1 はじめに
私が入学直後の中学1年生を対象に群読の授業を行うとき、最初に行う発声練習のメニューです。
授業は1500人収容の講堂で行い、号令をかけて授業始めの挨拶をした後、これから群読の授業をすること、そのための発声練習をすることを宣言して、客席の生徒たちにステージに上がるように指示をします。
中学入学直後の生徒たちは、「中学校の国語の授業」がどういうものであるのかという先入観がありませんので、素直に指示に従い、ステージに上がってくれます。
大きな空間を意識できるように、客席が見渡せる位置に立つように互いに距離を取らせ、肩幅ぐらいに足を広げて立つように指示をします。
あとは、教員である私が発声する通りに、以下に掲げるような文言を私の後に続いて復唱させます。
2 早口言葉をまじえた発声練習
最初はクチビルと舌のウォーミングアップです。
「マメモ、ラレロ、パペポ」
これを何度か繰り返します。
声が出ないようなら、出席番号や立っている位置(左半分と右半分)などでグループに分け、少ない人数でしっかり声が出るまで繰り返します。
慣れてきたら、スピードを上げます。
「マメモ、ラレロ、パペポ… マメモ、ラレロ、パペポ…」
ウォーミングアップになるように、しっかりクチビルと舌を動かすように注意します。
これも何度か繰り返します。
うまく言えたら、早めに次のメニューに切りかえます。
スピード感が大事です。
予告なしで、突然切りかえてしまいます。
「ブラジル人のミラクルビラ配り」
生徒の間に笑いや戸惑いが広がっても、何ごともなかったかのように繰り返します。
「ブラジル人のミラクルビラ配り」
笑いや戸惑いが消えて、発声に気持ちが向くようになったら、次のメニューです。
「バスガス爆発」
これも何度か繰り返します。
次も予告なしで、早口言葉のリズムを維持しつつ、北原白秋の「五十音」へ。
一行ずつ読んでいきます。
あめんぼ あかいな アイウエオ
うきもに こえびも およいでる
かきのき くりのき カキクケコ
きつつき こつこつ かれけやき
ささげに すをかけ サシスセソ
そのうお あさせで さしました
たちましょ らっぱで タチツテト
トテトテ タッタと とびたった
(※ふりがなを省略するために全て仮名表記にしてあります。)
平板にならないように、強調すべきフレーズを高く発声し、高低のイントネーションも意識させながら練習できれば理想的です。
生徒がうまく復唱できなかったら、同じ行を繰り返します。
3 五十音からの…
北原白秋の「五十音」を全部やると長すぎるし、生徒が飽きてしまうので、タ行までやったら、そこからは言葉を逸脱させて遊びます。
ずりずり ほおずり ひげおやじ
ゴリゴリ ほねぶと ゴリマッチョ
ダラダラ あせかく ドンガバチョ
ブリブリ ボーボー あぶりブリ
ラミパス ラミパス ルルルルル…
「ひみつのアッコちゃん」の呪文でおしまいです。
時間を考え、1回目ですべてをやらず、授業を重ねるごとに小出しにしていくことが多いです。また「五十音」の代わりにユーモラスな詩を選んで復唱させることもあります。
4 最後に
大学生対象の授業でも、まったく同じメニューで発声練習をします。
しっかり声を出すと、少し汗が出てくるぐらいに体があたたまり、気持ちも解放されます。
呼吸法とか滑舌とか、発声上の細かい技術は棚上げにして、とにかく楽しみながらしっかり声を出すことがめあてです。
講堂でやることが難しい場合でも、できれば一般教室ではなく、いつもとは違う特別な場所(体育館とか階段教室とか)でのびのびと声を出させたいところです。
いかに迷いや恥じらいを表に出さずに、教員が生徒たちをリードできるかがポイントです。
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