学校現場にエビデンスを! ~学校の当たり前を見直すために~(江澤隆輔先生インタビュー①)

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作成者:小林 彩乃 (Edupedia編集部)さん

1 はじめに

本記事は、2019年8月20日に行った、江澤隆輔先生(坂井市春江東小学校教諭)へのインタビューを編集・記事化したものです。学校の当たり前を見直す方法の1つとしてエビデンスを提案した本『学校の時間対効果を見直す! エビデンスで効果が上がる16の教育事例(学事出版)』を出版された江澤先生に、エビデンスに関する様々なお話を伺いました。今回のインタビューは、前半と後半の2記事にわたって公開します。前半では出版された本の話を中心に、エビデンスについて、学校現場の現状を絡めながらお話ししていただきました。

後半の記事はこちら

2 エビデンスについて

エビデンスとは

エビデンスとは、「科学的根拠」という意味です。客観性、妥当性、再現性があり、確からしい知見を「エビデンス」と言います。似たような言葉では、データ、研究、評価がありますが、「エビデンス」はより質の高いものを指します。例えて言うならば、情報を磨き上げた「結晶」のようなものです。

エビデンスに興味を持ったきっかけは何ですか?

エビデンス自体、最初は全然知りませんでした。『中学英語ラクイチ授業プラン』を書いたときの出版社の方から、森先生という教育エビデンスについて研究している岐阜県の先生がいらっしゃるという話をききました。そして1年ほど前に出版社の方から声がかかって、エビデンスの本を森先生と一緒に出すことになりました。

おそらく日本で初めてエビデンスという視点で学校現場を見た本だと思います。しかし、ほとんどの先生がエビデンスについて知らないから、分かりやすくしないといけません。だから分かりやすさを求めるところを私が、専門的なエビデンスに関係するところを、研究されてきた森先生が書くということで、私が書いたのは入口部分です。当然エビデンスについて書こうと思うと私も勉強しないといけないので、半年くらい森先生に聞きながら勉強しました。具体的にどこで勉強するかというと、エビデンスを集めたサイトです。サイトに日本語のものはないため、英語で勉強することになります。特に教育分野のエビデンスが進んでいるのは、イギリスとアメリカです。その2つの国には、どうやってお金や時間、教職員の労力といった総合的なコストを抑えて教育効果を上げるかという、コストパフォーマンスをすごく重視している研究機関があります。それがWWCやキャンベル共同計画という研究機関です。これらがかなり信頼できる研究機関で、それをオープンにして無料で見ることができるサイトがあります。当然全部英語なのですが、私は英語が専門なので、英語を読みながら日本に当てはめた場合にどれを取り上げたら分かりやすいのかということを考えて新刊で取り上げた16テーマを決めました。

エビデンスについては本当に全然知らなかったのですが、教えてもらいながら一緒に勉強するうちにそのすごさが分かってきました。特に今の日本には教育現場でエビデンスの視点がほとんどありません。例えば、学校がどうやって組織として動いているかというと、忙しい現場だから仕方ない部分はありますが、去年やったから今年もやろう、という前例踏襲です。学校でやっている教育活動には様々なものがありますが、宿題や行事など、全てに教育効果はあります。多かれ少なかれ必ず教育効果はあるのです。そのため、去年やったから今年もやろうと言うとなかなか反対できないのです。もう1つ学校の現場組織の意識としてあるのが、先生たちの主観・感覚です。今までこうやって教えて、生徒の学力は伸びていたから今回も同じように教えればよい、こういうトラブルをこうやって解決してきたから今回も同じようにすればよい、といった感覚でやっているところがすごく大きいです。この2つもよいのですが、もう一つ調味料のように加えようというのがエビデンスです。その3つとコストで総合的に判断して、この行事はやるべきなのか、この教育活動は去年やっていたけれど今年もやる必要はあるのかといった見直しをしてほしいという思いで書きました。

日本でのエビデンスの普及は進んでいないということですね。

そうですね、全然進んでいないですね。2015年くらいに慶応義塾大学の中室牧子という教育経済学の先生が『学力の経済学』という本を書いてとても売れました。それがどんな本かというと、海外でやっていること、海外でどうやってコストパフォーマンスをあげて教育をしているのかということをまとめている本です。それが話題になったあたりから日本ではエビデンスはどうなっているのかということが気にされるようになってきました。しかし、研究の機関もないですし、ようやく今、文部科学省などで注目され始めてきたくらいで、アメリカとイギリスのようにオープンソースがあってサイトに行けば活動のエビデンスが分かるという状況にはまだなっていません。一つ何か研究機関を立ち上げてやるしかないのですが、それを今から文部科学省や国立教育政策研究所がやり始めるという状況ですね。今回書いた本が普及のきっかけになればと考えています。

どれくらいの人が「エビデンス」について知っているのでしょうか?

言葉だけでも知らない人が多いですね。大学でも習わないし、学校の現場に出ても勉強していないと分からないし、そんな暇はなかなか先生たちにはないですから、ほとんど知られていないのと一緒です。だからどうしたらこの本が広まるかを考えて、タイトルにすごくこだわりました。先生の多忙化について社会の関心が高まっている今、多くの人に興味を持ってもらえるように「学校の時間対効果を見直す」にしました。

エビデンスには最適解があるわけではありません。ですから、これさえ読めば読んだ人の学校の取組が劇的に変わるとか、読んだ人の学校の先生たちの働き方が劇的に変わるとかではなく、調味料のような感じです。この本は、こういう考え方があるので考え直してみるのはどうですかという本です。テーマは16個あるのですが、正直エビデンスがないものもあります。「エビデンスがないってどういうこと? エビデンスって書いてあるのに。」という批判もあるのですが、これは、エビデンスがないことを知るのも大切だという森先生と私の思いからあえて入れたテーマなのです。総合的に時間対効果を見直すのが目的なので、エビデンスがない場合には、先生たちの時間や労力を考えてやめよう、とか、エビデンスがある場合には、エビデンスではこうだが、それは先生たちの思いに反しているので、これからどうしていこうか、ということを考えるヒントになる本なのです。私たちとしては、エビデンスがあって結論が出ているのであればエビデンスを元に見直してほしい思いはありますが、やはり毎日子どもの様子を見ているのは先生なので、先生たちの感覚は大事にしてほしいです。だから、先生の感覚だけで決めているというのは一概にダメとは言えません。

3 新刊について

この16のテーマというのはどのように決めたのですか?

思い入れがあるのもあります。例えば音読とかフォニックスとか指導案とか、キレやすい子どもとか。あとは森先生と一緒に決めたものも、高いエビデンスが出ているものを抽出しているものもあります。逆にエビデンスがないものもあるよということも言いたかったので、サイトを見てエビデンスがないところをあえてとったものもあります。

やはり時間対効果を考えて取り組みを見直そうとすることはよく起こるのでしょうか?

そうですね。協同学習、振り返り、音読などはありますよね。フォニックスをやってみたときは若い先生がたくさん集まって、みんなでやろうとなりましたが、特に中学校だと先生によって全然教え方が違うし、それぞれの先生に任されている部分が多いので統一しようと思うと難しいですね。

キレやすい子どもも以前よりは減りましたが、今でもいます。このテーマについては、感情教育のエビデンスが高いということが分かり、興味深いと思いました。また、この本を書いていてやりたいと思い、始めたのが瞑想です。中学校では黙想などといってやっているところもあると思いますが、それを帰りの会でやり始めました。効果は続けてみないと分からないですけどね。何のためにやるのかということは子どもたちに最初に言わないといけません。黙想やるから目閉じて静かにしてよと言うだけではダメです。目的を子どもたちに伝えた方が効果が高いと思います。

続きはこちらの記事からお読みいただけます。

4 プロフィール

江澤 隆輔(えざわ りゅうすけ)

坂井市春江東小学校教諭

1984 年福井県坂井市生まれ。福井県公立学校教諭。広島大学教育学部(英語)卒業後、福井市立灯明寺中学校、あわら市立金津中学校、坂井市立春江東小学校と小・中学校に勤務。教師の働き方改革や授業改善への提案をテレビや書籍等で積極的に提案し続けている。著書に『教師の働き方を変える時短』(東洋館出版社)、『苦手な生徒もすらすら書ける! テーマ別英作文ドリル&ワーク』(明治図書出版)、『先生も大変なんです いまどきの学校と教師のホンネ』(岩波書店出版)、共著に『学校の時間対効果を見直す!』(共著、学事出版)、『中学英語ラクイチ授業プラン』(共著、学事出版)(2019年8月20日時点のものです。)

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