1 【実践概要】
この記事では、徹底反復研究会の年末合宿勉強会で鈴木夏來先生が講演された内容をご紹介致します。想像画とは、「表情が豊かな絵」のことです。表情が豊かでない絵は、真正面を向いていたり、左右対称な免許証の写真のようになっていたりします。一方豊かな絵の特徴を述べると、「見ていて面白い」「アンバランス」「今にも動き出しそう」と児童の個性が表れた絵になっています。この実践では、想像画の作り方を取り扱っていきます。
2 【実践内容】
想像画の作り方
地味な色画用紙
まず、絵を描く際に背景の色画用紙を地味な色のものにします。児童は、基本的に明るい色画用紙から使い始めようとします。しかし、そこで児童に明るい色画用紙を使わせてはいけません。明るい色画用紙を選んだ時点で児童が満足してしまうために、児童は自分の工夫や個性を表現しなくなってしまうかもしれません。そこで、地味な色画用紙を使うことで児童の不満を意図的に作り出し、もっと自由に好きな色で作りたいというやる気を起こすことができるのです。
灰色のクレヨン
ワンポイントとして、灰色のクレヨンを使って絵を書いてみることをおすすめします。灰色のクレヨンを使うことの利点は、3つあります。まず、地味な色の画用紙に描くときによく映えるということ。次には失敗しても消せるということです。普通のクレヨンだと一度書いたら消せないので、失敗すると児童のやる気がなくなってしまうことがあります。しかし、灰色のクレヨンは消しゴムで消すことができ、児童は納得がいくまで絵を描けます。最後に、絵を灰色でなぞることができる点です。絵を邪魔せずに、描いた部分を強調できるので児童の個性を出すことができます。
トリミング
トリミングとは不要なところを削って、残った部分を強調することです。例えば、白い画用紙に絵を書いてその周囲を切り取ります。そして、色画用紙にその絵を貼ると、色画用紙が額縁のようになり中央の絵が強調されます。
また、応用としてトリミングしたように画面から切って書くという技術があります。全体図を書かないで一部の箇所にズームするように描くのです。こうすることによって絵を大きく見せ、躍動感を持たせることができます。
引き伸ばし
この技術は、小さい絵と大きい絵を並べて書くことで大きさを相対的に見せるものです。ゾウとクジラを並べると、ゾウは大きいと言ってもクジラよりは小さいので効果的に絵を強調することができます。
回転、アシンメトリー(左右非対称)
人は基本的に安定していたものを好みます。しかし、絵としては単純なものになってしまいがちで人を楽しませる絵には向かないこともあります。そこで、回転やアシンメトリーを加えることで動きが生まれ、躍動感を感じられる絵にすることができます。この2つの技法を取り入れることで絵に躍動感を与えながら、バランス感のあるものに仕上げることができます。
下記の画像が以上のポイントを踏まえて、鈴木先生が作成された想像画です。指導の参考にぜひご覧ください。
掲示の工夫
全校掲示
廊下に学年でまとめて展示してみてください。たくさんの作品を掲示することにより、作品を鑑賞するリズムが生まれます。数点の作品のみを掲示するよりも迫力が出た掲示になること間違いないでしょう。また、全体で揃っていることの見栄えだけでなく、「全員」の作品を貼ることで保護者や児童の信頼感にもつながります。
なぜ「全校」掲示?
全体ならクラスの作品だけを掲示すればいいと思われるかもしれません。しかし、一部のクラスだけが掲示されると、保護者や児童から「どうして〇〇先生のクラスだけ?」などの不満が出ることが考えられます。そのことから他のクラスの担任からも不満が出るかもしれません。学年全体の作品を全校で掲示するためには、見本をあらかじめ数点作っておくといいでしょう。そして、全校掲示を学校開放週間の時期に合わせて行うことで、保護者が学校に安心感を持ってくれるはずです。
3 【編集後記】
想像画であるのに同じような絵を描くのは、個性に欠けると思われるかもしれません。しかし、基礎をしっかりと学んでおくことで、これから児童が自由な想像画を描けるようになるでしょう。自分の個性をうまく表現できるようになるための素晴らしい授業だと思います。
(編集・文責:EDUPEDIA編集部 坂本一途)
4 【講師プロフィール】
鈴木夏來先生
神奈川県内教育委員会教育研究所指導主事。徹底反復研究会に所属し、NPO法人日本教育再興連盟(ROJE)教員事務局スタッフとしても活動されている。
NHK「おはよう日本」や朝日新聞など、マスコミにも多く取り上げられ、『小学教育技術』『総合教育技術』『ドラゼミ』などにおいて原稿執筆なども行なっている。長沼武志氏と共に、「楽曲カルタ」「俳句カルタ」「暗記カード」など多数の手作り教材を発明された。
鈴木夏來先生のその他の実践はこちら▽
http://bit.ly/YiMqrT
コメント