読解指導はイメージ化を中心に(岡篤先生) 後半

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目次

1 はじめに

本記事は、岡篤先生のメルマガ「教師の基礎技術 767号~770号」から引用・加筆させていただいたものです。
イメージ化というものを中心にして考えた読解指導を紹介します。
前半はこちらをご覧ください。
岡篤先生のメルマガはこちらを参照ください。

前半はこちら↓
読解指導はイメージ化を中心に(岡篤先生) 前半

2 実践内容

前編に引き続き、イメージ化による読解指導についてです。
文章の中で子どもがイメージ化できないところはどこでしょうか。

■描写

1つに、描写があります。「描写」ということをどう考えるかは難しいところです。ただ、細かい定義はここでは触れないことにします。例えば、「ごんぎつね」の中に次のような文があります。

空はからっと晴れていて、もずの声がキンキンひびいていました。

ここで、文字通りイメージ化すれば空がすっきりと晴れ渡っている様子ともずの声が聞こえてくる音を想像することになります。
ただし、ここではそれに加えてごんの心情も表現されていると考えるべきです。

■描写

「ごんぎつね」の

空はからっと晴れていて、もずの声がキンキンひびいていました。

ここにごんの心情が表現されているかどうか。「そんなこと書いてないじゃないか」と言われれば、その通りです。ただし、描写による心情表現という知識を持てば、納得できるはずです。そして、描写を意識して読む方がより豊かにイメージ化できます。

■描写を知らなければ

もし、描写ということを知らなければ前述の部分は、たんに空ともずの鳴き声
の説明で終わりです。それでは、同じ文章を読んでも楽しさが違ってきます。
読書が楽しい子どもは、そういうことを自然に身につけているのかもしれません。

漫画は読むが、字の多い本は苦手、という子は、描写のような部分をイメージ豊かに読むことが出来ていないのかもしれません。教材分析では、以上のような子どもがイメージ化ができないのではないかと思われる部分を探すことになります。

■挿絵はイメージそのもの

子どもが発表したことの理由を尋ねると「絵が~」と挿絵の内容を理由に答える子がいます。「文の中からも、見つかるかな」と問い直すことになります。これは、挿絵がいかに子どもの目を引きつけるかということの例でもあります。

以前は、「国語は文章で考えるものだから挿絵を使って授業をするべきではない」と思い込んでいました。今では、ずいぶん頑なな態度だったと思います。

■挿絵を活用する

挿絵も作品の一部です。もちろん、イラストレーターなりのイメージであり、挿絵によってイメージが規定されてしまう面もあります。

とはいえ、小学生の実態からいえば教科書教材の挿絵を使うことは有効だと考えるようになりました。板書の中に挿絵を入れて、扱っている場面を明確にしたり、登場人物の挿絵に吹き出しをつけてそこに書き込みをさせたり、といった使い方をしています。

また、挿絵を見ての発問をするときもあります。挿絵は、イメージ化にとって有効な道具です。

■読書とイメージ化

読解のメインをイメージ化に置くという方針は決まりました。
描写からのイメージ化、イラストの活用、教材分析もイメージ化を念頭に置くなど実践的な面も少しずつ固まってきました。

読書と読解という視点ではどうなるしょうか。いつもながらの遠回りでしたが、
これが、本連載のメインテーマです。

■読書と読解

読解指導は、最終的には読書の力(質?)が上がることを目標にするべきでは
ないかと考えています。ところが、国語の授業で自分の読解力があがったと思っている人は少ないという実態もあります。

このことは、以前、野口芳宏先生(植草学園大学名誉教授,授業道場ネットワーク野口塾を主催)がよく話題にされていました。また、先日の学力研合同例会で私が参加者に尋ねても同じでした。

国語の読解指導は、読解力向上につながっていないと感じている人が多いわけです。読書力向上にもつながっていないと考える方が自然でしょう。
もし、イメージ化の力を高めることができれば、読書の質は少しは上がるかもしれません。

3 執筆者プロフィール

岡 篤(おか あつし)先生
 1964年生まれ。神戸市立小学校教諭。「学力の基礎をきたえどの子も伸ばす研究会(略称学力研)」会員。硬筆書写と漢字、俳句の実践に力を入れている。

4 書籍のご紹介

『読み書き計算を豊かな学力へ』2000年

『書きの力を確実につける』2002年

『これならできる!漢字指導法』2002年

『字源・さかのぼりくり返しの漢字指導法』2008年

『教室俳句で言語活動を活性化する』2010年

5 編集後記 

「イメージ化」を中心にした読解指導を紹介する後半の記事でした。読解力の向上は非常に難しいかもしれませんが、「イメージ化」を意識しながら指導することで、学力の向上を目指せると思いました。
(文責・編集 EDUPEDIA編集部 宮嶋隼司)

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