学級を元気にするポジティブな行動支援PBIS③

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目次

1 はじめに

この記事は2016年8月8日に行われた「アメリカの新しい生徒指導システムPBISを学びませんか—中川優子先生講習会—」の取材をもとに作成しました。
中川優子先生は、アメリカの公立小学校において、ESL/バイリンガル教師・第二外国語特別教育支援教師として勤務。英語を母国語としない児童・生徒の指導や支援を行う。バイリンガル保護者会コーディネーターでもある。実際にPBISを実践しておられる先生です。

2 学校全体での仕掛け

子どもたちの良い行動の割合の推移が子どもたち自身もわかるようにしています。
(データは、よくない行動をした際渡すカード(後述)を受け取らなかった児童の割合で算出しています。)
尊敬をする・責任を持つ・安全に過ごすという3要素ができている子どもには、「よくやったねカード」をあげています。教員が1人1人そのカードを持ち歩いています。教員は、カードを渡す際、「尊敬・尊重できているね」「責任感があるね」「安全に過ごせているね」といったように、言葉かけには3要素の内容しか使わず、具体的なよい行動を口にして褒めることはありません。よい行動の裏にある3つの要素を子どもたちに印象付けることを意識して声かけをします。そうすることで子どもたちのSTOP&THINKを促すことができます。

6週間ごとにカードを集計します。カードがたくさん集まると、家から大好きなおもちゃを持ってこれる、友達とお揃いの恰好をしてくることができるなどのお楽しみができます。このお楽しみは、6年生が中心となって話し合い、自分たちで決めています。

①良い行動は教えることができる
いまこの瞬間の行動がいい行動なのだということを、よくやったねカードを使って子どもたちに教えます。
②メタ認知ができるようになる
良い行動を毎日伝えてあげれば、自分の行動がいい行動なのかどうかをメタ認知する力を身につけることができます。
③良い行動が持続する
良い行動が何かを理解できれば、カードをもらおうと思って次もその行動をしようとする効果が期待できます。

社会でもポイントカードなど、何かをすると自分にとって良いことが返ってくる仕組みがあります。その仕組みを子どもたちに教えています。

家からおもちゃを持ってくるととんでもないことが起こるという批判があるかもしれませんが、持ってきてそこから子どもたちに学ばせることが重要だと考えています。持ってきてはいけないということを教えるより、持ってきたらどうすればよいかを子どもたちが自分で考えることを促します。

障害を持っている子がいたら?

クラスの中で障害を持っている子どもがいるかもしれません。同じ指示をしてもそれを実行するまでに他の子どもたちより少し時間がかかってしまうような子どももいるでしょう。しかし、やってほしいと期待する行為に差をもうけることはしません。差を設けるのではなく、そうした子どもでもできるようにそれまでのプロセスを教えてあげましょう。できるまでの方法を教えることがPBISの要素である支援・介入の部分といえます。

3 いじめへの適用

日本では、いじめをしてはいけない、○○をしたらいじめだ、ということが強調され過ぎています。「いじめはしてはいけないよ」ではなく、物事、身の回りにあるもの、友達、生き物に関しての思いやり、尊敬・尊愛する心があるのならば、いじめは生まれないでしょう。こうした根本を子どもたちに教えましょう。その次に教えるべきはSTOP&THINKです。
子どもたちが自分で立ち止まって考えられるようにすることが必要です。
行動には責任がつきものです。子どもたちが自分で考えて行動し、その行動の責任は自分でとるのだということを学ぶ。そのことが、子どもたちを社会に送り出すという点から考えた際重要になります。

子どもが立ち止まって考え、よい行動をした時、「You made a good choice!(よい選択をしたね!)」と声かけをします。普段からそうした声かけをしていくと、子どものよりよい行動が出始めてきます。自分で考えてどの行動をするか選び、その選択を誰かに褒めてもらうという経験は子どもにとってとてもうれしいものです。

学校全体で実践するメリット

各教室などの掲示を参考に、子どもたちのよい行動が増えたかどうかなどが一目瞭然となります。それにより、どんな時でも気付いた先生が子どもに声かけをすることができます。
また、学年が変わって担当の先生が変わった際、方針が変わると、人の顔色をうかがって行動するようになってしまいます。

4 まとめ

できるところから導入してください。
  ただし、可能ならば学校全体で取り入れてください。子どもたちに一貫性のある社会を教えます。そうでなければ上手く効果が上がりません。そのためにもチーム結成をしてください。
  そして学校全体で”良い行動”の大きな定義を作りましょう。今回でいう責任を持つ・安全に過ごす・尊敬をするの3要素がそれに当たります。具体的に良い行動とは何かという点については子どもたちが自分たちで話し合って決めるようにしましょう。そうすれば子どもたちは納得できますし、自分の行動に責任を持つようになります。教師が作ったものをそのまま使うのではなく、子どもたちに介入させて、子どもたちの言葉で落とし込むようにしましょう。
  さらに、データをとって分析を始めると、よりゆたかで効果的な指導ができます。

5 編集後記

この記事ではPBISをより効果的な取り組みにするためなことについて扱いました。

前回の記事では、
 PBISの定義 学級を元気にするポジティブな行動支援PBIS①

PBISのアメリカでの具体的な取り組み、声掛け 学級を元気にするポジティブな行動支援PBIS②

を扱いました。

ぜひご覧ください!

(文責・編集 EDUPEDIA編集部 宮崎 俊一)
【関西教育フォーラム2016特集企画】もご参照ください ⇒ 【関西教育フォーラム2016特集企画】いじめ問題に挑む!~生徒主体のいじめ対策~

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