読書が好きになる~先生・親ができること~(白坂洋一先生 教育技術×EDUPEDIA スペシャル・インタビュー 第35回)

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作成者:大和 信治 (Edupedia編集部)さん

1 はじめに

本記事は、雑誌『教育技術』(小学館)とEDUPEDIAのコラボ企画として行われたインタビューを記事化したものです。

2020年10月27日に小学館から発刊された『子どもを読書好きにするために親ができること』の著者である、筑波大学附属小学校国語科教諭の白坂洋一先生に、子どもが読書好きになるために先生や親ができること、国語の授業での具体的なアドバイスについて伺いました。

(2020年9月30日取材)

2 インタビュー

読書の効果—読書から得られるメリットー

読書から得られるメリットには、以下のようなものがあります。代表的なものを挙げてみます。

  • 語彙が豊かになる
  • 知識が得られる
  • 心が穏やかになる
  • 表現力が高まる
  • 読解力がつく
  • 人間性を高められる
  • 集中力がつく
  • 感受性が高まる

さらに言うと、子どもの学力向上に直接的な効果を発揮するのも読書の強みです。読書から得られる学びは多く、また、発達段階によっても異なります。幼児ですと、読み聞かせや読書を通して、語彙を豊かにしていきます。また、語彙が豊かになるとともに、子どもは表現を豊かにしていきます。

小学生では、語彙を豊かにするとともに、読書を通して登場人物と自分を重ね合わせ、同化体験したり、異化体験したりすることを通して、自分の生き方を考えることにもつながってきます。

本の読み方や楽しみ方を、発達段階に応じて、発展させていくことが大切で、低学年は楽しむ読書、中学年は好みの幅を広げる読書、高学年は視野を広げる読書という位置づけです。

学校での読書指導—私たちの学級文庫づくり、紹介カードー

子どもが読書好きになるための工夫の一つに、「私たちの学級文庫づくり」という活動があります。学校図書館で、教師も一緒におすすめの本を一人1冊、選びます。選ぶ本は、子どもたちがこれまでに読んだ本からでも構いませんし、これから読んでみようかな、挑戦してみようかなという本でも構いません。そして、貸し出された本を教室のスペースに学級文庫として並べるのです。「〇〇くんが選んだ本、読んでみようかな」と子どもたちは自然と手に取るようになります。定期的に活動することによって、本棚の入れ替えとともに、読書活動を進めることができます。

さらに効果を高めるため、私は、自分が選んだ本の紹介カードやポップづくりを取り入れています。あらすじや心に残った場面、会話文を入れてまとめ、掲示するのです。環境づくりが子どもの読書を推進します。

【本の紹介カード】

【ポップ】

子どもを読書好きに変えるのは、学級の仲間である、「子ども」なのです。

教師や親がいくら本を読みなさいと言っても、なかなか本を手に取ってくれません。しかし、学級の仲間がおすすめすると、自然と本を手に取って読むようになります。

大切なのは「場の設定」なのです。

では、単に学級文庫づくりの活動をすれば、子どもは読書好きになるかというと、そうではありません。入学時から読み聞かせを行ったり、読書カードを書いたり、感想交流したりと、様々な活動や場の設定を継続して行うことが、子どもを読書好きにするということを知っておいていただきたいです。

相手を意識した本の紹介—読書郵便—

読書郵便も効果的です。読書郵便のよい点は、本を紹介する相手が決まっているので、より相手を意識して書くことができるところです。多数に向けて書く紹介カードやポップとは違った内容になるのでおすすめです。

【読書郵便】


 

場の設定—感想を交流する—

私は、物語文の授業で初発の感想を書かせる際、子どもたちに次のように発問しています。

「この物語でたった一文だけ残すとしたら、どこを残したい?」

『ごんぎつね』の場合ですと、「ごん、お前だったのか、いつもくりをくれたのは」や、「ごんは、ぐったりと目をつぶったまま、うなずきました」、そして最後の「青いけむりが、まだつつ口から細く出ていました」など、子どもたちの選択した箇所が重なることがあります。

例えば、4つの箇所が子どもたちから出てきたとしたら、「自分が選んだのはどれか、1~4を指で表してみてください」と言って、せーので示させます。そうした上で、「どうしてその番号を選んだのか、違う番号の人と理由をお話してごらん」と感想交流させます。違う番号と意見を交流するというところがポイントです。相手がどんな考えで自分とは違う箇所を選んだのだろうと、子どもたちは相手の意見を真剣に聞くことになります。小グループによる違う番号同士の意見交流が教室内のあちこちで展開されていきます。相手の意見を聞き、自分の考えを伝えることによって、そこで議論は活発となって、他者との交流もより一層、促進されるのです。

説明文の授業でも、異なる意見との交流を仕組むことは効果的で、例えば、自動車を比べる内容の説明文があったとします。「自分がすごいと思った自動車はどれか、選んだ自動車を1・2・3の指で表してみてください」と言って、先ほどと同じようにせーので示させます。そして「自分と違う番号の子と、どうしてそう思ったのか理由を話してごらん」と交流させるのです。議論をする場が設定されているわけですから、教室のあちこちで「だってバスって大きな窓があるんだよ」「トラックはタイヤがいくつもついてるんだよ」「きゅうきゅう車は~」など、選んだ意見と理由の交流が展開されていきます。相手と自分が同じ考えだったら共感できますが、意見が異なる相手だと、書かれている内容について議論が始まるのです。

中学年以降では、お互いに異なる視点で交流することで、同じ内容でもいろいろな捉え方があることを学んでいきますし、興味の幅を広げることもできます。子どもを1人の読み手として尊重し、その子はどう思ったのか根拠をもとにした考えを大事にしてあげてください。

感想文の書き方—題名を使って書く方法—

感想文を書くとき、どのように書かせたらよいかが分からないという質問を受けることが多くあります。簡単にできる方法の一つに、題名を使って書く方法があります。私は、この方法を物語の初発の感想を書く場面、読書活動など、あらゆる場面で使っています。具体的には、「スイミーは〇〇だな」「モチモチの木は〇〇だな」と、題名を使って一文で書き表すようにするのです。そうやって、題名を使った一文感想文をストックしていくと、少しずつ作品のよさに気づいたり、詳しく書けたりするようになっていきます。

題名を使って感想を書くよさは、本の内容と子どもたちの感想が大きくずれないことです。

ちなみに、「題名」には、次に挙げる3つの種類があります。①登場人物を題名にしたもの、②事件や作品の山場を題名にしたもの、③作品の主題に関連しているものです。

題名に着目して感想文をまとめる方法は、他の物語教材でも活用することができます。例えば、『ちいちゃんのかげおくり』でしたら、「ちいちゃんにとって、かげおくりはどんなものだったのだろうか」と、題名に着目して、感想文をまとめることを通して、読み手としての意味づけを図っていくことができます。

低学年なら、登場人物に手紙を書くような感想文のまとめ方もあります。感想文に書く内容は、あらすじと心に残った台詞、自分の考えだけでもよいでしょう。

中学年以降では、本を選んだきっかけや心に残った人物の言動、さらには自分と比べてみたり、自分がもしこの登場人物と同じ立場だったらどうするか、と立場を置き換えて書いたりすることもあります。その上で最後に自分の考えを書かせるようにします。高学年になってくると、例えば、同じ動物が描かれている物語でも、作品によって書かれ方を比較しながら感想をまとめることもできます。

このように、授業では学年に応じて発展的に書く必要がありますが、定型文や書き方の型を教えることもあります。学級経営も授業も、発達段階に応じて、子どもとの関わり方や学習活動を変えています。

ちなみに、あらすじをまとめるための3要素があります。中心人物が、どんなできごとを通して、最後どうなったか、という「中心人物」「出来事」「結末」の3つです。授業であらすじのまとめ方を学習しないと、出来事の羅列を書いてしまい、むやみやたらに長くなってしまうことがありますので、しっかりと指導しておきたいところです。

子どもの興味と読書をつなげる

子どもを読書好きにするために、私は、子どもの「中心軸」を大切にするということを意識しています。このことが、子どもを読書好きにするきっかけだと考えています。子どもたちの中には、虫が好きな子がいたり、花が好きな子、折り紙が好きな子もいたりと、子どもの興味や関心は、1人1人違います。それを均質化してはならないと思います。また、低学年のときに虫が好きでも、中学年になって視野が広がって宇宙が好きになったり、高学年になると歴史に興味を持ったりするなど、興味や関心ごとは常に変化していきます。

そこでつい大人がしがちなのが、歴史が好きな子に他のジャンルも読んでもらいたくて、その本を読むのをやめさせようとすることがあります。そうではなく、「歴史が好きなら伝記も読んでみたら」「織田信長の歴史についてその国の県のことを調べてみたら」など、子どもの興味や関心の軸に沿って、「だったらこれはどう?」と幅を広げていくことが大事です。「だったら」には、「同じ立場で、活動の流れに従って、その先へと考えを進める」という効果があります。

教師の言葉によって、子どもたちの反応は変わります。教師の何気ない言葉に着目することで、対話を生む言葉があることに気づきます。子どもの学びの場を創る教師の役割は大きいのです。

読書の幅を広げるには、子どもたちと日々いろいろな話をしたり、どんなことに興味持っているのか、観察したりする必要があります。私は休み時間などに、子どもと雑談したり、日記を見たり、子どもたちが読んでいる本について話題にする中で、その子の関心を見つけます。そして、「今、こういう本を読んでいるのなら、この本も面白いよ」と紹介しています。

ブックトーク

子どもたちにブックトークという形で本を紹介することもあります。例えば、4年生の『ごんぎつね』では、単元の最後に新美南吉の全集を読むというように、同じ作者の物語を読み広げる授業を行ったことがあります。

単元の中心的な授業展開は私が進めていきますが、最後の読み広げる段階では学校図書館の司書の先生に、『あめだま』『でんでんむしのかなしみ』など、新美南吉の本をブックトークしてもらいました。司書の先生はブックトークのスキルを持っています。例えば、全文ではなく最初の一部分だけ語り聞かせをしてもらうと、子どもたちは紹介された物語の世界に魅了され、興味を持ちます。

ただ本を与えるだけでは、子どもは読まされている感覚が強くなります。子どもが読みたくなる、面白そうだと思える工夫をすることが大切です。

逆に、まるでテストをするかのように、本に書かれている内容を一つひとつ確認したり、「こういう人になりなさい」と、書かれている内容をしつけに利用したりするのもいけません。これでは、子どもたちの読書の幅をどんどん狭くしてしまいます。

子ども同士でおすすめの本を交流する場をつくる

中学年から高学年にかけての場合は、大人が本を薦めるよりも、子ども同士で交流する機会が多くなり、そのことが大きな効果を発揮することが多いです。そのため、交流の場面をどう作るかですが、私は日記で「おすすめの本の紹介」というテーマで書かせて、それを交流したこともありますし、先に挙げた「私たちの学級文庫づくり」、互いにおすすめの本を読み聞かせをするという活動を取り入れたこともあります。

高学年になると、小説やドラマを見て「自分はこの部分が面白かった」「自分はここが感動した」と感想を交流する場面を目にすることが多くあります。このことは大人も同じで、わくわくして楽しいものですし、読書においても同様です。感想交流するということが、子どもたちの読書経験を広げるきっかけづくりにもつながります。

保護者ができる、読書環境と習慣づくり

ここでは保護者ができる、子どもを読書好きにするポイントについて紹介していきます。ここで挙げる内容は、「家庭」を「学級」に置き換えていただくことで、学級における読書指導にもつながります。

1つめは、読み聞かせなど、子どもが本に触れる習慣づくりです。外に出かける際に、本を1冊携帯して、電車の中で座ってそれぞれが本を読む機会を作ることができます。このような、ちょっとした隙間を使った工夫も保護者ができることです。私はこのような隙間時間を使った読書を「スキ読」と言っています。

また、読み聞かせの効果としては、子どもが落ち着いて次の行動に取り組めたり、寝る前に落ち着いて安心感を与えたりするという効果があります。子どもが高学年になってくると、読み聞かせすることは少ないと思います。代わりに、1人の読者としてお互いにどう読んだのか感想を交流するのもよいでしょう。

2つめは、リビングに本棚を置くなど、本をいつでも読める環境づくりです。公共図書館では休日に読み聞かせやブックトーク、ビブリオバトルなどが行われることもあります。夏休みには親子で楽しめるアニマシオン活動もあったりしますので、そういった家庭外での活動への参加をするのもよいでしょう。

読み聞かせのポイント—選書

低学年に対しては、子どもが楽しめることがとても大事です。そこで、『はらぺこあおむし』『もけらもけら』など、音のリズムや繰り返しが面白かったり、ストーリーが単純に楽しいものがよいです。

中学年以降では、科学読み物や歴史など、ジャンルの幅を広げていく時期です。中学年では、読み聞かせをしてあげるよりは、大人が一緒に本を選ぶ機会が多くなってくると思います。高学年になってくると、環境や命など目に見えないテーマにも視野が広がっていくので、そのような選書がよいと思います。

しかし、視点が分かっても具体的な本が思い浮かばない方もいるでしょう。そこで、本書の後半に「小学生へのブックリスト」を載せました。全部で246冊あり、101冊は学年別にその本のもつ面白さを具体的に紹介しています。もう少し読み広げたい子のために、「命」「戦争」「昔話」など、ジャンル別に145冊を紹介していますので、本選びの1つの指標として参考にしていただけたらと思います。

読み方

実は、絵本と紙芝居では読み方が全然違います。絵本は、子どもの目の前に本を持って読み、淡々と読み聞かせるのがよいです。絵に淡い色が多いのは、絵本の読み聞かせは、基本的に少人数で行うからです。本の持ち方は、本の背の「のど」の部分を持って、親指を立てるのがポイントで、子どもが見やすいように本を子どもの側に少し傾けるとよいでしょう。

一方、紙芝居の場合は、紙を使った芝居です。絵の周りに擬音語や擬態語などは書き込まれておらず、絵の輪郭もはっきりとしています。なぜなら、紙芝居は多数の聞き手に対して行うからです。そのため、遠くからでも絵を見ることができるように輪郭がはっきりと描かれていますし、紙を使った芝居を通して、聞き手である子どもたちに場面の様子を伝えていくのです。公共図書館では大きな紙芝居を借りることもできますので、読書旬間などで活用するのもよいでしょう。

感想の尋ね方

「本に書かれている内容が正しく理解できているかな」「しっかりと本が読めているかな」と、大人の側からすると子どもに、ついつい本の内容を確かめてみたくなったり、正解を引き出したくなったりすることがあります。しかし、まるでテストをするかのように、本に書かれている内容を一つひとつ確認したり、「こういう人になりなさい」と、書かれている内容をしつけに利用したりするのもいけません。

感想の尋ね方として、よく耳にするのが「どうだった?」という漠然とした尋ね方です。しかし、子どもの側に立つと「どうって…」と、答えづらいのです。また、「面白かったでしょ」と、こちらの価値観を与えてしまったりしてしまいがちです。これも子どもにとって答えづらい尋ね方です。

そこで、「一番心に残った場面はどこ?」「どの登場人物が気になった?」という尋ね方がおすすめです。「どの人物」「どこの場面」と聞くと答えるハードルが下がります。「どこ?」「どれ?」を尋ねているこの場合は、「ここ」「これ」と答えるポイントが明確になるため、子どもの側にとっては、無理なく答えることができるのです。

そして、「どうして?」「どういうこと?」と問い返すことで、子どもは理由づけしながら話してくれることでしょう。その子がどう感じたかを大事にしながら互いに感想を交流することで、子どもは、様々なとらえ方があることを学び、興味の幅を広げていきます。

本を通して親子の交流を

最近はスマホなどの楽しみがあるので、 本を読むことが少なくなった現状はあると思います。そこで、本を読むこと自体が目的でなく、読書を子育ての場と考えることができると思います。本屋に行ったときに「子どもと一緒に次はこの本読んでみようかな」など、読書を通して親子の交流を深めていただけたらよいと思います。

また、本を買わなくても、図書館で絵本を借りて子どもと一緒に読んでみるだけでも構いません。平日が忙しければ、休日に雨が降って外に行けない日に、子どもと一緒に本を読んでみるのもよいでしょう。小さなところから、本と出会うきっかけを作ってあげてほしいなと思います。

3 先生のプロフィール

白坂洋一(しらさか・よういち)先生

筑波大学附属小学校国語科教諭。1977年鹿児島県生まれ。鹿児島県公立小学校教諭を経て、2016年より現職。学校図書国語教科書編集委員。『例解学習漢字辞典』(小学館)編集委員。全国国語授業研究会理事。「子どもの論理」で創る国語授業研究会会長。現在は特に、「書くこと」の指導と読書指導の研究に注力している。
(2020年9月時点)

4 著書紹介

『子どもを読書好きにするために親ができること』著/白坂洋一

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〈目次〉
はじめに 必ず「本」に戻ってくる子どもに育てよう
1 びっくりするほど伸びる子の読書の習慣
2 子どもを読書好きにするために親ができること
3 年齢にあった本の選び方
4 子どもに読書の習慣がつくと何が起きる?
5 大切にしたい本との出合い
6 子どもの読書で気をつけたいこと
7 保護者からよく受ける質問と疑問
おわりに 人との出会い、本との出合い
特別付録 小学生なら読んでおきたい理想の本棚246冊

5 編集後記

読書は食事のように、自分が楽しむだけでなくお互いのコミュニケーションを生むものでもあるという視点が新鮮でした。確かに、大人でも本の感想をインターネットで調べて、そこから新しい視点に驚いたり、次に読みたい本を見つけたりします。読書は果てしない冒険のようです。

(編集・文責:EDUPEDIA編集部 大和信治  撮影:教育技術 編集部)

6 関連ページ

子どもが将来、読書を一切しない大人にならないために何をすべきか?『子どもを読書好きにするために親ができること』(小学館)

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