子どもの集中力を高めるモジュール学習【応用編】 (山根僚介先生)

1 実践概要

この記事では、平成27年6月13日の勉強会、『陰山英男先生と考えるモジュール学習と学力向上』で山根僚介先生が講演された内容をご紹介します。
 
漢字や簡単な計算問題を繰り返し行う徹底反復学習には、どのような利点があるのでしょうか。本記事では山根僚介先生の実践報告をダイジェストで紹介しております。

2 実践内容

なぜ徹底反復学習を行うの?

徹底反復学習を行う利点は何でしょう。その答えとして真っ先に基礎学力の向上が挙げられるかもしれませんが、実はそれだけではありません。

脳科学によると、集中力をつかさどるのは脳の前頭葉という部分です。意外に思われるかもしれませんが、前頭葉は難しい問題を考え込んでいるときにはそれほど働きません。しかし、音読(速読)や百ます計算などの単純な学習を行っているときには、非常に活発に前頭葉は働くのです。

つまり、徹底反復学習で簡単な問題を繰り返し解くことによって前頭葉が鍛えられ、基礎学力の向上のみならず、集中力やコミュニケーション能力や聞く、読む、書くといった能力も向上させることが可能となります。この様々な能力の向上こそが、徹底反復学習を行う利点なのです。

徹底反復学習はどのように行うの?

徹底反復学習を行う際に気をつけなくてはならないのは、毎日のメニューの組み方です。

たとえば毎日15分づつ徹底反復学習の時間を確保します。そして学習メニューを構築するわけですが、月曜日は音読、火曜日は計算、水曜日は漢字というように、曜日ごとに学習内容を変えてしまうのは好ましくありません。なぜなら毎日メニューが変わってしまうと、子どもたちは何をやればいいのか分からず混乱してしまい、安心して学習に取り組むことができなくなってしまうからです。

つまり毎日のメニューを固定して同じ学習メニューを繰り返すことが重要となるのです。5分づつ音読、計算、漢字の学習というメニューを毎日行えば、子どもたちは今何をすべきなのかが明確に把握でき、安心して学習に取り組むことができます。

また徹底反復学習で重要になってくることは、子どもたちに自分たちが成長していることを実感させることです。集中力を持続させることは、我々のみならず子どもたちにとっても大変なことです。しかし、自分たちの成長を実感すれば学習意欲は向上し、集中力もさらに向上するという正のスパイラルになるのです。

「A」させたいなら「B」と言え

「A」させたいなら「B」と言え、というのは岩下修先生の言葉です。徹底反復学習を行うことによって生活面の指導もスムーズに入るようになりますが、指導の際に子どもの心に残る言い方をすることも大切です。

たとえばこんな場面はどうでしょう。給食後の食器かごにお皿を積み重ねるとき、なかなかお皿の高さが合いません。この時
A「同じ高さになるように重ねなさい。」
ではなく、
B「一番低い山に置きなさい。」
と言い換えてみてはどうでしょうか。Bの方がより具体的な指示になっており、子どもも理解しやすいでしょう。

また掃除の時間に、箒をもっているだけで掃除を行わない子どもがいたとします。
この時は
A「ていねいに掃きましょう。」

B「ごみを見て掃きましょう」
と言えば、子どもはより明確に、なにをすればよいのかが分かるようになるでしょう。
このように言い方を少し変えるだけで子どもたちにとって印象深い言葉となり、教師の言葉と自分の行動とを結び付けやすくなるのです。

漢字の学習方法

漢字の学習では、教師の力を借りずに、子どもが自力で漢字を学ぶ力が必要です。そのために教師は子どものみで学習できるサイクルを作ってあげるとよいでしょう。その一つとして部首のフラッシュカードをご紹介いたします。

漢字の部首を教えることによって漢字がカテゴリー分けされて覚えやすくなります。そして部首を教えるのと同時に部首の意味を教えましょう。たとえば「にんべん」なら「人」に、「さんずい」なら「水」に関係する漢字を成り立たせます。
それでは間違えやすい「こざとへん」「おおざと」はどのような意味を持つのでしょうか。

「こざとへん」はもともと「阜」という漢字が変化してできたものです。「阜」という漢字は崖の断層の形、つみあがった土を表します。そこから「防」や「陸」などの漢字が成立したのです。
そして「おおざと」は「邑(むら)」という漢字からできたため、領地や村や国を表します。そこから「都」や「郷」や「郡」という漢字が成立したのです。

このように教師が部首について説明を加えれば子どもたちの記憶にも残り、漢字も覚えやすくなるのです。

社会科フラッシュカード学習法

小学校の学習指導要領には47都道府県の名称と位置を身に付けさせることが規定されています。ではどのように習得させるのが良いのでしょうか。

古典的な方法としては、フラッシュカードのおもて面には都道府県名、裏面には県庁所在地を書き込み何度も繰り返し読んで覚えさせる方法があるでしょう。
しかしそのような方法では、都道府県の名前はわかっていても、各都道府県が日本のどこに位置しているのかが分かりません。また、白地図を使用して47都道府県名を書くというプリント学習を繰り返すことは、子どもにとっては退屈な学習となる可能性があり、勉強の意欲を奪いかねません。

そこで日本地図のフラッシュカードを作成してみるのはどうでしょうか。白地図の画像の一つの都道府県のみに色をつけて、色のついた都道府県が何県かを子どもたちに問うようにするのです。

またこのフラッシュカードを用いた学習方法は、日本地図のみならず地図記号を覚える際などでも利用することができます。
「県庁」の地図記号を表示した後に県庁の画像を、「市役所」の地図記号を表示した後に市役所の画像を表示するようにすれば、子どもは地図記号と身近な建物を結び付けて覚えられるでしょう。

このようにフラッシュカードを用いて指導することによって、視覚を用いた効率の良い学習ができるようになるのです。

生徒を指導するにあたって

教育では「このようにしなくてはならない」という常識を疑わなくてはなりません。教師には子どもを観察する力が求められます。画一的な学習指導ではなく、目の前の子どもたちに合った教育実践を、自らが楽しみながら創出していくことが大切です。これを目指して徹底反復学習を行っていっていただければ幸いです。

参考文献として、『日々の指導に生かす「徹底反復」』のリンクを掲載しておきます。
『日々の指導に生かす「徹底反復」』

3 フラッシュカードファイルのダウンロード

今回ご紹介した山根先生のフラッシュカードのファイルをこちらに添付しております。ぜひご活用ください。
※ 題材はすべてパブリック・ドメイン(著作権フリー)です。
※ 本文をコピーして使うことは構いませんが、商業目的とした利用はご遠慮ください。
※画像は「白地図専門店」様からお借りしました。
都道府県フラッシュカードファイル

4 編集後記

脳を活発に働かせるためには難しい問題に取り組むよりも簡単な計算や音読を行った方が良いということを知り、まさに目からうろこが落ちるようでした。また山根先生の随所に工夫が施された学習指導は、子どもたちの深い理解を促し、さらに学習への興味、意欲を喚起させるはずです。今回の講演を通して、日々の学習の積み重ねと学習方法の工夫の重要さに改めて気づくことができました。山根僚介先生の記事は他にも掲載されておりますので、ぜひそちらもご覧になってください。

5 講師プロフィール

山根僚介 やまねりょうすけ

広島県福山市立日吉台小学校 教諭

徹底反復研究会 副代表 兼 中国支部長

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