百ます計算で成果をあげる方法Ⅰ ~少しユルめの百ます計算指導の実際【教材】

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目次

陰山英男先生の徹底反復学習

百ます計算を語る前にまず、陰山先生について説明をしないわけにはいきません。語りだすとたいへん長くなってしまうので、簡略にまとめてみます。
ちょうど2000年にNHKクローズアップ現代で兵庫県朝来町立(現:朝来市立)山口小学校での陰山先生の百ます計算に関する実践が取り上げられました。ゆとり教育による学力の低下が問題視されていた時期で、陰山先生の「はっきりとした成果が現れている教育」は世間の注目を浴びる事になります。2003年には広島の土堂小学校の校長に赴任、百ます計算を中心とした徹底反復学習で驚くべき成果を示されて教育界をあっと言わせました。
その後も八面六臂のご活躍をされ、多方面でフォロワーを増やしながら、陰山先生は今もなお教育界を変えていこうとされています。陰山先生のご活躍の詳細は、下記リンク先を参照していただけるとよくわかると思います。
陰山ラボ:OFFICIAL WEB SITE
立命館小学校副校長・大阪府教育委員長等、表立った偉業の数々もすごいのですが、見えないところでしておられる実に細やかな心遣い・支援もまた素晴らしいのです。実はこのサイト“EDUPEDIA”の立ち上げと運営にも大きな力を貸していただいています。陰山先生のあたたかいご支援には本当に感謝しております。

陰山先生の取り組みは、あちらこちらで広がりを見せています。尾道市の土堂小学校をスタート地点にして、山口県の山陽小野田市のように市を挙げて徹底反復に取り組むケースもあれば、最近の岡山県高梁市立有漢西小学校ようにピンポイントで陰山先生をお招きしてひとつの学校で改革を進めているケースも多々あります。下記のリンク先をご参照ください。

基礎的な学力を伸ばす~モジュール学習を通して~(岡山県高梁市立有漢西小学校)(徹底反復 学力向上セミナー inゆくはし)
校長・教育委員会の学校改革~隂山メソッドの取組~(福岡県 飯塚市立飯塚小学校)(徹底反復 学力向上セミナー inゆくはし)
モジュール学習による徹底反復の取組~西川タイム・ドリルタイムを通して~(福岡県 鞍手町立西川小学校)(徹底反復 学力向上セミナー inゆくはし)

百ます計算をすれば劇的な学力向上が起こるのか

陰山先生の実践はあちらこちらで広がっているのですが、日本の学校数も教員の数がそれ以上に多いため、全国に行きわたるにはまだまだ時間がかかるようです。百ます計算が脚光を浴び始めて20年近くが経っているものの、これを実践しない学校・教師はまだまだ多いです。平成生まれの若い教員は百ます計算や徹底反復に関する情報にあまり触れることがないのだろうと思います。また、陰山先生の実践を聞きかじって百ます計算を取り入れようとしたのだけれど、なんだか思っていたように成果が出ないのでやめてしまった、という教員も少なくないと思います。私の周りでも、ガッツリと百ます計算に取り組んでいるという同僚は驚くほど少ないです。現在の学校は定年退職した教員が授業サポートに入って週に1回の百ます計算等の計算力アップに取り組んでいますが、週に1回ではなかなか成果は上がりません。百ます計算さえすれば子供の学力がぐんぐん伸びると思っているのは間違いで、「陰山英男=劇的な子供の学力向上=百ます計算」ではありません。百ます計算が計算力と集中力のアップに役立つことは間違いないですが、百ます計算は陰山先生の提唱されている「陰山メソッド」の一部でしかありません。陰山先生は複合的で多岐にわたる実践の結果、「驚くべき成果」を生み出されてきたのです。百ます計算さえすればすぐに劇的な子供の学力向上が起こるわけではないのです。「百ます計算」にあまりにもスポットライトが当たりすぎたために誤解が生じてしまっているのだと思います。
陰山メソッド、つまり徹底反復学習への取り組みのハードルはけっこう高いと思います。何か一つ上を求めるのであれば、それなりの覚悟と根性は必要です。この記事は陰山メソッド(徹底反復学習)の全貌を明らかにすることが趣旨ではありませんので、興味を持たれた方は是非書籍を読むなり、陰山先生が登壇される研修会に参加してください。

百ます計算の目標の設定

陰山先生は「学力をつける100のメソッド」(2006年)で、以下のように目安を示されています。

小学校1年生:特に目標を設定しない
小学校2年生:3分以内
小学校中学年:2分以内
小学校高学年:1分30秒以内
百割計算:100問を5分以内

そして、「ぜったい成績が上がる学習法」(2016年)では、

小学校1年生:特に目標を設定しない
小学校2年生:2分以内→→→3分以上は論外
小学校中学年:1分30以内→→→2分30秒以上は論外
小学校高学年:1分20秒以内→→→2分以上は論外
百割計算:100問を5分以内

と、さらにハードルを上げた数字で示されています。

かなり厳しい目標タイムです。低学年では数字をきれいに書く指導と速記を要する百ます計算の指導が相反することとなり、子供も戸惑います。高学年になると「何で今さら足し算・引き算・かけ算をさせるわけ?」という子供の反発もありますので、教師と子供間の信頼関係がないと子供のモチベーションが上がりません。それでなくともやることの多い高学年で百ます計算を続ける余裕があるのかどうかという課題もあります。
そんな中で、目標タイムを子供たちにどう示すのかについては色々な考えがあるでしょう。
一つは、陰山先生に倣うというやり方です。ただ、あまり高い目標を示すと教師側にやり切る実力がないときに子供のモチベーションが下がって危険です。低学年からの積み上げがない場合、高学年でも指を使って足し引きをする児童がいるため、3分以内という目標タイムの設定は子供の状況によっては苦しいかも知れません。目標タイムの設定は子供の実情と教師の実力を勘案して、少なくともクラスの過半数が目標タイムをクリアできる程度に定めておくのが良いと思います。過半数ができるようになると、相乗効果によってクラス全体のスピードが上がってきます。
そこで、目標タイムを少し緩めにアレンジしてみました。

小学校低学年:最初の内は5分以内と言っておき、できる子供たちには3分を目指すように
小学校中学年:最初の内は3分以内と言っておき、できる子供たちには2分30秒を目指すように
小学校高学年:2分以内
百割計算:50問を3分以内

このくらいであれば、初心者の教員でも後述の方法を取り入れれば目標達成はそう難しくないと思います。もちろん、これは筆者にとっての目安であり、子供と自分(教師)の実態に合わせて目標タイムをアレンジをしてくれればいいことだし、腹の中では陰山先生の示される目標タイムの達成を目指してください。
そして、子供たちには「目標タイム」と「目標」を分けて説明してあげることが大事です。
「目標タイムは〇分〇秒です。全員がこの目標をクリアできるかどうかは分かりません。クリアできた人はもうひとつ、レベルを上げて〇分〇秒を目指しましょう。」(目標タイム)
「なぜタイムを縮めることが大事なのか。それは、百ます計算がただの計算練習ではないからです。短い時間であっても、思いっきり集中する習慣を身に着けておけば他の勉強をする時にも集中する力を出すことができるようになります。道路が広がったりつながったりすれば便利になるように、頭の中にある道が広がったりつながったりするのです。短い時間を毎日、続けて頑張りましょう。」(目標)

百割計算については、下記↓リンク先をご参照ください。

あまりのある割り算100問

指導の成果

さて、やっと本題に入ります。
本格的に徹底反復学習に進むかどうかは別にして、とりあえず百ます計算をやってみようかと思われている方。百ます計算の成果がなかなか出なくて諦めてしまった方。百ます計算をなんとなくやったことがない方。百ます計算のことをあまり知らないという方。こうした方々のために、「百ます計算がほぼほぼ成功する方法」について書きます。

まず、何をもって成功と見なすのかということを考えておかねばなりません。
タイムを縮めるという目標は当然大事です。陰山先生の示される強烈なタイムとは別に、私のやってみただいぶユルい実践をお伝えします。

2年生で百ます計算たし算に取り組んだところ、1学期の第一段階は「週1回で計5回」を実施しました。平均タイムは次のように変遷しました。

1回目 10分36秒
2回目 7分54秒
3回目 4分58秒
4回目 4分39秒
5回目 4分17秒

1回目は子供たちがやり方が分からなかったのもあって参考にならないので、2回目と5回目を比べると・・・

3分以内・・・ 0人 → 5人
3~4分・・・ 4人 → 8人
4~5分・・・ 4人 → 12人
5分以内にできる子供は 24% → 74% と、激増しています。(*1)

たった5回の百ます計算をした時点でこれだけの成果が出ているのは結構シュアな実践だと思います。ここまでが、第一段階です。
では、第一段階で他のクラスと違って、何を取り入れたについて述べていきます。

[*1] 100問できるまでやらせたわけではなく、5分で打ち切っています。打ち切らないと30分以上かかってしまう子供がいるからです。それにあまり長々とやらせてもできない子供はつらいし、3分で終わって待っている子供もつらいです。下のエクセルファイルを使って、「もし100問ができるまでやり続けると何分かかるか」を計算しました。タイムと正答数を入力すると百問を正答するのにかかる時間が算出され、出席番号順・タイム順にボタン一つで並べ替えることができます。百ます計算だけではなく、タイムを計測・記録したいテストに幅広く使えます。とても便利なファイル↓なので、是非ダウンロードしてお試しください。

100マス計算等簡単データ分析

百ます計算指導(補助的な指導)の実際

百ます計算の指導に関してはEDUPEDIAでもたくさんの実践が掲載されています。是非これら↓の記事もご参照ください。

100マス計算が苦手な生徒への指導
「みんな」が百マス計算をできるようになるために(岡篤先生)
百ます計算で人格の完成を目指す①~温泉型~(岡篤先生)
百ます計算で人格の完成を目指す②~特訓型~(岡篤先生)
【簡単作成】マス計算プリント(中西毅先生)
1年生から始める百ます計算

私の実践は岡篤先生のおっしゃる「温泉型」に近いかもしれません。「全く百ます計算をやったことのない2年生」を想像しながらお読みください。これを元に、各学年バージョンにアレンジして考えてみてください。
低学年ではなかなか5分を切ることが難しい児童がいます。足し引きの際に指を使っている児童です。指を使う児童は6年生になってもいます。1年生の間になんとか是正してほしいのですが、教師側が意識しないとなかなか直りません。指を使っている限り、5分を切ることは難しいです。第1回目の百ます計算は悲惨でした。百ます計算が初めてだったようで、最初の平均タイムは10分36秒、100問を解くのに41分かかる子供もいました(実際は5分で終わらせています。あくまでエクセルでの計算値です。)。
とりあえず、5分を切ることを目標にした指導の実際を述べていきます。

たし算の百ますを5回実施しました。この時は、算数は担任ではなく、算数専科が担当していました。5回(5週間)の間に下記の①~⑤のように、補助的な指導も入れました。私のクラスだけはその結果、他のクラスとは下記のような差が出ました。カッコ内が他のクラスの平均タイムです。

2回目 7分54秒(6分44秒)
5回目 4分17秒(5分36秒)

初期段階(2回目)で私のクラス(あまり算数が得意ではない)はほかのクラスに平均でタイムが1分10秒の差をつけられていたにもかかわらず、5回目には逆に1分19秒の差をつけるに至っています。ただ百ますをやらせるだけではなく、丁寧なフォローを入れていくと、かなり有意な差が出ることが証明されました。

① サクランボ算
まず、数の分解から入りました。サクランボ算を何度もやらせます。詳細は下記リンク先をご参照下さい。
サクランボ算 ~たし算・ひき算の基本【教材】

繰り上がり、繰り下がりのある計算をするときに2から18までの数の分解が瞬時にできないと百ます計算のスピードは上がりません。②に進む前に、2分以内にサクランボ算をこなせるようにしてください。2分以内にできない子供を抽出して、居残り勉強などで鍛えましょう。このさくらんぼ算だけを3回指導しただけで、その後の百ます計算が平均7分54秒まで縮まりました。

② 繰り上がり・繰り下がりの方法を確認する
6+8は、10を8と2に分解、6を2と4に分解して・・・という繰り上がり・繰り下がりが発生する計算に数の分解をどのように利用するべきなのかをもう一度復習する必要があります。12-4を「10-4+2」と考えるのか、「10-(4-2)」と考えればよいのかも議論・確認すればよいと思います。

③ 十ます計算
次に、負荷を少しずつ増やすという工夫もしましょう。前段階として十ます計算が有効であるのはよく言われています。

百ますはすぐにやらずに、週に1度程度にしておきます。計算が苦手な子供にとっていきなり百ますはきついので、ときどきやってタイムが大きく上がる方がモチベーション維持につながります。1・2・8・9を足す計算は比較的簡単なので30秒を目安に、3・4・5・6・7を足す計算は40秒を目安にやってみましょう。0・1・9はおそらく20秒もあればできるようになりますので、この目安でいけば「百ます5分」が見えてきます。十ます計算にはけっこう時間をかけるとよいと思います。一日、1枚を10日間ぐらいかけて実施しましょう。10ますごとにタイムを測り、できる所までで切り上げます。すぐに答え合わせをして次の10 ますへ進みます。いつまでもすると飽きてくるので、5回目で百ますをやって5分が切れない子供を残して特訓しましょう。また、10回目でも5分が切れなければ居残り特訓です。
10ます~50ますのプリント↓も作っていますのでご利用ください。

百ます計算 たし算・ひき算・かけ算2022.zip

④ 順次ますの数を増やしてゆく
さらに、二十ます(目安1分)、三十ます(目安1分30秒)、四十ます(目安2分)、五十ます(目安2分30秒)も提供していますので、順次やらせます。それぞれ5回ぐらいで、5回終わった後に百ますを挟み込みます。百ますをやった時にタイムが縮まるのが目に見えて分かるので子供のモチベーションは上がってきます。

⑤ 百ます計算の実施
百ます計算のタイムの記録は①~④を挟みながら1週間おきに5回実施しました。実施時には「本番だよ、集中してね」と、気合を入れさせて、自分のタイムの伸びに注目させます。また、クラスでどれくらいの成果が出ているかも随時子供たちにアナウンスします。クラスの半分程度の子供が5分以内に収まっていれば第一段階は成功ではないかと思います。

この記事では、「週1回で計5回」という非常にユルい実践を記述しました。クラスの半分程度の子供が5分以内と言う結果です。もの凄い成果を出すまでには至っていませんが、百ます計算に取り組むことは学力保障にもつながると思います。

学力保障 ~学校の荒れを防ぐための最優先事項 | EDUPEDIA

これをもう少し進化させて、鍛えた結果が、

百ます計算で成果をあげる方法Ⅱ ~誰にでもできるユル目の百ます計算指導の成果(近日UP)

です。どのような方法で、どのような成果を導き出されたのかを詳しくご紹介します。是非、ご参照ください!!

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