小学校通知表の所見欄【子ども一人ひとりの個性を大切にした書き方を】

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通知表は教育活動での子どもたちの様子を保護者に届けるものです。
その中でも通知表の所見欄は特に子どもたちの様子や成長を具体的に伝えられる部分です。

筆者自身が教員の時、保護者から言われてうれしかった言葉の一つに、「子どものことをよく見て、先生でしか書けない子どもの様子を所見に書いていただいた」という言葉があります。

子どもの成長を生み出し、そのドラマをわかりやすく、具体的に保護者に伝えたいと思って所見を書いていましたので、とてもうれしく、自信にもなりました。

通知表の所見は学期末の忙しい時期に書くことが多く、働き方改革の視点から廃止する学校が増えています。
子どもの様子を保護者に伝える機会が少なくなっており、学校と家庭の関係が希薄化する可能性があります。
だからこそ、所見の価値は今まで以上に高くなり、子どもの個性を大切にした所見の書き方が重要になってきます。

目次

そもそも通知表の所見は何のため?

通知表の目的は何でしょうか?
以下の目的が考えられます。

  • 子どもの学習状況や成長の評価を伝える
  • 学校と家庭の連携を促進する
  • 子どもの振り返りと意欲向上を促す
  • 保護者の教育的配慮を支援する
  • 子どものよさや進歩を伝える
  • 評点(評価)では表現できない領域を記述する

所見の目的は様々な視点がありますが、要は「子どもの学校での頑張りやよさ、成長を保護者に伝えるため」です。
子どもも所見を読みますが、保護者が相手(読者)であることを押さえておきましょう。

こんな所見の書き方はNG

どんな子にも当てはまる文

誰にでも当てはまる文は注意が必要です。

  • 大きな声で音読をしました
  • 効率よく掛け算の計算ができました
  • みんなに声を掛けていました

これらの文は、自分が担任ではなくても書けてしまう文です。
保護者からも「自分の子どものことを本当に見ているのかな?」「子どもの様子がよくわからない」と疑問をもたれてしまう文です。

普遍的・一般的な事柄ではなく特殊性・個性を意識して子どもの様子を書けるように日々の教育活動で準備していきましょう。

子どもや保護者に響かない所見

子どもの心に響かない所見には以下のようなものがあります。

  • 一般的な評価
    「勉強に対して平均的な姿勢を見せています」
  • 他の子と比較
    「クラスメイトと比べて、特に目立った成果は見られません」
  • 否定的な文言
    「もう少し努力が必要です」
  • 感情に訴えない言葉
    「出席日数が多く、健康です」

子どもや保護者が納得できる内容を所見に書きたいですね。
子どもが自覚ある内容を所見に書くと、子どもにも保護者にも響く所見になります。

例えば、ある子どもが課題を克服した場面は、子どもの心に強く残りやすい場面です。
この場面に注目した所見を書くと、「先生は自分が頑張ったことを見てくれている」と感じ、意欲が高まります。
また、保護者も「先生は自分の子どもの課題を把握し、成長につなげている」ということが伝わります。

子どもの心にも、保護者の心にも響く内容を所見を書けるように、子どもの成長の細部をくみ取っていきましょう。

学期ごとに書いていることが同じ

「Aくんは前の学期でも同じようなことを書いていた……」
これは所見あるあるではないでしょうか?

運動神経がよい子どもは体育のどの単元でも能力を発揮するため、所見に書く内容がたくさんあります。
しかし、1学期、2学期、3学期、全ての学期で体育に関する所見になってしまう可能性も生まれます。
それはそれで子どもの個性なのですが、保護者からすると「我が子は体育以外に頑張りがないのか?」「また体育のことか……」と思うでしょう。

「1学期は国語、算数のみ」などと学期ごとに所見に書く教科や単元を決めるとこの課題は概ねクリアできます。

ややもすると教員は子どもに対してバイアスがかかりがちです。
バイアスとは、人間の認知や判断、意思決定に影響を与える思考の偏りや傾向のことを指します。

「Bさんはおとなしめの子」
「Cさんはやる気を感じられない子」
このようなバイアスがかかった状態ですと、子どもの指導も所見の作成も苦労します。

教員は子どもの様子を幅広い視野で観察することが重要です。

子ども一人ひとりの個性を大切にした所見を書く工夫

①基本は事実+価値の文で

子ども一人ひとりの個性を大切にした所見を作成するためには、まず教育活動の中で子どもの頑張りや成長といった事実をたくさん見つけていくことが重要です。

そして、その事実(子どもの頑張りや成長)にどのような価値があったかを言葉にしてみましょう。

例えば、「みんなに声をかけた(事実)」+「友達を勇気づけた(価値)」というように、事実を価値づけし、次のような文にしていきます。

「〇〇の授業では、友達の失敗に対して声をかけ、友達を勇気づけていました」

②子どものキラリと光る言動はすぐにメモする

所見の材料となる事実を日々の授業や生活で効率よく、継続的に集めていくために、児童のキラリと光る言動をすぐメモできるようにしておきましょう。

座席表を用意し、単元ごとに児童の様子をメモすると単元の評価もしやすくなり、継続的に所見の材料を集められます。また、日誌や所見専用のメモ帳を用意し、すぐに書けるようにするのもよいです。
体育や図工の授業では子どもの活動から目を離さないようにするために、ボイスレコーダーで記録を取る教員もいます。
子どもが学校にいる間が難しいようでしたら、放課後に一日を振り返る時間を5分でも作り、所見の材料を蓄積していきましょう。

この材料(事実)集めは所見作成において一番大切な作業です。材料がなくては何も書けません。

③所見を書くための指導ではなく、指導した結果の所見

所見を書くために児童の様子を血眼になって探したり、思い出しながら所見を書いたりする教員は多いです。

そうではなく、指導の結果を所見に書いていく意識が大切です。
つまり、先生方の指導の結果、子どもがどのように変容したかという視点で所見の材料を集めていきます。

「所見に何も書くことがない」という声をときどき耳にすることがあります。
そんなことはありません。
先生方は日々、子どもたちに何かしらの指導をしているはずです。
子どもが変わっていく過程・結果を見ているはずです。
もし子どもたちに指導をしていなかったり、子どもが変わる様子を見取っていなかったりしたら、厳しいようですが教員の仕事を放棄していると言わざるを得ません。

学習指導と生徒指導の両面を中心に、子どもの変容を所見に書く意識を高めていきましょう。

④単元の評価点を明確にしておく 

単元の評価点を明確にしておくと、所見に書く内容も明確になります。

国語の意見文を書く学習を例にします。
意見文を書く学習にはいくつかの評価点があります。

  • 自分の意見をはっきりとわかりやすく伝えている
  • 文章構成(話題提示、書き手の意見、、理由や根拠、反対意見への反論、まとめ)ができている
  • 自分の経験を入れている
  • 見聞きしたことを紹介している
  • 具体的なデータを使用している
  • 有名人の言葉を引用している
  • 言いたいことを一つに絞っている
  • 一文を短くして書いている
  • 具体例を適切に入れている

これらの評価点で「何ができたらA評価か」を明確にして授業を実践していきます。
(もちろん子どもたちにも評価点を示しながら授業をします)

評価点をクリアしている子どもには以下のような所見が書けます。
「自分の経験を具体例に取り入れ、説得力のある意見文を書きました」
「一文を短くして、わかりやすい文章を書きました」

単元の評価点を明確にすると、指導と評価の一致だけでなく、評価・評定と所見が一致する利点もあります。

⑤文例を適切に使う

所見の文例はWEBや書籍にたくさん掲載されています。
教員経験が浅い先生は、所見の注意点や書き方を学ぶために文例集などを活用してもよいと思います。

しかし、所見は目の前の子どもの様子、事実を書くものであることは先述しました。
文例をそのまま使うと、そこには実際の子どもの様子、成長過程はありません。

文例はあくまでも表現方法を学ぶためにとどめておきましょう。
文例から文の出だしや言い回しなどを学び、保護者にわかりやすく伝えられる書き方を学んでいきます。
可能であれば他の教員が書いた所見を見せてもらいながら、書き方を学ぶのもよいです。

最後に

子どもの個性を大切にした所見の作成は計画性が重要です。
日々の教育活動から子どもの様子を計画的・意図的に見取り、文例を活用しながらわかりやすい文章を考えていきます。

そして、最後に推敲・見直しをする時間を確保しましょう。
誤字脱字のチェックはもちろんですが、子どもがキラキラと輝いている様子が保護者に伝わるかの視点で書いた文章を見直してみましょう。

執筆者プロフィール

マー

小学校教員を15年務めた後、フリーのWEBライターに転身。教員時代は安全主任、体育主任、生徒指導主任、学年主任を担当。現在は「物事のよさをより多くの人に」をモットーに教育系記事、金融系記事を主に執筆。趣味は野球観戦とランニングで、野球やマラソン・駅伝を応援するブログを運営している。

 

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この記事を書いた人

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