『ろくべえまってろよ』 2年生国語授業案(シリウス)

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目次

1 はじめに

こちらの記事は、静岡県で30年間以上続く教員サークル、シリウスのホームページに掲載されている教育実践法の一つをご紹介しています。
http://homepage1.nifty.com/moritake/

2 教材名

『ろくべえ まってろよ』(灰谷健次郎作)

3 教材目標

  
◯人物の気持ちや行動を表現に即して読み取ることができるようにする。
◯読書カ−ドをつけることができるようにする。
・場面の移り変わりや行動の順序に注意して読み取ること。
・人物の気持ちを想像しながら読むこと。

4 教材と児童

(1)教材について

読みの能力を養うという点から考えると,この教材は,”人物と人物””人物と物”との関係を読む系列の文学教材である。物語文としては『おじさんの かさ』『はるの くまたち』『ひっこしてきたみさ』『そして トンキ−も しんだ』に続く4作目であり,人の心の変化を楽しむ教材である。これが3年生の『はまひるがおの「小さな海」』へと発展する。

第2学年の目標は「事柄の順序や場面の移り変わりを中心にして内容を理解しながら文章を読んだり話を聞いたりすることができるようにすることと「易しい読み物を進んで,読もうとする意欲を高める」ことである。

『ろくべえ まってろよ』の教材は場面の移り変わりが明確であり,この2年生の目標に近付けるような読みかたをさせたい。この物語は,6つの場面から成っている。そして起承転結の構成になっている。

深い穴に落ちているろくべえを子供たちが発見するという事件を描いた起の場面。かんちゃんの「まぬけ」の言葉には,ろくべえがなんで落ちたんだろうという期待に反した気持ちでいっぱいである決してろくべえを心の底からばかにしているのではない。その証拠にろくべえを心配し,同情し,「ろくべえがんばれ」と励ましている。

いろいろな試みをする承の場面。ここは,常識的な方法の試みとして,お母さんたちを引っ張ってくるが用を得ず,能書きと説教だけを言い残して行ってしまう。その後出したいろいろな知恵の実行もあまり効果がなかった。そこへ,通りかかった暇そうな人へ頼んでみるが,自分とのかかわりがないとわかると,さっとその場を去ってしまう。この場面で大人たちのとった行動を単なる「無責任」とか「役立たず」という批判だけで終わらせるのではなく,そのかげには子供を思う親の気持ちを探らせると同時にむしろそのような常識で判断してしまう大人たちの姿を通して1年生の子供たちの優しさ,ひたむきな姿を浮かび上がらせていきたい。

他力のあきらめから自力へのめざめとなる転の場面。もう誰もあてにできなくなった子供たちは,口をきゅっとむすんで頭が痛くなるほど考えている。この物語を象徴するものがある。そして実に子供らしいクッキ−作戦を思い付くのである。

子供たちだけの力でろくべえを救出することに大成功することになる結の場面となる。4回も繰り返されることになる「そろり。そろり」の中に,クッキ−への配慮,成功を祈る気持ち,手段方法の自信のなさ,ろくべえへの配慮などいろいろな思いを探ることができる。だからこそ最後の「わあっ」があるのだ。

「ろくべえ まってろよ」という題名は,子供たちの優しい呼び掛けの言葉である。子供たちの犬も,人間も区別なく大事に思う優しさとそのために考えられる精一杯の行動をするけなげさがこの作品の主題である。

5 指導計画 (17時間扱い)

第1次 (10時間)

第1時 物語を聞いて第一次感想を書かせる。
『ろくべえまってろよ』の話を聞いて感想を書こう。     

第2時 ろくべえノ−トをつくる。

第3時 ろくべえノ−トに書き込みをする。
思ったこと、感じたことをろくべえノ−トに書こう。 

第4時 穴に落ちたろくべえを発見した時の子供たちの様子や気持ちを読み取らせる。   
穴に落ちたろくべえの様子と見つけた時のみんなの気持ちはどんな気持ちだったのだろう。

第5時 お母さんと子供の気持ちの違いや様子を読み取らせる。 
「ぼくがおりていく」と決心するまでの、かんちゃんの心の中をふきだしに書いてみよう。  

第6時 元気をなくしたろくべえを一生懸命励まそうとする子供たちの気持ちを読ませる。
ろくべえを励まそうとするみんなの気持ちを考えよう。 

第7時 助けを頼んだ暇そうな人も当てにならないと知って、考え込んだ子供たちの様子を読ませる。
ひまそうな人が助けてくれない時、かんちゃんが心の中で思ったことを書こう。

第8時 子供たちが救出作戦を思い付くまでの様子を読み取らせる。  
口をきゅとむすんで考えて、みんなが「そや」と思い着くまでの気持ちを考えよう。 

第9時 子供たちの考えた救出作戦のなりゆきを読み取らせる。
そろり、そろりとロ−プを降ろしている時、みんなが心の中で思っていることをふきだしに書こう。 

第10時 物語の続きを自分なりに考えさせる。
ロ−プを引き上げた後、みんなやろくべえはどうしただろう。

第2次 (4時間)

第11時 『読書カ−ドをつける』の文を読み、カ−ドをつける意味や効用を考えさせる。

第12時 絵本『ろくべえまってろよ』を読み聞かせ、カ−ドに記入。

第13時 最近読んだ本を思い出したりして読書カ−ドを書かせる。

第14時 読書カ−ドをもとにして、読書発表会をさせる。

第3次 (3時間)

第15時 『あいさつのことば』を読み挨拶の言葉の役割を考えさせる。

第16時 日常的な挨拶の言葉を考えさせる。

第17時 気持ちを述べる挨拶の言葉を考えさせる。

本時の授業

(1)目 標

穴に落ちたろくべえを発見した時の子どもたちの気持ちや様子を読み取らせる。

(2)指導構想

本時は、「ろくべえ まってろよ」の中では、起の場面にあたる。この場面は、深い穴に落ちているろくべえを、発見するという事件の発端を描いている。

児童たちは、前時において書き込みノ−トに1の場面の書き込みを行っている。そこで本時では、この書き込みをもとに、穴に落ちたろくべえを発見した時の子どもたちの気持ちや様子を読み取らせてゆきたい。

かんちゃんの「まぬけ」という言葉やえいじくんが鳴き声だけでろくべえとわかるということを手がかりに、子どもたちとろくべえは、親しい関係にあることをとらえさせる。

次に、この友達のようなろくべえが穴に落ちているのを発見した時に、子どもたちは、それぞれどうしたのか一人一人追ってゆく。一人一人の行動の理由を探って行くと、みつおくんも、えいじくんも、ろくべえが仲間なので助けてあげたいという欲求にかられて行動していることに気付かせたい。これらのことをもとに、みんな口々に「ろくべえ がんばれ」と言った時の子どもたちの気持ちを考えさせてゆきたい。この時に、「ろくべえ まってろよ」の後、心の中ではどんなことをいっているのか、吹き出しに書かせる。

最後に、いくら口だけで応援してもろくべえを助けることはできず、自分たちでこの問題を解決してゆくしか方法がないことをとらえさせてゆきたい。

(3)展開

6 プロフィール

静岡県教育サークル シリウス
1984年創立。
「理論より実践を語る」「子どもの事実で語る」「小さな事実から大きな結論を導かない」これがサークルの主な柱です。
最近では、技術だけではない理論の大切さも感じています。それは「子どもをよくみる」という誰もがしている当たり前のことでした。思想、信条関係なし。「子どもにとってより価値ある教師になりたい」という願いだけを共有しています。

7 書籍のご紹介

「教室掲示 レイアウトアイデア事典」(明治図書2014/2/21発売)

「学級&授業ゲームアイデア事典」(2014/7/25発売)

「係活動システム&アイデア事典」「学級開きルール&アイデア事典」
(いずれも明治図書2015/2、発売予定)

8 編集後記

『ろくべえ まってろよ』の指導案について詳しく解説されている記事です。物語に出てくる人物の心情とその変化に注目しつつ、「なぜだろう?」と子どもに問いかけながら話の理解を深めていきます。各時間ごとの指導内容も掲載されていますので、ぜひ指導の際のご参考にしていただければと思います。

(編集・文責:EDUPEDIA編集部 内藤かおり)

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