教師になる前に民間企業を経験してよかったこととは【第12回教育と仕事フェス~From 民間 to 教師~】

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目次

はじめに

この記事は、2022年6月29日にNPO法人ROJE EDUCAREERが主催した「第12回教育と仕事フェス~From 民間 to 教師~」第2部の内容を編集したものです。本イベントでは、登壇者の方に、経歴やキャリア、仕事に対する考え方などを幅広くお話しいただいています。登壇者は、八戸市教育委員会総合教育センター主任指導主事をされている大下洋一さんです。大下さんは、東京学芸大学を卒業後、広告代理店勤務、塾講師を経て、青森県の中学校に社会科の教師として勤められました。(2022年6月現在)

本記事では、大下さんが教師になる前のキャリアに着目し、大下さんご自身のキャリア選択、民間企業での経験を通して得たものについてまとめています。
また、大下さんの教師、指導主事としての働き方、考え方についてはこちらの記事でまとめていますので、こちらもご覧ください。▷https://edupedia.jp/archives/28885

☆こんな人におすすめ!

  • 教師になるか、民間企業に就職するか悩んでいる人
  • 新卒で教師にならない場合のキャリアプランを知りたい人

教師になる前のキャリア選択

民間企業に就職しようと思ったきっかけ

私が学生だったころは採用人数が少ないため、教員採用試験になかなか合格できない時代でした。そのため私は、大学卒業と同時に取得できる教員免許状を活用し、教育関係の民間企業に就職しようと考えました。就職活動を開始し、何社か面接を受けるなかで面接官から「教育学部出身なのに、教師にはならないのか」という質問をされ、答えに詰まってしまったことを思い出します。

営業の仕事をやって感じたこと

さらに当時は就職氷河期ということもあって、内定を取るのに非常に苦労したのですが、最終的に広告代理店への就職が決まりました。私は学校広告の営業を担当し、学校の入学案内のパンフレットなどの制作に関わりました。さらに、大学などの情報サイトを作って、そこから資料請求する仕組みなどをパソコン関係の会社と組んで営業をしたり、そのほかにも新しいことにチャレンジしたりして、非常に楽しかったことを覚えています。私が新しいアイディアを提案するといいねと興味をもってくれて、それがの契約に結びつくことは面白かったです。
しかし、この仕事を何年も続けることに疑問を抱き、広告代理店を7か月で退職しました。

教師を目指すようになった塾講師時代

仕事を辞めて地元に戻った私は、中学時代の塾の先生に声をかけてもらい、アルバイトという形で塾講師になりました。塾講師の仕事としては、授業、営業活動、面談がありました。それらを通し、生徒や保護者から話を聞くなかで、一人ひとりが学校に対してなんらかの不満・悩みをもっているということに気がつきました。それらを抱えながらも、「こんなものだからしかたがない」と諦めてしまったり、「学校の先生は忙しそうだから相談できない」と考えていたりする生徒が多くいました。このような話を聞くなかで、塾に通う生徒はある程度金銭的にゆとりがあったり、保護者の理解を得られやすかったりしますが、塾に通っていない生徒のケアは誰がするのだろうかと考えるようになりました。私は当時塾講師として働いていたので、塾の生徒の悩みを聞くことはできましたが、塾に通っていない生徒の悩みを聞くことはできませんでした。そこで、通塾の有無にかかわらず公平に力を伸ばせる環境をつくりたい、そのような学校にしていきたいと思いました
そこで私は教師になることを決め、2度目の教員採用試験で合格し、中学校の社会科の教師になることができました。

教師として大切にしたいこと

義務教育は「公平」が担保されなくてはならないと常に考えています。生まれた地域や入った学校によって格差があるということは本当に残念なことで、義務教育は公平であるべきです。近頃はコロナ禍によって厳しい状況下におかれる生徒も増えているので、学校から働きかける必要があると考えています。現在は国から「令和の日本型教育」という誰一人取り残さない教育のための指針が発表されています。今私が取り組んでいる仕事は、長年考えている「公平」の実現という部分に直結しています。

民間企業を経験してよかったこと

授業・生徒指導に活かせたこと

民間企業での経験が最も活かされたのは公民で経済分野の授業をしたときでした。私自身の経験を具体例として、値段の決め方や株式会社の仕組みなどについて授業することができました。また、キャリア教育の分野でも、民間で働いた経験があったため、広い視野で生徒の進路に関してアドバイスができたと思います。

働くうえで感じたこと

よく「先生は社会を知らない」と言われますが、その意味に気づくことができました。民間企業でビジネスマナー、お金を稼ぐことのシビアさの実体験、効率性を考える習慣を当たり前のように得ていたことで、民間企業と学校の違いを感じました。学校ではビジネスマナーを学ぶ機会があまりないため、営業など実地で学べたことが大きかったと思います。また経済面でも、自分で利益を生み出す経験があまりないからか、時折家庭状況や経済状況を気にしていない発言を耳にするときがあります。このような感覚は民間企業を経験したからかもしれません。

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主催団体

NPO法人ROJE EDUCAREERプロジェクト(旧:教育と仕事フェスプロジェクト)
「一人一人が納得して自身のキャリアを決められる」ことを目標に、大学生向けイベントの企画・運営を行っている、大学生によるプロジェクトです。私たちは教育業界のキャリアの面白さを広く発信し、多様な教育キャリアと出会う機会を創出することで、教育業界でのキャリアを歩みたいと思う学生を増やし、納得のいくファーストキャリアを選択してもらうことを理念に掲げています。
詳細はこちら▷https://kyouikusaikou.jp/eduwork/

編集後記

民間企業の経験を経て、教師になろうと決心した大下さんのお話が印象に残っています。民間企業で得た力を活用しながら教師として働くことは多様な教師を生み出すことができるという意味で、子どもにとってよいことなのかもしれないと感じました。(編集・文責:EDUPEDIA編集部 千葉菜穂美)


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