平仮名を美しく書く指導法~硬筆の書写~

1 はじめに

この実践記事は、神戸市立小学校教諭の岡篤先生が運営されているメールマガジン (http://www.mag2.com/w/0001346435.html)から引用、加筆させていただいたものです。(詳しくは岡先生のメルマガ495号~502号をご覧ください)

岡先生が実施されている、「硬筆書写」の取り組みについて紹介します。これから平仮名を書く低学年、特に最初に文字を習う小学校1年生にも有効な指導方法です。

2 平仮名はこうして書く

鉛筆の持ち方は1年生の最初に教えますが、文字は書ければよいというものではありません。だれかに読んでもらうためには、丁寧に美しく書くことが大切です。平仮名を書く上での、ポイントを挙げてみます。

1. はらいを強調  「り」「け」
2. 線を分けて考える 「け」
3. 結び  「よ」「ま」「は」「ほ」「ね」「ぬ」
・イラスト表現が効果的  結びの部分には おさかなさん を添えて
4. 総仕上げの形 「わ」「れ」「ね」

はらいを強調

■「り」のポイント

  • 1画目は、少しふくらんではねる。
  • 2画目の始筆は、1画目とそろえる。
  • 2画目も少しふくらみ、まん中で払う。

■「け」のポイント

  • 1画目は、少し丸く。
  • 2画目は、まん中(縦線)から
  • 3画目は、まっすぐ下りて、はらい。

「け」の3画目は、はらい以外にも難しい点があり、次の2点は特に正反対のことをする子が多いので注意してください。

  • 上からはらいまで縦にまっすぐに書いてしまう。
  • 全体を弧のように丸く書いてしまう。

ここを直すためには、線を分けて考えることが必要です。「り」の2画目も「け」の3画目と同じでまっすぐになりすぎたり、弧になってしまったりしがちです。これは、小さい学年の子の特徴でもあります。

  • 意識すると大げさに表現する。
  • 斜めの線は90度や垂直の線になりやすい。

という傾向が出たともいえます。「下を少し左に曲げます」というと上も曲がってしまうのです。指摘しないと縦の線は直線と認識してしまいます。

線を分けて考える

「け」の3画目の指導としては、線を分ける、が有効です。
はらいのときは「すうっ」と「ふっ」というように、息の長さで分けて表現するとわかりやすいです。「け」の3画目を縦線の部分と左下に向けて払う部分に分けて考えるように言います。それでもできない子がいる場合は、さらに徹底します。分ける線で、鉛筆をいったん紙から離します。

鉛筆を離す

まず教師が手本を見せます。「最初は、まっすぐな線だけ書きますよ。『すう』でしたね」と黒板に縦線を書いたら、一旦チョークを黒板から離します。大きな動作で、子どもに印象づけます。「縦線のあとは、『ふっ』のはらいですよ」と、縦線の下にはらいをつけます。

これを子どもにも紙の上でするように言います。最初は、一斉にしたほうが徹底するでしょう。

結び

「よ」「ま」「は」「ほ」にある「結び(線を丸く書いて交差させる)」は、はらい同様、難しい部分です。これがきちんとできると、それだけでも字が上手に見えます。よくあるのは“円形”です。角度の「少し」という加減が難しいのと同じなのでしょう。子どもには、結びの部分を「◯」と認識してしまう傾向があるようです。指導がなければ、いつまでも◯のままです。

■結びを三角のイメージで

「よ」で説明します。2画目は、まん中を真下に下していきます。下まで行ったら、線を分けて考えます。ここからが結びです。子どもは、すぐに◯を書き出す子が多いようです。それを三角形の底辺をイメージしながら、左へ進んでいきます。底辺が終わったら次の頂点に向かいます。位置は、二等辺三角形の頂点よりもやや左寄りです。

頂点まで来たら、今度は最後の辺を書きます。最初の縦線と交差することになります。終わる位置は、底辺と重なるくらいの高さです。実際には、底辺は縦線から始まっているので、最後の辺と交わることはありません。

言葉で説明しても、特に一年生にはわかりにくいかもしれません。やはり形を伝えるのは、イラストがわかりやすいです。そのイラストも「三角」というだけでなく、もっと具体的なイメージが欲しいのです。そこで登場するのが「おさかなさん」です。

■おさかなさん

ときどき目にすることがあるので、比較的一般的な技術なのかもしれません。結びの形を、左向きの魚に例えます。 

丸でなく、細長く書かせるためです。もちろん、タイやヒラメでは意味がありません。アジやイワシといった、標準的な(?)形の魚のイラストを結びに重ねて色チョークで書きます。

このとき、目の点とエラの線も入れるといっそうイメージが定着します。

■「よ」のポイント

以下の3つになります。

  • 1画目は、縦の中心線をなぞってまっすぐに下りる。
  • 下まで下りてから結びに入る。

(下りるのが中途半端だと、結びの始まりが左下に向かうことになり、三角ではなく、イワシではなくタイになってしまう)

  • 結びは、三角または“おさかな”のイメージ。

 
「よ」「ま」「は」「ほ」だけでなく、「ね」や「ぬ」にも応用できます。

■「ま」のポイント

結びのセットは、「よ」「ま」「は」「ほ」です。この順番は考えており、「よ」のポイントが
分かっていれば、「ま」は 「2画目は、1画目よりも短い」ということが追加になります。

■「は」のポイント

「は」は、当然、1画目の縦線についてのポイントが加わります。

  • 1画目は、少し左にふくらむ。
  • 結びは、1画目の線よりも下にいかない。

1画目が短すぎる子が多いようです。短すぎると結びが1画目よりも下に来ることになり、バランスが悪く感じます。

■「ほ」のポイント

「ほ」は、「ま」と違い、2画目と3画目の長さは同じでかまいません。
「よ」「ま」「は」は指導がきちんと定着していれば、子どもたちは、自分で見てポイントが分かるでしょう。

総仕上げの形

■「わ」のポイント

  • 2画目は、少し上に上がり、1画目を少し出る。

(1画目を大きくはみ出す子が多く、そうなるとあとの曲がりの部分が下に来ることになります)

  • 2画目の2つ目の折れは、2画目の始筆の真下にくる。
  • 最後ははらいになり、はらいの方向は左下。

「わ」のセットは「れ」「ね」です。
特に難しいのが、2画目の1画目と交差した後です。「わ」で指導したことが定着していれば、「れ」「ね」はすでに一番難しいことはできているということになります。

■「れ」のポイント

2画目の折れについては「わ」と同じポイントが当然として言えます。

  • 2画目の三回目の折れ(上から下への部分)は、1回目の折れと同じ高さまで上がる。
  • その後、真下に下りる。
  • 最後は、「し」の「おたまのように」曲がってはらう。

■「ね」のポイント

「わ」と「れ」のポイントが定着していれば、指導することは減ります。

  • 2画目の「れ」の3回目の折れにあたる部分は曲がりになる。
  • 結びは、丸にならない。(長丸、おさかなさん、三角を意識して)

難しくて、形が全く取れない子もいたはずです。それが、ポイントを守って書くことで、驚くほど上手になる子もたくさん出てくるのではないでしょうか。
そんな子ども達の表情を見るのも教師の楽しみの一つです。

3 少しの加減

■垂直、水平になってしまう

「少し」の加減が難しいようです。特に、角度の「少し」は1年生には難関です。二つのどちらか、という単純な構造ではない、微妙な感覚を目ということは成長の一面です。
ということは、1年生の子どもにとっては「さ」が難しいのも当然といえます。

■「さ」のポイント

  • 1画目は、少し上がる。
  • 2画目も少し右下へ下り、1画目の中心で重なる。
  • 3画目は、少し曲がり縦中心線で終わる。

微妙な線ばかりです。垂直・水平の線になったり、「少し」を意識しすぎて大きく角度を取りすぎたりすることがよくあります。「き」も同様です。

■「書写療法」という視点

岡先生は、「書写療法」「視写療法」という言葉を使うことがあります。もちろん、本当に医療行為をするわけではありません。書写を通して、気持ちを落ち着けたり、キレやすい子どもを変えていったりということです。先生がこの発想を持つようになったのは、気に入らないことがあると、すぐに暴言を吐いたり、物を投げる子を担任したときでした。その子が、字をていねいに書くことに少しずつ興味を持ち、実際に上手になっていくにしたがって、気分のムラも徐々に減っていったということから思いついたものです。

4 編集後記

文字を丁寧に書くと一言で言っても、その形を作るためにはどうすればよいかということを、具体的に説明しているものは少ないのではないでしょうか。力の入れ方、抜き方、鉛筆の止め方、払い方、どこの位置でどんな形を意識すると美しく、整った文字を書けるのかを学ぶことができました。文字を一つひとつ丁寧に書き、上達していくことで、子どもの心もまた落ち着いていくという効果をもたらします。

まずは、一年生のはじめに平仮名を習いますから、大きくゆっくりと文字を書いて、鉛筆の運びを手指に覚えさせたいものです。

平仮名の書き方を、容易な言葉を用いて説明するときの参考にしてみてください。
(文責・編集:EDUPEDIA編集部 丸山明美)

5 実践者プロフィール

岡篤(おかあつし)先生

神戸市立有野台小学校教諭。
漢字と俳句の実践に力を入れている。学力研という研究会に所属。
2013年11月、新しい指導法や特色ある教材で漢字教育を実践している全国の教員を表彰する「白川静漢字教育賞」最優秀賞を受賞。
● 主な著書
『読み書き計算を豊かな学力へ』(明治図書 2000年) 
『書きの力を確実につける』(共著 明治図書 2002年)

『これならできる!漢字指導法』(高文研 2002年)

『字源・さかのぼりくり返しの漢字指導』(ひまわり社 2008年)
『教室俳句で言語活動を活性化する』(明治図書 2010年)
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