絶えず変化する社会での学びの選択【学校教育だけでは終わらない〜日常に新たな学びを!〜】五月祭教育フォーラム2022パネルディスカッション 後半

1 はじめに

 当記事は、2022年5月15日に東京大学本郷キャンパスで実施、YouTubeでライブ配信されたNPO法人ROJE主催五月祭教育フォーラム2022「学校教育だけでは終わらない~日常に新たな学びを!~」内で行われた、パネルディスカッションの内容を記事化したものです。

 登壇者である日野田直彦先生(武蔵野大学中・高、武蔵野大学附属千代田高 中高学園長 千代田国際中学校 校長)、真坂淳さま(キャリア教育NPO法人 日本学生社会人ネットワーク (JSBN) 代表理事・外資系金融機関グローバルバンキング本部 マネージングディレクター・米国公認会計士)、滝川麻衣子さま(スク―CCO)、赤松湖子(本フォーラムを主催するNPO法人ROJEの学生登壇者)の4名が議論を交わしました。

 議論の途中で鈴木寛先生もお話をなさいました。

 当記事では、異年齢間の交流と学びの多様性について取り上げています。

 ※当フォーラムでは、新型コロナウイルスの感染防止のために適切な対策を講じています。

 ☆五月祭教育フォーラム2022のアーカイブ配信はこちらからご覧ください。

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 日野田直彦先生インタビュー

 真坂淳さまインタビュー

 滝川麻衣子さまインタビュー

2 学校外の学びについてのアンケートから考える

◎赤松:それでは参加者の方々に事前にお答えいただいたアンケートの回答から見ていきたいと思います。まず「学校外での学びはどれくらい重要だと思いますか」という問いに対して約90%の方が非常に重要だと思うと回答し、続いてのアンケートの「あなたは実際に学校外での学びは実践していますか」という問いに対して約85%の方が実践していると回答しました。このアンケートの結果をどのように感じますか。

日野田:学校は中と外で分けられて考えられることが多いです。けれども実際は最低基準でしかなくて学校の定義を考えると「どこまでが学びなのか」という話になるので限定化しない方がよいといつも思います。例えば今再任用の校長先生が全体の25%を超えている状況に対して、私はボランティアとして校長育成研修をオンラインで行っています。お金がなくても面白いからやった方がよいと思っているので、学校にこだわる必要性は全くないかなと思っています。

滝川:こんなに実践されているんだと思う一方で、学びの定義は自由だなと感じます。言語化できていないだけで、吸収できている要素やイキイキワクワクできている要素は多いのではないかと思います。このアンケートに答えてくださった方は学びの定義を柔軟に捉えているなという印象を持ちました。 

◎赤松:それでは次のアンケート結果に移っていきたいと思います。先ほどの「あなたは実際に学校外での学びを実践していますか」という問いに対して実践していると回答していただいた方に挙げていただいた具体的な実践例から私は個人でできること例えばクリティカルシンキングやプログラミングなどの活動が多く、仲間を見つけて実践しているような活動例が非常に少ないと感じたのですがどのようにお考えでしょうか。

真坂:朝の勉強会などを探せば結構あって、意識を持って行っている例もあります。

3 異年齢間の交流について

◎赤松:学校の教育現場の中での異なる世代間の活動は具体的にどのようなものが考えられるでしょうか。

日野田:私は先ほど言ったみたいなアウェイ体験が一番大事だと思っています。今私は多数のベンチャー企業とコラボしています。そこでは私が全部責任を取るから好きにやっていいですよとしています。けれども私がこうするとノウハウを教えるって思う人がいるのですが、それは違います。 大人の方は同意していただけると思いますが、自分が若い時に大人の人ってどう見えましたか。また古いこと言うてるわと思いましたよね。私たち大人ができることはリスクヘッジです。若い子たちの方がイノベーションを起こせます。もうイノベーションを起こせない私たち大人は若い人の踏み台です。異文化・異年齢交流はそれぞれのレイヤーによって役割が違うと思いますが、交流をしないと社会は固定化・分断化するので、交流を行っていってイノベーションを起こすべきだと思います。

◎赤松:お話の中で異年齢交流ということが伺えたのですが、その中で実際に生徒はどのような役割を果たすことができるとお考えですか。

日野田:勘違いでもどんどん繰り返し提案して、却下されてもそれを楽しめることが重要だと思います。 

◎赤松:日野田先生のお話に関連して異年齢交流は学生にとってよい影響をもたらすとお考えですか。

真坂:年齢がテーマになっているのでちょっとお話をさせていただくと、年齢や肩書きが上だというのをひけらかす人で魅力的な人を私は見たことがありません。だから別に年齢は関係ないです。そういう意味ではさっき日野田先生も仰いましたけど、年齢関係なくむしろこの人はすごいな、あるいはこの人みたいになりたいなという人との交流を持つ方がよいです。

◎赤松:今のお話を聞いてどのようにお考えですか。

滝川:私は2社目でBusiness Insider JapanというWebメディアの立ち上げを経験しました。小さなメディアでしたが、色んな新聞社・雑誌社やテレビ局も含めてトラディショナルメディアの編集者がいました。彼らに加えて大きな役割を果たしてくれたのが、若い記者たちとインターンの学生さんたちです。私たちベテラン記者は、取材方法や記事の書き方、写真のレイアウト、キャッチーなタイトルの作り方などのノウハウは持っていますが、学生さんたちの視点に立った新鮮なトピックを見つけてくる感性は持っていない。だから彼らにはどんどん意見を言ってもらって、記事を書いてもらって、ガンガン取材してもらいました。

 確かにベテランの人を採用するよりも、完成までに時間や労力はかかりました。けれどもその人たちには絶対にない若い人たちの価値観や感性などを、既にあるノウハウをその上にインストールすることによって活用できたという実感を持っていますし、それで実際にたくさんのヒット記事が生まれました。Business Insiderは、多様な年代の記者や学生さんたちのトピックの感性をどんどん取り入れていったことで一つのカルチャーを作ったのです。

 私はこれまでの体験から、「ある程度こうすれば大丈夫だ」という知識や経験のある人が、その人とは違う感性を持つ若い人と協働した時に最高の価値が生まれれるのではないかなと思っています。

◎赤松:今の滝川様のお話からも多様な年代の方がいる環境というのが新たな学びに繋がるということが分かりました。実際のJSPNでされてきた活動の中で、多様な年代の交流を通して学びを与えようとされてきた活動はございますか。

真坂:日本って教育の現場だけではなく、全体的に効率のためにも社会から隔離されていることが多いです。社会と隔離されてる学校も多くて、私たち、外部の人間が入ろうとしてもそれを嫌がる先生方って実は沢山いらっしゃいます。 ただやっぱり壁を乗り越えるということに価値があると思っているので、先生でも親でもない第3の大人との出会いが大事です。この人すごいなと感じて鳥肌が立つような経験をなるべく若いうちにしてほしい。その人みたいになりたいな、この人みたいになるためにはどうしたらいいのかなというところから始まると思います。だからこういう風になりたいというロールモデルに早い時期に出会ってほしいなと思います。

◎赤松:お話から異年齢交流を通じてロールモデルを見つけることが非常に重要だと伺うことができました。日野田先生も生徒がこのロールモデルの考え方を身につけるのは重要だとお考えですか?

日野田:私が若いころに大人の偉い立場の人にお会いして話している時、最初は何を言っているのか分かりませんでした。でもそういう話を若い時に聞くと、世界が今どうやって動いてるかが少し見えたりします。そうすると今何をしなきゃいけないかという勉強の動機付けになります。だからそういう大人で、本当に悪意なく応援してくれる変な大人は結構いますので、そういう人たちのところに行った方がよいです。逆に世の中の悪口ばかり言っている人たちとは友達にならない方がよいかなと思うので、どんどんロールモデルになるような変な大人に絡みに行くのがよいです。そういう人たちは沢山いるので日本だけじゃなくて海外にもどんどん出ていった方がよいかなと思います。

◎赤松:先ほどのお話にもあったような異年齢交流は生徒にとってもよい影響をもたらすとお考えですか。

日野田:今勤めている学校は元々偏差値も高くなくよい状況ではなかったのですが、生徒たちをハーバード大学のプレゼン大会に連れて行って、有名な社長に審査してもらって褒められたら生徒たちはテンションが上がります。そしたら元の実力を超えてTOEFL100点以上取れるようになりました。要は無理だと思っているのは大人だけであって本人は意外とそう思っていないのです。偉大な勘違いが世界を変えるので、よい意味で生徒に勘違いを沢山させるような大人に会うのが大事かなと思います。

4 具体的に学びの多様性を広げるには?

◎赤松:具体的に学びの多様性を広げるために私たちに何ができるのか、一言ずつ伺っていきたいと思います。新たな学びを実践する上で何が必要だとお考えですか。

日野田私は旅が一番大事だと思っています。常にアウェイで動き続けることと、異文化の人たちと関わって差異に驚くことが重要だと思います。

◎赤松:先ほども話に出た異年齢交流を私たちはどのように実践していけばよいとお考えですか。

真坂:Dropboxの共同創始者のドリューヒューストンが自分の卒業した学校で人生をエンジョイするための三つのコツの話をされています。この三つはテニスボール、コミュニティ、3万と仰っています。テニスボールを投げると犬が息を切らしながら追いかけるのを想像してください。あなたがワクワクするもの、あなたにとってのテニスボールを仕事にすることができたら人生をエンジョイできるかもということです。 次に人間は周りの人の影響を受けやすいということです。だからあなたがこうなりたい、あの人素敵だなと思える人のいるコミュニティに属してください。それが大学かもしれないし、会社かもしれないし、家庭かもしれない。要は付き合う人を選んだ方がよいということです。これがコミュニティです。そして人生を元気に生きられるのが80年だとすると、365日×80年が約3万です。あなたの人生は3万日しかありません。限られた人生をどのように生きるかをデザインした方がいいよね、それを意識して生きてくださいということです。 

 それからスイッチが入る人がいるじゃないですか。スイッチはやはり刺激を受けないと見つからないと思います。私はスイッチが見つかった人が目の前で変化する姿をたくさん見てきました。だから、そういうよい刺激を受けられる場にいかにアクセスするかという意味では、自分の限界やコミュニティを決めつけないで色んな世代・世界の人たちとの接点を持つ場を作るということが大事なのかなと思います。

滝川:私が編集者として大変影響を受けた人に教えていただいたのですが、「人に会え、本を読め、旅をしろ」という言葉があります。特に世代の異なる人に会って、話したり、ご飯を食べに行ったりしてみると、良い刺激をもらえることがたくさんあります。1人で悶々としていたり、スマホを見たりしていても何も始まりません。コロナ禍でオンラインに慣れるとオフラインで人に会いに行くのは少し億劫ですが、あえて直接会ってみることも大事です。けれどもいきなり年代が違う人と交流せよと言われても、アルバイトなどの場でない限り難しいと思います。それならば、出会うのは何も同じ時代に生きている人でなくても良くて、そうした人々に出会う手段が本を読むということだと思います。本を読むことによって時間を超えて著者の声に触れることができます。3つ目の旅について、私は自分が知らない土地の市場に行くのが好きなんです。そこで生活している人を見たり、ちょっと何か買ってみたり、買い物をしに来ている人とおしゃべりしてみたりしてその土地の生活を肌身に感じるだけでも、何か気づいたり、学べることがあると思います。

◎赤松:お三方からは異年齢交流を通じて新たな学びが得られるということを改めて伺うことができました。それではこれでパネルディスカッションを終了したいと思います。改めて皆様ありがとうございました。引き続き閉幕前のメッセージを頂きたいと思います。鈴木先生にこのフォーラムに参加して下さっている参加者に向けて明日に繋がるファーストアクションとして何が実践できるかを最後に伺いたいと思います。

鈴木:異年齢交流も大事ですが私はむしろ空間的多様性が欠けていると思います。これは実は今いるコミュニティにはいませんが、同世代のロールモデルを探した方がよいです。例えば東京大学には沢山留学生がいます。けれどもその留学生のコミュニティに日本人の東大生がどれだけ入っていますか。第2食堂にはハラル食があるから、第2食堂に行けばハラル食を主食としている人たちに会えるのにもかかわらず第2食堂に行きません。ファーストアクションは第2食堂に行ってハラル食を食べて横に座った人と話すこと。これがファーストアクション。別に早稲田大学の学生だって東京大学の第2食堂に来てもいいです。やはり横軸での異文化コミュニケーションが足りない感じがします。 

 私は未来がどうなるのか、とりわけ未来を作るってことに関心があります。そんな中で未来を作るのは私より長く生きる若者です。悪知恵がある大人はいくらでも悪知恵を貸しますということです。東京だって百何十カ国の人と会える、スーパーコスモポリタン都市です。そこを活かした方がよいなと思います。

◎赤松:改めて鈴木先生からファーストアクションとして私たちが何ができるかということを伺いました。これで閉幕前のメッセージとさせていただきたいと思います。

5 登壇者のプロフィール

日野田直彦先生

武蔵野大学中・高、武蔵野大学附属千代田高 中高学園長

千代田国際中学校 校長

帰国子女。帰国後、同志社国際中学校・高等学校に入学。同志社大学卒業後、学習塾「馬渕教室」(株式会社ウィルウェイ)に入社。2008年奈良学園登美ヶ丘中学・高校の立ち上げに携わる。2014年、大阪府の大阪府立学校校長公募に応募し、民間人校長として大阪府立箕面高等学校に着任。全国の公立学校で現役最年少(36歳)の校長として改革を推進する。着任3年目には、海外トップ大学への進学者を含め、顕著な結果を出す。2018年より武蔵野大学中学/高校の校長に着任。2020年より武蔵野大学附属千代田高校の校長を兼務。2021年より両校の統括校長(中高学園長)に着任。2022年には千代田国際中学校を新設し、校長に着任予定。学校再生のプロフェッショナル。著書『 なぜ「偏差値50の公立高校」が世界のトップ大学から注目されるようになったのか! ?』。

※プロフィールは2022年5月現在のものです。

真坂淳さま

キャリア教育NPO法人 日本学生社会人ネットワーク (JSBN) 代表理事・外資系金融機関グローバルバンキング本部 マネージングディレクター・米国公認会計士。中央大学法学部卒、1990年に住友銀行(現 三井住友銀行)へ入行する。入社5年目でシンガポール支店へ赴任、さらに2年後にニューヨークへ渡り、通算11年間の海外勤務を経験する。会計や税務の本格的知識の必要性を痛感したことから、カルフォルニア州立大学通信教育課程で会計単位を取得、国際金融の最前線で働きながら3年間勉強し、2007年に米国公認会計士を取得。その後日本へ帰国。現在は外資系金融機関・グローバルバンキング本部・マネージングディレクターとして、日本を代表する企業のグローバルビジネスを様々な角度からサポートする。2012年7月、日本の若者を応援するため、キャリア教育NPO法人 日本学生社会人ネットワーク (JSBN)を創設。JSBNの先進的なキャリア教育プログラムは全国の学校で授業・公式行事として採用され、好評を博している。トビタテ!留学JAPANの立ち上げに参画、文科省、経産省、マイナビ、学研、ベネッセ、全国の学校、教育委員会等で講演多数。現在、JSBNの活動と外資金融の二足のわらじを履いて活動している。

※プロフィールは2022年5月現在のものです。

滝川麻衣子さま

     

大学卒業後、産経新聞社入社。広島支局、大阪本社を経て2006年から東京本社経済部記者。ファッション、流行、金融、製造業、省庁、働き方の変革など経済ニュースを幅広く取材。2017年4月からBusiness Insider Japanの立ち上げに参画。記者・編集者、副編集長を務め、働き方や生き方をテーマに取材。さまざまな企業の取り組みや課題を取材する中で「社会人の学び」の重要性を確信し、2021年12月、スクーに入社。コンテンツ部門責任者として、これからの社会で必要とされるコンテンツ制作に従事。

※プロフィールは2022年5月現在のものです。

鈴木寛先生

(学生登壇者サポーター)

東京大学法学部卒業。通商産業省、慶應義塾大学助教授を経て参議院議員(12年間)。文部科学副大臣(二期)、文部科学大臣補佐官(四期)などを歴任。教育、医療、スポーツ、文化、科学技術イノベーションに関する政策づくりや各種プロデュースを中心に活動。現在、そのほかに大阪大学招聘教授(医学部)、千葉大学医学部客員教授、電通大学客員教授、福井大学客員教授、和歌山大学客員教授、神奈川県参与、神奈川県立保健福祉大学理事、OECD教育スキル局教育2030プロジェクト役員、World Economic Forum Global Future Council member, Asia Society Global Education Center Advisor, Teach for All Global board member, 日本サッカー協会理事、ユニバーサル未来推進協議会会長なども務める。

※プロフィールは2022年5月現在のものです。

赤松湖子

早稲田大学社会科学部2年/五月祭教育フォーラム学生登壇者

※プロフィールは2022年5月現在のものです。

6 編集後記

異年齢間の交流の大切さや学びの多様性について知ることができました。ここで語られた内容を知識として得るだけでなく、実践できるようになっていきたいと感じました。


(編集・文責:EDUPEDIA編集部 上楽乃愛)

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