1 始めに
本記事は、2015年3月30日に行われた第1回EDUPEDIAセミナー「4月からの学級づくり」において、山田将由先生が講演してくださった第一講座「誰でも成功!?やる気を引き出すコツとネタ集」を執筆、編集したものです。
2 体験を重視する
"I hear and I forget, I see and I remember, I do and I understand."
聞いたことは忘れる
見たことは覚えている
体験したことは理解できる
…これは、山田先生も普段授業で意識していることだそうです。
見る<聞く<体験する
なぜ体験するのが良いのかというと、得られる経験値が高いからです。
体験する=より多くの経験値を得られる=学習効果が高いということになります。
<学習のピラミッド>
聞いたことは、10%
見たことは、15%
聞いて見たときは、20%
話し合ったときはその2倍の、40%
体験したときはその2倍の、80%
教えたときは、90%
の学習の定着率があるといわれています。
3 音読のミニネタ
この実践は、汎用性は高く他にも応用することができます。
ストレスレベルを高め、緊張体験をあえて授業でつくり、認め合う環境をつくりだします。
普段の挙手指名音読だと、なかなか手が挙がらない、挙げる人が決まってしまうという難点があります。そこで、
①人生最高読み
人生で最高の音読をしてくださいとプレッシャーをかける
プリントの持ち方・視線・口の形・発生・早さ・抑揚が最高の音読をします。
くしゃみ、しゃっくり、げっぷ、おなら等も禁止。
指名で当たるかもしれないという緊張感をつくることができます。
漠然としていても、(人生最高の音読という)めあてを提示することによって、ただの活動を学級活動に変えることができます。
②母音法
詩をAIUEO音に置き換えて読む
この方法は劇団四季の3大トレーニング法でもあります。
練習後に、全員で声を合わせて母音法で読み、その後普通の音読をします。
音読三大ポイントの一つ!口の形のトレーニングが自然にできます。
高学年面倒くさい、なんでするの?などなかなか上手く行かない時などに、違った形でアプローチし、挑戦してみようという気持ちにします。
③速音読
一音一句を速く読む、時間を計る
・1回目…1段落を読み終わったら、挙手させます。
・2回目…目標を1回目よりも一文字でも多く読めることとし、第2段落の音読をします。
一文字でも多かった人を挙手させ、拍手します。
子どもたちにやればやるだけ速くなるという成長を実感させます。
(伸びなそうだったら範囲を変えます。)
④速音読Ⅱ
二人でする速音読(基本的には二人で揃えて同時に読む。)
③よりも良く読めたペアを挙手させ、拍手する。
音読を通した子供同士のつながりができます。
※3人以上だと突っ走っていくなどがあるので、息の合わせやすい2人までがよいです。
⑤完璧読み
ペアになり、間違えやしゃっくり、つっかえたところを指折り数え、その数が少ない方が勝ち
(1回目と2回目は違う相手で行います。)
ノーミス、1ミス、それぞれについて挙手をさせ、拍手をします。
2ミス以上にもチャンスがあるよとフォローを行います。
速度ではなく、丁寧に読むことで音読の質を高めることができます。
⑥丸読み
題名と作者は全員で、丸がくる毎に読む人が替わっていく
・1回目…ABCDの4人組をつくり、グループ毎にルールの確認をさせます。
・2回目…速音読バージョン
・3回目…速音読に誰かが間違えたらスタートに戻るという条件を加えます。
(班毎に多く読むにはどうしたらよいかの)作戦タイムをつくります。
決められた箇所(尊とい)までいったチームは手を上げます。
・4回目…ABCD、ABCD、ABCD…というような今までの読み方から
ABCD全員、ABCD全員、ABCD全員…という読みに変えます。
事前に詳しい説明を行っても、子どもたちは耳を傾けていないことがほとんどなので、やっていくなかで疑問を解決、また子供たち同士で確認する時間を取ります。こうすることで、子供たち同士で助け合うようになります。
4 最後に
ミニネタとは
- ミニ…手軽、時間・労力が少なくできます
- ネタ…特別な経験やスキルに関係なく知っていればできます
ミニネタの魅力
目指す授業・学級づくりを促進し、潤滑油になる
- 興味関心を高める
- スキルアップ
- リフレッシュ
- 思考を促す
- 導入の補足・補強に使える
- 空気を暖める
- 先生の話を聞く姿勢にさせる
- 安心感・楽しい
- 交流が生まれる
- 仲良くなる
ミニネタのよさ
- 良い授業
- すぐ・だれでも…知っていればできます。
- たくさん…インターネットで検索すればたくさん出てきます。
→縦糸強化…先生と子どもを信頼関係をつくる、一つのツールになります。
楽しいネタにする理由
行動心理学によると、人の行動は2パターンで、プラスの行動とマイナス行動しかありません。
それぞれの行動のストレスレベルは、
- プラス…1
- マイナス…20
よって、楽しい方が20倍のことができるため、楽しいネタにするのです。
ミニネタに限らず、たくさんの情報を仕入れることがとても大事です!
<使用教材 夏目漱石『草枕』>
山路(やまみち)を登(のぼ)りながら、こう考えた。
智(ち)に働けば角(かど)が立つ。情(じょう)に棹(さお)させば流される。意地(いじ)を通とおせば窮屈(きゅうくつ)だ。とかくに人の世は住みにくい。
住みにくさが高(こう)じると、安(やす)い所(ところ)へ引(ひ)き越(こ)したくなる。どこへ越しても住みにくいと悟(さと)った時、詩が生れて、画(え)が出来(でき)る。
人(ひと)の世(よ)を作ったものは神(かみ)でもなければ鬼(おに)でもない。やはり向(むこ)う三軒(さんげん)両隣(りょうどな)りにちらちらするただの人である。ただの人が作った人の世が住みにくいからとて、越(こ)す国(くに)はあるまい。あれば人でなしの国へ行くばかりだ。人でなしの国は人の世よりもなお住みにくかろう。
越す事のならぬ世(よ)が住(す)みにくければ、住みにくい所をどれほどか、寛容(くつろげ)て、束(つか)の間(ま)の命を、束の間でも住みよくせねばならぬ。ここに詩人(しじん)という天職(てんしょく)が出来(でき)て、ここに画家という使命が降(くだ)る。あらゆる芸術(げいじゅつ)の士(し)は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故(ゆえ)に尊(たっ)とい。
5 講師プロフィール
山田 将由(やまだ まさよし)
JUT全国大会優勝。野口芳宏先生、陰山英男先生、西川純先生、齋藤孝先生、土作彰先生等、一流の教育者に学び、ミニネタ、徹底反復、ワークショップ型授業、コーチングを取り入れた、簡単で効果のある楽しい教育メソッドを日々深めている。近年は全国10を超えるセミナーに登壇。共著に『トップ1割の教師が知っている「できるクラス」の育て方(〇✕イラストでわかる! )』「学級あそびベスト100」(ナツメ社)など多数。
6 編集後記
セミナーでは実際に参加してくださった方々が、初対面同士にも関わらず、このミニネタで音読することで、団結し、助けあっていた姿が印象的でした。良い授業や先生と子どもの信頼関係のために、経験に関係なく、すぐ・だれでも・たくさんできるというのが、本当に魅力的ですよね。本記事の例をはじめとして、気軽にできるミニネタを集め、皆様の目指す授業・学級づくりを促進してみてはいかがでしょうか。
(編集・文責:EDUPEDIA編集部 吉田 明香音)
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