物語教材読解のための基本発問と10のものさし(シリウス)

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目次

1 はじめに

こちらの記事は、静岡県で30年間以上続く教員サークル、シリウスのホームページに掲載されている教育実践法の一つをご紹介しています。
http://homepage1.nifty.com/moritake/

2 実践内容

物語教材の読解のための基本発問と10のものさしについて解説します。

物語教材読解のための基本発問

Ⅰ 設定に関する発問

 
1 時は?
2 場所は?
3 登場人物は?
4 主人公は誰か?
 

Ⅱ イメージを喚起させ、形象化を促す発問

  
5 話の中に出てきた物は?
6 話の中に出てきた色は?
7 その色は何をイメージしているか?
8 どんな音が聞こえるか?
 

Ⅲ 対比・類比に形象化を促す発問

  
9 対比されている言葉は?
10 その言葉の対比の意味は?
11 類比されている言葉は?
12 類比の意味は?
 

Ⅳ 話者の検討による形象化を促す発問

  
13 何人称の視点で書かれているか?
 

Ⅴ 人物の心情の理解を促す発問

  
14 登場人物の目に見えた物(物、人、色、場所)は?
15 登場人物の耳に聞こえた物(音、声)は?
16 登場人物の心が一番大きく動いたところは?
17 登場人物の心が一番変わったところは?
 

Ⅵ 構造の理解を促す発問

  
18 物語を二つに切るとしたらどこで切れるか?
19 物語のクライマックスはどこか?
 

Ⅶ 主題を検討させる発問

  
20 この物語に長い題(20~30字)をつけるとどんな題がいいか?
 

物語教材読解のための10のものさし

Ⅰ 「題」

  
1 登場人物の名前がが題 → 主人公の行動や感情の変化を丁寧に追う
2 作品のクライマックスが題 → クライマックスを丁寧に読む
3 何かの象徴の比喩 → 題の裏に隠された象徴や比喩を読みとる
 

Ⅱ 「作者名」

「やまなし」など題の象徴が見えてこない場合、謎解きのヒントとしてその作者の経歴や他の作品を調べる。
 

Ⅲ 「視座」・「視点」

 
A 一人称(限定)視点
  ・話者が作品の中に登場している(私・ぼくなどの登場人物として)
  ・自分の心情を語っている
B 三人称限定視点
  ・話者がある一人の人物の中に入って、その人物の心の中を語っている
C 三人称全知視点
  ・話者が複数の人物の心の中に入っている
D 三人称客観視点
  ・話者が誰の心の中にも入っていない 
 

Ⅳ 「設定」

 
A を調べる
  1 時間の流れ通りにストーリーが進んでいく
  2 昔を回想しながらストーリーが進む(回想視点)
B を調べる
  ・国、地方、場所がどこであるか
C を調べる
  ・登場人物の内、中心人物、対役、脇役、端役は誰か
 

Ⅴ 「アイロニー」・「パラドックス」

 
A アイロニー:(作者が作り出した)話者や登場人物の態度の矛盾
   (例) 「一つの花」 駅で小さくバンザイして戦争に行く父
    → 間接性の原理:矛盾に満ちた行動は心情がよりいっそう伝わる
  
B パラドックス:(作者が作り出した)表現上の矛盾、矛盾した表現
   (例)「サラダ記念日」一年は短いけれど一日は長いと思っている誕生日
  
C アイロニー・パラドックスは対比を通じて
  1 アイロニー  → 行動の対比で読みとる
  2 パラドックス → 表現の対比で読みとる
 

Ⅵ 「イメジャリー(イメージ語)」

 
イメジャリー:視覚・聴覚などの感覚によってその語の指示する事物が具体的にとらえられる言葉
   (例) 視覚イメージ語:花、飛行機  聴覚イメージ語:歌声、ピアノ
       触覚イメージ語:手、涙    味覚イメージ語:やまなし    
A 一義イメージ語:その語そのものを示す意味で使われているもの
B 多義イメージ語:その表現を通じて別の意味を暗示している
  
  1 比喩:示されている事物とその事物が暗示する内容との関係に言語的手がかりがある
   
  2 象徴:示されている事物とその事物が暗示する内容との関係に言語的手がかりがない
 

Ⅶ 「クライマックス」・「伏線」

 
A クライマックス:中心人物の考えがガラッと変わるところにクライマックスがある。その最高点は行間にある。
  1 登場人物の心がガラッと変わるところに目をつける
  2 その前後で、その人がどのように変わったか行動を対比させる
  3 そのように、その人を変えたものは何なのか
考える
  
B 伏線:あとで起こるクライマックスに向けて、前もってそれとなく述べられている箇所やその引き金をなるできごと
  1 場所の設定
  2 人物の設定
  3 事件の設定
 

Ⅷ 「色」

 
A 作品の中に出てくる「色」そのものに注目する
B 「イメージ語」「視覚イメージ語」としてみる
C 作品の中に登場する人物の「心の色」を想像する
 

Ⅸ 「レトリック」

 
A 名詞止め:その行の終わりをあえて名詞で終わらせるレトリック
   (例) 「サラダ記念日」 思い切り愛されたくて駆けていく六月サンダル紫陽花の花
   → 何ともいえない余韻が残る
B オノマトペ:声喩とも言われ、音や動作を表した言葉
   (例) ドタンと転んだ ドーンとぶつかった
    → 臨場感をもたせる
C リフレーン:ある表現を繰り返すことで、そのことを強調する
   1 言葉の繰り返し
   2 連の繰り返し → 感動の大きさを伝える
D 比喩
   1 指標:「AはBのようだ」と文中に比喩が出てくるもの
   2 結合:「ようだ」のようにはっきりとした結びつきはなしで比喩しているもの 
   3 文脈:文そのものが比喩になっているもの
 

Ⅹ 「あいまいさ」

あいまいさ:文の中にあえてあいまいさを残すことで、読んだ人それぞれが想像することができる
   → 多様な解釈を可能にする
  (例) 太郎を眠らせ 太郎の屋根に雪降り積む / 次郎を眠らせ 次郎の屋根に雪降り積む
 

3 プロフィール

  
静岡県教育サークル シリウス
1984年創立。
「理論より実践を語る」「子どもの事実で語る」「小さな事実から大きな結論を導かない」これがサークルの主な柱です。最近では、技術だけではない理論の大切さも感じています。それは「子どもをよくみる」という誰もがしている当たり前のことでした。思想、信条関係なし。「子どもにとってより価値ある教師になりたい」という願いだけを共有しています。

4 書籍のご紹介

「教室掲示 レイアウトアイデア事典」(明治図書2014/2/21発売)

「学級&授業ゲームアイデア事典」(2014/7/25発売)

「係活動システム&アイデア事典」(2015/2/27発売)

「学級開きルール&アイデア事典」(2015/3/12発売)

5 編集後記

着眼点を指示することで自然と読解力育成に繋がると感じました。10のものさしにより、先生のみならず子どもたちと共に想像を広げることで新たな気づきを生み出せるのではないかと思います。

(編集・文責:EDUPEDIA編集部 古川 紗妃)

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