1 概要
関西学院初等部授業公開・研究発表会における、久木田雅義先生の提案授業を紹介します。
関西学院初等部の教育目標である、Mastery for Serviceの実現を目指し、子どもたちのかかわり合いに注目した実践です。
2 授業の構想
本単元では、これまでの学習を振り返りながら、直方体、立方体について知り、立体図形について理解し、直線や平面の平行の関係についても理解していくようにする。算数的活動として、具体物を用いたり、展開図をかいて切り取ったりといった操作的な活動を取り入れる。
児童はこれまでの学習経験から、「図形はわかりやすい」「頭の中でイメージしにくい」などと自分なりに得意不得意の意識を持ち始めている。同時に、理解や活動に関して所要する時間や習熟度合いに差異がみられる。そこで、算数的操作活動をペアやグループで行い、互いに協力して学習に取り組むことで、互いの学びを共有し、より豊かな学習活動が進められるようにする。
具体的には、
①展開図をかく際に、1人ですべてをかくのではなく、小グループで1面ずつをかき足していき、最終的にみんなで人数分の展開図を仕上げ、切り取り、立方体を組み立てることで展開図の整合性を確かめる活動
②ペアで協力し、無作為に提示される面を組み合わせて直方体の展開図を完成させるゲーム活動を通して、常に「友だちと一緒に学んでいる」ことが意識できるようにし、そのことでより楽しく学習ができることが実感できるようにする。
3 指導案
■単元名
直方体と立方体
■単元目標
図形についての観察や構成などの活動を通して、立体図形について理解できる。【図形】
■指導計画(全11時間)
第1次 直方体と立方体(4)…本時4/4
第2次 面や辺の垂直・平行(4)
第3次 位置の表し方(3)
■本時の目標
立体図形の構成要素に着目して、直方体、立方体の展開図をかくことができる。【技能】
■本時の展開
4 使用する教材(2面のみが印刷されたプリント)
〇立方体
〇直方体
5 授業の流れ:「みんなで展開図をつくろう」
・立方体/直方体が完成する展開図になるように1つの面だけ塗り、次の人に回す。
・グループで展開図を完成させる。
(ルール:①しゃべらない ②ジェスチャーもだめ ③時計回りで回す)
・自分の展開図が手元に戻ってきたら、立方体/直方体ができるかどうかを自分で確かめる。
・友だちと確認し合い、修正する。
・完成した展開図を切り取って、立方体/直方体ができるかどうか確かめ、ノートに貼る。
6 授業のポイント
■すき間に着目
「もしこれが回ってきたらどうしますか?」「どんな風に考えていったらこれは成功に近づくと思いますか?」
「すき間に辺の長さが3の長方形がかけそう。」
「では、この紙が回ってきたらどうしますか?」「さっきと同じ考え方ですよ。」
「すき間に着目して考えよう!」
「もしこの紙が回ってきたら、どんなすき間を考えたらいいですか?」
「自分の班のものもすき間に着目して考えてみよう。」(もう一度班で相談)
■1人ひとりが役割をもつ
今までやってきた、典型的な展開図とは異なるものを出題し、できるだけ子どもたちがつまずくようにする。すると、難しい問題に出会って、みんなのために1人ひとりが自分の役割で、1面をかこうとする態度が生まれる。この活動を通して、みんなで学ぶ体験をすることができる。
■次の学習への橋渡し
すき間に着目しながら直方体の展開図を考える中で、子どもたちは、面と面の関係、重なる辺や点の関係を考えるようになる。これが、その先の面や辺の学習につながっていく。
7 アレンジ
■ペアでの取り組み
ペアでカード(展開図のプリント)を持っていて、内緒でかく。時間を定めておいて、互いのカードを共有して、考えを話しあう。
同じ種類のカードを3ペアずつぐらいが持っていて、クラス全体で種類は5種類程度。それぞれの考えを全体で共有する。
■カードの種類を限定
グループ内のカードを、2~3種類に限定する。全部で5種類ぐらいの中から、各グループにバラバラに分ける。
グループみんなで相談して完成後、全体で考え方を共有する。
8 実践者プロフィール
久木田雅義 先生。
関西学院初等部 教諭。
授業のユニバーサルデザイン研究会 関西支部 を中心に活動中。
ホームページ http://www.udkansai.net/index.html
『授業のユニバーサルデザインを目指す「安心」「刺激」でつくる学級経営マニュアル』
(桂聖、川上康則、村田辰明 編著 東洋館出版社) にて執筆。
9 編集後記
2面だけが書かれた展開図を完成させることはとても難しい課題に思えましたが、与えられた時間で、1人で精一杯考えたり、班の友だちと相談して一緒に考えたりする子どもたちの、真剣に問題に取り組む態度が印象的でした。1人で考える時間も、友だちととことん相談し合う時間も両方が組み込まれていて、一緒に学ぶとはどういうことかがよくわかる実践だと思いました。
(編集・文責:EDUPEDIA編集部 森七恵)
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