1 概要
この実践は(株)教育同人社の許可を得て、「はなまるサポート」の学習指導ポイント一覧より転載しています。
実践の続き(無料)は最下部のURLからご覧ください。
また、以下より実践をPDFでダウンロードできます。
http://www.djn.co.jp/support/special/point/docs/2012/4/2/plan.pdf
2 算数好きを育てるための第一歩
1.「簡単」「簡潔」「明瞭」がいい
問い1
いくみさんはこの1週間で毎日新しいお友達をふやそうと思いました。月曜日は3人,火曜日は5人,水曜日は4人,木曜日は4人,金曜日は5人,土曜日は3人,日曜日は近所のお友達を4人ふやしました。この1週間でいくみさんのお友達は何人ふえましたか?」
この問題では,どんどんふえるのですからたし算だということはすぐに分かると思います。では,どんな式になるのでしょうか。
[回答例]
–
A君:3+5+4+4+5+3+4=28
–
B君:3+5=8
8+4=12
12+4=16
16+5=21
21+3=24
24+4=28
C君:4+4+4+4+4+4+4=28
–
D君:2+1+1+2+1=7
3+3+3+3+3+3+3=21
7+21=28
それぞれが一生懸命工夫して問題を解こうとしています。このように子どもたちが自力解決したら,先生はどんな取り扱い方をしたらよいのでしょう。
対応
先生は,まずAやBを取り上げます。それは,立式を問題にしているからです。そこで子どもたちに考えさせるための「よりよい考え方」の尺度が必要です。それが「簡単」「簡潔」「明瞭」です。私は「かんたんで」「むだがなくて」「わかりやすい」と指導してきました。これは算数の学習を進める上で基本的な望ましい数学的な態度です。学級の壁面に目標とする標語を掲示している場面をたくさん見ます。是非,これを1年間の話し合いの視点にしていくと良いと思います。
話を戻しましょう。AとBでは,よりよい表現はどちらでしょうか。「式は,その問題に出ている数値を使う」というのが原則です。その点で考えるとどちらでも良さそうです。つまり「わかりやすさ」は両方とも満足。では「かんたん」「むだがない」という視点ではどうでしょうか。この場合はAの方がよさそうです。このようにして納得させながら取り上げた内容を吟味していくことが大切です。
さて,それではCやDはどうでしょうか。これらは式表示という点では分かりにくいのですが,計算の仕方という点ではとても面白い工夫をしていると見ることができます。計算をより「かんたん」に,より「むだなく」するための工夫として,計算の段階で取り上げてあげるべきでしょう。この式表示を見て,子どもたちが計算方法をよむことができたらより効果的ですね。
よく,「要領の悪い子ども」と言われる子どもたちがいます。事実,私もそうでした。まともに捉えすぎて,面倒な処理の場面に出会っても,工夫を考える視点を持てずにただひたすらコツコツ作業を進めるタイプの子どもです。このような子どもたちにこそ,この3つの視点は必要なのです。「わかりやすい」が「かんたん」でもないし「むだも多い」。この子どもたちが「ここをくふうしてむだをなくした」と考えられたら,「要領の悪い子ども」からの脱却の兆しです。そのためには先生の,子どもたちの取り組みへの価値付けが大切です。その子の「簡単」「簡潔」「明瞭」のどの視点が育っているのか見極め,育てていきましょう。
「簡単」「簡潔」「明瞭」は,どの領域でもどの学年でも重要な視点です。自力解決,グループ討議,全体での練り上げなどの際,常にこの視点で思考できるよう,年度当初から取り扱っておきましょう。
2,「根拠」を持つことの大切さを
算数に限らないと思いますが,その子の意見の背景には必ず「根拠」が存在します。その「根拠」は,妥当なものからちょっと薄いものまで様々です。しかし,子どもは自分なりの根拠で意見を述べますから,もしその根拠をすぐに否定されると,おそらくもう意見を言わなくなるでしょう。私たちは,「何故?」「どうして?」と子どもたちに問うことが多いのです。それはとても大切なことですが,その質問に対する答えがどのような根拠であっても認めてあげたいものです。
根拠を持てる子どもに育てるために
そこで,「意見を言ったらその根拠を加える」というルール,つまり「わたしはこのように思います。その根拠は○○○○だからです。」のように発表できる環境作りをしましょう。
私は「根拠」には3つの種類があると思っています。
①類推的な考え方による根拠
- 「あの場合に似ているからこうなるんじゃない?」
- 「この前もこうだったから、これも同じさ。」
- 「□が△に変わっただけだから。」
②帰納的な考え方による根拠
- 「他の数でもやってみたらできたから。」
- 「こんなきまりになりそうだから。」
③演繹な考え方による根拠
- 「習ったことを使うとこう言えるから。」
- 「これならみんなが認めるから。」
この中で,特に大切にしたいのは,①の根拠です。これは類推による根拠ですから時には誤った類推もあり,ある意味では「薄い根拠」かも知れません。しかし,この①が堂々と言えるクラスはとても素敵なクラスだと思いませんか?子どものほんの些細な気づきを根拠として意見が言えるクラスなら,そしてみんながそれを認められるクラスなら,算数が楽しいクラスになるでしょう。
例えば,平行四辺形の求積公式を見つける場面で,A君は「横の辺」×「斜めの辺」と言いました。その根拠は「この形は長方形に似ていて,長方形の時には隣同士の辺を掛けたから」ということです。
これは,誤った類推による根拠ですが,見方を変えると「2つの長さのかけ算で求められそうだから」という活かし方に繋げられる大切な発言です。つまり,その考えを受け入れるだけでなく,その根拠を活かすようにすることができたらいいですね。
根拠の言える学級づくりでは,
- ①,②,③のような根拠が言えるクラス。できれば③が望ましいが,まずは①から。
- 誤った根拠,薄い根拠も,まず受け入れるクラス。
- その誤った根拠,薄い根拠を活かして問題解決に繋げようとするクラス。
を目指したいです。これはとりもなおさず担任の先生の姿勢そのものです。先生がその姿勢で常に臨めば,子どもたちは自然に育ってきます。
実践の続き
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3 実践者紹介
山﨑 憲
元東京都算数教育研究会会長。
「小学校時代から現在までで,今が最も算数がすき」と,小学校退職後も算数教育に没頭し,現職時代に引き続き年に数回研究授業も試みている。
現在東京学芸大学講師として初等算数科教育法を担当。
またボランティアとして東村山市算数教室を開催し算数好きの子どもの育成を目指している。
4 サービス紹介
教育同人社の「はなまるサポート」では、若い先生のための授業ヒント集として、毎月の学習指導ポイントを細かく解説をしています。また、不明点や疑問点などを無料で相談できます。
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(編集・文責:EDUPEDIA編集部 阿部由和)
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