1 はじめに
平成25年6月21日に、「港区立青山小学校研究報告会」が行われました。その中で、芝崎武士(しばさきたけし)教諭のICTを活用した図工の授業実践をご紹介します。青山小学校のHPはこちらです。
→http://www1.r4.rosenet.jp/aoyama-ea/
2 学習の流れ
1限では水彩絵の具を使って偶然できた図形がどんな模様に見えるかを考えてみる。
2限では、図形に新しく描きこむことで絵として仕上げる。
このように2段階に分かれていて、今回は最初の段階の実践内容となる。
3 全体を通して、活動のポイントと期待される効果
活動のポイント
作品を制作する過程で「見立て」を行い、
- 偶然できた図形が何に見えるか
- どんな「楽しさ」が見つけられたか
の意見交換を行う。
期待される効果
- 自分とは異なる考えや価値観に触れることにより、感じ方、考え方の多様さに気づく。
- 友達の感じ方の中から、自分とは違う「楽しさ」での気づきを見つけ、自分の感じ方の幅を広げていく。
4 過去の授業例
- 画用紙に○△□などいろんな形を描いて絵の具で塗る。
- 筆に絵の具をつけて画用紙にびしびしびしと点々をいっぱい散らす。
- ストローを使ってふーふー絵の具を散らす。
5 今日の授業について
(1)ねらい
- 水彩絵の具の混色を行い、絵の具の特性に気づく。
(2)学習の展開
(a)題材に出会う
1. 絵の具の扱い方を復習し、用具の準備をする。
[指導・支援] 絵の具で模様作りをすることを伝え、作業の手順を明らかにする。
2. 3つの色を選び、水彩紙の上で混色をする。
[指導・支援] 濁色になることを防ぐため、使用する絵の具は3色を基本とすることを伝える。
3. 混色した用紙を2つ折りにし、広げたときに出来た図形や模様を楽しむ。
(b)友達と交流する
偶然にできた模様を見合うことで、何に見えるか、どんな絵になるか考えの交流を行う。
[指導・支援] 友達と模様を見合い、どこがきれいか、何に見えるかを話し合う。
(c)次時に期待をもつ
できた模様を生かして、どんな絵に仕上げるかを考える。
[評価]絵の具を適切に扱い、見立てたことを交流している。
6 細かな準備や児童の様子
1.黒板に書いてあること(手順など)を児童に声に出して読ませる。
2.教師が児童に見本を見せる。
①見本を見せながら、児童に質問(注意事項など)をする。
教師「水彩セットのカップに水をどのくらい入れるの?」
児童「半分くらい!」
教師「この白いのはなあに?」
児童「パレット!」
教師「画用紙の裏には自分の名前を書くんだよ。」
②絵の具をパレットに出すとき、児童は興味津々で教師の手元をのぞき込んでいた。
③画用紙の半面に絵の具を塗り半分に折る。画用紙を広げたあとどうなっているかは児童に自分でやってみて結果を見るように言う。
3.児童が実際に行う
①机に置く水入れやパレット、絵の具、画用紙の配置の仕方を確かめる。
②画用紙を配布したら、紙の両面を触らせてつるつるとざらざらの面があることを確かめさせる。つるつるの面のほうに名前を書かせる。教師が教室内をまわってつるつるの面に名前を書いてあるかをチェックする。
③筆で遊んだり歩きまわったりする児童もいた。
④3色を選ばせる。児童が選んだ色は青、黒、黄、茶、黄緑などさまざま。
⑤画用紙の右側に水を若干ふくませた筆で絵の具を塗る。
⑥3色つけたら強く押さえつけながら画用紙を半分にたたむ。この時も「なでなで」や「ぐりぐりぐり」など教師が声に出して指導する。
⑦画用紙を開いてどんな模様かを見させる。できた子の作品を黒板前にあるICTに写すと、次々に児童は自分の作品を見せに来た。みんなにそれぞれの作品がどんな模様に見えるかを聞いてみる。返ってくる答えは花火、太陽、蝶、犬の足跡などさまざま。
⑧もう1枚作りたいかを聞いて、再度同じ作業をする。今度の作業では、児童の中にきちんと左右対称に見えるように考えて塗っている子もいた。
⑨さらに3枚目はできたものを友達に見せて何に見えるかをお互いに話してもらう。
⑩1人1人に聞いてまわる子もいた。
⑪1人で作業している子や模様がなかなか見えてこない児童には、教師が画用紙を動かして(横から縦、斜めなど)違う角度から見せて尋ねていた。
4.最後は次の授業にやることを簡単に説明して片付けをさせる。
早く終えて着席している児童のことを褒める。
7 編集後記
図工は子どもたちが自由な発想をして意見を言い合えることのできる大切な場だと思います。そうした場を活用するために、教師がのびのびとした発想をうながす授業が必要だなと実感しました。画用紙を半分に折って広げたときの図形の見え方は、聞いていて私もびっくりしてしまうような意見もありました。その反面、水を汲みに行くときや自分の作品を誰かに見せるときに落ち着きなく動きまわったり、自分の作業に夢中になって教師の指示がなかなか通らなかったりするという場面があり、こうしたことをなくすように授業を行うのは難しいなと感じました。
(編集・文責:EDUPEDIA編集部 澁川万結子)
8 講師プロフィール
芝崎武士(しばさきたけし)
東京都港区立青山小学校教諭。
ICT教育に力を入れ、マイクロソフトとの共同研究を行った。
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