1 はじめに
こちらの記事は、静岡県で30年間以上続く教員サークル、シリウスのホームページに掲載されている教育実践法の一つをご紹介しています。
http://homepage1.nifty.com/moritake/
2 実践内容
「アレクサンダとぜんまいねずみ」は、かわいがられていたおもちゃのウィリーが、貧しく危険なアレクサンダと同じ立場になって大喜びをするというどんでん返しのおもしろさがある物語です。
主人公のアレクサンダの気持ちが、はじめとあとでは全く異なっています。ここがこの作品の山場であると考えます。安全で満たされていても主体的ではない生き方よりも、危険で満たされなくても生き生きと自ら生きる方がどんなに充実しているかをこの物語は暗示しています。
1.物語で一番活躍するのはだれか
新出漢字、意味調べが一通り終わったところで
発問1 このお話に出てくるのは誰ですか?(※青色=教師の発問/以下同様)
- アレクサンダ
- ウィリー
- アニー
- とかげ
- 人形
- くまのぬいぐるみ
などが出されました。登場人物を確認したところで次に、主人公を検討しました。
発問2 一番活躍するのは誰ですか?二番目に活躍するのは誰ですか?
この質問に対してはすぐに意見が一致しました。一番目がアレクサンダ、二番目がウィリーでした。
- 主人公はアレクサンダ。もう一人はウィリー。
- アレクサンダが主人公で、ウィリーが副主人公。
ここで物語を盛り上げるためのもう一人の登場人物を「対役」と呼ぶことを教えました。次に
発問3 初めのアレクサンダと終わりのアレクサンダとどちらがよいと思いますか?
- < 終わりのアレクサンダの方がよい > 28人
この発問に対してもすぐに全員が < 終わりの方がよい > と考えました。ただ、どうして終わりの方がよいと感じるのかうまく説明できないようです。そこで「終わりの方のアレクサンダの方がどうしていいのか、これから一緒に勉強をしていきましょう」と授業をまとめました。
2.二人のちがうところ
家ネズミのアレクサンダとおもちゃのウィリーにはいろいろな違いがあります。この違いを明らかにすることで、二匹の違いを対比しようと試みました。
発問1 アレクサンダとウィリーは、同じネズミですか?(ちがう)二匹の違うところを見つけましょう。
個人学習の時間を設け、よく本を読ませたあとノートに記録させました。その結果、いろいろな違いを見つけることができました。
アレクサンダとぜんまいねずみ.pdf
次に、アレクサンダの悲しみ(孤独)について考えさせました。
発問2 アレクサンダの悲しいところはどこですか?
子どもたちは、文中からたくさんの言葉を見つけることができました。数字は文番号。(番号の振り方に間違いがあるかもしれません。ご注意ください)
- 17文:“かなしそうにいった” 悲しそうに言ったから。
- 20文:“ぼくだめなんだ”
- 21文:“みんなぼくをかわいがってくれる” ウィリーがこういったけれど、アレクサンダはかわいがってもらえないから。
- 26文:“くらやみの中でひとりぼっち” ひとりぼっちで寂しい。
- 26文:“うらやんだ” ウィリーがこんなにかわいがられてうらやましい。おもちゃになってちやほやされてやさしくされたい。
- 27文:“ああ” ため息をついた。残念な気持ち。
- アレクサンダは、パンくずをとったり泥棒みたい”
このように、アレクサンダの悲しみを見つけることができました。23文“かれは、すきをみてはウィリーをたずね、ほうきや… ぼうけんを話して聞かせた”ここにも、アレクサンダの悲しみが大変よく示されていると感じますが、子どもたちは気づくことができませんでした。
3 プロフィール
静岡県教育サークル シリウス
1984年創立。
「理論より実践を語る」「子どもの事実で語る」「小さな事実から大きな結論を導かない」これがサークルの主な柱です。
最近では、技術だけではない理論の大切さも感じています。それは「子どもをよくみる」という誰もがしている当たり前のことでした。思想、信条関係なし。「子どもにとってより価値ある教師になりたい」という願いだけを共有しています。
4 書籍のご紹介
「教室掲示 レイアウトアイデア事典」(明治図書2014/2/21発売)
「学級&授業ゲームアイデア事典」(2014/7/25発売)
「係活動システム&アイデア事典」(2015/2/27発売)
「学級開きルール&アイデア事典」(2015/3/12発売)
5 編集後記
最初は相手いいところばかりに目が行きますが、最終的には不満はあるものの自分らしくあることが一番しっくりくるということを学びます。なぜそのように思うのか。その理由は、現状では漠然として答えられないので、発問を通して徐々に掘り下げられていきます。
(編集・文責:EDUPEDIA編集部 河村寛希)
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