光の実験 凸レンズが映し出す像から日常生活に目を向けよう(荘司隆一先生)

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作成者: 荘司 隆一さん

1 【はじめに】

本稿は、筑波大学附属中学校で行われた荘司隆一先生の光の実験の授業を見学させていただき、記事にしたものです。

2 【授業の狙い】

今回の授業以前の学習で凸レンズの性質は理解しているので、その既習知識を活かして身の回りにある光やレンズの性質を活かした例を知識と結びつけます。実際に自分の日常生活において理科で学習した知識が使われていることを理解させることで、理科への学習意欲を高め、理科を学ぶことの重要性を感じさせます。そして、理科を体で感じ、その後の理科だけでなく様々なことへの好奇心を養わせます。

3 【実験概要】

文字が書かれた紙(物体)に光を当て、凸レンズを通して様々な状況でスクリーンに像を映し出します。実験の際には、生徒たちが実験結果を予想するような時間をとったり、光の原理が日常生活のどのような例で使われているかを考えさせます。

4 【実験器具・材料】

光源 物体 凸レンズ スクリーン 

5 【授業内容】

おさらい

まず、前回までの授業内容を確認していきます。レンズと物体の位置の距離を変えることで凸レンズを通して出来た像は、様々に変化します。

・物体を焦点の外側に置いたとき

物体がレンズから離れるほど実像は小さくなり、像の位置はレンズに近づきます。また、物体がレンズに近づくほど実像は大きくなり、像の位置はレンズから遠ざかります。物体を焦点距離の2倍の位置に置いたとき、物体と同じ大きさの実像が焦点距離の2倍の位置にできます。これは、レンズからの距離が物体と像の距離が等しいために起こる現象であるからです。

・物体を焦点の内側に置いたとき

物体側に物体より大きな虚像(本当にそこにあるわけではない実物より大きな像)ができます 。

・物体を焦点上に置いたとき

レンズの軸に平行に進む光線とレンズの中心に向かって進む光線は、平行になり像はできません。

実験

生徒たちを集めてからスクリーンに「つくば」と書かれた文字を映す実験を始めていきます。レンズとスクリーンは焦点距離から2倍の位置に置いておきます。

①物体の位置を動かし、スクリーンに映る像を確認していきます。物体をレンズから遠ざけて像が小さくなっていく現象を、カメラの原理と同じだということを気づかせます。また、レンズに近づけて像が大きくなる現象を生徒たちに質問しながら投影機やプロジェクタと同じ原理であることを想起させます。ここで文字が大きくなっていくと像が暗くなるので、プロジェクタを使用するときは周りを暗くしなければいけないことを思い出させることにより生徒の理解が深まります。

②物体の光を遮蔽物(教科書など)で遮ることで、スクリーンの像がどこから隠れていくかを実験していきます。実像は倒立像(実物と逆さまの像)なので、「つくば」の文字が、隠した側から上下左右逆に隠れていきます。

次に物体と光源の間ではなく、レンズとスクリーンの間を遮蔽物で隠すことで像がどのように映るかを生徒たちに考えさせながら実験します。生徒たちに意見を言わせると既に塾などで答えを知っている生徒もいるようでしたが、好奇心のある生徒たちの様々な意見を聞きながら授業を進めていきます。

実験結果は、像は暗くなりますがスクリーンには像が映っていました。像はレンズを通過した光が集まってできるので、レンズの直前を隠すと光の量が減るので暗くなります。この原理が、顕微鏡のしぼりで使われていることを知ると、生徒たちは「なるほど!」と理解に深みが持たされたようでした。

また、物体が焦点より内側にある場合は、レンズの反対側から覗くと元の物体より大きな虚像が見えます。虫メガネを例にして伝えることで、この現象をより身近に感じることができます。

光とレンズの原理の身近な例

実験後には今まで習った内容が日常のどの場面で使われているかを生徒たちに紹介します。理科で習った内容を理解し、応用として日常の例を考えさせます。

カメラや人間の目が倒立実像の原理であることを、パーツを実験道具と置き換えながら説明します。説明し終えると、「今見ている世界は逆さまの世界であるのか」という問いを出します。生徒に発言させながら、考えさせていくのです。

答えは、実際にカメラを起動して残像現象から理解させます。ビデオカメラを起動して録画しますが、途中でキャップをつけてしまいます。ここでビデオにはキャップをした瞬間は、まだ映像が映っていることを説明します。一旦見えているモノはメモリや頭の中に保存され、その保存された倒立像をコンピュータや脳が正立像に処理することでモノが見えているのです。言葉だけでは理解しにくい現象を、ビデオカメラを実際に使うことで、体で感じて理解させることができます。脳のプログラムで見えているということは、この後の単元の「音」の授業でも関連してきます。また、生徒が興味を持つように幽霊や幻覚の話を先生はおっしゃっていました。幽霊や幻は見たものを脳で処理する過程の中から生まれた錯覚現象だろうけど、実際には確かめてみないとわからないだろうねと生徒たちの想像をかきたてていました。

他の身近な例として、凸レンズと凹レンズを実際に用いた近視と遠視のメガネの説明やテレビのリモコンの赤外線などがあります。リモコンの赤外線は光と同じように直進で進み、鏡などにぶつかると反射します。反射の原理を確かめるためにテレビの方向とは逆に鏡を用意し、鏡にリモコンを向けて電源を消してみました。実際に消えたのはいいのですが、実験に用いたリモコンが鏡なしでも全く違う方向に向けても電源が反応してしまいました。大変愉快な実験でしたが、実験としては失敗なのでご注意ください。生徒たちは普段から使っているものを試すことで大変盛り上がっていました。

6 【編集後記】

荘司先生は、「この授業はおまけの授業ですが、このおまけがないと理科を勉強した甲斐がない」とおっしゃっていました。理科離れが昨今叫ばれていますが、理科の楽しさ、研究の楽しさは荘司先生の授業のような「発見」があることで生まれると感じました。また、授業の中で質問の内容を知っている生徒たちにも先生は意見を聞いておられました。先生の姿勢は、生徒たちの意見を言わせることで物事への関心を強めようとしていらっしゃるのではないでしょうか。

理科は本来楽しいものだと児童や生徒に思ってもらえる素晴らしい授業だったと思います。
(編集・文責:EDUPEDIA編集部  坂本一途)

7 講師プロフィール

荘司 隆一(しょうじ・りゅういち)先生

筑波大学附属中学校教諭。

「既習の知識を使った探求的な実験」、「小中高での連携したカリキュラムのスパイラル構造」、「科学的なモノづくり的な体験としての実験」、「グループでの活動(学び合い)」
を行うことを基本に考えながら実験の指導を組み立てている。

主著に『イラストでわかるおもしろい化学の世界』東洋館出版社、『板書とワークシートでみる 全単元・全時間の授業のすべて』東洋館出版社などがある。

『イラストでわかるおもしろい化学の世界2 調べる実験』 東洋館出版社
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