Q-Uが「いじめ」の解決に役立つ理由

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作成者: 深美隆司さん

1 Q−Uが「いじめ」の解決に役立つ理由

(年始めの仕事)
今年の仕事始めは、デスクワークです。Q−Uアンケートは早稲田大学の河村茂雄先生が考案された、アセスメントツールなのですが、松江市立第一中学校のQ−Uデータを整理して現場で使い易い形に手直しをする仕事をしていました。学級満足度尺度は、縦軸に承認度、横軸に被侵害度があらわされます。X軸とY軸にあたる部分は平均値です。ですので、個人の得点をプロットしていくと、右上にプロットされれば学級に対しておよそ満足していることになります。対して左下にプロットされれば不満足、あるいは支援を要する群に入るということです。この尺度でおおよそのクラスの様子が伺え、子ども支援の秀逸な資料となります。全国的に大きく広がり、多くの学校で使用されているQ−Uですが、不満足群、要支援群にプロットされた子どもたちの心模様や心の叫びを感じ、心が痛むかどうか・・・。Q−Uはあくまでツールですから、先生がどう感じ、行動するのか。これが問題です。

(アンケートの力)
今朝(1月6日)、昨日作業をしたデータを松江のならえもんさんへ書留で送りました。
さて、アンケートと言えば・・・なのですが。多くの先生方は「子どもや集団の理解のため」と言われます。しかし、私は「先生のため」という以上に「子ども自身のため」と思っています。私がコーディネーションしている学校には、「必ず、一問ずつ先生が読み上げて下さい。」とお願いしています。さらに、レーダーチャートで表した個票を子どもたちにフィードバックとして返してもらいます。先生が一問ずつ読み上げると子どもたちは認知力を駆使して、自分と対話を始めるのです。そして、評価を下します(回答します)。アンケート調査後、子どもたちは無意識的な自覚のもとに行動し、評価としての感情をもつのです。そして、次のアンケート調査の時、再び自分と対話することで、微々たる成長を感じるのです。つまり、認知→行動→評価のスパイラルのもとに、規範意識の醸成やこころの成長を成し遂げます。こんなアンケート調査の効用を大事にしたいものですね。
認知→行動→評価のスパイラルの解説です。http://edupedia.jp/entries/show/1137

(レーダーチャートがあらわすものは・・・)
Q−Uの学級満足度尺度の場合、友人・学習・先生・学級・進路の観点で、下図のようなレーダーチャートを作成することができます。一般的に、このチャートを見ると「左の子どもは力があって、右の子どもは力がない」と判断されます。しかし、問題はその力とはいったい何なのか? ということなのです。このことを深めていかない限り、子どもを支援することはできません。わたしの見方なのですが、チャートの面積の「広い、狭い」でこころの成長具合を見るのです。右の子どもは明らかに、こころの成長が阻害されていると言えます。「遅れている」などという見方をしません。阻害されていると認識すれば、成長の阻害されている要因を「どう見るのか」という、子ども自身の課題解決を援助できます。決して「遅れている」から「がんばれ」などという精神論で迫ってはいけないのです。

(ネガティブをポジティブに)
原因不明の腰痛は劇的に回復する・・・
昨日(1月7日)の「たけしの家庭の医学」の特番で扱われていたテーマです。原因不明の腰痛を改善するために、腰痛日記というものをつけるのです。①行動したこと、②感じたこと、を毎日つけます。そして、感じたことの中に、ネガティブな思考を見つけた時、そのネガティブな思考の枠組みを、ポジティブなとらえ方をするように、努力をします。これを地道にコツコツと続けると、ネガティブなとらえ方が、ポジティブなとらえ方に変容していくのです。そうなると、あれだけ悩んでいた腰痛がうそのように改善していたというのです。これは、認知行動療法と呼ばれているものです。つまり、その腰痛はストレスが原因だったのですね。

アンケートの扱いも、これに似たものがあります。回答用紙とレーダーチャートを材料に、子どもと面談する中で、子どもがもっているネガティブな部分に着目し、ポジティブな枠組みを引き出していくのです。時間はかかりますが、レーダーチャートの面積の狭い子どもへの支援は時間をかけなければいけません。

(認めることが成長に)
「あなたが認めたくないものは何ですか? どんなにつらくても、それを認めれば道が開けます。」
このフレーズは、ニッポン放送(ラジオ)、「テレフォン人生相談」のパーソナリティーをされている早稲田大学、加藤締三さんの初めの言葉です。わたし、この番組のファンで、ラジオ付きボイスレコーダーを購入して、録音してまで聴いています。パーソナリティと相談相手の二人で番組は進行するのですが、加藤さんとのベストペアは、幼児教育研究の大原敬子さんです。加藤締三さんは見立てがすごくて、大原敬子さんは返しがすごいのです。何度も聴き返して勉強しています。

「認めれば道が開けます。」実は、アンケートもそうなのですね。わたしは「自分と対話する」と以前の記事で書きましたが、「自分と対話する」には人間としての力が必要なのですね。「感じている」ことを「認めること」にまで高める力です。レーダーチャートの面積の小さい子どもは、「感じること」はできても「認めること」にまで高めることができない。そこで、教員の支援が必要とされるのです。・・・このことが理解できるかどうか、教員としての力が問われます。

あいあいネットワークofHRS、中学校年間8時間×3年間=24時間のブログラムの基礎であり、中核をなしているパッケージはストレスマネジメントです。わたしの研修では実際に大人を相手に実施しているのですが、実際にストレス(刺激)を与えることによって、①ほっとした、②残念だった(腹が立った)、③わかってました、という反応をワークショップによって生み出します。③は、刺激がほぼゼロに近いので、核になる感情は生まれませんので除外しますが、①や②の感情を掴みきれる人と、掴み損ねてしまう人が出てきます。掴みきれる人は、言葉としてちゃんと表すことができるのですが、掴みきれない人は自分の感情を言葉であらわすことができません。「あせってしまった」とか「疑問に思った」とか、その途中のプロセスの状態は言語化できても、結果としての直後の感情が表せないのです。そして、例えば「残念だった」ということをシェアすると、「あっ、そうそう、それそれ」という感じになるのです。つまり、個人の力としては、言語化できない・・・、するとそういう人は日常生活においても同じような反応になってしまい、ピンでの感情を掴むことができないのです。結果、「認める」ことができません。「認める」ことの第一条件は、「的確に言語化する」ということなのです。
あいあいネットワークofHRS、中学校年間8時間×3年間=24時間のブログラム http://www.aiainet-hrs.jp/06facilitation/stile/stileB.htm

(認めることは・・・自分自身を受け容れること)
認めることの第一条件は、的確に感情を掴んで言語化して一般化、普遍化することなのですけれど、それを阻んでしまう様々な困難につきまとわれます。なぜなら、そこに自己防衛本能が機能するからです。その代表的なものが「反動形成」と呼ばれているものです。反動形成とは簡単に言えば、自分が感じていることと反対の行動をとってしまうということです。そして、その感じていることとは負(自分が感じている)の要素が含まれることが多い。たとえば、友人が少ないということに負い目をもっているとします。すると、その人が無意識のうちに「友人なんて必要ないさ!」と公言したりすることです。実は、さみしいと感じているのに、そのことを認めることを自分自身が許せないんですね。だから、正反対のことを表現してしまいます。これは、人間の成長過程で普通に起こることですが、人生経験のなかで克服していくことができます。しかし、克服できずに大人になってしまうと・・・不幸にも様々な困難を抱えて生きていかなければならなくなってしまうのです。
自分自身を受け容れ、それを認めることができてこそ、的確に言語化できると言っていいでしょう。

(「いじめ」の根底にあるもの・・・反動形成)
自己防衛本能の中でも反動形成という現象は攻撃性を伴います。つまり、自分自身が「いやだ」と感じている部分を相手に見いだし、相手を攻撃することによって、自分自身のいやな部分を覆い隠してしまおうということなんですね。しかも、そのプロセスを自分自身は自覚せずに、無意識のうちにやってしまいます。そこに、力関係の上下が存在すれば、なおさらその攻撃性は強まりますし、一人をターゲットにすることにより、一人対多数という人数的な力の差も加わってきます。さらに、それがグループ間のトラブルにまで発展し、トラブルの結果によりグループ間の序列まで形成してしまうこともあります。
アンケートというものは、一人ひとりへの支援を浮き彫りにしてくれるものであると同時に、学級というひとつの集団に対する支援の道筋を明らかにしてくれるものであると言えるでしょう。Q−Uのプロット図を作成したら、あわせて、グループどうしの人間関係図もあわせて作成してみましょう。そうすれば、必ず、いじめ解決の処方箋が見えてくるはずです。

(おわりに)
このコラムは、Facebookに書いた記事をまとめたものです。https://www.facebook.com/profile.php?id=100005260954587
子どもの成長を促していくこと・・・この教育の本来の目的を追求することが、「いじめ」防止、「いじめ」問題解決の王道です。起こってしまった後の対蹠的な取組はもちろん必要なのですが、それだけでは、後追いの指導に終始してしまい、状況がさらに悪化することさえあります。
そうならないために、教育の本来の目的である「主体的な人間に育てる」ための教育をいっしょに考えていきませんか。

関連記事
いじめ・不登校の未然防止(人間関係プログラムの力・・・松江市立第一中学校の実践より)
http://edupedia.jp/entries/show/1549

いじめ・不登校のメカニズム その1
http://edupedia.jp/entries/show/1557

いじめ・不登校のメカニズム その2
http://edupedia.jp/entries/show/1564

いじめ・不登校のメカニズム その3
http://edupedia.jp/entries/show/1607

あいあいネットワークofHRS http://www.aiainet-hrs.jp


図書文化社HP http://www.toshobunka.co.jp/books/detail.php?isbn=ISBN978-4-8100-3636-7

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