1 はじめに
こちらの記事は、静岡県で30年間以上続く教員サークル、シリウスのホームページに掲載されている教育実践法の一つをご紹介しています。
http://homepage1.nifty.com/moritake/
2 実践内容
(以下、森竹高裕先生の実践)
卒業式の指導
年明けの準備から最後の学級活動まで、このように指導しました。
■カウントダウンカレンダー
1.クラスの人数分の日数(枚数)を用意する。
2.卒業まであと○日と中央に書く。
3.「6年間の思い出」「どんな卒業生になりたいか」「クラスのみんなに一言」を書く
4.朝の会で、自分の書いた日が来たら、発表させる。
5.発表が終わったら、カードを掲示する。
■6年教員主催の「6年生を送る会」
6年生と6年教員だけで小さい頃の写真をスライドショーで見る会です。
1.はじめの言葉(趣旨の説明)
2.スライドショーを見る
3.ランプをともす(図工の作品)
4.歌
5.終わりの言葉
ランプは図工の作品(教材セット)。やわらか針金で形を作り、回りに色セロファンを貼る。下から色が変化していくLEDライトを当てる。体育館を暗くして、卒業式の座席にランプを置きました。幻想的なランプの灯火を見ながら、歌を歌いました。
■式は節目
式は節目です。
竹は節の部分が固く、中空の茎の部分を支えています。
節目は支えなのです。
卒業式や入学式が人の心の支えとなるのです。
節のもう一つの役割は、ねじれを防ぐことです。
節がなかったら、風や葉の重みでたわんだら、元に戻れません。
この人生の節目をしっかりと築いてほしい
■どんな卒業式にしたいのか
卒業式の練習では、次のことを子どもたちに尋ねています。
・あなたはどんな卒業式にしたいですか?(あと○日の番号の人に)
・あなたは卒業式で感動できそうですか?
子どもの意識が、「卒業式では、先生に怒られないためにしっかりやる」では、寂しいからです。
■先生たちの卒業式
学年の先生方が輪番で、自分の卒業式の思い出を話す。
壇上からの風景、呼びかけの言葉でこんなことを言った、こんな事件があった…
■言葉と体であらわす
言葉で言う人は言葉で、歌を歌う人は歌で表してほしい。
自分が立っているとき、動いているとき、声を出しているとき、
その全ての瞬間を親は、目に焼き付けようとしている。
大切な瞬間をカメラごしではなく、肉眼で受け止めたいもの。
■親への感謝の手紙
1.両親に向けて卒業式数日前に書く。してもらったこと、嬉しかった言葉、思い出など
2.封筒に入れて「○○より」と書き、保護者席に置く。(座席札になる)
■寄せ書き「あなたのいいとこみーつけた」
1.人数分の用紙を準備する。
2.時間を決めて、その人のいいところを書いて回す。
3.マイ卒業アルバム(個人の組写真)と合わせてパウチする。
■マイ卒業アルバム(個人の組写真)
撮りためた写真で組写真を作る。「デジカメde!!ベストアルバム4」を使用
http://ai2you.com/imaging/products/album4/album4.asp
■卒業証書授与の返事
1.自分の小学校時代の卒業証書を見せる。
先生は○○小の第456番目の卒業生でした。
あなたは確かにこの学校にいました、という証拠です。
2.学校に保存されている卒業者名簿(なるべく古いもの)を見せる。
学校にも「この子は確かに卒業生です」という証拠を残しています。
卒業者名簿といって、永久保存をします。これは明治16年のものです。
私たちの小学校は122年前から卒業式をしています。
国歌「君が代」ができる2年前です。(えーっ、の声)
3.みんなの呼名の返事を聞いていて、気になることがあります。
名前というのは、親の願いが込められているものです。
どんな願いかは、聞いたことがあるでしょう。
親は欲張りだから、○○な子になってほしいという願いがたくさんある。
たくさんの願いの中から、たった一つを選んだ。それが君たちの名前です。
名前は、若き父母が子に込めた祈りなのです。
生まれてからずっと、一日も欠かすことなく
この美しい祈りを君たちは捧げられてきたんだよ。
祈りの対象が君たちなんです。
最高の晴れ舞台の卒業式。
どんな声で、返事をしたらいいんだろうね。
4.証書授与の練習
■卒業式「呼びかけ」のセリフ募集用紙
言葉をなるべく生かして文を作成する。
■呼びかけの指導
1.呼びかけの持つ意義や意味について、十分共有するところから始めました。
・呼びかけは、学年みんなの気持ちを伝えるもの。
・言葉を言う人は、スピーカーの役割として言っているわけで、
言葉を言わない人だって、他人事ではない。
・全員で言う「がんばります」「ありがとう」だけの呼びかけではない。
2.呼びかけのプリントを全員に配り、毎日、音読の宿題とする。
3.学級中でも担当を決めて、学級内で呼びかけの通し練習をする。
(証書授与の個人練習と毎日交互に行う)
4.学年全体の練習では、一度通しでやったあとよかった子を前に出し、この子たちのどこがよかったのかを考えさせました。
声の大きさ、声のハリ、抑揚がちゃんと出ました。
5.個別評定をする。指名された子は、放課後に担当の先生のところで個人練習をする。
6.しぐさを入れて、呼びかける人の方に向かって語りかける。
先生方、地域の皆様、お父さん、お母さん、
この姿を見て下さい …一歩前に
卒業証書をいただきました …掲げる
7.呼びかけの目標について考えさせる。
・呼びかけで何を求めていますか?目標は何ですか?
間違えずにちゃんとやる、というなら合格です。
・でもみなさんの目標は、間違えずにちゃんとやることが一番の目標ですか?
「違う」の声。何が目標なんですか?「気持ちを伝えること」
・伝えたいのは気持ちです。大きな声を出すことが目標じゃない。
言葉に気もちを乗せること、が一番の目標なんです。
8.毎回の練習で自省させる。
練習後、これ以上できない、自分の精一杯を出した人?
と歌も言葉も尋ねています。ほとんど手が上がりません。
毎回自省させることはいいなと思いました。
■卒業式前日の宿題
1.入学式の写真を家族で見てくる
2.そのとき家族はどんなことを思ったかインタビューをする
写真を見て、この6年間を振り返り、当日を迎えることができる。
■卒業式当日の机上
4月当初に書かせた、卒業式の自分に宛てた手紙を置く
最後の学級通信
■卒業式最後の学級活動(教室で15分)
1.「生きる」(谷川俊太郎)6年○組4バージョン
生きているということ
いま生きているということ
それは( )ということ …一人一文考えさせて言う
それは( )ということ
2.保護者の斉読「樹/村野四郎」 …紙を配って読んでいただく
3.担任の話「君は誰かのための太陽」「その人だけの魔法」を元に話す
4.マイ卒業アルバム+寄せ書きのプレゼント(呼名と握手)
渡すときに「あなたの魔法は○○だよ」と言う。
5.体育館に移動し、待ち時間に「思い出DVD」を視聴する
6.記念写真の撮影
■当日の持ち物
・卒業証書を入れる袋
・カメラ …式中はポケットに入れて自己管理する
・帽子、名札、カバンはいらない。
・水分は控えめにする。
3 プロフィール
静岡県教育サークル シリウス
1984年創立。
「理論より実践を語る」「子どもの事実で語る」「小さな事実から大きな結論を導かない」これがサークルの主な柱です。
最近では、技術だけではない理論の大切さも感じています。それは「子どもをよくみる」という誰もがしている当たり前のことでした。思想、信条関係なし。「子どもにとってより価値ある教師になりたい」という願いだけを共有しています。
4 書籍のご紹介
「教室掲示 レイアウトアイデア事典」(明治図書2014/2/21発売)
「学級&授業ゲームアイデア事典」(2014/7/25発売)
「係活動システム&アイデア事典」(2014/2月末発売)
「学級開きルール&アイデア事典」(2014/3/12発売)
5 編集後記
子どもたちにとって大きな節目である卒業式。児童がその日を前向きに迎えられるように、教員側も丁寧に支援していく必要があるのだと感じました。
(編集・文責:EDUPEDIA編集部 平野愛)
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