1 よくある小学校のサッカー風景
小学校のサッカー、低学年の授業で試合をしているところを見ていると、一つのボールにたくさんの子供が群がり、サッカーの試合と言うには程遠い状況が良く見られます。小学校教師であれば、この状況を経験していることは多いと思います。
教師はこの状況に対し、「もっと離れて」「あそこが空いている」「パスを回さないと!」「声をかけあって」などと指示を出すものの、状況は変わりません。子供は動物的習性が抜けていないので、動いているものについていきます。(例えは悪いですが、犬がそうですね)
ところが、ボールを追いかけても、みんながボールを触れるわけではありません。結局は上手な子供がボールにタッチしていて、苦手な子供はたまにタッチできてもすぐに取られてしまいます。ですから、苦手な子供はただただ団子状態の後ろの方でランニングをしているような状況に陥ります。
この状態が続くと、だんだん子供たちは嫌気がさしてきます。学年が上がるに従って、今度は苦手な子供が守備側に下がって動かなくなるという状況へと変化していきます。
下記のリンク先記事には、団子状態を解消した先の成功例を載せていますので、ぜひご覧ください。
サッカー全員シュート(全員得点)達成への道 1 | EDUPEDIA・
2 問題を切り分ける
問題の切り分けに関して書かれている記事、
「分かる」は「分ける」~教育において分ける作業は重要です | EDUPEDIA
も、ご参照ください。
まずは、この団子状態問題について、問題の切り分けをすることからはじめましょう。
いくら大声で「離れろ」と指示を出しても、やっている子どもたちはボールを必死に追いかけているのです。いいところを見せたくて必死です。子どもには子どもの事情があります。
教師が、問題を切り分けるべきなのです。
1.パスを出すにも、正確なコントロールがないので試合がつながらない。
2.パスを出すにも、蹴る力が弱いので、距離が出ない。だから、すぐに追いついてまた団子になる。
3.練習で、ボールをヒットする一瞬で力を入れる感覚をつかめていない。
4.ボールを持っている人の後ろを走っている限り、パスをもらっても試合が展開しない。
5.スペースに走れないので、パスの出しようがない。
6.パスをもらう技術(トラップ・走りながらもらう)がない。
7.サッカークラブでない子どもはパスを受ける技術が低いので、パスを出す気にならない。
8.足元のボールを見てしまうので、周りが見えない。
9.上手な子供が勝ちにこだわりすぎてパスを出さない。
10.友達のミスに厳しい言葉を浴びせる。
11.そもそもコートが狭くて人口密度が高い。
ETC・・・・
「子どもがボールに群れる」という課題の後ろには、ざっと考えてもこんなにたくさんの要素の課題が隠されています。多分、もっとたくさんの要素が隠されているでしょう。そして、必ずしもそれらが一挙に片付くわけではありません。
これらの課題をを試合の中だけで解決しようとしてもそううまくはいきません。切り分けた要素に対して、ひとつひとつ、丁寧に考えさせ、指導し、練習を繰り返すという過程を経なければ、単に「育つ子供が勝手に育った授業」になってしまいます。
3 どう対処するか
1~3・5・6については、具体的にどのような練習をするとよいのかについては、サイト内の検索窓やタグで「サッカー」を検索してください。
4.ボールを持っている人の後ろを走っている限り、パスをもらっても試合が展開しない。
よくある、決定的な間違いです。バックパスを出して試合を回す技術(意識)がない限り、団子状態でボールより後ろを走っていても決してボールが回ってくることはありません。このことをしっかりと子供に理解させるとともに、走りながらのパス練習などで、味方よりも前に走りこんでパスをもらう練習をして、しっかりと身につけさせましょう。
7.サッカークラブでない子どもはパスを受ける技術が低いので、パスを出す気にならない。
後ろから出されたパスを受けたときには、体の正面で受けたとすれば、体を反転をしないとゴール方向へはドリブルも、前にいる味方へのパスもできません。それでオタオタしているうちに、囲まれてしまい、自分のチームのゴール方向へ蹴ってしまうような結果になってしまいます。上手な子供にすれば、「何をやっているんだ!」という気持ちになってしまいます。
パスを受ける練習は勿論のこと、「パスを受けてから反転する」「ゴール方向を向きながら後ろからのパスを受ける」などの要素が入った練習を取り入れる必要があります。
8.足元のボールを見てしまうので、周りが見えない。
これについても、サッカー独特の問題であり、十分なパス練習等が必要です。
9.上手な子供が勝ちにこだわりすぎてパスを出さない。
苦手な子供にパスを回しても団子状態になるのだから、勝つためには、上手な子供だけでパスを回し、自分でドリブルをするというのが子供にとっては「正解」になってしまいます。教師がこの「正解」を「正解」のままにしている限り、団子状態は改善されず、そのうち「苦手な子供が飽きてきて守備側に下がって動かなくなる」という状況に陥ります。
10.友達のミスに厳しい言葉を浴びせる。
そのせいで、気持ちの上でのびのびとしたプレーができず、とりあえずボールを追いかけることにしか意識がまわらない。
9・10については、「授業のサッカー」は何のためにやるのかという趣旨を理解していない。学級経営上の問題を解決する必要がある。といった対処が必要になってくると思います。
どの子供も楽しめる、伸びるサッカーの授業をするのは体育の中でもずいぶん難しい課題です。それだけにここを解決していくことは教師としての力量が試される場面でもあります。
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