1 はじめに
人間の活動によって地球の環境が脅かされている今、環境教育は一層重要性を帯びてきています。では、そうした環境教育の目指すところは一体どこにあるのでしょうか。また、普段の学校生活の中で子どもたちが環境についての意識を高めるために、先生方は何に気を配ればよいのでしょうか。
本記事は、京エコロジーセンター(京都市伏見区)の澤田雄喜さんにインタビューを行い、その内容を記事化したものです。学校で環境教育を行う際の心構えやちょっとしたしかけのほか、実際に学校で使用することのできる環境副読本についてもご紹介します。
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2 環境教育の重要性とゴール
環境教育のゴールとは「環境教育という言葉がなくなること」
目に見えてわかるように、このままの生活を続けていけばおそらく私たちは確実に生きていけなくなります。エコロジカルフットプリント(地球環境容量)を計算すると、今、日本人だけで1年間に地球2.9個分の資源を使って生活していることになります。こうした生活を続けていけば、次第に地球の環境は廃れていくでしょう。そして地球の環境が滅んでしまったら私たちは生きていけません。したがって、持続可能な環境をつくることは、私たちがこれからも生きていくために必ず必要になってきます。ですから環境教育が重要なのだと思います。
昔は環境にやさしいことを当たり前にしていたと思います。それは、昔の人間が自然とつながって生活していたからです。しかし今、便利さを求めるゆえに人間は自然から離れていき、人間が環境から孤立していくという状況があります。それが環境問題を引き起こしている原因の一つであると思います。今は「自分たちがよりよい生活を送るには」「自分たちが楽をするためには」という部分にばかり注目してしまっているので、少し視野を広げて、身の回りの自然を守ることに意識が向くようにしたいです。
環境教育のゴールは、「環境教育という言葉がなくなること」です。「環境を意識して生活するのは当たり前」という意識を一人ひとりが持てるようになれば、環境問題は減っていくと思います。そうした人を増やす種まきになるのが環境教育です。
3 普段の学校生活の中で先生が心がけられること
強制するのではなく促す努力を
普段の学校生活の中で子どもに環境にやさしい行動をしてほしいときに、先生は「やりなさい」と強制するよりもそれとなく促すような努力をするとよいと思います。たとえば「電気をこまめに消す」ということに気をつけさせたいなら、電気のスイッチの近くにそれを喚起するような貼り紙をしておくなどという工夫ができます。あるいは、学校の係に「環境係」という電気のつけっぱなしなどをチェックする係を置けば、子どもの日常の中に「やらないといけない」という意識ができるのではないでしょうか。
「どうしてもやらないといけない」と強制させるのは難しいです。他人から「勉強しなさい」と言われるのは嫌ですが、自分で「勉強しなきゃ」と思うと勉強するのと同じです。「環境に悪いから電気のつけっぱなしはやめなさい」と押し付けるよりも、「電気のつけっぱなしはお金がかかるよ、もったいないよ」と促すことが大切です。
学校生活の中に隠すことのできるちょっとしたしかけ
子どもに環境を意識させるには、ちょっとしたしかけを普段の学校生活の中に入れていけたらよいと思います。そういったしかけをつくることのできる場面には、例えばこのようなものがあります。
〇しかけ①給食
〇しかけ②落ち葉
〇しかけ③雨水タンク
〇しかけ④窓
4 学校の先生へのメッセージ
周りの使えるものは使って
学校の先生は忙しいと思うので、環境教育を自分たちで進めていくことは難しいかもしれません。そういったときは、私たちのような環境施設などと連携していきながら環境の学習を学校の授業に取り入れていけたらよいと思います。自分たちだけで授業をしようと思うと限界がありますが、周りの使えるものは使っていけば授業の幅は広がると思います。私たちもできる限り協力します。
環境副読本のご紹介
京エコロジーセンターは、「環境副読本」を提供しています。これには、地球温暖化、エネルギー、食べ物などいろいろな観点からみた環境についての資料が掲載されています。子どもはもちろん、先生自身が読んでも楽しめる内容となっています。京都市のものなので京都市の事例が多いですが、電気やエネルギー、地球温暖化などについての資料は全国共通で使用することができます。ぜひご活用ください。
小4、小5、中学生向けの環境副読本と、それを用いた授業案のダウンロードはこちらから→http://www.miyako-eco.jp/
5 京エコロジーセンターのご紹介
京エコロジーセンターは、地球温暖化防止京都会議(COP3)を記念し、2002年に設立されました。環境にやさしい暮らしの提案や、環境学習、環境保全活動の輪を広げる拠点施設として、多くの方に利用されています。
1階、2階の展示コーナーには、地球規模での環境問題から、京都ならではのエコロジーの知恵まで、体験型で学べる展示がたくさんあります。3階には環境図書コーナー、屋上には色々な生き物が集まるビオトープがあります。建物には、太陽光発電、雨水利用、地熱利用、高断熱外壁をはじめ、省エネルギー・省資源型の設備を導入し、さらに、自然素材を生かした材料やリサイクル建材も活用するなど、建物全体がエコな展示となっています。
詳細はこちら→http://www.miyako-eco.jp/
(2018年2月5日時点のものです)
6 編集後記
環境教育を行う際のさまざまなヒントをご紹介しました。子どもたちにさりげなく環境への意識を持たせられるように、ちょっとしたしかけを学校の中にしかけてみてはいかがでしょう。きっと子どもたちは知らず知らずのうちに「環境を守るのは当たり前」と思うようになり、やがて「環境教育」という概念が必要なくなるのではないでしょうか。
(取材・編集:EDUPEDIA編集部 津田)
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