「京都国語の会」シリーズ《ワークショップ》作文指導ー「かく」授業をどう展開するかー(戸田和樹先生)

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目次

1 はじめに

この記事は、2013年8月3日に京都教育大学附属京都小中学校で行われた「京都国語の会 夏の研究会」のなかでの、ワークショップとその講評などをまとめたものです。夏休み明けに作文を児童に書かせるときの、指導案や小学中学年向けのポイントを紹介しています。

2 ワークショップ

テーマ:「夏の思い出」の作文を書かせる前の指導案をグループで話し合う

対象:小学校3年生

発表

①「思い出を書く」と言われても具体例を挙げるのが難しい。教員から「楽しかったこと、びっくりしたこと、怖かったこと、なにかがんばったことはあったかな」というような問いかけをする。「どこかへ行ったこと」など、全員が対象でない言葉は使わないほうがよい。

②教員が体験を先に述べたり、モデル作文を書いてみる。子どもたちに質問をさせて、どんなことを書けばよいのかを考えさせる。

③思い出につながる物(写真、貝殻など)を持ち寄って、話し合いの場を持つ。

④同じ年代の子どもの作品を例示する。書きかたや題材の選びかたのヒントになる。

⑤花びら学習(WEB図)で、一つのキーワードから連想する言葉を書き出し、子どもたちに質問してもらう。尋ねられることによって、作文に盛り込む要素がはっきり浮かび上がる。

⑥タイトルにひと工夫させてみる。ほかの人が読みたくなるようなタイトル選びを教員が促す。

⑦原稿用紙は文字数が限られるので、抵抗のある子どももいる。無地の用紙を用意してみたり、枠に模様を入れて普段書くのが苦手な子どもも書きやすいようにくふうしてみる。

戸田和樹先生の講評

夏休み明けに作文を書かせるのは、作文が教員の見ていない子どもたちの生活を知る手段となるからだそうです。そのために、戸田先生は何十人もの日記を、夏休みの期間、毎日書かせて普段の生活を知っておくように努めてこられました。作文の題材に困っている子どもに対し、“君にはこういうことがあったじゃないか。あの体験を書いたらどうか”と薦めることができます。子ども一人ひとりの日記を読むことを苦痛に思わないで、心待ちにすることが望ましいとのことでした。

戸田先生は、3年生を対象にした場合は書く前の指導のなかで、とくに「題材」と「題名」の指導に絞っているそうです。

3 「題材」と「題名」の指導<中学年向け>

作文の指導は小学校1年生から6年生まで同じような方法を採るわけにはいきません。それぞれの成長段階に応じて、どこにポイントをおくかが重要になってきます。3,4年生なら、「題材」と「題名」に徹底的にこだわらせます。

例えば、「『夏の思い出』について作文を書きましょう」という課題を与えたとき、そのまま作文用紙の最初に『夏の思い出』と書いたのでは、どんなことを書きたかったのかがわかりません。何日もかけて、題名を選ぶ、クラスメートからの意見を聞く、そうして時間をかけることによって、自分がいちばん書きたかったものはなんだったのかをじっくり考えることができるようになります。
また、子どもたちが書く題材に困ったときにはどうしたらよいのか、最終的に提出するまでの指導をどうするかなどの細かいアドバイスをいただきました。ちょっとしたくふうを、ぜひこれからの作文指導に生かしていただければと願っています。
 

「題名表」を使って

一人一枚ずつ、A2サイズの用紙に20個ほどの題名が並べられるように欄を設けておきます。子どもたちが思いついた題名を次々と思い浮かぶままに埋めていき、その中から作文として取り上げたいものを選ばせます。一旦決めたものも変更してよいことにするのです。各々の題名表をみんなで話し合うだけで1時間の授業を使います。実際の作文に取り掛かるのは更に1週間後です。このようにして“題名”にこだわり、“題材”にどんなものを選んだかをいちばん評価しています。

同世代の作品を紹介する

子どもたちが少し背伸びすれば書けそうな作品を読み聞かせます。文章の構成やタイトルの付けかたの参考になるからです。「題材」を選ぶヒントが得られます。

下書きをさせる

どの子どもも最初の1回目だけは、コメントを書き入れて返します。下書きも提出させて、
よりよい完成品(清書)を目指します。

個別指導

うまく書けない子どもに対しては、たった1度だけ、個別指導を行います。この”たった一度だけ”が重要なポイントです。

まとめ

小学生に関しては、作文のあらゆる面でのくふうまでは求めません。視点を絞って評価します。まずは“題材”と“題名”の選びかたを指導して、1年のカリキュラムのなかで中身の充実をねらっていきます。
(編集・文責;EDUPEDIA編集部 丸山明美)

講師プロフィール

戸田和樹先生
1954年愛知県犬山市生まれ。京都教育大学卒業。03年読売新聞社主催「遊歩俳句コンクール」優秀賞、05年新風舎出版賞ポエトリー部門奨励賞・フィクション部門優秀賞、05年白河書院「わが青春は京都に」エッセー最優秀作品賞受賞。現代詩・少年少女詩・童話・児童文学・エッセーなど幅広い分野で活躍中(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

童話作家・詩人。1954年、愛知県犬山市出身。京都府在住。京都教育大学教育学部卒。京都教育大学附属京都小中学校初等部副校長.詩の入賞歴多数。国語教育者協議会委員、京都国語の会代表、詩誌「リヴィエール」同人
童話作家、詩人。著書に詩集『はんなりとした人々』(二上書房)
『嘘八景』(新風舎)

童話『ゆーみぃちゃん きせつをめぐる10のおはなし』(新風舎)

『ゆーみぃちゃんのすてきなともだち』(新風舎)

などがある。

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