学校でのワーク・ライフ・バランス改善の取り組み

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作成者:Satoshi Arai (Edupedia編集部)さん

1 はじめに

この記事は、平成29年7月30日に行われた「学校働き方改革フォーラム2017 〜先生の働き方、労働環境ってどうすれば変えられる?〜」における、先生の幸せ研究所 の澤田真由美さんの分科会の内容を基に作成しています。

2 学校でのワーク・ライフ・バランスの考え方

ワーク・ライフ・バランスと、ワーク・ファミリー・バランスは異なる概念です。

  • ワーク・ファミリー・バランス…対象は育児、介護者である。属人化しがちであり、根本的な解決にはなりにくい
  • ワーク・ライフ・バランス…ライフは全ての教員にあるため、対象はすべての人である。

学校でのワーク・ライフ・バランスの話となると、私生活のために仕事をある程度犠牲にしてバランスを取っていく、というイメージを持たれるかもしれません。しかし、目指すところはそこではありません。仕事と私生活のバランスを取ることで、仕事にもいい影響がもたらされる、ということを目指していきます。

3 学校内での業務改善の取り組み

大阪府高槻市立北大冠小学校の事例

校長先生や教頭先生が率先して教員が早く帰るように声掛けをしているが、実際は帰っていなかったり、また帰っていても仕事を持ち帰っていたり、という事例は数多く存在します。校長先生や教頭先生は、いつも健康的に教員の方々に働いてもらいたい、と思って、NO残業デーなどの取り組みを行うも、その意図が明確に教員に伝わっておらず齟齬が生じる、と言ったことも少なくありません。

大阪府高槻市立北大冠小学校では改革をはじめるにあたり、キックオフ会議という、教職員全員が出席し改革への意識をそろえるための会議を行いました。その会議の前には、業務状況の評価を各教員に実施するとともに、現状のヒアリングを行い、その情報をもとに会議を実施しました。校長先生自身は、学校行事が多すぎることに問題意識を持っていましたが、会議の結果、改革するべきことは、日常業務の効率化である、という結論に至りました。
運用については、教員の働き方の改革は学年単位で動かし、毎週の学年会議において、短い時間でも働き方についての議題を盛り込む、ということを徹底いたしました。会議において短い時間で方向性の決定を行うための方法については、澤田がレクチャーを行いました。また、職員室内のホワイトボードで、教職員自ら働き方改善へのアイディアを募集し、そこを通りがかった教員同士が働き方について話す、といった工夫が始まりました。

4 教育委員会の取り組み

学校内での改善の取り組みが進むのは素晴らしいですが、1つの学校内だけの取り組みでは、転勤になった先の学校でまた一から改革をはじめなければいけない、ということにもなりかねません。すべての学校で同じように改革を進めていくためには、学校だけではなく、教育委員会も改革に取り組んでいくことが不可欠です。

教育委員会主導の改革

静岡県教育委員会の事例

この教育委員会では、まず県内にモデル校を5校作りました。そして、そのモデル校の近隣地域へ取り組みを拡大させていく、という計画を教育委員会が立てていきました。
昨年モデル校での取り組みとしては、 富士市立富士見台小学校(職員26名)では、校内委員会にて「働き方見直し委員会」を設置したほか、 退勤時刻に放送を行いました。藤枝市立高洲中学校(職員30名)では、部活動を日曜日休みする、という取り組みを行いました。

教育委員会から行政への働きかけ

行政からの文書の処理に時間をとても取られてしまう、というような行政課題を学校が抱えているということもあります。行政の協力も得られないと学校の業務環境の改善は難しくなってしまうでしょう。行政への働きかけは、学校単独でおこなうのは難しいですが、教育委員会からアプローチすることで伝わりやすくなります。
静岡県某市教育委員会の例ですが、子どもたちを通じて行政が保護者へ届ける書類について、市役所の各部署へ精査を行うように呼びかけを行いました。それをきっかけに意識改革が進み、学校への依頼事項の見直しについて検討が行われ、書類を本当に学校を通じて生徒に届ける必要がある場合にのみ、行政側が学校に丁寧に依頼するようになりました。

教育委員会から地域、家庭への働きかけ

学校の業務を削減しようとすると、よく教員の方から、保護者や地域に期待されていると思っているからやめられない、という声もよく頂きます。業務改善には、地域や家庭の理解も重要です。ここにおいても、教育委員会の協力は大きな力になります。
静岡県某市教育委員会では、シネアド(映画館で映画の前に流れる広告)を活用し保護者の意識改革を進める予定です。また、18時以降の電話対応の取りやめは、 教育委員会より保護者へ周知することで、導入がスムーズになりました。ちなみに昨年、藤枝市立高洲中学校(職員30名)では、18時以降の電話は留守電で対応するようにし、その取り組みに対して保護者満足度はなんと100%でした。「決められた時間に対応していただけるので、スムーズにやり取りができました」という声が保護者から上がりました。

教育委員会内部の働き方の見直し

学校で業務改善を行うには、学校と深く関わりのある教育委員会の内部の業務状態も改善していくことが必要になります。三重県の教育委員会では、出張の見直し 、学校対象の調査や会議の見直し、毎朝班単位での業務確認、スケジュールの見える化などを実際に行いました。

5 まとめ

このように、学校での業務改善の取り組みは全国で確実に始まり、広がっていっています。ワーク・ライフ・バランスは余力があるからやるのではなく、『より質の高い教育のためにする作戦』です。
皆さんも、今回紹介した事例を参考にしながら、改善の一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。

6 講演者プロフィール

学校専門ワーク・ライフ・バランスコンサルタント。
1981年生まれ。青山学院大学卒業後、東京都と大阪府の小学校教員として約10年間勤務。
教師として悩みぬいた自身の経験から、技術も心も豊かな幸せな教育者を増やしたいと、2015年4月に独立し「先生の幸せ研究所」を設立。
ワークライフバランスコンサルタントのプロ集団「WLBC関西」学校プロジェクトリーダー

ライフでは教育について気軽に語れる場「教育お茶会」
主宰。現役教員時代から44回(2017年6/11時点)続けている。
先生の幸せ研究所
WLBC関西
教育お茶会FB

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