1 はじめに
こちらの記事は、静岡県で30年間以上続く教員サークル、シリウスのホームページに掲載されている教育実践法の一つをご紹介しています。
http://homepage1.nifty.com/moritake/
2 実践内容
1.あまいあまいかぶになれ
大きなかぶは繰り返しの文が多く出てくる。同じことが繰り返されているので、子どもたちもその繰り返しのおもしろさを楽しみながら読んでいる。話し言葉のかぎかっこに注目しながら授業を進めていった。(以下、赤字部分が教員の発問部分です。)
話した言葉にはカギ括弧がついていますね。今から順番に番号をつけていきます。こんなふうに描いて下さい。
子どもの机の間を回りながら教科書を見ていった。番号をつけれない子には、一緒にカギ括弧を捜した。
カギ括弧はいくつありましたか
7つ、とほとんどの子が答えた。
今日は(1)のカギ括弧の勉強をします。①だけを自分の最高の読み方で読む練習をしましょう。
(1)「あまい、あまい、かぶになれ。大きな、大きな、かぶになれ」 ここで黒板に(1)を3通りの書き方で書いた。これを見て子どもたちは、「なんだこりゃ?」といった顔で見ている。
(1) あまい、あまい、かぶになれ
(2) あまい、あまい、かぶになれ
(3) あまい、あまい、かぶになれ
(1)から(3)までのうち、どの読み方が一番いいと思いますか
と尋ね、わたしが(1)から(3)までを実際に読んで聞かせた。太字は強く読むところです。子どもに尋ねたところ、(1)1名、(2)2名、(3)33名となった。その理由を聞くと
- (3)のように読むとあまそうな感じがする
- (3)のように読むと本当にあまそう
このように、読み方によってかぶのあまさが違って聞こえることが出された。
(1) 大きな、大きな、かぶになれ
(2) 大きな、大きな、かぶになれ
(3) 大きな、大きな、かぶになれ
(1)から(3)のうちどれがよいか尋ねた。今度は全員が(3)に手を挙げた。
- 大きく読んだ方がいい。途中で声を小さくするとへん
- (3)だと大きくなりそう
- おじいさんは大きくなってほしいと願っているから
などが出された。授業のまとめで、「みんなすごいね。読み方だけで考えてもらおうと思ったけれど、みんなはおじいさんの気持ちまで考えることができたんだね」とほめて授業を終わった。
2.”あまそうなかぶ”と”あまいかぶ”
”あまそうなかぶ”と”あまいかぶ”についての違いを検討する授業をおこなった。まず、教科書を声を出して読んだ。
”おじいさんがかぶのたねをまきました。
「あまい、あまいかぶになれ。
おおきなおおきなかぶになれ。」
あまそうな、げんきのいい、とてつもなく
大きな かぶができました。”
読み終わったところで「~になれ」という表現に着目し
「~になれ」と言うときには、どんなときに言いますか?
- 魔法をかけるときに言うみたい
こんな意見が出てきたので「そうだね。ひみつのあっこちゃんがよく言っているね」と受けてから「じゃあ、あっこちゃんでは、どんなことを言っている?」と尋ねると
- 動物になあれ
- ごきぶりになあれ
いろいろなものが出てきたが、この「なれ」という言葉が、願いを表している言葉だということに気づかせたかった。
次に黒板に”あまいかぶ””あまそうなかぶ”と書いてから、
”あまいかぶ”と”あまそうなかぶ”は、同じですか?
< 同じ >0人 < 違う >36人 であった。理由を尋ねると
< 違う > 36人
- あまいかぶは本当に甘いけれど、あまそうなかぶは甘いとかわからない。
- あまそうなかぶは、もしかしたら、辛いかもしれない。
- 本には同じだと書いていない。
- あまそうなかぶとあまいかぶは、字の長さが違う
”あまいかぶ”と”あまそうなかぶ”をもう少し、切実な問題として考えさせようとし、次のように尋ねた。
あなただったら”あまいかぶ”と”あまそうなかぶ”のどちらを食べますか?
全員が < あまいかぶ > だと答えるだろうな、我ながらいい発問だ、と一人悦に入っていたが、予想に反して < あまそうなかぶ > と答える子が続出した。
< あまそうなかぶ >
- ぼくは、かぶは辛いのが好きだから、あまそうなかぶにする。
- ぼくも辛いのが好きで、あまいかぶだと本当に甘くて、あまそうなかぶなら、もしかして辛いかもしれないから、甘そうなのにする。
子どもたちは誠に理にかなった答えをする。「素直じゃねえなぁ」と心の中で一人つぶやいていたが、子どもたちはしっかり”甘い”と”甘そうな”の違いに気づくことができた。
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4 プロフィール
静岡県教育サークル シリウス
1984年創立。
「理論より実践を語る」「子どもの事実で語る」「小さな事実から大きな結論を導かない」これがサークルの主な柱です。
最近では、技術だけではない理論の大切さも感じています。それは「子どもをよくみる」という誰もがしている当たり前のことでした。思想、信条関係なし。「子どもにとってより価値ある教師になりたい」という願いだけを共有しています。
5 書籍のご紹介
「教室掲示 レイアウトアイデア事典」(明治図書2014/2/21発売)
「学級&授業ゲームアイデア事典」(2014/7/25発売)
「係活動システム&アイデア事典」(2015/2/27発売)
「学級開きルール&アイデア事典」(2015/3/12発売)
6 編集後記
前半では、「あまい」「大きな」と繰り返される同じ言葉の読み方(強弱)を考えることで言葉の伝わり方の違いや、それに伴う登場人物の気持ちまで考えることができました。また、「あまい」と「あまそうな」かぶの違いから、語末の表現方法もしっかりと理解をすることができました。
(編集・文責:EDUPEDIA編集部 水島淳)
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