメージさせておくといいと思います。

そうなるとピラミッドと同じく、揺れないことが最大のポイントになってきます。
まず、土台だけで土台の上側が水平になって立つ練習を何度もさせ、揺れずに立たせる練習を何度も繰り返すことが必要です。
十分に水平を保ちながら立てるようになってから、3段目の子供をのせるようにしましょう。これは、2段目の子供たちの練習時もそのようにするといいです。

練習パターンとしては、

  • 土台の6人だけで「立つ→座る」を5回。
  • 2段目の3人だけで「立つ→座る」を5回。
  • 土台の6人に2段目の3人を座ったまま乗せて、土台が「立つ→座る」を5回。
  • 2段目の3人に3段目の1人を座ったまま乗せて、2段目が「立つ→座る」を5回。
  • 土台の6人に2段目の3人を乗せて立った後、2段目が「立つ→座る」を5回。
  • 2段目の3人に3段目の1人を乗せて立った後、3段目が「立つ→座る」を5回。
  • 土台の6人に2段目の3人と3段目の1人を乗せて立った後、2段目が「立つ→座る」を5回。

ここまでを1日3セットこなし、それを3日続けます。そうするうちにバランス感覚や体力が身についてきます。そして、

  • 最終段階・・・・・土台の6人に2段目の3人と3段目の1人を乗せて立った後、2段目が立ち、その後3段目が立つ。

へと進みます。

「2段目、立てー、座れー」

と、何回も繰り返して練習させます。すぐに最終段階に進もうとせず、安定した体の動きを身につけることが先決です。

安全配慮のため、各塔に最低でも2人の大人の補助をつけ、補助がいないときには無理して立てないようにすることが必要です。

9.縦横をそろえる作業を早目に

立て横の整列させる作業は早い目にやっておきましょう。きちんと並んでいるだけでも、子供たちの中に「やっている感」「できている感」が生まれます。始めのうちは中央や端にコーンを置くなどして、位置どりをしやすいようにするといいでしょう。

ただ単に立て横を揃えて気をつけの姿勢をさせ、
「○○人が立て横を揃えてきちんと整列した状態で、胸を張って視線が上がっていると、それだけで素晴らしい演技になります。」「凄くいいです。凄くいい!」
と、褒めてあげましょう。

さらに、両手を真横に上げさせて、
「その、十字が並んでいるだけでもいいねえ!真剣な顔がなお、いいよ!」
と、べた褒めをすると良いと思います。褒めるチャンスです。

ちなみに、両手の上げ方は、「水平」と言ってしまうと水平以下になってしまいます。「それでは、ペンギン!」等と言って、指摘しましょう。「水平よりも、心持上にしてごらん。5度ぐらいです。」と、言っておけば、水平以下になりにくくなってきます。

10.準備期間を長くとる

運動会では6年生が組体操をするパターンが多いと思います。それが分かっているのであれば、焦らないでいいように、6月ぐらいから準備を進めておくべきだと思います。各クラスで、3人技ぐらいまではほぼ8割程度ができている状況を作り出しておくと、9月になってからが楽です。

指導が苦手な教員にはサポートをつけて、安全かつ効率的に進めるといいでしょう。たくさんのスキルを身につけるには、たくさんの時間が必要なだけでなく、長い期間が必要です。期間が長ければ無理なく安全にスキルを定着していくことが可能です。

そういう意味では、4年正ぐらいまでに前転・後転ぐらいまでできるようにしておいてくれると指導が楽で安全です。特に後転は後ろ側に倒れたときに首をひっこめたり身をよじったりする練習にもなります。そういった身体能力を小さいころから身につけさせておくことが必要であると思います。「マット運動 後転」をご参照ください。

11.7割の子供ができる状況を作り出す

7割の子供ができる状況を作り出す
をご参照ください。 7割の子供ができるようにするのに苦労はするかもしれませんが、そうなれば、全員ができるようになるまでは、あっという間です。

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この記事を書いた人

コメント

コメント一覧 (5件)

  •  記事に以下の文章がありました。

     >最初はクラスで一番体重の軽い子供が持ち上げられ役になって、だんだん重い子供を持ち上げるようにスモールステップで練習をさせてあげれば、上手に持ち上げる方法が身につきます。

    しかも、この指導方法が重要であるかのごとく軽い子が持ち上げられ役になってのところに色までつけて

     なぜ、小さい子が練習台にならなければならないおですか?
     小さい子の母親として大変不愉快です。怒りを感じます。

     小さい子が練習台になるということは、小さい子にはより組体操の練習中の危険性が増すということです。
     練習台として何度も何度も繰り返し危険にさらされるということです。 組体操のために生贄になるということです。

     小さい子の親に、組体操の練習台となることの許可承諾をとる必要はないのですか?

     組体操の歴史的事実として、小さい子体重の軽い子はピラミッドの頂上になる等させられて、より危険な目にあわされ、大けがをさせられてきました。
     そのことを分かっていながら、なぜこのような文章をかけるのですか?

     このHPは現役の先生方も見られていると思います。

     今まで私のような異議がなかったことに驚きます。 組体操に限らず、学校で全体のために誰かが生贄や犠牲になることはあってはならないとおもいます。

  • 「小さい子の母」さん、コメントありがとうございます。リンク https://edupedia.jp/article/56232b63a3cd5c98de402816 と同様、私(この記事の執筆者)も組体操はやめた方がよいと考えていますし、学校現場、その他の場でも組体操には反対してきました。肩車は危険度が高いと考え、詳しく書いているつもりです。小さい子供だけではなく、タワーやピラミッドで土台となる大きい子供にも怪我が出ています。そのことに心を痛めています。 しかし、周囲の継続したいという意見に押され、どうしてもやらざるを得ない立場の先生に読んでいただくためにこの記事を書いています。実施するからには、少しでも安全な指導をしてほしいからです。 記事中にある並び方(大きい子供が小さい子供を持ち上げる)で実施した場合、クラス40人として、持ち上げることができない子供は数人です。平均10人分の身長差ができるため、かなり楽に持ち上がるはずです。初期の練習中は1組ずつに対する手厚い保護が可能です。一度に全員にさせず個別指導をすれば、経験上、上に乗る子供が怪我をするような落下の仕方はしないと思います。 小さい子供だけを肩車の練習台にせよと書いているのではありません。、不成功の子供を少なくした上で、さらに、安全を確保した上で、小さい子供から「順番に」(「だんだんを順番に」と書き換えておきます)スモールステップで大きい子供を乗せるように練習を積めば、力もつくしうまくなります。 本文に「十分に安全を確保したうえで」という文言を付け加えました。 むしろ、小さい子供は楽に上げてもらえるのでリスクが少ないでしょう。 ただし、必ずしもリスクは0にはなりませんし他のスポーツと比べて組体操の危険度は高いでしょう。最近の内田 良准教授の著書や記事は熟読しています。 http://bylines.news.yahoo.co.jp/ryouchida/ タワーやピラミッドの上段には小さい目の子供を配置するはめになりがちです。また、すべての教師が危険回避に関して熟練しているわけでもありません。したがって、私としてはあくまでやめればよいと考えています。是非、「小さい子の母」さんも、学校に直接、組体操の取りやめ、あるいは危険な技の廃止を周囲に訴えてください。誰かが犠牲になる可能性が高い体育を学校という場ですることについて反対であることは、「小さい子の母」さんと同じ意見、同じ気持ちのつもりです。

  • matui hiroshi さんへ
    コメントありがとうございます。
    matui先生は
    >クラスで一番体重の軽い子供が持ち上げられ役になって

    と書かれています。
    私の子は、クラスで一番体重が軽く一番背の低い子です。
    おそらく今後クラスが変わってもそうでしょう。(学年全体で一番体重が軽く背の低い子です。)

    matui先生は、肩車を持ち上げられないのは数人と書かれています。その数人の中の誰と私の子を組ませるのか、その数人に入れ替わり立ち代わり持ち上げさせられるのが母親としてたえられません。それを実験台生贄というのは適切な表現です。

    その練習風景を見学している小さい子の保護者だったら、誰だって「やめてくれ!」と叫ぶとおもいます。

    肩車をさせるのは、運動神経の良いクラスの半分程度の児童にさせればいいのです(事前に保護者に承諾を取った上で)。そして、肩車を持ち上げられない児童にはもっと安全な他の技を同時にさせればいいのです。

    クラス全員が肩車をすることにこだわる必要はありません。

  • それから、matui先生は、児童に補助をさせることについても書かれています。これも、肩車が崩れたときに、責任問題がより複雑になると思うので、やめてください。

    例えば、児童の保護者に組体操の練習の時間に学校にきてもらい、ボランティアで補助をお願いするという方法もあります。
    でも、万が一、保護者がうまく補助できずに、児童がケガをしたら、複雑な責任問題になると思います。よって、保護者が補助をすると言うのは現実的ではありません。

    児童に補助をさせても、とっさに逃げてしまうと思うのです。
    そして、ケガが発生したら、保護者が補助に入る以上に、誰の責任かとても複雑になります。

    ケガのリスクがあっても組体操をやらせたいと思っている児童とその保護者から事前に承諾をもらい、難しい技は承諾を得たクラスの何割かの児童にしかさせないというのが良い教師のすることです。

    管理職から組体操をやれてと言われても、身を挺して児童の安全を守ってください。

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