1.1 テニピンとは?
テニピンの概要
テニピンとは今井先生が開発されたオリジナル教材です。簡易ネットでコートを作成し、児童が製作したダンボールのラケットで、スポンジのボールを弾く、やさしいテニス型ゲームです。
小学校体育では、用具や場、運動量、用具操作の難しさの問題から、今までテニスやバドミントンはあまり取り扱われてはいませんでした。その一方で中高体育では、盛んに行われています。中高への系統性を考えたときに、小学校段階からラケットスポーツに取り組むほうがよいのではないか、という問題意識からテニピンを開発されました。
また、サッカーやバスケットなどの集団スポーツでは、運動能力が高い児童ばかりがボールに触る傾向があります。一方、テニピンは一人ひとりが道具を持てるので、誰にでも個々の活躍の場を保障できます。
テニピンの教材的価値
- 自分専用のラケット(道具)を一人ひとりが持つことができるので、児童の意欲や関心を高めやすく、個々の活躍の(個が輝く)場を必ず保障できる。また、道具を介しての個人の運動量や運動感覚作りも保障できる。
- ラケット(道具)を操作し、ボールを追うことで、用具操作能力、空間認識力(ポールを打つとき、ボールを打たないとき)を養うことができる。
- ペアで交互に打つルールにすることで、十分な運動量の保障ができる。
- ネットがあるので、チームやボールが入り乱れるような複雑さがなく、初心者にとって取り組みやすい要因となる。
- 小学校段階で対人ネット型の運動を経験することで、道具操作や空間認識の面で中学校や高校への系統性を考慮することができる。
- 公営市営のテニスコートが地域に存在することから、今後生涯スポーツの1つとして期待できる。
1.2 全10時間の組み立てとねらい
1.3 ゲームについて
場や用具
- ゲームはダブルスで戦う。(二人がゲームに出場。残りの二人は得点と記録を行う。)
- ダブルス2つの合計点で勝敗を競う。(ゲームが修了後、2つのコートの得点の合計で勝敗を競う。)
- 1チームの人数は3~4人、10チームを作る。
- 試合にでないチームの仲間(2人)は、得点・応援、記録・応援の役割をもつ。
- ゲームの時間は6分間(前後半3分)とする。(6分間で得点の多いほうが勝ち)
- ゲームの進め方は、ゲーム1(前後半3分)→作戦タイム(3分)→ゲーム2(前後半3分)
- 1時間でゲームは2試合行う。
はじめのルール
- ペアと交互に打たなければならない。
- ツーバウンドまでバウンドしてもよい(ノーバウンドは初めはなしにする。ボレーを後々だしていきたいため。)
- サービスはどこから打ってもよい。ワンバウンドさせて下から打つ。ペア二人が打ったら交代する。
*狙えるようになったり、ゲームが発展してきたら、次のようなルールにしてもよい。(上から打つ。ラインを決めて後ろからうつなど。)→ルールの工夫
生徒の実態にあわせて追加されたルール
本単元では、授業を通して出てきた課題を解決し、よりテピンを楽しむために、児童が主体となってオリジナルのルールを追加していきます。
第2時
- ネットインはありにする。
- サーブは相手の正面にゆっくりしたボールで打つ。
- ラリーが4回続いたら攻撃をしてもよい。(みんなが楽しめるように初めはラリーを続ける。)
- サーブは1回失敗してもよい。
第3時
- 続けるための4回のラリー中に、とりにくいボールがきたらやり直す。
第4時
- アウトボールにノーバウンドでさわってしまった場合は、相手の得点となる。
第5時
- 審判はセルフジャッジ。もめたときはやり直す。
第6時
- ボレー(ノーバウンド)はありにする。ただしラリーが4回続くまではボレーをしてはいけない。
1.4 テニピンで身につけたい力
1. 打つ力(つなげる→ねらったところに打つ)
- 「ボールを操作する動き」・・・ふんわりとしたボールで相手コートに入れる。前後左右をよく見て、相手から離れている所にボールを打ち込む。
*ラリーを続けることが楽しい→スペースを攻めることへのシフト
2. 打ちやすい打点に入る力(すばやく移動→とまって打つ)
- 「ボールを持たない動き」・・・打ちやすい位置にすばやく移動し構え、止まって打つ。ペアで交互にボールを打つというルールを設定したことで、運動量の保障もできる。
3. 空間認識力(空いているスペースを見つける→空いているスペースを造り出す・攻める)
- 自陣の組み立て(連係)ではなく、相手の空間を活用した攻守混合のせめぎ合い。
- 次に打つペアのことを考えた攻守の工夫。(攻守の二人のポジションやカバーの仕方の工夫を考える。)
4. ルールを工夫する力
- ルールや場の工夫で自分たちが楽しめるオリジナルのルールを作る。
1.5 当日の様子
児童たちはコートの中で交代をしながら、ドリルゲームやリーグ戦をスムーズに行なっていました。児童たちはラリーを続けることだけにとどまらず、前後左右のスペースを意識して、ボールを打っていました。思い通りの展開を作ってスマッシュを決めたときの嬉しそうな顔がとても印象に残っています。
1.6 編集後記
みんなで楽しめるようにルールをとても工夫している印象を持ちました。それを児童たちが考えているのだから驚きです。学習カードを通じてしっかりと活動の振り返りをし、課題を意識しているからできることなのでしょう。今井先生どうもありがとうございました。
(レポーター 下村太郎)
1.7 講師プロフィール
いまいしげき
1979年生まれ。長野県出身。使える授業ベーシック研究会常任理事。メールマガジン「教師の知恵ぶくろ」編集委員。2008年度から2010年度まで天津日本人学校に派遣された。著書「見通しを持って楽しむやさしいボールゲーム」(学事出版)、「あすの授業アイデア チョイ引き活用辞典」(分担執筆、学事出版)。
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