上手に物語を書かせるには ~「たから島のぼうけん」光村図書国語3年


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 作文指導には時間がかかる

「たから島のぼうけん」はずいぶん昔から光村図書国語3年の教科書に載っていて、もしかすると昔は4年生の教科書に掲載していたような気もします(未確認)。この冒険話を人が読んで楽しめるクオリティーに仕上げることができる子供は3年生でも、4年生でも本当に少ないです。作文のクオリティーを高めるには、教師側の努力がかなり必要です。
多忙化がどんどん進んでいった平成時代を通して、作文教育に心血を注ぐ教師は少なくなったように思います。子供に作文指導をすること、作文を読むこと、添削すること、推敲させること、評価すること、文集や学級新聞で発表させること・・・どれにも多くの時間を費やさねばなりません。毎日日記を書かせ、見て添削して返す教員、学級だよりを短い期間で発行して、そこに作文(の一部)を載せる教員が20年前ぐらいにはまだいました。しかし近年、作文教育に熱心な教師はほとんど見かけなくなりました。私も日記を毎日書かせて見ていたのは初任の年度だけでした。負担が大きく、その後は心が折れてしまい、やっていません。
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 作文指導をしても上手な文章を書かせることができない

光村図書国語教科書には2年生にもお話作りの単元「お話のさくしゃになろう」があります。3年生の「たから島のぼうけん」とあわせて、「2年生や3年生に読んでいて面白いと思える物語を書かせるのは難しい」というのが、これらの単元(教材)を実践した後でよく聞かれる感想です。私のこれまでの体感では、全体として完成度が高いと思える作品が10%程度、いくつかの部分よくできているなと思える作品が30%、後は正直なところ、あまり読んでいて楽しい作品はありません。勿論これは子供だけのせいではなく、私の指導力の未熟さによる結果です。時間がかかる上に上手にならないので教師側もやる気が起こらず、意欲が失われていきます。

 上手く書けていないパターン

子供たちが書いた「たから島のぼうけん」読んでいて、「ああ、これはうまくいかなかったな」と思うパターンを8つ挙げてみました。②と④など、関連性が高いパターンもありますね。

① ただ長いあるいは、あまりに短い。
② 最初の場面(例えば、宝の地図を見つける場面)に字数を使い過ぎ、力尽きる。
③ 最初に構成を記したメモに縛られ過ぎて、話が広がらない。
④ オチが弱い。・・・体力・集中力が尽きて、「終わり(むすび)」に面白みがない。唐突に終わった感じになってしまう。雑になりがち。
⑤ やたらと登場人物が多いが、それぞれの物語上での役割が薄い。
⑥ 2・3の敵が表れてただ戦ってただ勝つというだけの単純な展開。
⑦ 戦いの場面を書いているうちに書くことが楽しくなってしまい、延々と自分の世界に入り込んで(読み手の事を意識せずに)書いてしまう。
⑧ デジタルゲームの世界の実況中継のようになる。

① ~⑧に共通して、「意欲」「客観的な視点」を持たせることができていたのかという課題があると思います。「たから島のぼうけん」というお題で本当に何人の子供たちがぜひ書いてみたいと思っていたのか、思わせることができていたのか。教師側が「はい、教科書に(教材として)載っているからみんなも書いてみましょう」といった気分でいると、子供も「先生が書けと言っているから書いてみるか」と、主体性に欠ける姿勢で臨むことになってしまいます。何のために書いて、誰に読んでもらうのかもわからないままに取り組むのでは、モチベーションは上がりません。この状態で子供が胆力をもって推敲や構成をしてくれることはなかなか望めないでしょう。・・・まあ、これは「たから島のぼうけん」に限ったことではない学習全般に関する問題なので、ここではあまり掘り下げないことにします。

 自分で書いてみる

作文指導をするのであれば、与えるテーマに沿って、自分も一度、書いてみるといいと思います。事前に書いてもいいし、授業をやりながら子供と一緒に書くのもいいし、終わってから書くのでもいいともいます。そうすることでどの程度のレベルの作品を子供が書くことを期待できるのかが分かってきます。自分で書いてみるとこの題材(宝島)を3~5まいの原稿用紙にまとめて書くのは、かなり難しいです。
下記リンクのファイルは、3クラス分の子供の作品からいい所を抜粋して、それを私がつなぎながら一つにまとめたお話です。

たから島のぼうけん 作文 UP

3クラス分の子供のアイデアを取り入れながら自分のアイデアもいくらか注ぎ込みました。抜粋してつなぎ合わせるのにかなりの時間を要しました。また、400文字×7枚=2800字ぐらいになってしまいました。書いてみてそれほど多くのパターンを「宝島」というお題で書けるものではないということが分かりました。今まで読んできた物語(もちろん、スティーブンソンの「宝島」も)やドラマ・映画の冒険的要素は頭に入っているものの、「子供に期待ばっかりしてたけど、なんだ、自分も非力じゃないか」と再確認することができました。

もう一つ、自分で書いてみて分かったのは、構成を考え、推敲・校正してゆく上で、パソコン(ワードプロセッサー)が非常に役立つという事です。子供たちは紙に書くので、書きなぐったような文章になりがちです。それを書き直してまで推敲・校正を求めるのは要求が高すぎるように思います。文章作成(構成・推敲・校正)におけるパソコンの利便性は非常に高いです。普段、自分は長文を書く時には必ずパソコンを使うのに、この1人1台の時代に子供に使わせない手はないなと思いました。ただ、まだ3年生なのでキーボード入力やパソコンの操作は難しいかもしれません。4年生以上であればどんどん利用したらいいと改めて思いました。

 目標を何に絞るか

自分で書いて(自分の非力を認識して)みると、では、子供にはこの単元で何を求めるのかと言う課題が改めて見えてきます。
メモから物語を書き起こすことを求めるのか、修辞の豊かさを求めるのか、ストーリーの面白さを求めるのか、「はじめ」「中」「おわり」を意識することを求めるのか。光村図書国語教科書指導書では大雑把に言うと、「文章の構成(段落)」「豊かな語彙」「推敲(相手や目標を意識して)」等が学習の目標となっています。
では構成や推敲のクオリティーを上げて「面白いストーリー」が描けるようになるにはどういった手立てが有効なのでしょうか。私は「????」となってしまいます。「相手を意識して」と、後で友達同士で読みあうことを設定した上で書かせても、普段から相手意識を持った言語活動ができていないことには、急に面白いお話を書けはしないでしょう。
そうなると、自分の学級の普段の言語活動、特に指導要領の「B書くこと」をどう高めて来たのかが問われます。あるいは学校としてどれだけしっかりと書く活動に取り組んできたかも問われることになります。これを言い出すと、話が大きくなってこの記事で書くのは難しくなってきます。追々、別の記事で書こうかと思います。

 「たから島のぼうけん」を書かせる際の条件

光村図書国語教科書では2年生のはじめから、作文を書くときには「はじめ」「中」「おわり」を意識して書かせる指導をするように構成されています。「おにごっこ」「すがたをかえる大豆」等の説明文も見事に「はじめ」「中」「おわり」を意識して書かれたものが掲載されています。2年生時の「お話のさくしゃになろう」も同様に、「はじめ」「中」「おわり」を意識して書かせる単元です。「たから島のぼうけん」ではこれを「始まり」「出来事」「むすび」と置き換えて提示しています。さらに、「中」は「出来事(事件)が起こる」と「出来事(事件)が解決する」に分かれていて「起承転結」に近い構成を目指しています。教科書には「出来事(事件)が起こる」「出来事(事件)が解決する」が繰り返されてもいいとも書かれています。
悩みつつ、作文を書く際の条件・課題として以下のように話しました。

① 「始まり」「出来事」「むすび」を意識して、それぞれが充実するように書きましょう。
② 3ページにまとめます。・・・最大でも5ページ。2ページと1行とか2行は3ページとは言いません。少なくても、2ページ半は越えてください(笑)。
③ 宝島にはたくさんの人と行きません。最高で3人です。あまりたくさんの登場人物を出すと、みんなはまだ3年生なので、話がまとまらなくなります。1人で行ってもいいですよ。
④ クラスの友達の名前を出すのはだめです。
⑤ 2つ以上の事件を作ってください。教科書に載っていない登場人物(生物)以外を考えてもいいです。ただし、漫画やアニメやお話のキャラクターやゲームのキャラクターのような登場人物はアウトです。・・・個人的には「桃太郎と金太郎に桃団子をあげて、3人で島に渡る」みたいなしっちゃかめっちゃかのストーリーを考えるような子供がけっこう好きなのですが・・・(笑)
⑥ 教科書の挿絵に載っている登場人物を全部書く必要はありません。
⑦ 会話文を必ず一つは入れます。
⑧ メモは短く書きます。長い文章にしないで下さい。・・・あまりメモを長い文章にしてしまうと、メモに縛られて生き生きとした物語が描きにくくなります。
⑨ 教科書はメモ書きをして構成を考えてから書かせるようになっています。しかし、メモはメモであくまでアイデア集に留めておかせるのも大事だと思います。
〇 メモはメモに過ぎません。話が面白くなりそうなら変えてもOKです。
〇 例えば、メモに出てきた登場人物を「やっぱりやめた」にしてしまってもOKです。メモに出てきていない登場人物を出してもいいよ。
〇 メモをそのまま作文用紙に写すのではなく、3倍ぐらいに膨らませて、広げてから書きます。
⑩ 起った事件に対して、基本的に、「○○したら、●●になった」という形でどう解決するのかを考えてください。・・・何か、例を示してあげるといいですね。→→→ 「トラにレモンをあげたらすっかり匂いが気に入って、一口で食べてしまいました。酸っぱさで飛び上がっているすきに逃げました。」
⑪ 戦いの場面にはあまり暴力を書かないで下さい。残酷すぎるのも、読む相手が気持ち悪くなるのでやめてください。
⑫ 全部、戦って勝ったばかりにしません。「石を投げて勝ちました」「谷に落として勝ちました」「棒で叩いて勝ちました」のような形ばかりにならないようにします。必ずひと工夫します。
⑬ 何かと出会った場合にどうなったのかというパターンを黒板に書いておいてあげるのもいいですね。「戦う」「逃げる」「助けてくれる」「友達になる」「利用する」「不思議な事が起こる」

 今後の課題

13個も条件を並べてしまいました。説明するだけでとても時間がかかりました。これではちょっと条件が多すぎて、子供が自由に作品作りができないような気もします。しかしある程度許容範囲を示した上で構成させ、書き始めさせないと、しっちゃかめっちゃかの作品になってしまいます。
今までもそれほど十分な作文指導をしてきてはいないので、「むすび」まで丹念に書き上げて推敲・校正ができていると感じた作品はほとんどありませんでした。上記の条件をクリアしながら、工夫や捻りのある文章が書けている子供は―――私の体感ですが―――全体の2割程度、部分部分で面白い文章が書けている子供が4割程度でしょうか。まだまだ日々の取り組みが足りないと思います。やるべき課題として、

◎ 短文づくり(漢字や単語を提示して)
◎ メモを膨らませての文章づくり
◎ 修辞のレベルを上げる
◎ 豊かで楽しい発想ができるようにする

等、ちょっとした取り組みでもけっこうな手間・時間がかかり、実施するのはたいへんですが、一つの単元で急に力が付くことはありません。こつこつと積み上げていきながら、育ててゆかねば力はつかないだろうなと思います。

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