モチモチの木7 じさまの腹痛は本当のことか?(シリウス)

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目次

1 はじめに

こちらの記事は、静岡県で30年間以上続く教員サークル、シリウスのホームページに掲載されている教育実践法の一つをご紹介しています。
http://homepage1.nifty.com/moritake/

2 実践内容

じさまの腹痛がきっかけになって、豆太は暗い夜道を医者様を呼びに走りました。山の神様のお祭りの日、豆太に「霜月二十日のうしみつにゃぁ、モチモチの木に灯がともる。起きてて見てみろ」と話したその晩に、じさまの腹痛は起きます。
偶然にしてはよくできすぎています。この腹痛は本当のことだったのでしょうか? 
豆太の勇気を引き出したいじさまのお芝居だとは考えられないのでしょうか。この点について話し合ってみました。

豆太はモチモチの木を見たいと思うか?

じさまが「霜月二十日のうしみつにゃぁ、モチモチの木に灯がともる。起きてて見てみろ…」と話しただけで、豆太はモチモチの木を見ようとしたと思いますか?

全員が〈思わない〉とすぐに答えました。その理由も文章中にたくさん書いてありました。根拠となる文章を挙げていきました。

  • それじゃぁ、おらは、とってもだめだ。
  • たった一人で見に出るなんて、とんでもねぇ話しだ。ぶるぶるだ。
  • 夜なんて考えただけでも、おしっこをもらしちまいそうだ。
  • まめたは、はじめっからあきらめて

そのまま一人では見に行けないことを確認した後で、次の問いを投げかけていました。

腹痛は本当のことなのか?

この晩にじさまは腹痛を起こしますね。じさまのこの腹痛は本当のことだろうか、それともお芝居なのでしょうか。

最初の予想は、〈本当〉2人〈お芝居〉8人。
話し合いをしてみると、「豆太に勇気のある子どもになってほしい」というじさまの願いにふれた発言がいくつもみられました。

〈本当〉2人→0人

  • じさまは熊みたいなうなり声を上げたり湯をわかしたりしている。こんな大げさなことを芝居ではできない。
  • じさまは本当はすごく腹が痛かったんだけれど、豆太を心配させたくなかったから「ちょっとはらがいてえだけだ」といった。豆太を泣かせたくないから「ちょっと」と言ったんだと思う。

〈お芝居〉8人→10人

  • モチモチの木に灯がついてそれを豆太が見たことをじさまは知っている。じさまは腹が痛いはずなのに、こっそり家の中から豆太の様子を見ていた。だから本当は腹が痛かったんじゃなかったと思う。
  • 灯がついたことをじさまは知っている。家の中からひっそり見て知っているから。だから本当は腹が痛くなかったと思う。
  • じさまはちょっと大げさだから、お芝居だと思う。
  • 「ま、豆太…」っていう言葉がうそっぽい。
  • じさまは豆太のことを弱虫って思っていて、それを何とかしようと思ってお芝居をしたと思う。
  • 教科書の最後の挿し絵は、じさまの顔が何か喜んでいるようにみえるから。「勇気のある子どもになった」と喜んでいる。

話し合ってみると、案外早く〈お芝居〉で意見が収束していきました。

どうしてじさまはお芝居をしたのか?

どうしてじさまはお芝居までして、灯を見せたかったのだろうか。

  • 豆太がかわいくてかわいそうだったから。
  • 勇気づけてあげたかったから。
  • 自分のことを弱虫なんて思ってほしくないから。

じさまの豆太に対する思いに気がつくことができたようです。

モチモチの木を勉強した感想を書こう。

  • 豆太は一人で夜を歩いていきました。ぼくはすごいと思いました。豆太はじさまのことならなんでもしそうです。豆太がかわいそうなのは足から血が出たことです。
  • モチモチの木のことを勉強して一番心に残っていることは、豆太は勇気 があるか、おくびょうかのことでした。答えは勇気がある豆太はじさまに甘えているだけだとぼくは思う。
  • 豆太は医者様を呼んで勇気がわいてきて、そして灯がついたのを見て自分には勇気があるんだとわかってじさまを呼んだ。大切な人が死にそうなときにはあたふたしないで、恐くてもくじけても立ち向かうしかないといけないということがわかった。
  • 豆太は最初は勇気がないと思いました。だけど先生がわかりやすく問題をゆってくれたから、勇気を隠し持っていると思いました。
  • じさまが腹痛のとき豆太が一人で医者様を呼びに行けるのがすごいと思う。私が一番いいと思ったのは、最後の「弱虫でもやさしけりゃ」のところです。

3 プロフィール

静岡県教育サークル シリウス
1984年創立。
「理論より実践を語る」「子どもの事実で語る」「小さな事実から大きな結論を導かない」これがサークルの主な柱です。
最近では、技術だけではない理論の大切さも感じています。それは「子どもをよくみる」という誰もがしている当たり前のことでした。思想、信条関係なし。「子どもにとってより価値ある教師になりたい」という願いだけを共有しています。
(2015年1月時点のものです)

4 書籍のご紹介

「教室掲示 レイアウトアイデア事典」(明治図書2014/2/21発売)

「学級&授業ゲームアイデア事典」(2014/7/25発売)

「係活動システム&アイデア事典」(2015/2/27発売)

「学級開きルール&アイデア事典」(2015/3/12発売)

5 編集後記

じさまの行動に隠れた豆太への愛情を読み取るという授業です。単元の最後の授業ということもあり、まとめとして今までの振り返りも行います。普段の生活でも大切な、相手の気持ちを考えるという作業を、授業の中で自然に行っている点がとても素敵だなと感じました。

(編集・文責:EDUPEDIA編集部 内藤かおり)

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