誰もが作文を書けるように

1 誰もが作文を書けるように

あるクラスの補助にいくと、6年生で、鉛筆を立てたまま何も書けない子が数人はいました。そこで、すべての子が書けるようにと願って指導しました。とにかく子どもが、よく書けるようになりました。その報告です。
あるとき、こんな電話がありました。
「うちの K は、学校から帰ると、普段は、ランドセルをほおり投げて、外に遊びに行ってしまうのですが、ここ2・3日、机に向かって、何か、書いているのです。何を書いているのでしょか?」
というのでした。これは、3年生で、「物語を書く」を指導した時のことです。
全ての子が、自由に書けるように指導して、それから、この「物語を書く」
に入ったときのことです。
K 君のように、子どもは、書きたいのです。書き方が分かれば、書く内容は、いくらでも、持っていますから、書けるのですね。だって、子どもが、思う事・考える事などは、たくさんあるのですからね。そして、K 君は、『インデアンの逆襲』という題で、30枚書きました。K 君は、今は、30歳過ぎましたが、大切な宝にしているようです。

このほか、こんな例もあります。
6年生の指導です。移動教室の記録作文でした。最低で、30枚、書きました。100枚、平均、書きました。最高は、160枚書きました。この事は、下記の本にまとめました。
『小学生の作文教育』(明治図書)1・2・3・/4・5・6年 (読売教育賞賞外優秀賞 受賞)
心理学者の波多野完治さんから、「新しい作文教育の提案です」と言うコトバを戴きました。残念ですが、絶版です。しかし、アマゾンなどの古書で売られています。

2 主述の対応の指導(1)

3年生を受け持った時のことです。初めての作文を書いてもらいました。
題は、『3年生になって』でした。40人ほどのクラスでしたが、主述のはっきりしない文を書いた子が数人いました。
「きのう、いえに、かえって、おかあさんにはなしたことは、『ぼくのともだちの6年生のKくんという人の先生になってよ
かった』とおもいます。」
というような文でした。
この主述のはっきりしない文は、どうして生まれるのでしょうか。それは、主述の対応の指導が十分されてきてなかったからなのですね。思い起こせば、僕のこの主述の対応の勉強は、国語で習ったのではなく、英語の学習でした。今では、小学校1年生でやりますが、これの徹底には、配当時間だけでは、無理みたいですね。ですから、上記のような文を書く子どもが出てしまうのですね。
このことで、市教研で公開研究授業をした時のことです。講師に文法指導の第一人者、児言研の M 氏をお呼びしました。学習院で、天皇の担任をしたことがあるとかと聞いたことがあります。研究会で聞く学習院の指導は、僕の指導時間の数倍でした。資料も数倍でした。子どもの認識に基づいた授業は、こうなんだと分かりました。
(僕の指導時間は、それでも指導書の3倍は配当しました。)
この主述の対応の学習は、作文だけではなく、説明文・文学文の読み、話す・聞く、表現よみの学習にも役立つのですね。ですから、ちゃんと、学習しておくと、とても役に立ちますね。
「何がどうした(する)」の意識を持って読む、聞く、話す、朗読(表現よみ)することなしには、それらの学習の理解は、できないですからね。

3 主述の対応の指導(2)

主述の対応の指導後、どの年度の子でも作文が苦手、書くのがいやだという子はいなくなりました。書くことが面白くなり、移動教室の記録文を最低の子で、30枚(400字詰め原稿用紙)書きました。文というものはどういうものか、分かったからでしょうね。この主述の対応の指導は、『文』の指導とも関係あります。関係というより、『文』の指導そのものと言ってよいでしょう。

さて、文ですが、これには、一般的には、主語と述語がありますね。この主語と述語の意識を持たせるため考え出されたのが『文ちゃん人形』です。


あたま(主語)
からだ(述語)
を意識させるための人形です。
* この文ちゃん人形が、どのような経過で出てきて、使われるようになったのかは、僕には、そこの研究会には、まだ立ち会っていなかったので分かりません。
児言研の理論面のリーダーの大久保忠利氏の助言があったと思われます。氏は、『日本文法陳述論』を発表し、文法研究に歴史的な功績を残された方です。文意識を徹底して持たせる。この人形を使うことによって、文が主語(主部)と述語(述部)からできているイメージをしっかり持たせます。
これを徹底しておくと、ねじれ文を書く子がいなくなったのです。これは、文を読むときにも、アタマの中で、使っていたと思います。話を聞くときにも。その事を抜いて、文の理解や話の理解もできないのですから。文ちゃん人形を使って、次のようなことをしました。

男の子が走っている絵、お母さんが笑っている絵、自動車が走っている絵、・・・、・・・
これらの絵を見せて
「だれが何をしていますか」
の形で、子どもに聞きます。子どもは、答えます。
( )が、はしっています。
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
この事によって、誰が(何が)意識を持たせます。10題は、したいですね。(1年生で、30分はかかります)

女の子が、ご飯を食べている絵、犬が、歩いている絵、男の子が、バットを振っている絵、・・・・・、・・・・、絵を見せて、
「なにを していますか」を聞く。
女の子が、( )。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・

この事によって、「何々している(した)」意識を持たせます。(1 年生で、30分はかかります。)女の子が、ご飯を食べている絵、犬が、歩いている絵、男の子が、バットを振っている絵、・・・・・、・・・・、

文ちゃん人形は大きく分けると、頭と体に分けられることを確認して、文もあたまと体に分けられる事を話し合う。
その後、簡単な文を頭と体に分けてみる。(10題程)
このようにして文意識を徹底させます。(1年生で30分は必要)
家庭でこの指導を行う時のヒントもを書きます。


人形は、家にあるもの、どんなものでも良いでしょう。アタマと体が分かれているものが良いでしょう。とにかく人形を導入することが、子供に主述の対応をイメージさせるために、大切なのですね。

次に、カードですが、単語カードを使うと良いでしょう。これは、学校でも使いました。教師が、子どもの話に合わせてカードを黒板に置きますが、その時、それに合わせて、子どもには、自分の机の上に単語カードを並べさせまし
た。友達が話した文にあわせて、何も書いていないカードを並べさせます。

単語カードの次は、おはじきを使いました。カードの代わりにおはじきを使ったわけです。単語カードより、おはじきの方が、並べやすいし、場所を取らないなどの利便性があります。

次は、指でした。教師が、子どもの話に合わせてカードを黒板に置きますが、その時に、それにあわせて、指を折らせていくつカードが並んだかを数えさせます。

このように、単語カード・おはじき・指などを使うと、おしゃべりをする子が独りもいませんでした。おしゃべりをする暇が出来ないからでしょうね。主語(主部)と述語(述部)を徹底したら次は、文カードを使って、文意識を徹底させる事について述べます。この文カードを使うと、子どもは、どんどん文を考え、書きます。ここでも文意識の徹底です。
*このようなことは、6年生でも文意識が徹底してない場合には、取り入れると効果があります。その場合、高学年であるというプライドを傷つけないことが大切ですね。高学年では、短時間でできます。理解力などが発達しているからです。

4 文カードを使って

子供に主述のはっきりした文を発表させ、それを教師が文カードに書き入れ、黒板に提示します。
*カードは、大きさは、横7センチ、縦25センチメートルのいためがみを使いました。
この大きさのいためがみが、黒板のチョーク置き場に立てやすいからです。
* ご家庭でするときは、英語の単語カードでよいでしょう。
1年生の子供たちは、先生に話したがっています。そこで、『先生に話したいこと』という題で、話させるのです。文ちゃん人形の手描き(厚紙で描いたもの)を黒板にのせます。その話を文(主語と述語が基本)の形で話させます。いきなり、話をさせます。ノートに書かせるのは、話すが、スムーズにできるようになってからです。

A 君は、次のように話しました。
1 ぼくは、きのう、かえってから、ケーキをたべました。
2 ケーキは、あまかったです。
3 そのうちに、おにいちゃんが、かえってきました。
4 おかあさんは、おにいちゃにも ケーキをあげました。
5 おにいちゃんは、おいしそうに たべていました。
おわりです。

A くんは、5つの文でお話ができました。
この中で、1つの文に対して、1枚の文カードを黒板に並べてあげるのです。
ですから、A 君は5枚の文カードを黒板の並べてもらいました。
すると、子どもは、幾つの文で話ができるか、挑戦します。中には、50個も60個もの文を作って発表する子もでてきます。はじめは、文の形で話すと言う事が理解できなかった子も、みんなの発表を聞いているうちに、分かってきます。
そして、やがて、発表も出来るようになります。こういう中で、発表できない・しない子どもはいなくなります。これは、「話す」から「書く」への移行の学習です。「話す」を取り入れると、学習が楽しく分かるようになります。
このことは、体育、算数など全ての学習で取り入れて、効果が上がりました。
この事を繰り返す中で、文意識(主語と述語の感覚)が肉体化します。これを3時間ほどします。
つぎは、『・・・・した事』という題で尐し、テーマ性を持たせた話をさせる事について述べます。

5 テーマ性を持たせた話をさせる

書きたい時に書く力を着ける、これも言葉の力ですね。
先ず、その力とは、どのようなものか、下に提示した資料で、見ていきましよう。『かさこじぞう』2年生の子が、その語・句・文・文章を読んで感じたこと・考えた事を書きました。

このように何故、書けるのでしょうか。
それは、人間には脳があり、その中で、思い、考える事が、あるかあらですね。
その事を次の文図は、表していますね。

この図のように、人間が外に現す表現は、氷山の出た部分ですね。ですから、子供たち(人間)は、いくらでも、書くことは、あるんですね。

それが、「日光移動教室」(6 年生の遠足的行事)について書かせた子供の作文によくあらわれました。これは、2人の子供の作文です。一人、1冊作りました。一人、平均、400字詰めで、100枚書きました。
書くことは、あると言う事でしたね。「ことばの氷山」によれば、次は、その内容です。内容については、まず、移動教室の準備の事を書いています。
よく、大人で、自分のことばかり、長時間、しゃべる人がいます。
この作文は、その世界ですね。自分の事だから、いくらでも、楽しく、進んで書けるのですね。書く中で、「書きたいときに書ける力」が着くのですね。子どもは、日光移動教室の「戦場が原の様子」の詳細を書いています。子供にとっては、初めての光景です。それが、記憶に残っています。僕等より、ずっと、記憶力はいいですね。
最後の部分には、お母さんが感想を赤でかいてあります。担任(僕)のコメントも。
さて、このように、書ける、それには、段階を追った指導がありました。

その事を、次にかきます。

ここまでは、時間的な順序で思いついた事を何でも話せば良いのでした。
これは、主語(アタマ)と述語(カラダ)の指導の徹底が目的でした。
ですから、それの意味はあり、それで楽しくやってきました。ここでは、テーマ性持って、書くことの指導について書きます。認識を深めるのには、ある一つの事を見つめていく必要がありますね。その為に
「・・・・・・のこと。」
「・・・・・・したこと。」
の題を設けて、子どもに話をさせます。
「・・・・したこと」
これは、限定をするのですから、テーマ性につながりますね。さて、「・・・・したこと」の指導では、どのような授業をしたかご報告いたします。
・・・・・・・・以下、ご報告です。・・・
教師 「・・・・・したこと」
「・・・・・の事」など、前置きを言ってから、その前置き(・・・のこと)について話をしましょう。と、投げかける。

A 子 「がっこうからかえって、いもうととあそんだこと」をはなします。」
と前置きを言って話し出す。
(この前置きを言わせる事がテーマ性を持った話をさせることのポイントです。)
1 わたしは、がっこうからかえって、いもうとの花子とあそびました。
2 花子は、わたしに おんぶさって きました。
3 わたしは、おもしろくて あるきまわりました。
4 花子は、こわいと いいまいた。(子どもは、このように、くどいほど、主語を出して発表をします。)
5 わたしは それでも あるきまわりました。
6 花子は おおきなこえで こわいと いいました。(子どもは、このように、くどいほど、主語を出して発表をします。)
7 わたしは おろしてやりました。
「おわりです。」

ここでも、話をさせながら、1文に1枚のカードを並べていきます。
文意識(頭と体))の徹底の為です。カードの導入をすると、話をどんどんするようになります。ですから、このことに効果があることは確かです。
次にこのテーマ性の導入ですが、「・・・・・したこと」のお話をして下さいと指示しても、殆どの子が、それが、どういうことか、始めは分からないようです。イメージが湧かないのです。
ところが、中にそのことが分かる子がいますから、このように発表させて、ほかの子に聞かせますと、
(ああ、そういうことか)
と分かって、 全ての子が、発表をできるようになります。このようにして、全員の子どもに話をさせます。ですから、2~3時間は必要です。これが、全ての子どもが書ける作文教育の基礎になります。
ですから、「この2~3時間は、基礎をやっているのだ」という考えで、子どもにゆったり感を持たせ、楽しみながら指導をしたいものですね。
このような授業が出来ますと、子どもの喜びは大きくなり、ストレスなど解消されます。ですから、授業が非行をなくす大きな力になります。教師に憧れてなったその目的に近づけてくれます。ここには、「話す」から「聞く」の指導過程を通した作文学習の良さがあります。
それと、ここにも、集団学習のよさがありますね。
このように、作文は、順序を追って指導しますと、誰でも書けるになります。
運動会の作文や遠足の作文もこのような記述指導と並行して指導したいものです。そうすると、しっかりしたものが書けるようになるのですね。子供たちは、時間的順序にしたがって、したことをした通りに書くことは、誰でもできるようになります。遠足の作文、朝、起きてから、学校に来て、遠足に行って、帰宅までの事を500枚書いた2年生がいました。
次は、自分が書きたいと思った事(もっとテーマ性を深める)を書くことの指導です。これもその指導のコツがあリます。その指導で全員、書けるようになりましたから。
この研究は、仲間との長年の実践研究のご報告です。

6 テーマ性を深める

ここでは、時間的な順序ではなく、あるもとまった事を書く指導について述べます。それには、そのことの取り立てた指導の必要があるからです。
*これは、1980 年代の仲間との共同実践です。今、この事を振り返ってみて、矢張り、この取り組みは、画期的だったと思います。
『すべての子供たちがテーマのある作文を書ける指導の過程』の提案は、その頃、無かったように思います。しかし、テーマについて書く事の大切さは、誰もが、願っていましたし、その大切さを主張していました。
それでは、それをどういう指導過程で?となると、その答えが出てなかったように思います。現在ではどうなのでしょうか?
このことを書くには、先ず、自分の心に強く残って、印象深いものを見つける必要があります。では、自分の心に残ったものとは、子どもにとってどういうものでしょうか。
子どもに
「自分の心に残ったものを書きましょう。」
「大切な事をしぼって書きましょう。」
などと言っても、その投げかけコトバでは、子どもは、どうしたら良いか分からす、今まで通りの作文を書かざるを得なかったようです。子どもに、教師の意図が、通じないのです。
そこで、ぼくらの研究会の先輩が考えた投げかけ言葉は、『ニュース』というものだったのです。
「きのうのことで、自分にとってのニュースはありますか?」
と、3年生の子供に投げかけました。
子供は、
・おばあさんと デパートに行ったこと
・夜、トランプをして遊んだこと
・おじいさんに勉強を教わった事
をあげました。
これを僕の3年生の教室に取り入れてみました。みんなにとってのニュースというのは、こういうものだよと言って、上の例を出して説明しました。
「きのうのことで、みんなにとってのニュースはどんなものがあるかな。」
と投げかけました。挙手は、2~3人です。この挙手をした人に全員発表をさせました。
「さっき、発表しなかったけれど、今、ニュースが見つかった人はいるかな。」
と問いかけました。10人前後、挙手をしました。全員に発表をさせました。
そのあと、また、
「さっき、発表しなかったけれど、今、ニュースが見つかった人はいるかな。」
と問いかけました。15人ほど挙手をしました。全員に発表をさせました。こうして、全員に発表させました。それは、ここでいうニュース(自分の心を動かした事)を、全員で、確認しておきたかったからです。
それに、子供たちに、その日のことを振り返ってみさせ、自分の心を動かしたものを見つめさせたかったからでした。そうすることで、一日がただ、通り過ぎていってしまわないようにしたかったからです。
これが、全員できたら、次の時間は、その日で、心を動かした事3つを挙げさせました。これを3大ニュースと言う事にしました。
この3大ニュースを全員が見つけ、発表できるようになるには、3時間は、要しました。
次は、その3大ニュースの中から1つを選び日記に書くようにしました。この1つ選ぶ事も全員が出来るように指導しました。ここで1時間は、要しました。
以上の指導過程を経る事によって、したことを羅列的に書くのではなく、あるまとまった事を書くことができるようになりました。これがテーマのある作文(論文)を書くことにつながっていくのでした。
この3大ニュースの指導で、5時間、要しました。
でも、時間的順序、羅列的な文章だけではなくテーマがある文章が書けるようになるのですから、この時間は、ゆったり、たのしく指導ができしました。
これは、教師をしている喜びでした。

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文ちゃん人形.JPG

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