授業に「学習ゲーム」を取り入れよう!~ゲーミフィケーションを使った授業~(上越教育大学・阿部隆幸先生)

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作成者:美和 田村 (Edupedia編集部)さん

1 はじめに

本記事は2017年8月11日に同志社大学にて行われた「授業づくりネットワーク2017 in京都~授業づくりのイノベーションをどう起こすか~」において開催された阿部隆幸先生の講座を取材、編集したものです。

授業づくりネットワーク

ゲーム形式の学習は、生徒たちに主体的に授業に参加してもらうだけではなく、勉強へのモチベーション向上にもつながることが期待されています。この記事ではゲームを用いた学習をするための、基本の考え方から実際に学習ゲームを行う時に気を付ける注意点などを紹介しています。

1.ゲーミフィケーションとは

2.授業にゲームを取り入れるヒント

3.学習ゲームのあれこれ

4.実践者プロフィール

5.編集後記

2 ゲーミフィケーションとは

まず初めに、ゲーミフィケーションとは何かというところを考えていきます。ゲーミフィケーションとは、2011年ごろにアメリカから出てきた言葉で、ゲームではないものにゲームの要素を取り入れることです。そうすることで日常生活の中であまり楽しめないものや続けることが難しいものへのモチベーションを上げ、目的を達成することをねらいとしています。

たとえば、御朱印集めというものもゲーミフィケーションです。善光寺というのはすごいもので、境内の建物のそれぞれで御朱印がもらえるので、全部で5つくらいの御朱印があるわけです。さらに月ごとの御朱印もあるので、その月に行かないと書いてもらえないんですよね。このように、大人でもゲーミフィケーションを楽しんでいます。
 他にもビー玉貯金というものがあります。これは、クラスの中でよいことがあったらグラスにビー玉を入れていって、それが満杯になったら、みんなでイベントをしようねというような目当てを立てて取り組むというものです。ほかにも、ラジオ体操でシールをあげるというのもゲーミフィケーションになります。さらに、登下校のときに道の白いところを必ず踏んで帰るというような、自分の中で勝手にルールづけてやっているのもゲーミフィケーションです。

3 授業にゲームを取り入れるヒント

①ゲームの4要素

まず1つ目はゴールが明確であること、2つ目はルールがあることです。このことは、たとえばサッカーを見ていてもわかります。サッカーは、ただボールをネットに入れるだけでもよいのですが、手を使ってはいけないというルールがあることによって、ゲームそのものがとても面白くなっています。このように、ルールをどうするかというところで、ゲームの面白さが変わってくるのです。

3つ目は、フィードバックシステムがあることです。その瞬間その瞬間にフィードバックがあり、勝ったか負けたかがすぐわかるということです。そして4つ目は自発的な参加であるというです。授業は強制参加であることを考えると、授業の中でゲームは成り立たないかもしれません。しかし、お約束としてまず生徒に「これ、やってみたい?」と聞いて、「やってみたい」と答えてもらい、「ではやってみようか」というところから入るとよいです。そうすると、そこで「やってみたい」と言った瞬間、彼らは自発的にゲームに参加することになるのです。

②ゲーミフィケーションの3要素 

1つ目は課題です。オンラインゲーム上でいうとクエストとかミッションなどの課題設定です。2つ目は報酬があることです。例えば、その後みんなで楽しいイベントが待っているとか、経験値がアップするとか、というものが挙げられます。3つ目は交流です。自己満足で進んでいくものや、レコーディングダイエットなど自分で記録をとって誰にも見せずに行っていくというものではなく、それを知っている人同士で共有し交流することでやる気が増してくるということです。この3つを授業に取り入れていくという発想があります。

③藤川大祐さん(千葉大学教授)から学ぶ11個の要素

ゲーミフィケーションをさらに考えていったときに、藤川大祐さん(千葉大学教授)がゲーミフィケーションユーザーに必要なゲームシンキングを見つけています。藤川大祐:ゲーミフィケーションを活用した「学びこむ」授業の開発,千葉大学教育学部研究紀要,64,pp.143-149,2016ゲーミフィケーションを基にした授業を構成するときに11個の要素を考えていくと、授業としてよくなるだけではなく、さらにその11個の要素を子どもたちが身に付けることができるのではないかとも考えています。その11個をこれから紹介したいと思います。

1つ目はゲーミフィケーションを取り入れることで問題解決を促すこと、またはそのような仕組みを作らなければならないということです。
 2つ目は初心者や専門家、熟達者まで興味が持てるようにすることです。授業の中で全員、基礎教養を同じくらい持っている前提で授業を行うのではなく、様々な人がいるからこそ楽しいし、成り立つし授業ができる、という考え方です。
 3つ目は大きな課題を対処可能なステップに分解していくことです。いわゆるスモールステップ、課題を少しずつ分解していくような仕組みです。

4つ目はチームワークを促進するということです。
 5つ目はプレイヤーにコントロールの感覚を持たせることです。最近ではアクティブラーニングと呼ばれていますが、指導者目線ではなく学習者目線、つまり主語を指導者ではなく学習者にするということです。ただやはり授業とは教師が課題などを持ってきて学習者に投げかけているわけですから、根本は教師であるのですが、「やらされている」感覚ではなく、「自分でやっている」「自分が解決している」という感覚を持たせることがポイントです。ゲーミフィケーションを通してこれらのことが可能になるのではないか、と考えます。

6つ目は参加者それぞれが個別的な経験をするということです。一斉的ではなく個別的な経験をそれぞれしていけるようにということです。
 7つ目の要素である、それぞれの活動を保証するということに繋がってくるとも思います。
 8つ目は独創的な考え方に報いる、多様性があることを認めるということです。

9つ目は革新的な実験を阻む失敗への恐怖を減らす、つまりチャレンジングできるということです。ゲームだったら、ゲームという感覚で1,2回失敗してもいいという雰囲気になってきて、敷居が下がるということです。これも多様性に繋がってくるのかもしれません。
 10個目は自信を持たせるということです。私でもできるという感覚のことです。
 最後に11個目、楽観的な態度を持てるということです。これらのことが11個の要素です。

④スペンサー・ケーガンから学ぶ協同学習

ゲーミフィケーションを用いた授業を行う上で、協同学習の考え方を用いるとスムーズに進めることができることが多いです。なぜなら、協同学習を用いることによってゲーム学習をより授業に反映しやすくなるからです。ではそもそも、協同学習とはどのように行われるものなのでしょうか。

協同学習の研究者の一人、スペンサー・ケーガンは、4つの条件が成り立っていたら協同学習であると説明しています。

1つ目は互恵的な協力関係です。お互いに協力しないとゴールに近づかないという仕組みです。
 2つ目は個人の責任の明確化です。一人一人がちゃんとやらないと全員がゴールにたどり着かないということです。
 3つ目は参加の平等性の確保です。よく4人グループで話し合いしたときに誰かがずっと喋っているようなことありますよね。そういったことを防ぎ、全員が同じ時間話せるように促すことが大切です。

4つ目は活動の同時性と言って、なるべく活動量をあげることです。アメリカ的なのでしゃべっている=活動している、という風に考えます。例えば、会場に100人いたとしたときに、1人だけがしゃべっている状態だとそれ以外の人は全く活動できないということになります。全員100%活動するとしたら一斉に喋るのですが、それってただ音読しているだけですから全然コミュニケーションは発生してないんです。そうすると一番活動量が高いのは50%です。話す聞くを同時にやっていることです。4人グループで活動するとなると1人が喋って3人が聞いているので25%の活動量になるわけです。この活動をあげることが協同学習の考え方になっています。

4 学習ゲームのあれこれ

最後に、実際にゲーミフィケーションの考え方を基にした学習ゲームを2つ紹介したいと思います。

【私は誰でしょうゲーム】

 このゲームは背中に貼られている人物名を当てるというゲームです。わたしが大学院生時代に、当時筑波大学教授の谷川彰英先生から教えていただきました。やり方は、背中に貼られているため、自分では人物名がわかりません。そのため、2人組になって、自己紹介をしつつ背中の紙を見せてからお互いに質問し合います。
 この質問の際、「はい」か「いいえ」で答えられる質問にしてください。例えば、「私はちょんまげを結ってましたか?」というような質問です。カードで中大兄皇子を示していた場合、ちょんまげを結っていませんから、「いいえ」と相手側は答えてください。一回行ったら、「ありがとうございました」と言ってまた別の方とペアになり、質問を変えて同じようなことをしてください。この時、もし自分が知らなかったり怪しかったりする人物は、質問に答えず「わからない」と答えてほしいです。このように質問を繰り返していけば人物名に関する情報がたまっていくので推測することができます。
 人物名がわかった場合は、正誤判定をしますので教師の元へ知らせに行ってください。判定で間違いだと分かっても何回もできますので、間違えても繰り返しペアを作って質問して自分の人物名を推測することができます。

☆ポイント☆

このアクティビティでお伝えしたいことは大きく分けて2つあります。

1つ目は別の分野から「ずらす」という考え方です。このゲームも「ネイチャーゲーム」という別のゲームから発想をお借りしています。僕は今回歴史上の人物でやりましたが、都道府県でもできますよね。また低学年にする場合でも、言葉を覚えたばかりのものであったとしても教室にあるものでやることができます。実はこれは後付けなのですが、ここには協働学習も入っているため一石二鳥なのです。

2つ目は、問題が分からなかったときに投げ出してしまう生徒が出ないように、できた子とできない子の可視的差異をなくすことです。このゲームでも、正解した子には素晴らしいと言ってまた新しいカードを貼り、制限時間内はずっとやらせます。できた子が可視化されないための工夫なのですが、もちろんできた子にも相応のことはしないといけないので、僕は2回できた子にはみんなの前で表彰するなど、バランスをとっています。

【雪玉逆転がし】

まず最初に一人で次の新札になる人物としてふさわしいと思う人を理由とともになるべく多く書き出してもらいます。次に、最初に2人だけで書いたものを見せ合い人数を絞ってもらいます。そして班ごとに話し合って一人に絞ってもらいます。その後、班で無差別に指名された人が代表として発表してもらう、という流れです。誰が指名されてもいいように1人に絞った人物をグループの意見として全員で共有し、いつでも発表できるようにしてもらいます。

☆ポイント☆

次の新札の人物となる人を考えることを通して、今の日本の情勢で求められる人、貢献してきた人を一人一人に思考してもらうことを目標としています。

5 実践者プロフィール

阿部隆幸(あべ たかゆき)先生

上越教育大学教職大学院准教授
 NPO法人授業づくりネットワーク副理事長
 福島県石川町教育委員会 石川町教育アドバイザー
 福島大学 大学院教育学研究科修士課程 教科教育専攻修了

福島県で公立小学校教員として27年間勤務。2015年3月退職。
(2017年8月11日時点のものです)

6 著書紹介

7 編集後記

ゲームと勉強を関連付けることで、苦手科目などの”嫌なこと”からゲームの”楽しいこと”に変化し、より生徒たちが勉強へのモチベーションを向上することができるのではないかと思いました。また、ゲームを用いた学習から協同学習に発展することで、自分の意見や相手の意見を交換し合える場を設け、授業の科目だけではなく、それ以外の能力も高められる可能性があると感じました。この記事を通して、少しでも先生方のゲーム学習の一助になれたらと思います。

(取材・編集:EDUPEDIA編集部 田村美和、内山翔太、加藤舞)

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