通知票の電子化に関するFAQ(職員合意形成用)

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職員の合意形成を図る

通知票の電子化をはじめるには、管理職をはじめ、職員の合意形成を図ることが必要です。これがけっこう手間と根気を要する課題であり、合意を得ることができずに前へ進めない学校・自治体は多いと思います。かといって、自治体全体で大規模なサーバーを立て、予算を組んで業者に業務を委ねる作業ができる体力がある教育委員会もそれほど多くないかと思います。

そこで、通知票の電子化に関するFAQ(Frequently Asked Questionsの略語=頻繁に尋ねられる質問)を作ってみました。職員が抱く疑問に対して明確な回答をすることができれば、導入までの過程がスムーズに進むことと思います。下記を参考にしてぜひ、通知票の電子化を推進してみてください。

通知票の電子化については、

コンピュータによる通知票の全面的作成

も、ご参照下さい。目から鱗が落ちるような仕事の効率化が可能となります。

また、下記の文章をエクセルにまとめたファイルを添付しています。職員に配布するなどして、ご活用ください。
添付ファイル

最初に議論をするところから始めると、それにとられてしまう時間が膨大なものとなってしまいます。議論をする前にこの文書を読んでおいてもらえれば、反論があったとしても、そこそこの予備知識を持って議論をスタートすることができます。
ファイルの中には、電子化に関して「懸念」されるであろう案件に関するQ&Aも入れていますので、そちらの方もお読みください。

目次

1 通知票の電子化に関するFAQ

※ 電子化に際して、たくさんの疑問をお持ちだと思います。会議であれこれと議論する前にお読みいただいた方が効率的かと思います。Qに関してはあくまで、係個人の考えです。

@<color>{#ff0000Q,どれくらいの学校であゆみの電子化が行われているのですか。}

A ○○市では30校程度と聞いています。○○小学校の○○先生バージョンと△△小学校の△△先生バージョンが多く使われているようです。自治体によっては全校で電子化しているところもけっこうあるようです。小学校に比べると中学校ではかなり多いようです。

@<color>{#ff0000Q,どんなメリットがあるのですか。}

A
 
1. 第一に、効率化を図ることができます。効率化によって「子どもと向き合う時間の確保」と「勤務時間の適正化」が進められます。(後述)
2. セキュリティーが高くなると思います。(後述)
3. 所見・成績の一覧表と印字した個々のあゆみのデータが完全に一致します。
4. データの比較、「評価の評価」が可能になる(後述)。
5. 1学期ごとに渡し切りという方法をとれば、失敗してもまた刷ればいいだけとなる。
6. エクセルは、ワードの操作やHPの閲覧とは違い、かなりコンピュータらしい作業になります。それが、よいスキルアップ、職員研修の機会になると思います。

Q どんなデメリットがあるのですか。

A 
1. 手書きのぬくもりには劣ると思います。(後述)
2. 印刷時にトナーの費用がかかると思います。やり方によっては紙代もかかると思います。(後述)
3. やり方によっては、紙を大量に使う事がエコロジーに反すると考える方もおられると思います。
4. データがひとつずれると連続して失敗が出る可能性があります。(後述)
5. ファイル・データが消えてしまうなどのアクシデントに見舞われる可能性があります。(後述)

Q 何時間の効率化になりますか。

A
かなり個人差があると思います。
昨年度、所見と成績一覧表をパソコンで出力していた方でも、小さく見積もって1学期に2時間ほどの効率化になるのではないでしょうか?年間6時間です。手書きの場合などを考えて多い目に見積もれば、年間で15時間くらいは効率化できるのではないでしょうか。"

Q 紙代、印刷代に経費がかかるのではないですか。

A
どういう方法を採用するかによりますが、今回提案している、「年間3枚を渡し切りで、A4にデータだけで印刷、クリアファイルに挟んで保管」であれば、1人分で年間
(紙代2円+印刷代12円)×3学期=42円 (+初年度ファイル購入代150円)
1200人分で
42円×1200人=50400円
です。印刷代の12円は推測(印字比率15%と仮定)です。これに、プリンタ本体の消耗に関わる費用が発生します。ちなみに教員1人が年間6時間をセーブでき、教員の時給が2000円であったとして、試算すると、金額に換算して
2000円×6時間×35人=42万円
分の勤務時間の適正化を図ることができます。

Qシステムを活用するに当たって、技術的に無理はないですか。

A
初年度、特に1学期は操作を覚えるために少々の時間を必要とすると思います。それも、その後を考えるとかなりの効率化を図る結果となると思います。成績一覧表もパソコンでABCを入力するだけです。パソコンが苦手な方でも特に支障はないと思います。

Q 担当者が変わると引き継ぎが難しくなるのではないですか

A
他校でも、担当者が変わっていますが、継続されています。メンテナンスもそれほど難しいシステムではありません。

Q 担当者に負担が集中しませんか。

A
担当者への負担を減らす工夫は必要だと思います。特に、技術的な質問や援助要請を担当者ではなく、近くのPCに詳しい職員にお願いするように心掛けて下さい。

Q 電子化するにしても、他にもっといいシステムがあるのではないですか。

A
たくさんの電子化システムが流通していると思いますが、簡単に言うと「必要事項(データ)を入力して、必要分を印刷する」というインプット&アウトプット作業をするという点では同じで、それに加えていくらかの手間があるかないかという違いです。
数年後に市のシステム等に電子あゆみのシステムが載る可能性がありますが、それほど手間や手順が大きく違う事はないかと思います。 

Q 素点を入れると評価・評定がコンピュータで計算されるようにはできないのですか。

A
もっといろいろと便利にできないことはないですが、便利にすればするほどシステムは複雑化していきますので、それは避けています。各自でエクセルを使えば、簡単にシュアな評定ができますが、小学校の成績をつける際には(専科教員でなければ)、アナログで行ってもそれほど手間は変わらないように思います。要録の評価・評定に関しては、あゆみの評定からコンピュータで算出できるようにする予定です。

Q 手書きのぬくもりがないと思います。

A
確かに、手書きの方がぬくもりがあると思います。勤務時間の適正化をとるか、手書きのぬくもりをとるかという判断となります。効率化が実現できれば、あゆみでなく、手紙を書く時間も生まれてくると思います。手書きをしたい方にとっては、そちらで存分に手書きの文章を自由に書いてあげる機会が産み出されると考えることもできるのではないかと思います。

Q セキュリティー上の問題があるのではないですか。

A
校内で作業をするので、印刷ボタンを押して紙に出さない限り、外にデータが漏れることはありません。電子データにはパスワードをかけられます。紙のあゆみに比べれば、断然セキュリティーが高いと考えていいと思います。

Q 印刷に時間がかかるのではないですか。

A
レーザープリンタなら片面1枚10秒程度です。インクジェットで30秒です。
裏表20秒×40枚=800秒≒14分程度
でしょうか。印刷ボタンを押すだけなので、体感時間は2分程度です。

Q コピーできるので、所見が同じ文面になるのではないですか。

A
現時点で、所見をパソコンで書いている職員がほとんどであることを考えると、今回全面的に電子化することとはまた別な問題であると考えるべきだと思います。

Q ファイルが消えてしまうとたいへんなことになるのでは。

A
コンピュータを利用する以上、その可能性は常にあるとお考えください。ただし、「学校フォルダの決められた場所に保管し、個人フォルダにバックアップをとる」という方法で、 なりの安全運転が可能だと思います。
また、誤って消去などをした場合も、サーバーから再度データを戻す方法もあります。
エクセルがフリーズする場合もありますので、その場合に備えて、エクセル上でのバックアップの時間設定を短くとるように、研修で話します。"

Q ミスが出やすいのではないですか。

A
思わぬミスも含めて、ミスが出ることは、手書きでも電子化でも同じです。電子化の場合は、ひとつデータがずれるとその後のデータが全てずれるようなミスも出ます。ただし、電子化した場合、ミスの検出ができれば、紙を破棄して書きなおすことは容易です。

Q 所見に書き込むことのできる文字数が多い、または少ないのではないですか。

A
初期設定は、ご覧のとおりです。各自の責任において変更は可能です。

Q 電子化されると評価・評定がいい加減になりませんか。

A
個人の問題であると思います。
かえって、電子化されるとデータの集計が容易にできるため、他の教員の評価や前年度の評価との比較(評定の平均値を出すなど)が容易にできるようになりますので、学校としてはシュアな「評価の評価」を行うことが可能になります。
総合評価を重点的に考えるより、形成評価に軸を移した方が子どもの力を伸ばすことができると考えています。

個人情報の持ち帰りについて

上記の疑問に加えて、

Q 電子化をしても通知票を家に持って帰って仕事ができますか?

という疑問が必ず出てくることと思います。ところが、この疑問への建前上での答えは、「電子化でなく紙の通知票であっても、個人情報全般が家に持って帰ってはいけないというルールになっています」となります。
ところが、現実的には家に持って帰らざるを得ない状況はあると思います。持って帰ってはいけないというのであれば、持って帰らなくていいように管理職は「勤務時間の適正化」を徹底し、5時には通知票作成を含めた仕事が終わるようにしなくてはなりません。それができないのであれば、職員室を深夜まで開けるか、土曜日や日曜日に開けるかして、持ち帰りをしなくてもいい状況をつくらなくてはなりません。職員も好きで大量の持ち帰り仕事をしているわけではないです。これは、労働問題も絡んだ難しい課題です。
だからこそ、通知票の電子化を推進し、短時間で間違えのない作業を可能にすることによって勤務時間が適正化されることを図ることは管理職・職員双方にとって大きな利益のあることとなります。また、紙情報と違い、電子情報にはパスワードをかけることもでき、セキュリティーは高いと考えられます。通知票以外にも多くのサービス残業を生み出す要因がありますが、通知票に限って言えば、電子化によって勤務時間内に作業を終わる状況を作り出せるほどの強力な効率化が期待できると思います。ぜひ、電子化を推進していきましょう。

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