「分かる」は「分ける」~教育において分ける作業は重要です

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目次

1 「分かる」は「分ける」

「学ぶ」は「まねぶ」の両者は関連していると言われるように、「分かる」は「分ける」の両者も関連しています。

「学ぶ」は「まねぶ」 | EDUPEDIA

物事を「わかる」ためには「分ける」ことが大切です。
教師としては、2つの意味で、「分ける」という意識を持つことが大事です。カテゴライズ(種類分け)と関連付けをしていくことは、学習や仕事の基本でもあります。

ひとつは、子供達に「分ける」力をつけること、もう一つは、仕事をする時に「分ける」作業を意識することです。

2 子どもに「分ける」力をつける

学習の多くの部分が、「分ける」という行為によって成り立っています。

例えば、

  • 3年生理科で昆虫の学習をするとき、今まで「ムシ」と、ムカデもクモもセミも、分けることなくしゃべっていたのを、「昆虫」と「昆虫とは言えない生き物」に分ける学習をします。そのためには、生活用の言葉と公式の言葉を分けて使う必要を教える。
  • 漢字を部首ごとの仲間に分けると、漢字の意味(さんずいへんは水に関係のある漢字など)が見えてくる。
  • 筆算の数字で縦をそろえることも、各位を「分ける」作業。
  • 文章を読む場合、「時」「場所」「登場する人・物」が変わりところで分ければ「意味段落」が見えて文全体の把握ができる。

学習の中には、いわゆるカテゴリー分類をする作業が数多く含まれています。

また、学習の過程を「分ける」て考え・練習する事によって、部分を把握し、全体が着実に、早く把握できることもあります。

例えば、

  • 算数の文章問題で、「ある壁の4分の1を塗るのに3分の2リットルのペンキが必要でした・・・」とあれば、面積の単位とかさの単位を分けて考える必要を教える。
  • 音楽でリコーダーを練習するときは、2~4小節に分けて繰り返し練習をすることによって、上達のスピードが断然違ってくる。

学習時には至る所で「分ける」作業によって「分かる」が進んでいきます。

このように、物事を分けて考える思考・態度が身に付くように子供たちを育ててあげると、よい学習態度が身に着くようになります。そして、自分は何ができて何ができないのかを分ける力がつけば、子どもは自立した学習者として自分で弱点補強ができるようになります。

3 仕事をする時に「分ける」

学習に於いて「分ける」という作業はたいへん重要なように、仕事に於いて「分ける」作業を意識する事も、たいへん重要です。

子供に指導をする課程、あるいは指導以外の仕事の課程で、まずは、全体を俯瞰して見てみる事が必要です。その後、問題を切り分けに取りかかります。次に、切り分けたポイントポイントへの対処法を考え出し、全体にフィードバックしたのちに再び俯瞰してみます(統合)。

4 問題の切り分け

例えば、サッカーがうまくならない場合。団子状態でボールに群れている子どもがいる一方で、ついていけずにゴール前でただぼんやり守備をしているといった風景が、よく見られます。

「団子になるな、離れろ」「パスを出せ」「声を出せ」と、いくら大声で指示を出しても、子供と教師の思惑は別であり、やっている子どもたちはボールを必死に追いかけているのです。子供たちは友達や先生にいいところを見せたくて必死です。

苦手な子供は、「積極的に参加しなさい」と、言われてもどうすればいいのかわかりません。

そこで子供に、「団子状態にならないように考えて、試合をしてみろ」と指示を出しても、子供が問題を切り分けて解決していくことは難しいです。団子状態になってしまう背景には、下記のような複雑な問題を抱えていることが多いからです。まずは教師が、問題を切り分けるべきなのです。

  1. パスを出すにも、正確なコントロールがないので試合がつながらない。
  2. パスを出すにも、蹴る力が弱いので、距離が出ない。だから、すぐに追いついてまた団子になる。
  3. 練習で、ボールをヒットする一瞬で力を入れる感覚をつかめていない。
  4. ボールを持っている人の後ろを走っている限り、パスをもらっても試合が展開しない。
  5. スペースに走れないので、パスの出しようがない。
  6. パスをもらう技術(トラップ・走りながらもらう)がない。
  7. サッカークラブでない子どもはパスを受ける技術が低いので、パスを出す気にならない。
  8. 足元のボールを見てしまうので、周りが見えない。
  9. 上手な子供が勝ちにこだわりすぎてパスを出さない。
  10. 友達のミスに厳しい言葉を浴びせる。

ETC・・・・

「子どもがボールに群れる」という課題の後ろには、こんなにたくさんの要素の課題が隠されています。おそらくもっとたくさんの要素が隠されているでしょう。ひとつの課題を解決するためにはその裏にあるさらに細かい課題を洗い出し、切り分けていく必要があります。10などは、学級経営とも深くかかわっており、「複雑な課題を含んだ課題」です。

上記サッカーの課題の解決法については、「サッカーの試合が団子状態にならないように」をご参照ください。

サッカーの試合が団子状態にならないように | EDUPEDIA

5 あれこれ、「分ける」

課題を切り分ける事は第一歩です。それだけでは、解決しません。そして、必ずしもそれらは一挙に片付くわけではありません。切り分けた課題にさらに優先順位をつけて(これも「分ける」)いかなければなりません。そして、解決できる問題なのかどうかも検討する必要があります。(これも「分ける」)。

生活指導がうまくいかないクラス、学力崩壊したクラスを担任したときなどは、とくに複雑な課題を抱えており、一つ一つの課題を切り分けて優先順位をつけていかなくてはいけません。

また、指導者は一つ一つの授業で、年間を通した指導課程で、「自分とそのクラスの実力に見合った到達ポイント」をどこに置くか、目標設定時には線引きしなければなりません(これも「分ける」です)。
ベストな結果にこだわるのか、ベーターを目指すのか?解決できる課題とそれにかかる時間は?そこに到達するためにはどんな指導をしなくてはならないかを計画する(計画も、指導過程を「分ける」ことです)必要があります。そして、子どもたち個人個人の課題を見つけることも大事です(これも「分ける」です)。

そして、どの子供が、どのくらいの成長があったか、学級集団としてどのくらいのくらいの成長があったかを評価する事も、「分ける」作業の一つと言えます。

また、評価の結果に対して、その結果の原因が教師個人に由来するものであるか、学校組織に由来するものであるか、子供自身は家庭に由来するものであるか、社会全体に由来するものであるのか・・・原因を考えることも切り分けが必要です。

例えば、ある子供の顔が最近曇っていたとして、それが「学校の問題」(教師の学級経営のまずさによる友人関係の問題等)に由来しているのか、「家庭の問題」(虐待や生活の乱れ等)に由来しているのかをまず切り分けなければ、解決の方向に進むことはできません。

(教師として)仕事をしていく上で、「分からない、できない、無理!」と思ってしまう事であっても、「分ける」と「統合する」を意識していくことによって、「分かる」ようになることは、思いのほか多いかもしれません。

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