民間で働いた経験がある教師の働き方とは【第12回教育と仕事フェス~From 民間 to 教師~】


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はじめに

この記事は、2022年6月29日にNPO法人ROJE EDUCAREERが主催した「第12回教育と仕事フェス~From 民間 to 教師~」第2部の内容を編集したものです。本イベントでは登壇者の経歴やキャリア、仕事についての考え方など幅広くお話しいただいています。登壇者は、八戸市教育委員会総合教育センター主任指導主事をされている大下洋一さんです。大下さんは、東京学芸大学を卒業後、広告代理店勤務、塾講師を経て、青森県の中学校に、社会科の教師として勤められました。現在は兵庫教育大学で教育格差の是正に関する研究をしています。(2022年6月現在)

本記事では、大下さんが教員採用試験に合格されたあとに着目し、大下さんご自身の、教師という仕事や教育行政との向き合い方についてまとめています。
また、大下さんのこれまでのキャリアの選び方はこちらの記事でまとめていますので、こちらもご覧ください。▷https://edupedia.jp/archives/28871

☆こんな人におすすめ!

  • 民間就職したあと、教師になりたい人
  • 教育行政の仕事について知りたい人

教師としての仕事

教師職で民間の経験が生きたこと

一番生かされたのは公民の経済分野でした。値段の決め方や株式会社の仕組みなどは、私の実際の経験を具体例として授業することができました。また、キャリア教育の分野でも、民間で働いた経験があったため、広い視野で生徒の進路についてアドバイスができたと思います。

授業で意識していること

生徒同士で意見を言い合える環境づくりをするため、普段の授業で議論をよくさせていました。私の役割は、生徒から出てきた意見にプラスの価値づけをしたり、異論を大いに歓迎したりすることなど、いわゆるファシリテートを意識していました。中3ともなると、教師や学校への異論も出ますが、その異論も議論の対象として、生徒とたくさん意見を交わしました。さらに学級経営においては、学級を集団としてまとまりで見るのではなく、一人ひとり思いや考えがある個人として接することを心がけていました。全員で意見を出して理解しあい、ひとつのことに向かって努力することは大事だと思っています。

また、暗記だけの学習にしないため、私は問題解決的な学習を中心に授業を行ってきました。例えば、近代史の単元では初めに「なんで学校に来なければいけないのかな?」と生徒が自分ごととして考えられる問いを投げかけます。そのうえで、フランス革命、ナポレオン戦争を経て国民国家が形成されたことや、強い国民軍を作るために公教育が発達し、それが日本の明治維新にも関係していることを、単元を通して学びます。地理や公民でも同じように、単元の始めに自分ごとになるような問いを投げかけ、それを単元を通して学んでいく形式で授業をしていました。このように、生徒の興味関心を高めてから授業を行うことで、ただ単に暗記するだけではない学びを実現することができると思います。

さらに、生徒からの信頼を得るため、授業時間をなるべく延ばさないことを心がけていました。授業時間が45分や50分だったら、私は必ずその時間でスパッと終わります。生徒にルールを守らせたいのなら教師が率先して行動することが大事だと思います。この点は特に意識していました。

教育行政の仕事

今の「指導主事」という仕事

教育に関し、識見を有し、かつ、学校における教育課程、学習指導その他学校教育に関する専門的事項について教養と経験があるものでなくてなならない。(地方教育行政の組織及び運営に関する法律第18条)

指導主事は上記の法律により定められています。
指導主事の大きな仕事として学校訪問があります。例えば、小学校の社会科の授業を見て「こういうところがいいですね」とか「こういうところを改善したらもっといいですよ」などと、授業改善のためのアドバイスをします。
また、これは意外かもしれませんが、議会で議員に答える答弁の原案を作成する仕事もあります。
さらに私たちは、教育政策の立案も担っています。例えばGIGAスクール構想については、PCを購入して学校に配る計画を立てたり、現場の教師に研修を通して使い方をレクチャーしたりしています。
指導主事とは広く言うと教師の日々の授業を支援するための自治体教育の裏方だと思います。

教育行政という立場から教育格差を是正することのおもしろさ

公立学校の基本的な建前は全ての子どもに同じ教育を届けることです。ただ私が前に勤めていた学校ではクラスの生徒が7人しかいませんでしたが、その前の学校では41人もいました。そこでの経験から、学校によって教育環境の違いが生まれてくると感じました。そのためGIGAスクールで、端末を使って指導する際に、講師に遠隔で指導してもらい、みんなで勉強をするなどして、そういった格差をいかに是正できるかを研究をしているところです。GIGAスクールもあって遠隔の環境が非常に一般的になってきたため、今後はいろいろな方策が考えられると思っています。

教育委員会の中での働き方

教育委員会に配属された地方公務員事務職(行政職)の方と役割分担をして働いています。事務職の方には、行政文書の作成や予算案提出など、主に書類仕事をお願いしています。これは教師出身の私には難しい仕事なので、大変助かっています。地方公務員は異動によっていろいろな部署を経験しているので人脈が広いです。そのため、仕事上の協力関係を作りたいと相談すると、すぐに担当者とコンタクトを取ることができます。このように行政は人のネットワークで運営していることを実感しています。

参加者の学生へ向けて

教師って経営者なんですよね。学校に行くと学級経営、学年経営、部活経営など経営という言葉が本当にたくさん使われます。実は教師は教育の高度専門職として比較的大きな裁量権を持っています。これはみなさんが学校でやりたいことや成し遂げたいことを、法律や学習指導要領の範囲内で思う存分チャレンジしてもよいということです。若くして経営者になれるというのは教師の醍醐味だと思います。もちろん大変ですが、おもしろいことだと思います。
教師の仕事は大変に見えることもあります。しかし、普通の民間の仕事で生徒と一緒に笑いあったり、行事を通して感動の涙を流したりする経験はあまりできないと思います。何よりも生徒のがんばる姿に関われることは教師にしかできない特権です。このように生徒の成長を実感し、数年後やその先の再会をお互いに喜べるというのが教師のよいところなので、様々な進路はあると思いますが、ぜひ皆さんもいろいろと検討してよい進路選択を目指してほしいです。

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主催団体

NPO法人ROJE EDUCAREERプロジェクト(旧:教育と仕事フェスプロジェクト)
「一人一人が納得して自身のキャリアを決められる」ことを目標に、大学生向けイベントの企画・運営を行っている、大学生によるプロジェクトです。
私たちは教育業界のキャリアの面白さを広く発信し、多様な教育キャリアと出会う機会を創出することで、教育業界でのキャリアを歩みたいと思う学生を増やし、納得のいくファーストキャリアを選択してもらうことを理念に掲げています。詳細はこちら▷https://kyouikusaikou.jp/eduwork/

編集後記

教師としての働き方や指導主事としての業務内容について知ることができました。特に教育行政での働き方はなかなかイメージがつかない部分だったので、今回の記事を通して少しでも皆様のお役に立てれば幸いです。(文責・編集:EDUPEDIA編集部 千葉菜穂美)

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