授業づくりの3つのポイント 「観・材・技」

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現場に出る前の授業づくりと言えば、主に指導案の作成だと思います。しかし、実際に授業をしてみると、予想とは違うことがたくさん起こり、「こんなはずじゃなかった・・・」と反省が湧き出てきます。
本記事では、指導案作成だけではみえない授業を成立させるポイントについて「観・材・技」という3つの要素で考えてみます。漠然とした授業づくりのイメージが、少しくっきりとみえてくるかもしれません。

「観・材・技」って?

授業に込めた思い「観」

「観」は、授業観や単元観という言葉がありますが、「なんのためにそれをするのか」という自分の持つ教育哲学のようなイメージです。授業をする理由には、「入試に必要だから」「教科の楽しさを感じてもらいたいから」「学習を通して人間関係を学んでほしい」「仲間と成長する力を身に付けてもらいたい」など、先生によって様々な考え方があります。これが「観」です。

「自分がなぜ教師になりたいのか」「どんな授業を目指しているのか」「1年後、5年後、10年後、(自分が、子どもが)どのような姿になりたいのか」このような問いによって磨かれるのだと思います。
 私は「学習の楽しさ」や「自分の力を発揮する喜び」を大事にしていますが、いろいろな先生方の考えに触れ、自身を振り返りながら自分なりの観を模索しています。

子どもと思いをつなぐ「材」

次に「材」です。これは教材・教具で、授業者の思いと子どもをつなぎます。最も身近なのは教科書ですが、それだけでは学習が難しい場合が少なくありません。参考資料や写真、映像から身近な人も学習を生き生きとさせる材だと言えます。

私は自分でプリントを作るのが好きですが、いろいろな参考書や学校の蓄積をアレンジしています。また、日頃から問題意識を持っていると家の中でも街中でもTV番組でも、様々なものが材にみえてくると思います。

教師の言動「技」

最後に「技」です。これは、「観」と「材」を繋ぐ教師の言動です。どれだけ素晴らしい教材があっても、使い方を間違えると効果が発揮されません。
授業のどこで、どのような形で教材を使うのか。
どんな言葉かけで動機づけを促すのか。
困っている子にどう対応するのか。

例えば、計算プリントを始める前の声かけの場面であれば、
「では始めましょう」と言って始める。
「10問あるけど5番まで出来れば合格!」と言って安心感をもってもらう。
「答えはプリントの裏にあるので、終わった人は自分で丸付けをして、次のプリントをしましょう」と言って学習の見通しを持たせる
など、いろいろな働きかけがあります。

先生になる前に何ができる?

「観・材・技」の中で、指導案に書かれる割合として「観」が多いように思います。もちろん、授業をする上で最も重要だと言われる「観」の部分を徹底的に考えることは大切です。

しかし、指導案に書くだけで思いが実現するといった魔法の効果はありません。どのような活動をするのか(材)、どんな働きかけをするのか(技)、具体的に子どもとのやり取りがイメージできるかが重要になります。

そこで、現場に入る前に「材」や「技」の部分を学ぶにはどうすれば良いのかについて考えてみます。

多くの実践に触れアイデアを磨く

「材」はいろいろな授業実践から学ぶことができます。それを参考に自分で教材を作ってみても良いでしょう。教材開発はアイデアの部分なので、自分で0から考えるのではなく、できるだけ多くの教材に触れることでアイデアが広がります。
 私がプリントをつくり際には、幼児教育(小学校入試・知育玩具)から大学院入試問題を参考にすることが多かったです。他には小中学生の時にパズル本やなぞなぞをよく読んでいたので、それもアイデアのもとになっています。

教科書だけで授業をするというイメージを持っていると、現場に出てから難しいかもしれません。最近ではICT機器を使うことも考えられます。フラッシュカード教材を自分で作れるサービスもあるので、興味のある方は使ってみて下さい。作ったものはみんなで共有できると良いですね。

体で覚える「技」

「技」は現場に入る前に学ぶことが最も難しいでしょう。実地の場としては教育実習や模擬授業があります。「観」は頭で考えますが、「技」は体で覚えます。「子どもが安心して学習できる雰囲気つくりが大切」だと頭では分かっていても、具体的にどのような言葉かけや振る舞いがそのような雰囲気を作るのかは、体で感じて覚えるものだと思います。集団相手が難しければ、自分と相手2人でも練習することはできます。

また、公開授業で先生と子どもの生のやり取りをみて感じることは、とても大きな学びになります。しかし、私が学生の時は勧められた授業を見に行っても「どこをみてよいのか」「何がすごいのか」分かりませんでした。
 そうならないためには、予め「学習意欲を持続させるための働きかけは?」「どのようにして、今までの学習との繋がりを持たせているか?」など授業をみる視点を決めたり、可能であれば映像や音声を記録して、授業後に他の人とコメントし合うことで、授業をみる視点や学べるものが増えます。

様々な場面で技を鍛える

授業の技術とは直接は繋がらないかもしれませんが、サークルやボランティア、アルバイトなどで大勢の人の前に立つ機会を持つこともできます。

また、自分の話を録音したり、人に聞いてもらったりして、話し方を鍛えることもできます。私は、初任の頃は先輩から「話が長いから、結局何を言っているのか分からない」とよく指摘されました。改善方法としては、天気予報やラジオ、お笑い番組など、話し方が上手だと言われている人の言葉をリピートして、口で覚えようとしました。
 話し方と関係して「声」も強力な武器になります。眠くなる声、やる気がわいてくる声、気持ちが落ち着いてくる声、様々な声を使い分けることも大切です。

授業の根っこにあるのは「観」

今まで「材」と「技」の部分を中心に説明しました。私が現場に出る前に不足していた点であり、現場以外で学ぶことが難しい部分だと思ったからです。しかし、これらは、もとを辿れば自分がどんな授業をしたいのかという「観」から生まれるものです。

例えば、授業スタイルを考えます。
「先生が上手に教えて、一斉授業でみんなに分かってもらいたい」と思う先生は、分かりやすい教材や丁寧な板書に力を入れるかもしれません。
「困った時に協力し合うクラスにしたい」と考える場合は、ペア学習や関わり合う時間を多く設定するかもしれません。
「学校は楽しい場所でありたい」と思う先生は、学習ゲームや笑いの要素が多くなるかもしれません。
同じ声掛けやプリントでも、先生によって「何のためにそうするのか」意図が違うことは多いです。

「観・材・技」の三位一体

このように、材や技は、根っこの部分で「観」と繋がっています。そのため、単に「これを使えば授業が出来るようになるんだ」「こうすれば子どもが静かに聞くんだ」と材や技の部分だけに注目するのではなく「それら3つがどのように関係しあっているのか」、という視点で授業をみたり、自分で授業を構想したりすることが大切です。

指導案の話に戻ると、指導案には先生の授業や子どもへの願い、つまり「観」が詰まっています。それがどのように実現されるのか、それは授業をみるまで分かりません。だから、指導案を書式に沿って書いて終わるのではなく、その思いを実現するためには何が必要なのか、それを「教材・活動(材)」「教師自身(技)」「子ども」との関係で具体的に考えることでより良い「授業案」となります。

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