震災後の心を支えるエクササイズ(八巻寛治先生)

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作成者: EDUPEDIA運営部 (Edupedia編集部)さん

1 「震災後の心を支えるエクササイズ」八巻寛治先生

レポーター:齋藤千秋

【講師プロフィール】

現在、宮城県伊具郡丸森町出身の小学校教師。上級カウンセラーで、学級経営スーパーバイザー、宮城県カウンセラー協会副代表、ガイダンスカウンセラーでもある。仙台市嘱託社会教育主事。

特に学級活動の活動内容の適応指導の重要性を再認識し、いじめ・不登校・学級の荒れを予防するエンカウンターやシナリオ(枠)を設けたロールプレイを取り入れた開発的な教育カウンセリングの研究、荒れたクラスの立て直し(本人が実践あり)等を目指して取り組んでいる。他に,自分の在り方・生き方を踏まえたキャリアカウンセリングを総合的な学習の自分づくりに応用し実践している。成果は様々な研究大会で発表している。

主な著書として、『保護者会で使えるエンカウンターエクササイズ』や『心ほぐしの学級ミニゲーム集』『構成的グループエンカウンターミニエクササイズ56選』などがある。

【講座の概要】

はじめに、震災後の心境について心理学的な視点からお話してくださいました。その後は参加者で2人組になり、実際にエンカウンターを行いました。

【授業内容】

現在、テレビなどを通して被災地は復興してきているように見えると思います。
しかし、阪神淡路大震災を経験した神戸の先生は、これからがもっと大変になるとおっしゃっています。

その理由は、復興の中大人も心が崩れてしまうからです。例としては、仕事がなくなる、給料が減らされるなど社会や環境の変化により、秩序がない行動をしてしまうことなどが挙げられます。これを見た子どもたちは、真似をしてしまうのです。また、ストレスが溜まり、陰湿ないじめも増えてしまいます。
最近は腹痛など体への反応が目立っていますが、これからはあまり言葉を話さない緘黙(かんもく)の子が増えたり、動物虐待や離婚家庭も増えると言われています。震災の映像を見て2次的なショックを受けるということもあります。
      ↓

このような状況を防ぐためにはまず予防策を考える事さらに不安や悩みを解決するためのストレスマネージメントを行う必要があります。

これからの心のケアが特に重要になってきているのです。

3つの自立

先生は、これからは3つの自立をしていけばよいとおっしゃっています。

一つ目は、現実は変えられないので、事実を受け止めその上で自分をしっかり見つめる自立

二つ目は、周囲の状況の変化変容に無理に適応しようとしない、自分を律する自律

三つ目は、周囲に迷惑をかけない程度に自由に行動する。必要以上に我慢しない自率

まず、現在の状況把握をしていきます。

<子どもたちの状況>

4つの変動がある。
「気持ちの面」 いらいら、落ち込む、無感情、無気力
「考え方の面」 集中力がない、自信を持てない
「体の面」 腹痛、頭痛
「行動の面」 変に騒ぐ、そわそわする、興奮する、赤ちゃん返り(高学年に多い)

<被災者の地域における心理的経過>

①茫然自失期(災害直後

  • 驚愕・恐怖体験のため無感覚、感情の欠如、茫然自失の状態となる。
  • 自分や家族・近隣の人々の命や財産を守るために、危険をかえりみず行動的となる人もいる。

②ハネムーン期

  • 劇的な災害の体験を共有し、くぐり抜けてきたことで、被災者同士が強い連帯感で結ばれる。
  • 援助に希望を託しつつ、がれきや残骸を片づけ助け合う。被災地全体が暖かいムードに包まれる。

③幻滅期

  • 災害直後の混乱がおさまり始め、復旧に入る頃
  • 被災者の忍耐が限界に達し、援助の遅れや行政の失策への不満が噴き出す。
  • 人々はやり場のない怒りにかられ、けんか等のトラブルも起こりやすくなる。
  • 被災者は自分の生活の再建と個人的な問題の解決に追われるため、地域の連帯感は失われる場合もある。

④再建期

  • 復旧が進み、生活の目処頃がたち始める頃
  • 被災地に「日常」が戻り始め、被災者も生活の建て直しへの勇気を得る。
  • 地域づくりに積極的に参加することで、生活の再建への自信が増向上する。
  • フラッシュバックは起こりえるが徐々に回復していく。
  • ただし、復興から取り残されたり精神的支えを失った人には、ストレスの多い生活が続く。

引用: http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/chusou/jouhou/saigai/index.html

東京都福祉保険局 東京都立中部総合精神保健福祉センター 災害被災者支援のページ

中部総合精神保健福祉センター 広報援助課 広報研修係(アクセス:2011/09/02)

先生は、現在の被災地は幻滅期から再び茫然自失期に戻っている状態ではないかと考えています。テレビでは瓦礫の撤去をしている様子などが放送され、復旧が進んでいるように見えると思います。しかし、実際被災地では「このあとどうすればよいのか」という状態に陥っているのです。被災者のこれからの人生設計が可能になるような具体的な対策は、思ったより進んでいません。

<ジョハリの窓>

ジョハリの窓とは、自分と他者の関係を表したものです。
震災後の子どもたちは、「人に隠している部分」が無意識のうちに拡大しています。

<これから必要なのは、心のエネルギー>

自己実現のために、意欲を持って努力させるには、心のエネルギーを充足させてあげないといけません。これは、早稲田大学の菅野純先生の考え方です。

縦軸は、縦軸は、社会的スキルの高低。
横軸は横軸は心のエネルギーの大きさを表しています。

社会的スキルの説明としては、
「対人関係を円滑にし、社会的生活に適応していくためには、相手のとる行動の変化を正確に認知するとともに、それに応じて自己の行動を調節していく必要がある。アーガイルら (Argyle,M.et al.)はこのような社会的相互作用における心理学的機制を、テニスのような運動動作の熟練、いわゆるモーター・スキルの機制と類比させ、社会的スキルとよんだ。」
岡本夏木、清水御代明、村井潤一監修「発達心理学辞典」ミネルヴァ書房(1995/1/30)298ページ
と記述されています。

この考えの根っこには、よさの体験の重要性があります。
よさの体験とは、右上の社会的スキルと心のエネルギーが共に高い時の事です。
この経験が心のエネルギーを一番補給するのです。

例としては、努力して成功したときが挙げられます。
反対に努力していないのにうまくいく場合は、自分本位でわがままになることがあります。
この右上の部分をいかに生み出すかが、心のエネルギーに関わってくるのです。

→ここで提案が2つあります。

1、かかわり方を学ばせる。
自分がどうしていったらいいのか、相手とうまくやっていけるかを考えること。

2、心のエネルギーを補給する。
身体接触などで、心のぬくもり感じてもらうこと。
また、復興に向けて積極的に活動している子どもたちは、本当の自分の気持ちを抑圧している事が多いのです。特に東北人は我慢強いので、自分の気持ちを言葉にしません。
そこで、効果的なのは「エンカウンター」です。

<エンカウンターとは>

カウンセリングの一形態であり、ゲームや討議をしながら,心のふれあいを深めていく方法。

自分の気持ちが伝わる喜び、伝わらない歯痒さを感じることができる。
話しやすい環境を作るエンカウンターはジョハリの窓でいう「自他ともにオープンな自分」を広げ、本音を言いやすくする。ここが広がると周りからの親近感も増加する。

<エンカウンターのねらい>

児童生徒たちに自分とは何かへの気づき,自己肯定,自己開示,他者への寛容などを学ばせ,児童生徒相互の感情や情緒的コミュニケーションを回復し,相互に認め合える人間関係を育てていくこと。

<エンカウンターの概要>

①自己紹介
(指ずもうで順番を決める)
    ↓
②質問じゃんけん
(じゃんけんを繰り返し、勝ったら質問できる)
    ↓
③質問じゃんけんで感じた事をお互い自由に話す。
(なぜその質問をしたのか?など)
    ↓
④ジェスチャーゲーム:何個当てられるかな
(指ずもうで順番を決める)

(1) 単語

(2)だれがなにをしているところか

(3)だれがなにをしていてどんな感情であるか

☆ジェスチャーゲームはみなさんかなり苦戦していました。
    ↓
⑤振り返り

最後に、振り返りとしてお互いにメッセージを書きました。背中に画用紙をはり、その画用紙にメッセージを書いたシールをはりました。とてもかわいらしいメッセージカードです。

振り返りは、自分では気づかなかったことを知る事ができる良い機会です。
相手からのメッセージをどう受け止めるかということが重要です。
エンカウンターの実践は、子どもの気持ちを考えるよいきっかけになりました。

【当日の教室の様子・参加者の反応・感想】

最初は静かだった教室の中も、エンカウンターのあとは和やかな雰囲気になりました。
「実際にやってみて、聞くよりもわかりやすかった。」
「エンカウンターを通して、言葉で自分の気持ちを伝えられない子どもたちの気持ちが分かった気がする。その気持ちをわかるようになりたい。」
など、エンカウンターの実践を通じて多くの気づきがあったようです。

【講師インタビュー】

<授業をしてみての感想>

「気持ちを相手に伝える難しさ、伝わる喜びを感じてもらいたかった。何かに気づいてもらえる素材になってもらえたらうれしい。

学業だけでのつながりだけではなくお互いを知るきっかけになるので、被災者だけでなく、小学生〜中学生の思春期の子どもたちにもぜひやってもらいたい。

エンカウンターの他にもエクササイズもあるので参考にしてください。」
とおっしゃっていました。

<記事を読む方へ一言>

子どもたちは必ず何かを感じ、さまざまなことを考えています。目線や視線で子どもたちを理解してあげるようにしてもらえると、あれ?と気づくことがあります。

【編集後記】

自分自身エンカウンターを体験したことがありましたが、目的は明確には知らなかったのでとても興味深い内容でした。実際にやってみることで気づきが生まれるので、みなさんもぜひ一度エンカウンターを体験してみてはいかがでしょうか?
八巻先生、ありがとうございました。

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