【滝川麻衣子さんインタビュー】生涯を通じて学ぶ人を支援する女性CCO【学校教育だけでは終わらない〜日常に新たな学びを!〜】五月祭教育フォーラム2022

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目次

1 はじめに

当記事は、2022年5月15日に東京大学本郷キャンパスで実施、YouTubeでライブ配信されたNPO法人ROJE主催五月祭教育フォーラム2022「学校教育だけでは終わらない~日常に新たな学びを~」後に行われた、登壇者の滝川麻衣子さんのインタビュー内容を記事化したものです。

当記事では、主に生涯学びつづける人を支援することについて滝川さんのお考えを伺いました。

※当フォーラムでは、新型コロナウイルスの感染防止のために適切な対策を講じています。

☆五月祭教育フォーラム2022のアーカイブ配信はこちらからご覧ください。

https://youtu.be/-iJvvILmGCo

☆五月祭教育フォーラム2022関連記事はこちらからご一読ください。

パネルディスカッション

日野田先生インタビュー

真坂さんインタビュー

2 フォーラムを終えて

フォーラムの感想

ーーほかのお二方との対談の中で得られた気づき等がありましたらお聞かせください。

メモをする手が止まらないディスカッションでした。今の日本の教育が時代の変化に対応しきれていないということは、親世代を含む様々な人が感じ始めていると思います。しかし、何をどのように子どもに教えたら良いか、どのように生きていけば良いかなど、親ですら判然としなくなっています。

ただし、雇用も含め社会状況が変化する時代だからこそ失うものはありません。過去の成功体験に縛られず、学校・会社の枠を飛び出し、多様な年代、属性の方と関わっていくことが普通になってきています。むしろ何も変化しないことが一番のリスクであると考えれば、何をすることも怖くありません。

一生懸命考えたうえで納得し、仲間を巻き込み自分自身の意思をもって動くことができれば、恐れず挑戦できる時代と言えると思います。成功や正解の法則がないことを皆さんにお伝えしましたが、私自身も前向きになれるディスカッションでした。

3 大人の学び~学び直しと女性の働き方~

学び直しの大衆化に向けて

ーー「学び直しをメジャーなものにするため」には、どういうことが必要だと考えますか。

雇用が流動化する[*]社会を作ることが必要だと思います。今は残念ながら、終身雇用が崩壊しつつある時代です。そのため、突然リストラの対象になったり、リストラ後に路頭に迷ったりするのは他人事ではありません。
しかし、一旦会社の外に出ることは、必ずしも悪いことではありません。次に働く場所ややるべき事があれば問題はありませんし、それが雇用が流動化している社会の形だと思います。また、今の会社を離れて何かを始めるときやどこかに入社するとなったときに、必要な物は何かを考えて準備をすることが、社会人のリアルであり、学ぶ理由になると思います。

それに伴い雇用の流動化が重要になります。つまり、クビになったら終わり、仕事を失ったら人生転落ではない、という社会です。人生100年時代と言われる現代では、人々は自分の人生を作っていくために、様々な仕事で、様々な働き方をしていく必要があります。その前提に雇用流動化があるのです。雇用が流動化している社会では、生涯1つの会社に勤め上げる人は減り、多くの人がライフステージに応じて流動的に動き柔軟な働き方をします。労働者側は自分の人生をつくり、企業は企業で新卒一括採用に限らず、様々な人を採用します。そういう流動化ができた時、「働くこと」と「学んでいくこと」がセットになる社会が、当たり前になっていくと思います。

[*]参照:コトバンク 雇用の流動化とはhttps://kotobank.jp/word/%E9%9B%87%E7%94%A8%E3%81%AE%E6%B5%81%E5%8B%95%E5%8C%96-2875852

4 きっかけ~働き方改革の取材を通じて~

学び直しの必要性を感じたきっかけ

ーー滝川さんご自身の経験の中で、大人も学び続けることが必要だと感じた出来事やきっかけを教えてください。

新聞社時代に働き方の見直しの取材をしていたときに、他社の新入社員の方が過労自殺したことが大きなニュースになってから、パワハラと長時間労働が問題になりました。加えて、一日の残業時間や長時間労働、従業員のメンタルの健全性を見直す機運が高まりました。

労働時間を短縮するのであれば、生産性を高くしていかないと、企業の業績が単純には落ちてしまいます。いかに時間当たりの生産性を高くするかが重要です。企業がお給料を払えず、みんなが路頭に迷うことは、避けなければいけません。そのためには、一人一人の社員が残業し続けて疲労困憊するのではなく、仕事を100としたときに、20から30を未来に投資するようにする。そうしなければ、その人の能力や生産性も上がらず、頭も回らないために新しいものが生まれないだからこそ、できるだけ生産性高く、短い時間で働いて、余った時間を未来の投資に使うべきと考えるようになりました。

個人の人生にとっても、社会を考えた時も、社会人が学んでいくことと、ただ目の前の仕事をがむしゃらにするのではなく未来への投資を折り込みながら生活や仕事をすることが、低成長下の日本では必要です。記者として働き方改革の取材をしていく中で、こう考えるようになりました。

女性の社会進出

ーー今の社会は女性にとって働きやすい社会になってきていると感じますか。

女性活躍推進法が施行されたこともあり(2016年)、基本的には変わってきていると感じます。2010年に時短を認める育児休業法の改正が行われる前の世代は、多くの会社で時短勤務の制度がなく、残業が当たり前の会社だと、定時で帰ると「使えない社員扱い」されていました。そもそも多くの人が結婚や出産で離職をしていたのです。時短勤務制度が整っていないために、ベビーシッターや自分の親に預けたり、それができなければ女性が離職していたりしていた時代からは、かなり前進しています。

今の社会の問題は意思決定層に女性が少ないことです。意思決定層に性別の偏りがあると、大きな方針そのものに多様性が生まれません。つまり女性に限らずですが「マイノリティ」意見や考えが、大きな方針が決定される時に反映されにくいという現状があります。

女性の社会進出と大人の学び直し

ーー女性の社会進出に大人の学びをどう活かせるとお考えですか。

変化のスピードが速い時代には自分の知識やスキルをアップデートしていくことが女性にとっても有用です。社会の枠組みを変える動きと並行して、学びながら個人もスキルを磨くことがその人自身を支えていくと思います。

Schooでは、リーダーシップやマネジメント研修のコンテンツを拡大したり、ダイバーシティのコースを展開したりしています。
女性は家庭内のタスクが多く、なかなか学びの時間が取れない現状はありますが、働き方の変革に合わせて、コンテンツをSchooではそろえていきたいと考えています。

5 学校教育に求められるもの

ーー社会人になってからの学習につながるような学校教育の形というのは、どういうものだと考えますか?

キャリア教育に力を入れることだと思います。キャリアは仕事とか、職業ということだけではなく、「自分がどう生きていきたいか」、「自分が人生でどうありたいか」、「どういうふうに自分を記憶されたいか」、「自分は社会に何ができるか」などを自分自身に問い続けることだと思います。
要するに「どの大学に入りたいか」、「どの会社に入りたいか」ではなく、「あなたは世界のために何ができるか」、「あなたが社会のみんなにどういう人だと思われて、覚えてもらいたいか」ということを考え、追い続ける癖をつけることです。社会に出たときに、「何をやりたいかわからない」に陥らないようにするために、学校教育においてキャリア教育が重要だと考えます。そうすれば、社会に出てからも「こうありたい」と「今の自分」のギャップを埋めるために「学び続けること」が、手段として活用されていくと思います。

6 読者へのメッセージ

激変の時代なので、前の時代の人々がやってきたようにはうまくいきません。必要なことは、自分自身の頭で考えてみること、失敗を恐れないことです。教育現場は、既存の正解に近い物をよいとすることよりも、正解がない中でどういうマインドセットや考え方を持つかにフォーカスしていってほしいです。

7 プロフィール

滝川麻衣子さん

大学卒業後、産経新聞社入社。広島支局、大阪本社を経て2006年から東京本社経済部記者。ファッション、流行、金融、製造業、省庁、働き方の変革など経済ニュースを幅広く取材。2017年4月からBusiness Insider Japanの立ち上げに参画。記者・編集者、副編集長を務め、働き方や生き方をテーマに取材。さまざまな企業の取り組みや課題を取材する中で「社会人の学び」の重要性を確信し、2021年12月、Schoo入社。コンテンツ部門責任者として、これからの社会で必要とされるコンテンツ制作に従事。
Schooのホームページはこちらから

※プロフィールは2022年5月現在のものです。

8 編集後記

滝川様ご自身の社会に対する問題意識は、自分が想像していたものよりも広く深く、これからの社会はますます正解のない中で生きていかなければならないことにハッとさせられました。多くの方に読んでいただきたいです。(文責・編集 R.H)

教育のみならず、社会の問題をどうとらえるかが重要に感じました。前向きに捉えることで、新しく挑戦することに前向きになれる、そんな思いを強く感じました。取材を通してお話を聞くことができ、とても良い経験になりました。
(文責・編集 Y.S)

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