学級を元気にするポジティブな行動支援PBIS②

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作成者:shunichi miyazaki (Edupedia編集部)さん

1 はじめに

この記事は2016年8月8日に行われた「アメリカの新しい生徒指導システムPBISを学びませんか—中川優子先生講習会—」の取材をもとに作成しました。
中川優子先生は、アメリカの公立小学校において、ESL/バイリンガル教師・第二外国語特別教育支援教師として勤務。英語を母国語としない児童・生徒の指導や支援を行う。バイリンガル保護者会コーディネーターでもある。実際にPBISを実践しておられる先生です。

2 定義→分析→実行→評価

新しいことをうまく運用するためには一人一人の資質を高めない限り、より豊かな大きなプロジェクトはできません。色々なことがあったら物事をきちんと定義することが大切です。一体何が起こっているのか。例えば、今日うちのクラスはすごいうるさかった、いやぁ週末が終わってうるさかったのか。ある程度その起こっている現場、現状を定義する力が必要になります。次に、それを分析します。一体どういうことがあったの?夏休み明けだから?夏休みはいる前だから?いやいやいや、前日食べた給食が面白いっていう話をずっとしている。なんでもいいんです、分析してください。その後、分析してその状況をどうにかよりよくしたいわけです。そのよりよくする方法を自分の中で見いだしてください。そしてそれを実際に実行します。最後に、本当にうまくいったのかを、それをやってみた結果の評価を見極めて、また定義、分析、実行、評価をします。

3 必ず、子どもに”してほしいこと”を言う

学校の中の、どの場所でどういう行動をしてほしいか。

教室、室内遊び、外遊び、トイレ、廊下、カフェテリア、登下校時、バスの中の8つに分けてます。
例えば、教室の中で尊敬するこころを抱くために、指示に従うという行動が身につけば相手を敬う気持ちが生まれるのではないかということになりました。社会に入ってからのことを考えると指示に従うことが相手への尊敬に繫がっていることは明白です。
これを、教室以外の場面においても、また他の2つの要素についても、学校全体で考えていきます。
そして学校全体で考えたものを各クラスに持ち帰るわけですが、クラスによっては行動が豊かなクラスもあればそうでないクラスもあるため、自分のクラスにあわせて練り直しをします。
決めたことは学校内に貼ってあります。町中に様々なスローガンや注意喚起の看板があるのと同じように、学校でもやっているのです。

学年が上がれば上がるほど、自己養成心が発達するため、キーワードだけで自分をモニタリングできるようになります。小学校から高校まで一貫してこうした取り組みをしています。
小学校では、行動にまで落とし込んだ標語を貼りだすことも一定行いますが、高校では責任を持つ・安全に過ごす・尊敬をするの3つだけ挙げれば十分な状態になります。そこに行きつくために、小学校でできることを行います。

あいさつ

あいさつをしましょうというのは、あいさつという動作をしなさいと言っていることになります。そうではなく、どうしたら相手と一緒に気持ちよく過ごせるか、相手にとってどんないいことができるかというところを子どもたちが考えるように促します。

4 STOP&THINK

行動がよくなるための3色カード

自分の行動が良くなるためにグリーン・イエロー・レッドの3色のカードを使用します。
クラスでは、先生がこれをやってねと指示するのではなく、望ましい行動について子どもと一緒に話し合います。前の例で言うと、「指示に従う」とはどういうことをすればいいのか、思いやりのある言葉とはどんなものだろうということを、子どもたちから引き出します。先生は一切「○○をしてね」という指導はしません。子どもたちが「○○したほうが良い」という行動例を考えだしていきます。そして、自分で考えだしたことの責任を持つのは、子どもたちであるということを強調します。
良くない行動をしてしまったとき、子どもたちは、手持ちのカードをめくるように言われます。めくっていくとグリーンからイエロー、レッドへと変化していきます。先生は「○○をやめなさい」ということは言わず、ただ「カードを変えなさい」という指示のみ行います。カードをめくり、色が黄色や赤になるにつれて、子どもたちは自分がいまどういう状況におかれているかがわかるようになります。つまり、カードによってメタ認知を促しているのです。こうして子どもたちが良くなかった行動を自分で認識して改善していくことを促します。カードという視覚に訴えるツールを使って、STOP&THINKできる子どもたちを育てていきます。

どの行動が悪かったかなどを先生が具体的に指示する必要はありません。子どもがよくない行動をしたタイミングでカードを変えるよう指示するだけでいいのです。そうすれば子どもたちが自分で考え始めます。
逆に、悪い行動を指摘し続けると、子どもたちの間で「またあの子あの行動で怒られた」ということが印象に残ってしまいます。そうしたことが元でいじめに発展することもあるので、注意が必要です。

なお、グリーン・イエロー・レッドの各カードの枚数は、クラスの状況によって担任の先生の判断で変えています。
学校全体の方針とクラスの状況を照らし合わせてより効果的な方法を見つけることが鍵となります。方針さえ学校で共有できていれば細部まで全クラス一貫させる必要は一切ありません。

実際の小学校での取り組み

低学年の場合は一人ずつカレンダーを持たせています。そして、1日の終わりにその時点で表に出ているカードの色を塗ります。グリーンのままだと一日良い行動をして過ごしたということを、イエローやレッドに変わっているとよくない行動をしてしまったことを意味します。(写真左下部)
PBISではこのようにデータを取ることを重視します。このカレンダーは月のおわりに回収し、時期ごとの傾向などを先生が把握します。例えば、「12月のクリスマスの時期になると行動が荒くなるな」とおもったら、「冬休みが終わった後にどんな行動が良い行動なのかもう一度話し合って復習しよう」というふうに判断します。データを基に介入を考える点がPBISの特徴です。

写真はクラス内の掲示を使った仕掛けです。
3つのBが書かれた掲示は、左から順に、尊敬をする・責任を持つ・安全に過ごすの3要素を表しています。
例えば、クラスの中でみんなが思いやりを持っていて、学習を始める際に準備が整っている、つまりお互いが学習する時間と機会を尊重し合っているような状態になっていれば、一番左のB(尊敬する)の文字中に空いている白い穴を黒で一つずつ塗りつぶしていきます。そして、白い穴がすべて塗りつぶされると、クラスで子どもたちがしたいことをさせてあげるようにします。例えば、「ドッジボールがしたい」と声があがればドッジボールをします。

また校長先生が教室の見回りに訪れた際、気持ちよくあいさつができると校長先生がBの中の白抜きを塗りつぶすということもあります。校長先生に限らず、どの先生でも支援・介入に関わることができます。これは学校全体で取り組むメリットの一つといえます。

データの重要性

毎日、よくない行動についてデータをとっていきます。
名前・学年・性別・時間・場所・行動を用紙に書き込んでいきます。この用紙は学校のいたるところにあります。
そして、よくない行動を見つけたら、紙に書いて、担任の先生と保護者の手に渡ります。

集めたデータは学校の秘書官がすべてエクセルに打ち込みます。

前年との比較や悪い行動の割合の推移、悪い行動の種別などのデータから、良い行動を促すための戦略を立て、支援・介入のための指導案をクールツール担当の先生が毎月作成します。
また、学年ごとのデータも出るため、そのデータを用いて学年の担任の先生が集まっての話し合いも生まれます。そこから、「やったねカードを意図的に多く配ろうか」などの介入策を講じていきます。
前年度と比べて数値が悪かった場合などは、前年度におこなった介入を振り返って対策に役立てます。

支援・介入の成果は、データに表れます。分析・実行・評価にデータを有効に利用しています。

データを使用した介入の例

夏休み前は子どもたちの行動が荒れがちになります。
時間帯別のデータから、下校前の時間帯が特に荒れがちであることがわかりました。
そこで、①帰りの時間の行動のあり方を復習し、②手の空いている先生が帰りの時間帯に廊下に出て「気をつけて帰ってね」などの声かけをしました。
その結果、データの数値が改善されました。

データを取らない限り、PBISの予防・介入・支援は的確に行えません。

データを取ることで、より効果的に予防・介入・支援ができます。

行動分析による介入の例

ある児童が暴力を振るった際、その裏にあるものが何かをまず見極めます。
その結果として、ストレスがたまっていてストレスのコントロールがうまくできていないのではないかと分析した場合、その子どもにストレスマネージメントの支援をします。お昼休みの時間を使って支援をすることが多いです。
このように、データを使って学校全体やクラス単位で仕掛ける支援・介入と、一人ひとりに仕掛ける支援・介入があります。

5 編集後記

この記事ではPBISのアメリカでの具体的な取り組み、声掛けについて扱いました。
次回の記事では、
PBISを効果的な取り組みにするために 学級を元気にするポジティブな行動支援PBIS③
を扱います。

前回の記事では、
PBISの定義について扱っております。 学級を元気にするポジティブな行動支援PBIS①

ぜひご覧ください!

(文責・編集 EDUPEDIA編集部 宮崎俊一)
【関西教育フォーラム2016特集企画】もご参照ください ⇒ 【関西教育フォーラム2016特集企画】いじめ問題に挑む!~生徒主体のいじめ対策~

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