失敗をプラスに! 全国の先生に「失敗談」を発信中!~大阪市立豊仁小学校・松下隼司先生~

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目次

はじめに

 本記事は、2023年11月15日に行った大阪市立豊仁小学校・松下隼司先生へのインタビューを編集・記事化したものです。松下先生が音声プラットフォーム・Voicyにて運営されているチャンネル『しくじり先生の「今日の失敗」』について、そして教師と「失敗」の関係性についてお話を伺いました。

失敗を共有する

苦手だからこそ声で伝えたい

松下先生は、音声プラットフォーム・Voicyにて『しくじり先生の「今日の失敗」』というチャンネルを運営されておりますが、具体的にどのような内容の投稿をされているのでしょうか?

 私は、Voicyで、授業運営や学級マネジメント、子どもや保護者との関係、同僚とのコミュニケーション、アンガーマネジメントなどについて、失敗した経験を共有し、同じ失敗を繰り返さないようにするためのポイントを投稿しています。ただ失敗を述べるのではなく、その教訓から聞き手が学べるようにしています。

さまざまなメディアが乱立しているなかで、Voicyで投稿を始められたきっかけを教えてください。

 Voicyを選んだことに明確な理由はありません。10月の3連休にVoicyを見つけ、「こんなのあるんだ」と思い、始めました。

松下先生の失敗

自分のことしか考えていなかった

 個人懇談の予定を立てるために、日程希望調査のアンケートを実施したときの失敗談です。私は若手の頃から、アンケートや調査結果の集計、イベントの準備などの仕事はスローペースです。しかし、個人懇談などのスケジュール調整はとても早く行います。

なぜなら、各学級で個人懇談のスケジュールを組む際、早い者勝ちのような雰囲気があるからです。この学校には6つの学年があり、各学年にクラスが2つあるので、合計12クラスです。早くスケジュールを組むと、自分のクラスの子どもの兄弟がいるクラスの担任の先生に「うちのクラスの子はこの時間で日程を組みました」と伝え、それを考慮してスケジュールを組んでもらうことができます。ただ、そのことを依頼された先生からすると「実は組み始めてたんですけど」と思いつつも、でも、「無理です」とは言えないですよね。「兄弟関係があるから同じ日にしないと」などと考えながら、日程を再度調整する必要があります。

早く個人懇談のスケジュールを調整した結果、「もう組んだの?早いね」と褒められたことがあり、それに私は喜んでいました。ただ、普段の仕事がとてもきっちりしていてかつ早いA先生がなぜかこの点だけ遅かったんです。A先生は、保護者に個人懇談の日程を伝えるプリントを配る前日の放課後に組み始めることがありました。「普段は仕事が早いのに、なんでこれだけ遅いのかな?」と疑問に感じ、理由を尋ねたんです。「普段はとても仕事が早いのに、なぜこれだけは遅いんですか?」と聞いたら、思いがけない答えが返ってきたんです。

どのような答えですか?

 「最後で構わないので待っていました」とA先生はおっしゃっていました。それを聞いたとき「これまで自分は自分のことしか考えていなかった」と私は感じましたね。

仕事術~相手を思いやる心~

 最近は働き方改革で、定時に帰ることや仕事を早く終えることはよいと言われがちです。しかし、実際の「仕事術」とは、相手を意識して行動することであり、子どもや保護者、同僚を思いやることが大切なのだと気付かされました。現在、私のクラスの子どもは20人程度なので、個人懇談のスケジュール調整は意図的に遅くしています。逆に、30人を超えるクラスを持ったときは、「他の先生が待っているかもしれない」と考え、早めに組むようにしています。

自分が担任をするクラスの子どもの人数によって、早く組んだりギリギリまで待ったりするのです。「人数が多いところから組んでいきましょう」という方針がある学校もありますが、その方針は先生にとって少しプレッシャーになることがあります。「うちが早く組まないと次の人に迷惑がかかる」という思いが生まれるんですね。個人的には、そこまで求めるのはどうかと感じます。むしろ、そのような方針なしに、大人らしく気遣いや思いやりを持つことができれば良いなと思いますね。私は恥をかいてこのことに気づきましたが、スルーされてしまうことも多いです。

気遣いや思いやりが話題に取り上げられることはあまりないのでしょうか?

 そうなんですよね。特に、最近は若手に対して、「ああしろ」「こうしろ」と指図するのが難しくなっています。「見て気づく、聞いて知る」ということばかりになっているのです。でも「もっと早く知りたかった」「いろいろなことを知りたい」と思うこともあるので、失敗をVoicyで話して、誰かの役に立てたら嬉しいなと思っています。

表面には出ないところでかつ誰も気付かないけれど実はすごい情報がたくさんあるのでしょうか?

 情報をどれだけ知っているかはとても大事です。このようなことは大学で学んだり、教員研修で教わったりすることは少なく、書籍にもあまり載っていません。だからVoicyっていいなって思うんです。文章だとその人のキャラクターが伝わりにくい場合がありますが、Voicyは音声がメインなので、自分の愚かな部分を知ってもらいやすいと思います。

教師の失敗

失敗は当たり前!

松下先生は「教師の失敗」をどのように捉えていますか?

 教師の失敗が多いことは当然のことだと思います。他の職種には研修期間や見習い期間がありますが、教師にはそれがなく、いきなり担任としての責任が与えられますからね。例えば、黒板の書き方や席替えのタイミング、また教材分析の方法など、そういった技術や知識が必要ですよね。指導書に従っただけでは授業がうまくいかないこともあります。だから失敗しても仕方ないんです。

他責思考と教師の失敗

 教師の失敗の中でも最悪なのは、他人のせいにすることだと思います。例えば、自分の授業がうまくいかないのに、子どもたちのせいにすることです。

授業中に居眠りする、私語をする、ノートを取らない、学校を休みがちになるなどの問題が生じると、子どもたちや親を非難することがあります。「親がああだから」「夜寝かせないから」と言っても意味がありません。確かにそれは問題ですが、面白い授業であれば、子どもたちは興味を示します。授業が面白く居心地の良いクラスであれば、子どもたちは休まず来るでしょう。自分の授業がうまくいかないときに親や前の担任を非難し、「指導が不十分だから言うことを聞かない」と考えることは全くもって意味がないです。

教師に限らず、いかに自分の失敗を認められるかが大切であるということでしょうか?

 そうです。「ごめんなさい」って。ただ、何でもかんでも自分のせいにする必要はありません。自分のせいだと思わなくて良い場合もあります。しんどくなると、子どもたちの前で冷静さを保てなくなるし、管理職からの指導に対しても余計に不安になってしまうこともありますね。真面目な方は失敗は当たり前、真面目じゃない方は自分のせいと思ってください。自分のせいだと思わないことが教師の最大の失敗です。

失敗への向き合い方

教師に限らず人間誰しも「失敗」を恐れる生きものだと思います。松下先生は「失敗」に対してどのような姿勢で向き合っていますか?

 失敗は必ずメモします。同じことを繰り返さないようにするためです。私は失敗を「しゃあない」とか「気にしない」とは考えません。なぜなら、「しゃあない」「気にしない」で済ませてしまったら、子どもたちや他の先生に迷惑をかけ続けてしまうことになるからです。必ずメモを取ることで次に同じ失敗を繰り返すのを防げますし、改善策を考えることができます。その結果、どんどん良くなっていくんです。

授業で使う教科書に直接メモするのはおすすめですね。教科書のコピーをとるよりも安価で、指導書などと同じように活用できます。教科書に書き込むことで、子どもたちと同じものを使えます。授業計画などを書き込み、うまくいかなかった点を記録して、それを基に改善しています。このように、失敗は都度、教科書やスマートフォンにメモしています。

子どもへの対応における失敗でも、メモしています。たとえば、「こんなふうに怒ってしまったけど、実は勘違いだった」「何を喋っているのかと思ったら、実際は喋っていなかった」というようなことを書き留めています。

失敗を意識しすぎる必要はない

最後に学校現場で何度も失敗を繰り返したり失敗しないことを意識しすぎたりしている全国の先生方にひとことお願いいたします。

 失敗しすぎるのは、「失敗してはいけない」という過度な意識が関係していると感じます。私もその一例ですね。失敗を繰り返さないように注意することは大切ですが、失敗を気にしすぎないことも重要だと思います。

すごい先生方も、たくさんの失敗を経験しています。そして、失敗を共有することは、学びを得る機会になります。失敗を経験し苦しんでいる方々にとって、その経験から安心感や勇気をもらえることもあると思います。だからこそ、失敗から学ぶことや、元気づけられること、励まされることができるよう、失敗を共有していくことが大切だと思っています。

プロフィール

大阪市立豊仁小学校・松下隼司先生

大阪の公立小学校教諭(教員21年目・2児の父)。関西の小劇場を中心に演劇活動を10年間行っている。第4回全日本ダンス教育指導者指導技術コンクールで文部科学大臣賞を受賞。日本最古の神社、大神神社短歌祭で額田王賞を受賞。プレゼンアワード2020で優秀賞を受賞。第69回読売教育賞で優秀賞を受賞。第20回読み聞かせコンクール朗読部門で県議会議長賞を受賞、自由部門で教育委員会教育長賞を受賞。著書には、絵本『ぼく、わたしのトリセツ』『せんせいって』や教育書『むずかしい学級の空気をかえる 楽級経営』『教師のしくじり大全 これまでの失敗と改善策』がある。
※2024年1月30日時点でのものです。

Voicyで「失敗談」を発信中!

松下先生が運営されているチャンネルURLはこちら:しくじり先生の「今日の失敗」

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編集後記

 失敗はどんなにすごい先生でもたくさん経験され、それを糧に先生方は毎日教壇に立たれていると考えると、子どもたちへの果てしない熱意が心にあるのだと感じました。松下先生のVoicyでの投稿が、全国の先生方の支えとなることを願っています。

(編集・文責 EDUPEDIA編集部 吉田悠真)

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この記事を書いた人

"取材"という活動に興味を持っています!
日本全国を巡るのが趣味です。

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