1 はじめに
こちらの記事は、静岡県で30年間以上続く教員サークル、シリウスのホームページに掲載されている教育実践法の一つをご紹介しています。
http://homepage1.nifty.com/moritake/
2 実践内容
「りんご」 山村暮鳥
両手をどんなに 大きく大きく広げても
かかへきれないこの気持
林檎が一つ
日あたりにころがってゐる
この詩を、イメージを広げながら読み取る学習をしました。
発問1 この詩は二つに分かれます。分かれるところに線を引きなさい
全員が、「かかへきれないこの気持/林檎が一つ」に線を引きました。
発問2 一言で言うと前半と後半は、それぞれ何について書いてありますか?
これもすぐに分かりました。前半は「気持ち」、後半は「りんご」
発問3 作者はどこからりんごを見ていると思いますか?
絵を描かせると、作者、りんごとも家の中や家の外といろいろとありました。
ここまでで、詩へのイメージを膨らませました。
発問4 このとき作者は幸せだと思いますか?幸せではないと思いますか?
直感で答えさせると、幸せだと思う子が15人、幸せでないと思う子が12人でした。
少し理由を尋ねてみると、どちらの考えも“抱えきれないこの気持ち”を根拠としていました。そこでこの言葉の意味を調べてみました。
【抱える】
①両腕で囲むようにして持つ。
②負担になるものを引き受ける。例)乳飲み子を抱える。
根拠になった言葉をもとに、もう一度考えてみると、意見を変える子どもも出ました。
〈幸せ〉15人→5人
・抱えきれないほどの気持ちがあるから幸せ。
・抱えきれないというのは、多分抱えきれないぐらいの夢があると思う。
・自分もりんごも一つ(一つ)で同じ仲間がいて、幸せだと思う。りんごがたくましく生きている。
〈幸せでない〉12人→23人
・作者は苦しいことをずっと考えているのでは。りんごもぼくと同じだ。
・りんごを自分の抱えきれない気持ちが同じで、あの転がっているりんごは、自分みたいだな、と思ったと思う。独りぼっち。
・抱えきれないほどのかなしみがりんごに入っているみたいで、私の気持ちが陽当たりに転がっているという風に考えました。
正解は作者に尋ねてみないとわからないが、作者のエピソードを知ることは考えるヒントになります。作者の暮鳥は、一生を貧しく過ごし、長男を失ったり晩年は病気の治療で苦労するなど、たくさんの困難のあった人生であったそうです。
3 プロフィール
静岡県教育サークル シリウス
1984年創立。
「理論より実践を語る」「子どもの事実で語る」「小さな事実から大きな結論を導かない」これがサークルの主な柱です。
最近では、技術だけではない理論の大切さも感じています。それは「子どもをよくみる」という誰もがしている当たり前のことでした。思想、信条関係なし。「子どもにとってより価値ある教師になりたい」という願いだけを共有しています。
4 書籍のご紹介
「教室掲示 レイアウトアイデア事典」(明治図書2014/2/21発売)
「学級&授業ゲームアイデア事典」(2014/7/25発売)
「係活動システム&アイデア事典」(2015/2/27発売)
「学級開きルール&アイデア事典」(2015/3/12発売)
5 編集後記
詩を、ただの一つの文芸作品としてではなく、著者の気持ちや背景が込められたものだと実感できる実践であると感じました。また、筆者が幸せか、そうでないかを子供たち自身が理由づけと共に主張するという、深い思考や議論のきっかけにもなります。
(編集・文責:EDUPEDIA編集部 小川雄大)
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