不登校になる子どもの心理 ~周りの大人ができること~ (不登校支援センター講演録)

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作成者:安藝 航 (Edupedia編集部)さん

1 はじめに

本記事は2020年8月28日に行われた、不登校支援センター主催『【オンライン開催】一歩踏み出すことを恐れている子どもたちの心理状態と支援方法について』の講演内容を編集したものです。不登校支援センターは、不登校からの復帰を支援する不登校専門機関で、主にカウンセリング、年間行事・イベント、学業支援・発達障害支援といった活動をしています。

今回の講演では、不登校になってしまう子どもの心理状態や、不登校になった本人ができること周りの大人ができることについて、不登校支援センター の本沢さんにお話しいただきました。

2 子どもの心理領域~コンフォートゾーンとは?~

子どものよくある言動

まず初めに、子どもたちのよくある言動について紹介します。

「明日は学校に行くから、今日は休ませて……」

「あとで勉強するから、先にゲームをやらせて……」

「あと10分だけ……」

本人の気持ちがやらないといけないに向かわないことに対して、周りからみているともどかしく感じることがあります。そのようなときのために知ってほしい考え方に『コンフォートゾーン』があります。

心理状態の3領域

コンフォートゾーンとは、ストレスも少なく、変化も少ない居心地のよい領域のことです。例えば、学校が休みの間に学校に行かないことに慣れて、快適さを感じてしまうと、「学校に行かないこと」がコンフォートゾーンになります。長期休暇のあとに不登校になる生徒が増えるのは、学校に行くことにストレスに感じて、学校という環境に踏み出せなくなることが原因です。

ストレッチゾーンとは、変化に順応しようと自分自身の行動を変えようとすることで、成長を感じられる領域のことです。子どもの場合だと、小学校から中学校に上がるとき、中学校から高校に上がるときなどの切り替えのタイミングや、新たな環境に順応しようとしているときなどが挙げられます。

パニックゾーンは、変化が許容範囲を超えてしまい、パニック状態になり、変化に対応できなくなる領域のことです。ストレスも大きく不安も大きい領域になってくるので、冷静に判断が出来なかったり、行動することが嫌になったりします。一度パニックゾーンを経験してしまうと、ストレスをため込んでしまうため、変化を受け入れることに抵抗を感じやすくなってしまいます。

3 コンフォートゾーンから抜け出すために

自分が本当はどうなりたいのか具体的に思い描く

自分の理想像や将来像を具体的に思い描くことで、行動するモチベーションやきっかけになりやすいです。

今出来る小さな変化を起こす

私を含め、大人の方でも「〇○をしよう」と目標を立てて実践しようとしたときに、長続きしないことは多いと思います。そのときに、決めた目標が出来なかった自分を「集中力がない」だとか、「継続力がない」と自分を責めてしまいがちです。しかし、この現象は人間が本来持っている本能的な機能であるホメオスタシスが原因かもしれません。

例えば、汗をかくという行為もホメオスタシスによるものです。体温が上昇しすぎないように汗をかくことで体温調節をして現状維持を図ります。このように、人間は今までと違う行為を起こしたときは元に戻ろうとするホメオスタシスという機能が強く働くため、変化を継続することが難しくなります。変化が大きければ大きいだけ、その分ストレスが大きくかかりますし、継続して行動を起こすことが難しくなってきます。そのため、反動はありきで今できる小さい変化を起こしていくことが大切になります。

例えば課題をやりたくないと考えている子どもがいた場合に、「まずは1ページからやってみたらどう?」と変化を促すだけでもよいでしょう。

健康な心身状態を作る

カウンセラーの観点で一番大切にしているのはこの3つ目です。健康な心身状態を作ることが、一歩踏み出すきっかけにもなります。

4 周囲の大人がサポートできること

今の自分の強みに気付くこと

不登校になりやすい、コンフォートゾーンから踏み出せない子どもの特徴として、以下が挙げられます。

・自分の理想が高くなっている

・一歩踏み出すことに対して強いプレッシャーを感じている

・自信を喪失している

・過去の失敗体験を思い出すと、動き出すのが怖い

このように、本能的な部分でプレッシャーを抱えている場合が多くあります。動かなければいけない自分と、動きたくない自分で葛藤を生んでいると、余計に自分を責めてしまい自信をなくす、という悪循環になっていることがあります。そのため、今の時点での自分の強みを子ども自身が理解することが大切になります。特に、以上のような子どもたちは自分の強みを見つけることが苦手なことが多いため、大人たちが強みを理解する手助けをする必要があります。

「目的」と「手段」を整理する手伝い

私は学校を休むという行為は、1つの手段だと考えているため、「何のために学校を休むのか」を考えています。例えば、突然学校を休むようになった子どもに、休む理由を聞いたときに、「体調が悪いんだ」とか、「勉強が嫌なんだ」など理由は数多く出てきますが、これは表面的な心理に過ぎません。これは勉強しない子、朝起きることが出来ない子、反抗する子、人のせいにする子、話さない子など、様々な場合に当てはまります。

子どもも無意識でこのような行動を取っていたり、直接思っていることを話すことを躊躇していたりする一方で、自分の気持ちを満たすために、他の人とは異なる行動や、普段とは異なる行動をとっている場合があります。そのため、行動自体を叱ることでは解決にはなかなかつながりません。「何のためにこの行動をしているのか」「何が分かってほしくてこの行動をしているのか」に目を向けることが大切だと思います。

「周囲の人にいつでも頼ってよいのだ」という安心感を与える

学校に行っていない、宿題もやっていない、となると、どうしても「自分に味方がいない」と感じて周りの人に頼れない子どもは多いです。しかし、誰かに頼らないでその状況から脱するのは難しいため、子どもに周りの大人を頼っていいと感じさせることが大切です。「周囲の人にいつでも頼ってよいのだ」という安心感を与えることで子どもが自分の気持ちも話しやすくなるうえに、自分の感情を整理することにもつながります。

できることに意識した声掛け

宿題が終わらないから学校に行きたくないと言ったときに、親御さんとしては宿題が終わらないぐらいで学校を休んでほしくないという思いから、

「前もってやっておきなさいって言ったでしょ!」

「今度から宿題が終わらないと好きなことをやらせないよ」

「隠していてもしょうがないから、先生に正直に宿題忘れたことを言いなさい」

と言ってしまうことがあります。このように親御さんとしては無意識だと思いますが、どうしても宿題ができていないこと自体に目を向けて声掛けをしてしまうと、子どもの方はできていないことばかりを指摘されて落ち込んでしまうことや、自分の中で辛い思いを抱えていたとしても「どうせ話しても聞いてもらえない」と感じてしまうことが多いです。

子どもも「これを話すと怒られそうだな」とか、「親に迷惑をかけたくないな」と感じているけれども、耐えきれなくなった結果、一歩踏み出してSOSとして話してくれることがあります。そこで案の定怒られてしまうと、「やはり言わなければよかった」と感じてしまいます。もちろんこのような親御さんの発言は正論ではありますが、子どものモチベーションアップにはつながりません

そこで大切なのは、できていることに意識を向けることです。

「そっか……。自分の気持ちを話してくれてありがとう。」

「どうしたらいいのかこれから一緒に考えよう。」

と、気持ちを受け止めて一緒に話し合って考える時間を設けるとよいと思います。子ども側が「言ってよかった」、「また相談したい」と思えると安心感が生まれます。

5 プロフィール

本沢裕太さん

1980年生まれ。神奈川県横浜市出身。関東学院大学卒。在学中に教職課程を履修。中高社会科の教員免許取得。新卒で一般企業に入社するも、1年未満に退社。1年間のフリーター期間を経験した後、いすゞ自動車首都圏(株)で営業職に従事中、自身の経験を振り返り心理学に興味を持つ。一般社団法人不登校支援センターへ転職。在職8年目。これまでに累計5,000件のカウンセリングを行い、不登校に悩むご家族をサポート。オンラインセミナーなども随時開催!Twitterアカウントはこちら

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7 編集後記

子どもの年齢が低ければ低いほど、自分の気持ちを自分で理解することは難しいため、大人が今感じている気持ちを引き出すことが大切だと感じました。
(編集・文責:EDUPEDIA編集部 安藝航)

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