叱らないことを前提にした授業づくり(俵原正仁先生)

GOOD!
10398
回閲覧
33
GOOD

作成者: EDUPEDIA編集部 (Edupedia編集部)さん

1 はじめに

本記事ではどのように児童を叱らずに集中させ、また褒めて伸ばすかをメインに、多くの授業や成績評価の際の工夫を紹介します。

2 授業はじめのテクニック

チャイムが鳴ったら、「今日は何の日でしょう?」といったような、ちょっとした遊びの要素を含んだ問題を出してみて、児童に答えさせます。

隣の人と相談させることで、交流が生まれ、クラスも和みます。

※全員が参加するには

答えを黒板に書かせる場合、児童2人がペアになって、どちらか1人を書く係、もう1人を読みあげる係にします。このようにすることで全員が参加できます。

効果

授業のはじめに遊びを取り入れることで、児童は参加するのが楽しみになり、始業チャイムが鳴ると自然に教室へ戻ってくるようになります。遅れて席に着く児童を叱る必要がなくなります。

3 成績のあゆみを楽にするテクニック

“毎月”児童に、下記の項目が書かれたプリントを配ります。

  • 授業やそうじなど、学校の活動内で頑張ったことや頑張っていること
  • 頑張った友達とその理由
  • 休み時間によく一緒にいる友達
  • 翌月の目標

以下、プリント資料

 ※上記の資料を以下のリンクからダウンロードできます。
  印刷してお使いください。

 添付ファイル

「頑張った点とこれから頑張る点」を書かせることで、児童は目標を明確に認識できるようになります。教師にとっても、成績のあゆみをつける際の助けとなります。

また、「頑張っている友達とその理由」については、児童の前で教師が読みあげて褒めます。

ポイント

児童の中には、仲のいい友達のことしか書かない子もいます。そのような子が普段遊んでいない児童のことも褒めだしたら、「おっ!よく見ているね。」などと言ってしっかりそのことを評価しましょう。こうすることで、普段あまり交流のない児童同士が認め合う環境が生まれ、クラスの雰囲気がよくなってきます。

頑張っている友達の欄に名前が出てこない児童がいた場合

クラスの子全員の頑張りをみんなで認め合うことが、ここでの目標です。しかし、最近元気のない子や振り返りに名前が出てこない子がいる場合は、配慮する必要があります。
 たとえば、あくまでプリントにその子の名前が書かれている体(てい)で、「○○くんは最近音読を頑張っているよね。」など、先生がアドリブで褒めるのも一つの方法です。

※その子が実際に頑張っていることを挙げないと、反対にその子を傷つけることになるので、しっかりと児童の良い点を把握しておくことが重要です。

そしてなによりも大切な項目が、@{「休み時間によく一緒にいる友達」を書かせる欄です!}

その欄があると、急に一人で過ごすようになった子や、友だち関係に変化が生じた子を把握することができるからです。もちろん、それを把握して、すぐに動き出します。

@<u>{※教師からは見えづらい一人ぼっちの可視化}

4 児童を褒めるポイント

①テスト後

以前は20点だった児童が30点に上がっていたら「以前より(前より)良くなったじゃないか、素晴らしいねえ」などと言って褒めます。(『以前と比べて』という言葉をいれることで、児童としては「前の結果も含めて、先生が見ていてくれた!」という気持ちが生まれ、信頼関係が高まります。)
しかし、児童はわざとらしさを嫌います。もちろん、褒めることは大切ですが、わざとらしいあからさまな褒め言葉もよくないので注意してください。

※注意点

教師が「できたか・できていないか」にこだわると、児童に「もうできているからこれくらいでいいや。」という気持ちになることがあります。「伸びたか・伸びていないか」という意識で、子どもたちを見て、褒めてください。

また、一生懸命なのに点数が伸びない児童には、「前より集中できたね。」や「早く終われたね。」というように、別の角度から言葉をかけます。

②教師の話の最中

普段、授業中によくおしゃべりをするAくんが、話をしっかり聞いていたら、「よく聞けていたね。」と褒めます。

また、授業中明らかにボーっとしていたBくんには、「おしゃべりせず、静かに話を聞いていたね。」と声をかけてみます。こうすることで、Bくんには先生からしっかり見てもらえている、という意識が生まれ、集中するようになります。

このように、叱らなくても、クラスのみんなの意識は高まります。

5 机間巡視の注意点

デッドゾーンを生み出さないこと!

端の席も必ず回りましょう。前もって巡視のルートを決めておくと、全ての席を回ることができ、デッドゾーンがなくなります。また、ルートに基づいてまわることで、児童は教師がいつ来るかがわかるので、質問があっても待つことができるし、無駄な圧力を感じずに済みます。

ポイント

人間には、心臓が左側にあるという理由から、左側に意識を集中させてしまう習性があるようです。そのような習性を理解して、常に自分の右側の児童に気を配れているかどうかを意識するだけでデッドゾーンは生まれにくくなります。

机間巡視の際の新人教師によくあるミス

進みのやや遅い1人の児童につきっきりになると、他の児童に気を配れなくなります。その結果、まわりの子どもたちは自分が相手にされていないと思ってしまうことがあります。また、“いつも先生がついているあの子は勉強が苦手な子”というイメージがついてしまうこともあるので注意が必要です。一通り巡視して、残り時間でまだできていない子につくと、自然に見えます。

机間巡視の際に、はんこやペンを持ってできる範囲でチェックすると、ノート回収したあとのチェックの際に楽になります。

6 良いクラスとは、声が出せているクラスである!

声を出す基本的な行為はあいさつです。そして、あいさつ一つにも工夫ができます。

その方法には、次のようなものが挙げられます。

  • ゆっくり言う
  • 大きな声で言う
  • 高めの声で言う
  • あえて間をはさむ

この他にも、飽きさせない方法は多く存在します。

ポイント

音読やあいさつは教師が工夫をして先に言ってみましょう。

音読が嫌いな児童へ

音読が嫌いな児童はページをめくることさえも面倒くさいと嫌がるので、文章を一つの紙にまとめて渡しておくと、意外とすっと入りやすくなります。

7 科目の本質の楽しさを伝える

小学校から中学校へ上がったとき、小学校のほうが面白かったから戻りたいという欲求や中学校の勉強がつまらないという意識が生まれるといけません。小学生のうちから、各教科の本質的な楽しさを教えるのも重要です。

8 ヤンチャな子を褒めるとき

褒めることを意識して、1人の子ばかりに目が行き過ぎると、かえってその子が浮くことになり、教師の思いとは逆の方向になってしまうことがあります。心の距離を急に詰めようとすると、余計に離れてしまいます。特に、ヤンチャな子は教師のこういう動きに敏感なので、注意が必要です。

心の距離を詰めるときは少しずつ近づくようにします。手段としては、その子を含め複数の児童を大きなくくりとして褒めたり、児童の仲間を褒めて周囲から歩み寄るようにするとよいでしょう。

ポイント

大きな範囲から褒めていき、距離を近くしていきます。

9 あまりのある二けたの割り算

あまりのある割り算で、あまりを求めるとき、繰り下がりのある引き算が必要な問題は100問しかないといわれています。

その100問を、10問×10セットにして、計算練習をしていきます。制限時間は、1セット10秒です。もちろん、最初のうちはできませんが、毎日続けていくうちに、自然とできるようになってきます。この時も、前よりもできた問題の数が増えていたら、しっかり伸びている点を褒めていきます。

10 児童の意識の変え方

漢字練習の例:大修館書店出版の、すべての漢字が載っている5万字ポスターを教室に張ります。その学年で習う漢字をそのポスターに重ねます。児童は、自分たちが学習する漢字の量は意外と少ない、という印象を受けるので、苦手という意識が変わります。

11 クラスづくりの技集

<全力じゃんけん>—— 大きな声を出して、本気でじゃんけんをします。勝ったら本気で喜び、負けたら本気で悔しがります。
効果:いつものじゃんけんとは違った雰囲気で楽しくなるし、すっきりします。

<全力ミュートじゃんけん>— 全力じゃんけんとは反対に声を一切出さないで行います。児童と教師とでじゃんけんをし、勝っても負けても声を出さず、静かに喜んだり、悔しがったりと顔と手の動きで表現します。
効果:自然と静かになり、この流れで授業にスムーズに入れます。

12 編集後記

俵原先生の授業作りにはさまざまな工夫が盛り込んであり、どれも、児童がいかに心地よい環境で授業を受けられるかという点に重きが置かれていたところに感心の連続がありました。

「基本的には叱らない。しかし、授業には集中させる」。先生のこの考えは教師にとっても、児童にとっても心地よく、かつ、楽しい授業にする手立てとなります。
(編集・文責 EDUPEDIA編集部 岸 剛志)

13 実践者プロフィール

俵原正仁先生
兵庫県芦屋市立山手小学校 / 教材授業開発研究所笑育部会代表
「笑顔の教師が笑顔の子どもを育てる」という「笑育」なるコンセプトによる実践は、朝日新聞、朝日放送「おはよう朝日です」などマスコミにも取り上げられた。現在、「教師が無意識に行っている行為を意識化することで、学級づくり・授業づくりが変わってくること」を、関西を中心に講演などで提案。座右の銘は、「GOALはHAPPYENDに決まっている」。
主な著書に、
『俵原正仁直伝!楽しい授業づくりのツボ』(明治図書出版)
『なぜかクラスがうまくいく教師のちょっとした習慣』(学陽書房)
などがある。

コメント

コメントはまだありません

    より良い実践のためには、あなたの励ましや建設的な対案が欠かせません。
    ログインして、ぜひコメント欄をご活用ください。