評価・評定をエクセルで「ダイレクト」「確実」に算出する ~ 評価の現状と課題【教育事務ファイル】

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目次

1 評価評定算出エクセルファイル

評価・評定が通知表・要録まで素点から確実に算出されるエクセルファイルを作ってみました。評価評定を電子化することによってより正確で評価の妥当性の振り返りもしやすいものになっているとおもいます。ぜひお試し下さい。

エクセルファイル詳しい内容の説明は、

評価・評定をエクセルでダイレクトで確実に算出する ~ 算出方法について

をご参照ください。

評価評定算出エクセルファイルは、こちら↓からダウンロードしてください。最初はややとっつきにくいかもしれませんが、慣れてくれば簡単に思えてくると思います。

評価評定算出ファイルと説明ファイル2020.zip

上記ZIPファイルは算出ファイルと説明ファイルからなります。

まずは、評価の現状と課題について述べてみます。

2 現状

絶対評価の導入と評定の復活にともない、国立教育政策研究所は平成16年(2004年)に

「学習評価の工夫改善に関する調査研究」

という通知表や要録を作成する際の指針を出しました。
あくまでここに書かれていることは例示であり、「・・・とも考えられる」などと、断言を避けた文脈になっています。
これを基にして、各自治体でも様々な評価評定の作成方法が提示されました。国立教育政策研究所は文科省からの要請を受けて、様々な評価評定の「例示」をしており、各自治体もまたこれをうけて様々な「例示」を行っています。

観点別評価がAAABなら評定は「3と考えられる」であるなどという判断が示され、それに沿って現場も評価評定を出しています。各自治体の教育委員会も現場も、頭を悩ませながら評価評定の指針を作ってきていると思いますが、基になる国立教育政策研究所の提示したものに矛盾が多く、現状の評価は混乱していると思います。例えば、現状では以降に述べるような課題をクリアできていない場合が多いです。

3 現状の課題

課題1「カッティングポイント」

評価評定というのは難しいもので、多くの矛盾をはらんでいます。例えば、観点別評価がAAABなら評定は「3と考えられる」といっても、では、Aはどうやって算出されたのかというと、どこかにカッティングポイントを設けて算出されたのであろうと考えられます。
例えば1学期の各素点(授業点や提出物やテストの点)の達成率の平均を85%以上がA、50%以下がC、その間がBと設定したとします。この設定自体に何かそれ程、根拠があるのかどうかというと、実際のところありません。84%以上がAでは何故いけないのかと言われても、答えに窮することでしょう。これは、道路のスピード違反の下限と同じで、時速60kmならOKで、時速61kmならOUTである「根拠」は「それほどない」といえば、ないですね。
達成率86%以上で「3」なのか、85%以上で「3」なのか、80%で「3」なのかという、学級間・学年間・学校間・自治体間でのカッティングポイントの設け方の違いの問題もあります。そもそも、どんなテストを出して達成率を求めたのかは、担任・学年・学校により様々です。問題の難易度を統一することは難しいですし、主観が入ることは免れがたいです。簡単なテストの達成率85%と難しいテストの80%では、後者の方が勝っている場合もあるかもしれません。同じ書写の作品を見ても、「60点」と判断する教員も、「40点」と判断する教員もいるでしょう。

課題2「丸める事」

評価を評定へと進める場合に、前述したように丸める事はどうでしょう。AAAやAABなら評定は「3」、ABBは「2」・・・などど、「A=3、B=2、C=1」と換算して合計したものを評定にあてはめるようなことが「学習評価の工夫改善に関する調査研究」や教育委員会の説明や学校の説明に書かれています。しかし、ABCにはそれぞれ幅があり、丸めると図2のような逆転現象が起こることがあります。
達成率の平均を85%以上がA、50%以下がC、その間がBと設定したとして、

山本君が85・85・51点をとればAABとなり、評定は3
田中君が 84・84・100点をとればBBAとなり、評定は2

合計では山本君(221点)より田中さん(268点)の方が上です。そらなのに、丸めることによって評定が山本君より低くなってしまう場合が生じます。

課題3「丸めることと」「重み付け」

  • カッティングポイントをA100~85%、B84~50%、C49~0%とした場合。
  • 体育等の教科は「技術」に配点が偏りがちになりがちです。

① 運動能力と保健テストは素晴らしい(知識理解の評価が高い)が、
② 控え目でそれほど積極的にはプレーしない(態度の評価が低い)し、
③ 振り返りカードに書く内容もさえないし表現活動は苦手(思考判断表現の評価が低い)子供の例です。

「ABB」は単純に1:1:1:1で計算すると評定「2」になりますが、本当に「2」にしてしまっていいのでしょうか?悩むところです。
※ 観点ごとの配点は実際問題、偏ってしまう場合も多いです。知識技術のAと思考判断表現や態度のBは同じ重みと言えるのでしょうか?ただ控え目なだけかもしれません。

課題4「重み付け」

例えば下のように、跳び箱を4月にテストしたものと7月にテストしたものを単純にたし算をすれば太郎君が高い評価を受けますが、どう考えても次郎君の方が高い評価を受けるべきですね。そんなときに、重み付けは必要となります。
しかしながら、エクセルでも使わないことには、手計算で各素点に重み付けをすることは難しいです。

課題5「関心意欲態度の重み付け」

「関心意欲態度」は、客観的に評価をすることがたいへん難しく、評価の基準が主観的になりがちです。面白くもない授業をしておいて「関心がない!」「意欲がない!」「態度が悪い!」などと評価をしてしまってはいないでしょうか。日々、子供が十分に意欲を持って取り組むことができるような授業ができているでしょうか。正直なところ、私には自信がありません。「関心意欲態度」は少なくとも子供と教師に50:50の責任があると思います。教師が「関心意欲態度」を評価するなんて、おこがましいように思えます。そんな評価項目をABCでランクづけするのはたいへん難しいです。さらに評定算出時に4観点の1つとして1:1:1:1、つまり1/4の「重み」として「関心意欲態度」を位置付けるのは無理があります。
さらに、新学習指導要領では、「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」の3つの観点となり、「主体的に学習に取り組む態度」として1/3の「重み」として取り扱われます。あまりにも影響が大きすぎるのではないでしょうか。

4 このファイルの仕組み

① 当エクセルファイルでは、各素点に重み付けをしたものを各観点別評価の合計値として算出します。各素点ごとにカッティングポイントを設けてABCを決定します。
② 評定は各観点別評価の「A・B・C」と丸めたものを「3・2・1」と点数化して求めるのではなく、1学期の評定であれば、1学期の素点全てを合算してカッティングポイントを設けて決定します。
③ 要録に関しても同様で、観点別評価は1・2・3学期の各素点に重み付けをしたものの合計にカッティングポイントを設けて算出します。また、評定は年間の素点全てを合算してカッティングポイントを設けて決定します。

エクセルを使って通知表(あゆみ)から要録までが、素点を打ち込んで重み付けをするだけでストレートに出てきます。紙ベースで電卓を使って計算をするような方法に比べれば遥かに速くて正確です。
また、「A・B・C」「3・2・1」人数の分布もすぐに把握でき、カッティングポイントや重み付けの値を少し変えてみると人数の分布が変わる様子も確かめることができます。自分の設定したカッティングポイントの値が妥当なものであったのかどうかを振り返るのにも役立つと思います。(だからと言って「課題1」が解消されるわけではないです。「課題1」はなかなか解消されないでしょう)

慣れるまでに少々時間がかかるかもしれませんが、便利で優れた方法だと思います。国立教育政策研究所が提示した方法は、エクセルやパソコン端末が普及していなかった時代であり、まだ十分に使える人材がいなかった時代の方法です。今やほとんどの自治体が教員一人に一台のパソコンを準備し、エクセルを触ることのできる教員も増えてきました。是非、このエクセルファイルを使って評価評定を速く正確に出せるように計ってみてください。

※1:「素点」とは、学習指導要領に示す各教科の目標に照らして導き出された「数値」や「ABCDE等の記号」で表された評価をさします。小テスト・まとめのテスト・レポート・授業中の態度等あらゆる評価対象より算出されます。(記号ABCDEも最終的にはA=50・B=40・C=30・D=20・E=10等と、数値化します。)
※2:達成率の何%~何%を観点別評価の「A・B・C」、何%~何%を評定の「1・2・3」とするかの分割点を「カッティングポイント」とします。
※3:各自の得点の合計÷各素点の満点の合計×100=「達成率(%)」とします。

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